東方小噺竒   作:加具

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特に東方である必要もなく、オリジナルでもいいかとも思いましたがこちらに。
同人活動をさせて頂いているもので冬コミに向けての原稿です、改良の余地がありましたら意見を頂けたらうれしいです。

感想が頂けたらとても嬉しいです。
この小説はアルカディアのほうでも掲載させて頂いています。


Once in the Blue Moon

寂れた神社があってさ

今誰も管理はしてねぇと思うんだよ。

でも昔からあるんだよな。

寂れたってゆうか最早崩れかかったお堂と雨風でぼこぼこになった賽銭箱。

 

雑草だって茫々に生えて人がいる所なんて見たことも無かったよ。

大体こんな寂れた町にこんな神社があるのは珍しいことでもないと思うんだけどさ。

俺さぁ、見ちゃったんだよ。

其処に佇んでた変な金髪の姉ちゃん―

 

 

0nce in the Blue Moon

 

 

 

前述した通り、我が町は寂れている。

時代に取り残されたみたいに人の行き交う魚河岸だったり、商店街。

 

点々と建ってる居酒屋さんなんかでは地元の人しか見ないし、観光客を呼び込もうにも何の取り柄もないから簡単には来ないんだよな。

かろうじて電車は通ってるからなんかの気まぐれを起こした物好きな乗客が其処で降りて一泊して、肩を落として帰っていく。

そんな感じの所なんだ。

 

未だにストリップ劇場の後なんかもあって子供の頃なんかはそれと知らずに遊んでて母さんに叱られたもんだった。

段々増えて行くシャッターの下りた店。

漠然と人の減っていく感覚。

少しづつ少しづつ、この町は年食った爺さん婆さんの様に衰えいつしか静かに幕を下ろす気がしていた。

 

そんな町にだぜ?

金髪の姉ちゃんなんていると思うかよ?

 

しかもその姉ちゃんの格好がまた奇抜なんだわ。

目深に目だし帽を被って、ちょっと傷んだ感じのエプロンドレス着て、その下になんていうの?サルエルみたいなのきてぷっくらしてやんの。

片手には箒持って神社の方からひょっこり出て、あっちこっち、きょろきょろ見てたよ。

 

なんていうのかな、あんな格好見た事がある。

昔からテレビで大人気だった魔女だ。

彼女はそんな時代遅れな奇抜な格好をしていた。

 

でも、それがまた綺麗なんだよ。

帽子からはみ出る金髪は染めて傷んだ様な髪じゃなくてつやつやしてるし、スタイルも小柄だけど綺麗な体付きしてた。

 

家が近くにあってたまたま通りがかった俺は其れを見ちゃったんだけどその姉ちゃん俺が見てるのに気付いたらしい。

手をブンブン振り回しながら俺に近付いて来た。

 

「こんにちはお兄さん」

「……こ、こんにちは」

 

以外にも流暢に出てきた日本語に少し安心しながら、でも少し戸惑ってしまう俺。

 

「ここに来たの初めてなんだ、出来れば誰かに案内をお願いしたいと思うんだけど、お兄さんは暇な人?」

 

屈託のない笑顔の彼女。

其処に邪気なんかなくて、怪しむのが普通なんだがどうにもそんな気持ちが抱けなかった。

 

「いいよ、暇だから」

 

俺は二つ返事で了承し、彼女を案内することを決める。

 

「でも期待はしないでね、この町なんもないから」

 

それだけ最初に言っておいて彼女との道中が始まった。

 

「うお!?デッカイ魚!!」

「キャベツ二玉300円?……安いのか?」

「猫発見!ってあ……逃げ足の速い野郎だぜ」

「あのガタンゴトンって音はなんなんだ?……電車?あれで移動すんのか」

「この時期にまだ風鈴飾ってあるなんてどうなんだよ」

「ストリップ……ってなんなんだぜ?」

 

彼女はバイタリティに溢れていた。

あらゆるものに好奇心をもって、どんなものでも全力だった。

 

最初行きたい所があるのかを聞いた俺だったが、何処でもいいとの言を貰い、適当に町を一周することにした。

魚河岸では並ぶ大きな魚をみて騒ぎ、商店街の店ではいちいち立ち止まって見物していた。

猫を見て駆けより、逃げるのをみると全速力で追いかけて行き、危うく離れ離れになる所だったし、電車なんかの移動手段にも興味を持っていた。

冬真っ盛りであるいまでも軒下で風に揺られて涼しげな音を立てる風鈴に笑い、ストリップという所では盛大に彼女から目を逸らした。

 

それにしてもこの彼女全く不思議である。

電車が何か知らないなんて、ではここにはどうやってきたのか。

こんな人がうちの町にいたなら誰かは知ってるはずだし、第一今の日本人で電車を知らないなんて有り得ない。

 

しかし、そんな懸念は彼女の目まぐるしい行動に翻弄され、端から端から流されていくのだった。

 

あちらこちらと動きまわり、商店街では店のおばさんと仲良くなって果物を一口食べさせてもらったり、みんなに笑顔を振りまきながら、彼女は我が町を練り歩いた。

何処か落ち着きがなくて、少しは一つの場所にいなさいと言いたくなるような人だった。

 

でも、不思議と其処に不快な思いはなくて、やれやれと、しょうがないなとは思うけれど、彼女とすごす時間は楽しかった。

 

「ありがとう、楽しかったよ」

 

其処で不思議だったのは俺である。

この町には何もないと思っていた。

少しずつ死んでいくこの町。

そこには少しばかりの感慨しかなくて、対して好きだとも思えなかった。

 

だからこそ、この町の案内を買って出た時にいった一言は紛れもない真実だと思っていた。

 

「こっちこそ、たのしかったよ」

 

でも、楽しかったのである。

自分も彼女と共に居て。

 

久しぶりに言った場所もあるし、いつも立ち寄る店もあった。

でもその一つ一つをみて、楽しむ彼女をみて、其処にあるものの良い所を簡単に見つけてしまう彼女と共にいて、楽しかった。

 

探検が終わったのは、時間も過ぎ去った夕方。

と言ってももう日もほとんど暮れて薄暗闇の中だった。

 

段々人もいなくなって、少し小高い丘の公園に来た俺達の他に、ここには誰もいなかった。

 

「海なんて初めて見たぜ」

 

そうやって日が暮れるのをニコニコと見ながら魔女な彼女は俺の隣にいた。

手にはさっき俺が買ってきたコーヒーを持っている。

寒いこの時期、彼女の吐く息は白く、巻かれた荒い布のマフラーに顔を埋める様子は猫が顔を埋めるみたいで可愛かった。

 

「あんた、どっから来たんだよ?」

 

電車も知らない、海も初めてときた。

見た目は完全な外国人だが、喋るのは流暢な日本語。

この不思議な人は何処から来たのか。

 

「…………遠いところからさ」

 

少しの沈黙の後で帰って来た答えは自身を納得させるにはいささか物足りなかった。

 

「遠くって、……何処だよ?」

 

自分の中にも少しの逡巡があった。

彼女の其れは言いたくないからではなくて、何と言っていいのか言葉が見つからないような印象を受けたから。

 

「遠くだよ、とても遠い場所」

 

そんな彼女は海も知らず、傷んだ魔女の格好をして、使い古した箒を持ち、如何してここにいるのか。

生活して行く中で俺には当たり前の光景になぜ全身で喜び、あんなに好奇心を燃やせたのか。

なんというか………彼女は―

 

 

少し寂しそうだった。

 

 

「こんなの序の口で、もっと都会には、遠くの人とそこにいながら話ができて、世界で何が起きたのか逐一知ることが出来て、もっと人が多くて、食べ物も、服も、髪も、靴も、乗り物も、箒だっていらないし、気軽に空を飛べて、戦争が絶えなくて、愛してるって言いづらくて、人と人の垣根が高くて、隣人の事を知らなくて、もっと人に冷たくて、思いが伝わりやすいから逆に伝えにくい。」

 

俺は一息で言った。

 

「そんな世の中だったら、君は絶望する?」

 

俺はここしか知らなくて、何処か遠くに行ったことも無い。

でも、垂れ流されるニュースは俺に色々な事を教えてくれて、国がどうとか、世界がどうとか、戦争で何処の国と何処の国が如何しただとか。

知ってる世界は増えたけど、何処か現実味がなくて、大変なことだとは思うけれど親身にはなれない。

 

国の総理が誰になったかも他人事で、どうせ俺の周りは変わらないと胡座をかいている。

其れは冷たいことなのか、広すぎる世界を知って、俺は自分の無力を思い知った。

 

自分も持っていたコーヒーを一息で飲んで、彼女に向き直る。

吐いた息は白くなって、空へと登って行った。

 

彼女はここには本当はいない人なのかもしれない。

そんな気がしていた。

 

「此処よりもっと栄えた場所があって」

 

俺の方は見ず、彼女は寒い冬の空を見ていた。

そこには星がたくさんあって、たくさんの星は空からはみださんばかり。

 

「遠くの人と気軽に話せて」

 

その空を遠くに眺めて。

 

「遠くのことがすぐに分かって」

 

彼女は遠くに遠くにほぅ、と息を吐いた。

 

「色々なものが溢れて」

 

彼女の手は顔を埋めていたボロボロのマフラーを触り

 

「意思が伝わりやすいけどでも伝わりにくくて」

 

目を細める様にして、星屑の一粒一粒を眺めていた。

 

「目の前の人がもっと他人になって」

 

その言葉に俺は含まれているのか。

彼女にとって今日一日案内をした俺はどう映っているのか。

 

「其れは夢なのかもしれない。私にとって、そんな私の現実からかけ離れた世界は、私にとっては夢かもしれない」

 

明確に言葉になんかしなくても、今までの彼女から、彼女の言葉から、彼女の世界は度々感じさせられた。

 

「遠くから来た私は本当は家のベットで寝ていて、朝が来るのを待っているのかもしれない」

 

空の海に身を投じる事で感じるのは独りでいることの孤独。

辺りはもう、暗闇に包まれている。

 

「現実って何か、私がどんなことに絶望するのか、そんなことは分からないけれど」

 

その中で、彼女の瞳だけは爛々と輝いていた。

 

「それがどうした?」

 

彼女は星屑の海の中で私は此処だと、遠くからでも分かる様に輝いて見えた。

 

「人なんてみんな分かりにくい、物は限度を弁えていた方がいいのかもしれないし、私達には今の周りのことだけ分かっていた方が、優しくなれるのかもしれない」

 

その輝きは焼きつくす事が目的ではなくて、知らせる事が目的なのだ。

遠くからでもここにいると言うことが分かって、視界に止めながら世界は回っていく。

 

「でも、私は求める事を止めない」

 

その視界に止めると言うことが大事で。

 

「私のしたいことをして、私の好きな事を、好きなように、延々と、延々と」

 

誰もかれもが誰もかれもに目を止めて。

 

「壁にぶつかった時に誰かの期待に答えたい」

 

その望みに、自由に、好きなように答えたい。

 

「相手が迷惑そうにしていようと、どれだけお節介でも」

 

相手のその好き勝手な意思に反しようと、其れを捻じ伏せて

 

「生きている限り、私は可能性を示し続けたい」

 

生きる様に、生きていく。

そんな彼女はとても輝いて見えた。

 

 

 

 

「……かっこいいね、あんた」

 

そんな中で急速に、自分と言うものが萎んでいくのを感じる。

俺は違う、彼女がどれだけ可能性に溢れていようと、俺がどれだけ自己主張しようと。

 

俺は、違う。

 

「カッコ良くない、適当に生きてるだけだから」

 

そうやって何でもない様に言う彼女は、本当に自然体で、今のも素直に思ったことを、思った様に口に出している様だった。

だれもがそんな風に思う訳ない。

そんな所に彼女の激しさを感じた。

憧れた、けど、憧れるってことは俺には其れがないってことなのだ。

自分に或るものを誰も憧れたりなんてしないから。

そうやって、憧れた分だけ、俺は彼女とは違うのだと自覚させられた。

 

「そう言えば一つだけあったよ」

 

其処に彼女の声がかかる。

彼女は座っていたベンチからエイッと立ち上がり、俺を見た。

 

「お前が言う中で私にも出来る事があった」

 

ニシシと笑う彼女は悪戯の成功を期待している悪ガキの様な笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

「私だって空が飛べる」

 

 

 

 

 

 

そう言うと彼女は箒を水平に構え、それに跨って飛ぼうとした。

しかし、何も起こらない。

 

「あれ~?おかしいぜ?」

 

その場で箒に跨ったまま、ぴょんぴょん跳ねたり、公園をぱたぱた走ってみたり、色々ためした挙句彼女は結局飛べなかった。

延々続けてる彼女を見て―

 

「……カッコ悪」

 

思わず呟きながら俺は笑っていた。

最初クスクスと、少しづつ大きな声になっていく。

出来ない彼女にではなくて、其れを一生懸命頑張る彼女が可愛くて。

あれ~、とかおかしいな~、とか小さな声で呟く彼女に頑張れ、とかどうした?とか言葉を掛けたくなった。

事実声も掛けた。

 

「く、くそ、こんなはずじゃなかったんだぜ」

 

とか言いながら、恥ずかしそうにする彼女だったけど、でも、決して、やめようとはしなかった。

 

「もういいよ」

 

そう声を掛けたのは彼女がウンウン唸りはじめてからたっぷり時間がたった後だった。

でも、とかもう少し、とか言う彼女に苦笑いをしながら再びベンチに座らせる。

 

「現実を思い知ったかよ、魔法じみた事いってんじゃないぜ」

 

彼女の口調を真似しながら俺が笑う。

 

「じみたというか本当の魔法使いなんだが……」

 

その声は小さすぎて残念ながら俺の耳には聞こえなかった。

 

「なんだって?」

 

そう聞き返した俺に彼女は少しむくれながらもこういった。

 

「現実を思い知ったよ」

 

この世界では魔法なんて使えない。

箒で空は飛べないし、手から火も出せない。

テレパシーも使えないし、永遠の命なんてない。

 

幻想は幻想のままで、当たり前の現実が平然と目の前には広がっている。

 

「これがあんたの現実なんだ」

 

悪者に攫われた御姫様もいなければ其れを倒す伝説の剣もない。

一秒間に三人の人が何処かで死んでいき、一秒間に5人の人が産まれる。

そんな現実である。

 

「ああ、その通りだよ」

 

箒なんて使わなくても空を飛べて、手からは出ないけれど簡単に火は起こせて、携帯があって、医療で多くの人が救える。

そんな現実である。

 

「配られたカードで勝負するしかない」

 

彼女はそういう風に言った。

この現実に自分の持つ力で対抗しなければならないと。

そのカードは、時には外交であり、時には努力であり、時には地位や金銭であった。

 

「あんたはこんな現実で戦わないといけない」

 

現実からは逃げられない。

良い人だけではなく、どちらかと言うと悪い人の方が多い様な。

そんな現実である。

 

明確な何かなんてなく、正義が悪を兼ねるような。

そんな現実である。

 

「そろそろ帰るよ、案内ありがとう」

 

話を突然区切って、彼女は席を立った。

こいつはお礼だといって彼女は重い塊を渡してきた。

ずっしりと重い其れはなんなのかは分からない。

 

「私は私の現実と戦うから」

 

そう言って俺を通り過ぎた彼女に慌てて振り向いた。

 

「姉ちゃん、あんた結局なにもんだったんだよ」

 

てくてくと公園から出て行こうとする背中に声をかけた。

 

「普通の魔法使い」

 

振り向かずに、手をひらひらと振りながら、こともなげに彼女は言って、今度こそ本当に俺の視界から消えて行った。

 

「魔法なんか使えなかった癖に……」

 

彼女を追う事なんてしないで、独り残された公園で俺はそんな呟きをもらした。

頭上には綺麗な月と、飲み込まれそうな程たくさんの星達が、彼女の瞳と同じ様に爛々と輝いていた。

 

 

 

翌日になって、あれは夢だったのかと思い起き上がると机の上には昨日もらった塊があって鈍い輝きを放っていた。

調べてみると其れが本当に金であったことが分かり、驚いた。

純度も高く、今の俺にとって本当に高価なもので、買い取ろうかとその人も言ってくれた。

 

でも、俺は売らなかった。

 

当たり前じゃないか。

 

 

「現実には、自分の力で戦うんだよ」

 

 

呟いたその声に今度こそ本当に目の前の金が鮮やかに輝いた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―あなたは、この町が大好きに見えた。

―だから私はあなたに案内を頼んだ。

―私を案内しているあなたは、楽しい所はないといいながら、でも案内をしてくれて、この町を愛している様に見えた。

 

 




読んでくださった方に最大の感謝を。
当選出来ればとか色々と問題はありますが、こんな感じの同人誌を東方で書こうと思っています。
ご指摘、感想、本当になんでもいいので何か感想を頂けたら嬉しいです。
短編ですが、連載の形式をとってすきをみて点々と同人誌になるかな、みたいな物を試験的に投稿していけたらと思います。
亀になる可能性がとても高いですが、みて頂ける方がいましたら幸いです。
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