転生者と灰被りのお姫様   作:アイリエッタ・ゼロス

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Exploring with two people vol.4【Vanity】

 5月16日

 

「....とりあえず、駅の方に向かってますね」

「あぁ」

 次の日の放課後、俺とすみれは蓮達に気づかれない様に三人の後を追っていた。

 

「どの駅まで行くんでしょうか....」

「さぁ? 追わないことには分からないだろうな」

「ですね」

 

 〜〜〜〜

 渋谷駅

 

「渋谷で降りるか....」

「別の線に乗り換えるんでしょうか?」

「そうだと思うが....」

 そう言いながら追っていると、三人は俺達の予想を裏切り改札の方に出た。

 

「改札の方に出ちゃいましたね....」

「あぁ....もしかして、渋谷駅の近くにアトリエがあるのか?」

「かもしれませんね....」

 

 〜〜〜〜

 

 三人を追いかけると、三人はあるあばら家の前で立ち止まり、インターホンを押していた。

 

「あそこか....?」

「そうみたいですね。....でも、何というかあそこに人が住んでるんでしょうか?」

 すみれはあばら家を見ながらそう言った。すると、そのあばら家から一昨日高巻を追っていた

 男が出てきた。

 

「アイツは....」

「確か、ストーカーしていた人ですね」

「あぁ。....にしても、何か言い争ってるな」

 そう言って様子を伺っていたら、あばら家から今回のターゲットである爺さんが出てきた。

 

「おいおい....マジであんなあばら家に住んでるのかよ」

「ですね....流石に私もちょっと驚きました」

 そう言い合いながら様子を確認していると、爺さんと男はあばら家の中に入っていった。

 

「さてと....住んでるのは分かったが、キーワードを何にするかだな」

「とりあえずあばら家にしてみませんか?」

「あぁ」

 すみれがそう言うので、俺はあばら家と打ち込んでみた。すると....

 

『候補が見つかりました』

 

「当たりみたいだな....」

「ですね。あとはあのあばら家を何と思っているかですが....」

「画家に関係していることで考えてみれば....無難に美術館か?」

 俺が考えながらそう言うと....

 

『ナビゲーションを開始します』

 

 すみれの携帯からそんな音が聞こえ、俺とすみれがいる周辺は歪みだした。

 

 ~~~~

 

「....っ! ここは....」

「どうやらパレスに入れたみたいだな」

 そう呟いた俺の目の前には、金ピカで趣味の悪い建物が建っていた。

 

「斑目大画伯美術館....」

「あのあばら家が金ピカの美術館か....こんなもん誰も予想がつかねぇな」

「そうですね....って、あれ?」

「どうしたすみれ」

「あの、先輩....私の服装が制服のままなんですが」

 すみれを見ると、すみれの姿は戦闘服であるレオタードの姿ではなく、秀尽学園の

 制服だった。

 

「多分だが、すみれはこのパレスにいるシャドウに敵と認識されていないから

 だろうな。だから服装が変わっていないんだろうな」

 そう言いながら、俺は全書を開いて現れた一枚のカードを手に取って空に投げた。

 すると、カードが割れ、俺の着ている青いフード付きのローブの予備が現れた。

 

「すみれ、一応これ着ておけ。顔バレは避けれるからな」

「ありがとうございます」

 すみれは俺からローブを受け取ると、顔が隠れるぐらいまでフードを被った。

 

「さて、何処から入ったもんか....」

「入り口は人の行列ですごいですし....何処か開いてる窓から入りますか?」

「だな。....っ! すみれ、ちょっとこっちに!」

「せ、先輩!?」

 俺はすみれの腕を掴むと、近くにある車の陰に隠れた。

 

「きゅ、急にどうしたんですか?」

「あれ見てみ」

 俺はある所を指さした。そこには、戦闘服を着た蓮達三人と猫が一匹いた。

 

「あれは、先輩の友達の....」

「あいつらも入れたみたいだな。取り敢えずここで少し待つぞ」

 そう言って、俺とすみれは三人と一匹が見えなくなるまで隠れていた。そして、

 三人と一匹の姿が見えなくなると車の陰から出た。

 

「さて、入れるところを探すか」

「はい!」

 俺とすみれはまず、美術館の周りを歩いてどこか入れる所がないか探した。

 だが、一つとして入れるような所はなかった。

 

「なさそうですね....」

「あぁ....てなると、あと入れそうなのは....」

 俺は周りを見ながら蓮達が足場にしていたトラックを見た。

 

「すみれ、あのトラックの上乗って敷地に入ってみるか?」

「敷地の中にですか....もしかしたら入れる場所があるかもしれませんね」

「だろ? じゃあ行ってみるか」

「はい」

 俺とすみれはトラックの上に登り、敷地内に飛び降りた。そして、ライトに

 照らされた道を歩いていくと、謎のモニュメントがあった。

 

「すみれ、この上登れるか?」

「あの、さすがにこの高さはちょっと....」

「まぁそうだよな。だったらほら、俺の背中に乗れ」

 そう言って、俺はすみれに背を向けて膝をついた。

 

「い、いいんですか?」

「あぁ」

「じゃ、じゃあ....」

 すみれは恐る恐るといった様子で俺の背中に乗ってきた。

 

「よっと」

「お、重くないですか?」

「全然。軽いくらいだ」

「そ、そうですか。....よかった

「んじゃ、しっかり掴まっててくれよ」

 そう言って、俺はモニュメントの上に跳び乗った。そしてモニュメントの上を跳びながら

 俺は小さな柱の上に乗り天窓がある所まで登った。すると、天窓の一ヶ所は開いており

 ロープがつるされていた。

 

「先輩、このロープを使えば中に入れるんじゃ....」

「だろうな」

 そう言いながら俺は美術館の中を覗いた。中には蓮達の姿は見えなかった。

 

「行けそうだな....すみれ、しっかり掴まってろよ」

 俺はロープを利用して美術館の中に侵入した。

 

「これがあの金ピカの美術館の中ですか....」

 すみれはそう呟きながら俺の背中から降りた。

 

「何だか、少し薄気味悪い感じがしますね....」

「壁とか絵の感じを見るとそうだな」

 そう言いながら、俺は壁に飾られている絵とキャプションボードを見た。

 

「佐々木 流奈、21歳....?」

「この絵を描いた人の名前と年齢でしょうか....?」

「他の絵も見てみるか....」

 俺とすみれはこの部屋の中にある絵とキャンパスボードを見た。

 

「全部同じような感じだな」

「そうですね。隣の部屋も見に行きませんか?」

「そうだな」

 俺とすみれはそう話しながら隣の部屋に入って飾られている絵とキャンパスボードを

 見ていった。

 

「さっきの部屋と同じですね」

「だな。何か共通点でもあるのか....」

 そう考えていると....

 

「っ! 先輩!」

 突然、俺の腕はすみれに引っ張られ物陰に連れていかれた。

 

「ど、どうした急に!」

「あそこを」

 すみれは俺達の進行方向を指さした。すみれの指さした先にはこちらに歩いてくる

 蓮達がいた。

 

「わ、悪い。助かった」

「いえ。それよりも、こちらに戻ってきていましたね」

「今日はもう退却するんじゃないか?」

「その可能性はありますね....」

 そう言いあいながらしばらく隠れて様子を見ていると、蓮達はロープがある部屋のほうに

 歩いて行った。

 

「行ったみたいだな」

「ですね」

 俺とすみれは物陰から出ると、蓮達が現れたほうに歩いて行った。すると、そこには

 どこかで見たことがあるような男の絵が飾られていた。

 

「先輩! この人って....」

「喜多川 祐介....」

 その男の絵は高巻にモデルをお願いしていた男だった。

 

「何でこの人の絵が....」

「....弟子」

「えっ?」

「ここにある絵は全部、斑目の弟子なんじゃないか?」

「こ、ここまでにあった絵が全部ですか!?」

 俺の発言にすみれは驚いていた。

 

「まだ確証はないがな」

「....」

「取り敢えず、もう少し進んでみるぞ」

 そう言って進んでいくと、パンフレット置き場に何かが置かれているのが目に入った。

 俺が一つとってみると、それはこの美術館の地図だった。

 

「これ、この美術館の地図みたいですね」

「あぁ。今回も結構広いし、これも半分しか地図がないな」

「じゃあどこかに続きがあるはずですね」

「だろうな。....それよりも」

 俺は地図をポケットに入れると、さっきから視界に入ってくる黄金のモニュメントの

 ある部屋に入った。

 

「何だこのモニュメントは....」

「あ、先輩。ここに説明書きが」

 そう言うと、すみれは説明書きの部分を読み始めた。

 

「えっと、タイトルは"無限の泉"。彼らは、斑目館長様が私費を投じて作り上げた

 作品群である。彼らはあらゆる着想とイマジネーションを生涯、館長様に捧げ

 続けなければならない。それが叶わぬ者に、生きる価値なし....」

「なるほど....これを見る感じ、盗作は事実っぽいな」

「生きる価値なしなんて、酷い....」

 すみれは悲しそうな表情をしていた。

 

「とんだ食わせもんだな」

「先輩の言った通り、あそこに飾られている絵は全部弟子の人達の可能性がありそうですね」

「そうだな」

「どうしますか? 地図もあることですしもう少し進みますか?」

「そうだな....あの奥の扉の向こうまでは行ってみるか」

「はい」

 そう言って、俺とすみれはスロープを登って扉の奥に入った。扉の奥はただの通路で、

 順路と書かれた看板が立っていた。その通路を進んでいくと、俺達の目の前に

 セーフティールームの扉があった。

 

「すみれ、一応登録をしておくぞ」

「はい」

 俺とすみれはセーフティールームの登録をして、先にある道を進んだ。進んでいくと、

 再び同じような絵が描かれている展示室に着いた。

 

「また同じような絵か....そろそろ見飽きた」

「言っても仕方がないですよ先輩....」

 すみれもどこか疲れたような眼をしながら俺にそう言ってきた。そうして展示室を

 進んでいくと、出口のような所が見えた。だが、そこには警備員のようなシャドウがいた。

 

「ここのシャドウの姿は警備員か」

「パレスによってシャドウの姿は変わるんですね」

「あぁ。....さて、このパレスの初陣と行こうか」

 そう言いながら、俺とすみれはシャドウの前に出た。

 

『ムッ! 貴様ら何者だ!』

「さぁな」

 そう言いながら、俺は全書からカードを一枚手に取った。

 

「行け、マカミ」

 俺が召喚したマカミは、身体を回転させると口から青白い炎を吐き出した。吐き出した

 炎はシャドウに直撃すると気絶した。

 

「すみれ、殺るぞ」

「は、はい!」

 そう言って、俺とすみれはシャドウを拳銃で撃ちまくり、カードで斬り裂いた。

 

「まぁこんなもんか」

「あ、あの先輩....私、姿が変わったみたいなんですが....」

 シャドウが消滅したのを確認すると、背後にいたすみれはそう言ってきた。見ると、

 すみれの姿は戦闘服であるレオタードに変わっていた。

 

「さっきので敵と認識されたんだろうな」

「なるほど....」

「取り敢えず、もう少し進んでみるか」

 そう言って進んでいくと、俺とすみれは上に上がる階段を見つけた。

 

「先輩、ここから上に上がれそうですよ」

「そうだな。だが、今日のところは引こう」

 俺は懐に入れている懐中時計取り出してそう言った。

 

「ここでですか?」

「あぁ。パレスに入ってからの時間を考えると結構いい時間だ。あまり遅くなると

 すみれは明日のトレーニングに響くだろ?」

「ま、まぁそれは....」

「だから、今日のところはここまでだ。続きはまたすみれが動ける日にな」

「わ、わかりました」

 そう言って、俺とすみれは来た道を戻ってパレスから出た。

 

「んじゃ、帰りになんか買って帰るかすみれ」

「はい!」

 そうして俺とすみれは駅まで戻り、スムージーを買って俺はすみれが住んでいる

 家の最寄り駅まで送り家に帰った。

 

「(さて、帰ったら少し弟子のことを調べてみるか)」

 

 

 

 

 

 


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