転生者と灰被りのお姫様   作:アイリエッタ・ゼロス

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Stalker/Worried maiden heart

 5月14日

 

「先輩、ここってこうで良いんですよね?」

「あぁ。そこの解き方はそれで大丈夫だ」

 いつも通り学校に行っている時の電車の中、俺はすみれの今日の試験範囲の

 最終確認をしていた。

 

「あと、これはその後の問題にも使えるからな」

「分かりました! ....それにしても、先輩のお陰で今回のテストは良い結果になりそうです」

「なら良かった」

 そう話していると、青山一丁目駅に着いた。

 

「すみれ。降りるぞ」

「はい」

 俺とすみれは電車を降りてエスカレーターに乗った。すると....

 

「よぉ、櫂」

 後ろから声をかけられた。振り向くと、そこには竜司と蓮と、どこか後ろを気にしている

 高巻がいた。

 

「よう、竜司か。それに蓮に高巻もって....どうしたんだアイツ?」

 俺は後ろを気にしている高巻を見て竜司にそう聞いた。

 

「あぁ....何か最近、ストーカーにあってる様な気がするんだとよ」

「ストーカー?」

「あぁ。....そうだ。ちょうど良いから櫂も手伝ってくれよ」

「手伝うって....何をだよ?」

「ストーカーをとっ捕まえるの」

「....は?」

 

 

 〜〜〜〜

 

 竜司に巻き込まれた俺は、駅の外に出て物陰に隠れていた。そして、隣にはすみれがいた。

 

「(朝から俺は何をやってんだか....)」

「あ、先輩! あの人じゃないですか?」

 そんな事を考えていると、すみれが駅の階段の方を指差した。そこには、長身で、どこかの

 学校の制服を着た青髪の男がいた。そして、その青髪の男は高巻に向かって手を伸ばそうと

 していた。

 

「マジでストーカーいんのかよ....」はぁ

 俺はため息をつきながらも、手を伸ばそうとしていた男に一気に近づいてその腕を掴んだ。

 

「おいアンタ....流石にストーカーはマズいんじゃねぇか?」

「....何だ君は?」

 男がそう言うと、高巻がものすごい形相で男に指を指した。

 

「っ! それはこっちのセリフよ! 付きまとってたくせに!」

「付きまとってた....? 心外だな」

「ずっとつけてたでしょ! 電車の中から!」

 そう言っている間に、竜司に蓮、すみれがこの場に集まってきた。すると、突然車道から

 クラクションの音が鳴った。見ると、そこには高級そうな黒い車が止まっていた。そして、

 その車の窓が開くと、一人の老人がこっちを見ていた。

 

「いやはや....急に車を降りたと思えば、呆れるほどの情熱だな。はっはっはっは」

 その老人は、俺が腕を掴んでいる男を見ながらそう言うと笑い出した。

 

「先輩....あの人、斑目 一流斎じゃないですか?」

「斑目 一流斎?」

 すみれは老人の顔を見ると、俺に耳打ちでそう言ってきた。

 

「はい。確か、有名な日本画家ですよ」

「へぇ....」

 俺はあまり興味がなさそうにそう返した時、一瞬、腕を掴む手の力が緩んだ。その瞬間、

 男は俺の手を振り払うと、高巻の前に立って何かを言い出した。何となく話しを横から

 聞いていると、高巻に絵のモデルになってくれと頼んでいた。

 

「じゃあ明日! ぜひ会場で!」

 そう言うと、男は黒い車に乗って去っていった。

 

「....俺がいる必要あったか?」

「あはは....って、先輩マズイです!」

 俺の言葉にすみれは苦笑したが、突然大声を出した。

 

「どうした?」

「時間! ここからだと走らないと学校に間に合わないです!」

 そう言ってすみれは、携帯の画面を見せてきた。時間のところを見ると、確かに学校に

 着くのにギリギリの時間だった。

 

「マジかよ....! 蓮! 竜司! 高巻! 俺は先に行くぞ!」

 俺は三人にそう言うと、すみれと一緒に学校まで走った。

 

 

 〜〜〜〜

 放課後

 

「(とりあえず終わったか....すみれも今日は新体操の練習があるって言ってたし、適当に

 寄り道してから帰るか)」

 テストが終わり、自分の席でそんな事を考えていた俺は席を立ち、教室から出ようとした。

 すると....

 

「あっ、露崎君! ちょっと待って!」

 突然俺は、高巻に呼び止められた。

 

「どうした高巻?」

「これ。一緒にいた人にも渡してくれないかな?」

 そう言って、高巻は俺に二枚のチケットを渡してきた。チケットには“斑目展”と書かれていた。

 

「これは?」

「朝、私にモデルになってくれって言ってた人いるでしょ? その人、喜多川君って言うんだけど

 斑目先生の門下生なんだって。それで、よくわからないけど明日から始まる個展のチケットを

 五人分くれたの。だから、良かったら貰ってくれないかな?」

「....そうか。じゃあ、ありがたく貰っておく。すみれにも俺の方から渡しておく」

「っ! そっか! じゃあお願いね!」

「あぁ」

 俺は高巻にそう言うと教室を出て、学校の外に向かった。

 

 〜〜〜〜

 

 あの後、新宿でウロウロして晩飯を食った俺は家に帰ってきていた。そして、風呂にも入って

 テレビを見ていると時刻は既に10時を過ぎていた。

 

「(この時間なら出るよな....)」

 俺はそう思いながらすみれに電話をかけた。

 

『もしもし? 先輩どうしましたか?』

「あ、すみれ。今大丈夫か?」

『はい。大丈夫ですよ』

「そうか。あのさ、すみれは明日時間があるか?」

『明日ですか? 明日は特に用事もないですから時間はありますよ』

「ならさ、明日一緒に美術展に行かないか?」

『び、美術展ですか?』

 俺の言葉に、すみれはどこか驚いているようだった。

 

「あぁ。実は....」

 俺は高巻から“斑目展”のタダ券を貰った経緯を説明した。

 

『そんな事があったんですか』

「あぁ。....それで、どうだ? 一緒に行かないか?」

『そうですね....! じゃあ明日、一緒に行かせてもらっても良いですか?』

「っ! そうか! なら待ち合わせは何時の何処にする?」

『そうですね....なら、会場近くの渋谷駅に11時ごろでどうですか?』

「わかった。じゃあまた明日。おやすみ、すみれ」

『はい! おやすみなさい、先輩』

 そう言って、すみれは通話を切った。

 

「....明日の服、今のうちに選んどくか」

 俺はそう思いながら、クローゼットとタンスを開けた。

 

 〜同時刻〜

 すみれside

 

「....どうしよう」

 先輩との電話が終わり、私はクローゼットから服を取り出しながら、携帯でコーデの

 参考を見ていた。

 

「これはこの前着ていったから別の物が良いけど....」

「(もう少し服を買っておけば....)」

 私は昔に服を買わなかった事を今更ながら後悔していた。

 

「(というか、よくよく考えてみれば先輩と二人で行くって事は....)」

 私はそんな事を考えた瞬間、顔が一気に真っ赤になり熱くなった。

 

「(違う違う! これはデートじゃなくて....デートじゃ、なくて....)」///

 私は首を横に振りながら、今自分が思ったことを忘れようとした。

 だが、一度そう考えてしまうとなかなか忘れる事が出来ず、私は自分の机に

 置いてある写真に向かってこう言った。

 

「かすみ....私、どうしたら良いかな....」

 

 

 

 

 

 

 

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