どうも。福岡の深い闇です。
この二次創作はいかに作者が糞シリアスを打ち込むのを我慢できるかが鍵となっています。
だから感想と誤字指摘くだしあ(五体投地)
それでは、ガバリティ5倍増し(当社比)の第6話をどうぞ。
「精霊の愛し子、か……」
迷宮都市オラリオ最大派閥、ロキ・ファミリアの
「リフィーたんが探してる
「ああ、それは確かに聞いたね。……複数の精霊に見初められ、複数の加護を得たまさしく【寵児】。僕も結構この世界で生きてきたつもりだけど初めて聞いたよ」
「そりゃそうやろ。精霊なんてものが超激レアな存在になってから何年経ったと思っとる。最後の精霊の愛し子なんてもうお伽話の中の存在やで?」
ロキが仮入団となったリフィーリアを自らの子達に紹介してからしばらくして。
当事者であるリフィーリア、彼女の身内であるレフィーヤ、そしてロキ・ファミリアの首脳陣であるリヴェリアとガレスを含めた6人で行われた情報共有の場で、リフィーリアが言ったのが「出奔した王族、リリア・ウィーシェ・シェスカは精霊の愛し子である」という驚きの情報であった。
「……ガチロリハイエルフの精霊の愛し子。そんな属性特盛りの超激レアな存在が、この
「その言葉、間違ってもリヴェリアや他のエルフの前で言わないでくれよロキ。烈火の如く怒り出す様が見えるから」
「分かっとる。……それで、つまりうちの耳に届かんっちゅーことはや。少なくとも
「穢れた精霊のいるこの街に、精霊の愛し子がやって来た……まさか、ロキ」
穢れた精霊と交戦し、勝利を収めた当事者であるフィンのその言葉に、真剣な表情で頷くロキは呟いた。
「……これは、最悪の事態を想像せないかんかもしれんな」
『神と迷宮の都市』に潜む穢れた精霊、そしてそこに飛び込んできた消息不明の『精霊の愛し子』の情報。
これらを無関係と断じるには、些か無理があり過ぎる。
重苦しい雰囲気に包まれた神室で行われたその推理は……悲しいかな、とても筋道が立ち、かつ矛盾が存在しないものでありながら、真実とは正反対の方向に突き進んでいた。
さて、そんな凄まじい誤解をロキ・ファミリアにもたらしている我らが
「うぬぬぬ……」
「り、リリアちゃん、機嫌直して……?」
何故か不機嫌になっていた。
ぷっくー、と不満を表すようにその頬は膨れ、ジトッとした目でパチパチと火花を上げる炎を見つめている。彼女を隣で宥めようとしているのは、リリアと似た小袖に身を包む千穂。彼女達がいるのはオラリオ市外。ニニギ・ファミリアが所有する田園の側に、リリアが土の微精霊の力を借りて作り上げた
「皆!今日は田植えの手伝いに集まってくれてありがとう!感謝している!!」
「あったりめーよ!」
「ニニギの米が無けりゃ生きる気力も湧いて来ねえ!!」
今日は、待ちに待った田植えの日。命の源、魂の源である稲を植えるとあって、リリアは遠足を前にした幼児のように楽しみで眠れなかった……のだが、朝になって彼女が千穂とともに
ちらりとリリアが視線を向けた先には、伊奈帆達と同じ格好をした千恵の姿が。その手には千穂が毎日せっせと育苗していた稲の苗が握られており、その顔はやる気に満ち溢れていた。その他にも、彼女の周囲には同じような格好をした他の極東系ファミリアの女性団員達の姿もあり、その中には先日銭湯でお世話になった結愛の姿もあった。
稲作専門の半生産系ファミリアであるニニギ・ファミリアとは言え、ずっと中腰で広大な範囲の田んぼに苗を植えなければならない田植えは結構な重労働であり、
その為、ニニギ・ファミリアの生産する米の主顧客層である極東系ファミリアの団員達総出で田植えを行うのが風物詩となっていた。
その様子は彼らの故郷である極東の国々で見られる風景となんら変わりなく、他のファミリアの団員達からもまるで故郷に戻ったかのような雰囲気が味わえるということで人気の行事であった。
「人手が足りないなら、私達も田植えに参加させるべき」
「体格が違い過ぎるから、私達じゃ足手まといになっちゃうよ?」
「私1人でも田植えは出来る!」
「無茶だよリリアちゃん……」
1人気炎を吐くリリアを他所に、田植えはどんどんと進んでいく。流石は常日頃から死線を潜り続け、常人を遥かに超える能力を持った冒険者達といったところか。
そのポテンシャルを遺憾なく発揮し、まるで田植え機で植えたかのような美しく並んだ苗が陽光を浴びて水田に立っていた。この調子であれば、昼を少し過ぎた頃にはほぼ全ての田んぼに苗を植え終わるだろう。
目の前の光景からそう予測した千穂は、未だ唸り続けるリリアの頭をスパーンと叩くと、腰に手を当ててリリアを叱った。
「リリアちゃん!」
「う、はい」
「私たちの仕事は何ですか!」
「昼食の準備です……」
「そうです!だからいつまでもヘソを曲げてないで、ちゃんとお米を炊いてください!そうじゃないと、お米が美味しく無くなりますよ!」
「それは困る」
同い年の幼女から叱られる第一王女(精神年齢は既に成人済み)。千穂の言葉にキリッとした表情を見せたリリアは、いつも通りの真剣な様子でかまどと向き合い始めた。その様子を見てもう大丈夫かと思った千穂は、昼食のおかずを作ろうと行動を始める。
「えっと、あんまりしっかりしたのを作っても食べにくいだけだから……お味噌汁、かな?」
「豚汁とかどう?」
「え、リリアちゃん豚汁食べれるの?エルフなのに?」
「がんばる」
そう言って、ぐっ!と親指を立てるリリア。彼女は日本食を味わうために全力であった。肉を食べることを好まない筈のエルフからの提案に、千穂は悩むが、最終的には豚汁を作ることに決めた。外で手軽に食べられかつボリュームもあるメニューと言えば、やはり豚汁とおにぎりだろう。
となると、豚肉が無いために買いに行かなければならないか。懐からがま口を取り出し、十分な豚肉を買えるだけのヴァリスがある事を確かめた千穂は、リリアに「豚肉を買ってくるから、かまどの事よろしくね」と言い残してオラリオへと向かっていった。そんな彼女の方を見ていたリリアは、かまどの火へと向けていた純白の枝にこっそりと声をかける。
「……風の精霊様。千穂ちゃんが少し心配なので、付いていってもらってもいいですか?」
《縺?>繧》
「ありがとうございます」
精霊からの返答を受け、リリアが礼を言う。と、枝からふわりと風が起こったかと思うと、千穂が向かった方向へと追いかけるように風が吹いていった。その様子を確認し、安心した様子を見せたリリアは、気を取り直して会心の炊き具合を見定めるのであった。
……どうするべきか。
リューは苦悩していた。今日は豊饒の女主人の非番の日であったため、軽食用のじゃが丸くんを買った後に一日中張り込む予定でオラリオ市壁の上からこっそりとリリアの様子を窺っていたリュー。レベル4のステイタスと自身の魔法を用いれば、市壁の上に登ることなど容易い。
見回りのガネーシャ・ファミリアの団員に見つかった時が怖いが、見つかるようなヘマをしなければ大丈夫だろう。
そんな彼女が悩んでいるのは、現在かまどの前で何やら火の様子を見ている
もちろん、彼女がこれまで1人で食材を購入しているところは見ているし、自分の身を守れるだけの危機管理意識があることもこの護衛の日々で把握している。
しかし何が起きるか分からないのがここオラリオだ。
特に今日は行き帰りの場所が違うため、何が起きるかの予測が一層しづらくなっている。……護衛対象では無いが、一応様子だけは確認しておくべきか。リューを悩ませているのは、概ねそのようなことであった。
そして、悩みに悩んだリューは、最終的に少女を追うことに決めたようだ。リリアの周囲には危険となりそうな影はなく、強いて言えばリリアが火によって火傷しないかどうかが気がかりではあるが大丈夫だろう。リューはこれまでにも彼女が意外なほどに料理ができる様子を見てきている。さらに言えば周囲には彼女に好意的な冒険者が多くいたので、万が一の場合も大丈夫と見た。
とてとてとオラリオの大通りを歩く少女の背中を見つめながら、リューは感慨深い思いでここ数週間影ながら護衛し続けてきたリリアの事を思う。
変わった方だ。
リューの抱く印象はそんなものだった。
しかし、それは決して悪印象などではなく、リューの中では好感に近いものであった。他種族に排他的、侮蔑的なエルフの種族的性格に嫌気がさして里を出たリューにとって、他種族しかいないはずのニニギ・ファミリアにうまく溶け込み、生活できているリリアは驚くべき
幼いこともあって自らの感情に素直な所は見受けられるものの、その感情も他種族に対する嫌悪ではなく、同じ共同体に住まうものへの敬意や愛情、友情であった。他者との触れ合いを拒むエルフの性をどうしても克服しきれなかったリューとは違い、リリアはそれすらも躊躇うことなく行えている。
それは、《
なお、実際のところはリリアが米キチであまり他種族の事を気にしない質であるというまさしく例外中の例外である事は、言わずとも知れたことである。
私も、あのように振舞えていれば――――と、そこまで考えて首を振るリュー。過ぎてしまった日々を思い返しても、その時に帰れるわけではないのだ。見ると、少女は無事に肉を買い終え、帰路についていた。どうやら何事もなく買い物を終えたようだ。リューは安堵の息を吐き、元の
そして、昼過ぎ。
無事に殆どの田んぼに苗を植え終えた極東系ファミリアの冒険者たちは、リリアが土の精霊の力を借りて作り上げた特設の調理場で料理を受け取り、地面に腰を下ろしてわいわいと昼食を食べていた。
献立は、携帯しやすいように葉に包まれた炊きたての米で作られたおにぎりと、簡素な木彫りの椀に注がれた出来立ての豚汁。肉体労働の心地よい疲労感を癒す簡素ながらも絶品の昼食に、冒険者たちは喜びの声を上げていた。
「ほ、本当に食べれるの、リリアちゃん……?」
「だいじょぶ」
「エルフってお肉食べれたっけ……?」
ぐっと拳を握り、よそわれた豚汁をずずっと啜るリリア。その横では、首を傾げながら泥に汚れた装束で腰を下ろす千恵と、彼女の流す汗を手ぬぐいで拭ってやりながらもリリアを心配そうに見つめる千穂の姿があった。
そして、具材である豚肉をもぐもぐと頬張ったリリアは、くわっと目を見開くと豚肉をすぐさま呑み込んでこう叫んだ。
「美味いっ!!」
「あ、食べれたんだ」
「よかった……」
味噌の味と出汁がよく利いた汁に、その汁をしっかりと吸い込んだ豚肉。豚肉は良く血抜きがされてあったのか臭みはなく、しっかりとした食感でリリアの舌を楽しませる。そして肉の脂で少しこってりとした口の中にほかほかのおにぎりを放り込めば、まさに至福。
脂を吸い取った米はその味に深みを増し、また少量つけられた塩の味がよいアクセントとなって更に食欲を引き立てる。その次に一緒に豚汁に投入されていたごぼうやキャベツを食べれば、少しくてっとした食感ながらも肉や米とは違うシャキシャキ感と共に、豚肉からも染み出した旨味が口の中に広がる。
美味い。
満足げな笑みを浮かべるリリアに、心配が杞憂であった事を感じ取った千穂たちは笑顔を交わし、自分達の分の料理に箸をつける。
「うん、美味しい!」
「上手くできてよかったです」
そして、その出来栄えに感嘆の声を上げた千恵と、安堵の声を漏らした千穂。2人が黙々と食べ進めるその側に、腰を下ろした人影がいた。
と、同時にリリアが顔を上げ、その顔に驚愕を浮かべる。
「君が、ニニギの言っていた《風変わりな眷属》、か。……なるほど、確かに変わっている」
「あ、貴方様は……」
わなわな、と震えるリリア。その様子と、自分達の隣に座った人物……いや、
あっ、やばい。と。
「このように美味い握り飯を作ってもらった礼を言おうと思ってな。少し失礼するぞ」
「……こ、米の神様……!」
「だぁからすぐに土下座しようとするのやめようってリリアちゃん!」
「ああ、いつものですね……」
米レーダーにびんびんと反応する目の前の神は、タケミカヅチ。日本神話随一の武神にして、名前の通り雷を司る雷神でもある。
雷は、別の言い方で言えば稲妻となり、稲は雷に感光することによってその実をつけるという信仰から(リリアにとって)米に関係が深い現象である。つまり、雷神としての側面を持つタケミカヅチはリリアにとって米の神様。うん、跪くのもしょうがないよね。
もう諦めた様子で遠い目をする千穂と、それは見事なDOGEZAを披露するリリアを止めようとする千恵。そしてその様子を見て困惑するタケミカヅチという、ある意味いつもの
「ハァッ!!」
一閃。
純白の木刀が振るわれ、ゴブリンの胴を薙ぎ払った。魔石を潰されたゴブリンは断末魔を上げることさえままならず、直ちに灰となり消え失せていく。その様子をみて尻込みしたのか、ジリジリと後ずさるゴブリンに容赦なく木刀は振るわれ、
ものの1分程で7匹のゴブリンが灰になった光景を見たレフィーヤは、そんな姉の
「……【母なる森に請い願う。私の護りたいものを、護れるだけの力を与え給え】」
それを見た姉……リフィーリアは、静かに玉音の音色を迷宮に響かせ始めた。ギギ、ギギ、と唸り声を上げるゴブリンやコボルトの群れが襲いかかるものの、その玉音の音色が止む気配はなく。
「【重ねて請い願う】」
逆に、コボルト達の数が減っていく。
《並行詠唱》。全魔法使いが目指し、レフィーヤ自身もフィルヴィスとのスパルタ特訓を経てようやくものにした高等技術を自然と使い出す姉に顔の引き攣りが止まらないのをレフィーヤは感じていた。そして、第2波を難なく捌ききり、続く第3波。すると、ここまで怪物を送り込んでも倒れないエルフに嫌気がさしたか、迷宮の壁のひび割れは特別大きくなっていた。
それを見たレフィーヤが思わず目を見開く。
「まずい……お姉ちゃん!?」
「【護れるだけの、魔力を与え給え】」
そして、静かに
「――――散れ」
ド……ンッ!!!と、迷宮内の空気が震えた。
レベル1とは思えない程の速度で振るわれた木刀が、生まれた大量の怪物達を薙ぎ払ったのだ。
(デタラメすぎる……えぇ……?)
レフィーヤは、声をかけきるよりも早く生まれた怪物達を一掃した姉にドン引きする。いや、カラクリは分かってはいるのだ。姉の持つ強化魔法【ツヴァイ・バースト】によるステイタスの底上げ。
「森に対するカツアゲ」とロキが称したその魔法の効果は、一度模擬戦を行ったリヴェリア曰く「完全に詠唱し終えたならば、体感では殆ど
詠唱も効果も把握しているため、レフィーヤもその魔法を使おうと思えば使えるのだが、その無茶苦茶加減には呆れるしかない。しかも、まだステイタスの低いこの状態でこれなのだ。いったいレベルが上がった時に使用すればどれ程までになるのか――――
先輩冒険者としてすぐに追い抜かれそうな実力差にレフィーヤが遠い目をしていると、ハッとした表情で辺りを見回したリフィーリアが焦った様子でレフィーヤに話しかけてきた。
「えっと、その、こんな感じで大丈夫かな」
「うん、大丈夫だとオモウヨ」
思わず片言になりながらもなんとか気力を奮い立たせて姉に答えるレフィーヤ。
そう、レフィーヤが遠い目をする理由の一つには姉の性格もあった。姉は何故か戦闘になるとスイッチが入り、人格が変わる。
いや、別人格というわけではないから、ロキの言葉を借りれば「キャラが変わる」という感じか。キレると本性が現れるティオネの様な感じだが、あちらは完全に怒りで行動するのに対して、こちらは冷静沈着な殺戮者へと変貌する。このギャップの激しさにレフィーヤは毎度胃がキリキリするような感覚を覚えるのだ。
まさか、自分の姉がそんな属性特盛りだとは思わなかったレフィーヤは、この久し振りに会った姉の扱いにも悩んでいた。
「もっと強くならないと……リリア様を、護りきれるように」
「うん、そうだね……護らないとね……ハハ」
レフィーヤは、今は何処にいるのか分からない幼馴染の王族に向けて心の中で呟いた。
リリア様……早く、早く見つかってください……!!
次回、TSロリエルフが稲作をするのは間違っているだろうか
第7話『割と暇な第一王女の一日』
たぶん明日更新!!