妖を扱う狐憑き   作:あめ林檎.s

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壱の話 東藤邸

「本日は御越しいただき、真にありがとうございます。忙しい中申し訳ございません」

「いいえ、此方も仕事ですので」

 

玄関先で申し訳なさそうに床に手をつき正座して深々と頭を下げる男の人。格好はこの時代で呼ばれる正装で顔が良い。多分三十代半ばくらい。

 

 

そんなことより声が良いッ!!

 

 

何て言うんだろ、こう善逸くんとは勿論違うし錙鉄路さんとも違う。こう……、ハスキーボイス?これぞ大人って感じの。

鬼滅世界、なんでこんな声いい人ばっかいるんだろ(素朴な疑問)。

 

「それで依頼内容なんですが……あの?」

「あ、ごめんなさい気にせず続けてください」

 

声を脳内に焼き付けようと思ってるだけなのでハイ。

ボイレコあったら録音したんですけどねほんとに。この時代ほんとに不便だよねこう言うところ……。スマホでさ、こう……動画録ったり写真撮ったりしたいのにね?文明開化って偉大だわぁ……。

 

「──で、宜しいでしょうか?」

「私は良いですよ。善逸くんは大丈夫?」

「え、俺も別に……」

 

男の人……この(やしき)のご主人、東藤(とうどう)さんの説明に頷く。

宜しいも何も任務だし……私はあなたに従いますよ~。呼ばれたのになにもしなかったら失礼だしね。て言うかわざわざ来たんですからきちんと使命は果たしますよ~っと。

 

東藤さんはまたお礼を言って「一旦娘に説明してきます」と下がっていった。

 

 

 

「………で、何やれば良いの?」

「やっぱり聞いてなかったんだねぇ!?」

 

む、やっぱりって失礼な。普通に声に聞き惚れてて内容が通らなかったんですや。善逸くんの声なら残りますよ。推しだもん。……いやまぁ推しの方が残らない可能性もありだけども。

 

「もう、こう言うのはちゃんと聞いてよね!?良く聞かないで了承できたよ!!」

「え、なにそんなにヤバいの?」

「今から説明するからちゃんと、ちゃんと!聞いてね!?」

 

やだなぁ、キミの言葉なら全部聞くよ。

そう言うと善逸くんの顔が赤くなった。何それ可愛い、やっぱスマホ欲しい。スマホでこう、カシャッと!一枚だけ!!て言うかそのくらいで顔赤くしてさっき人の手握ってニヤニヤしてたとんでもない善逸くんは何処へ。あのあとのお蕎麦屋さんでは奢ってくれてありがとうね、大根葉の天ぷら美味しかったよ。これ終わったら甘味処行こうね奢ったげる。

あ、やべちゃんと聞かないとそろそろ怒られるわ。

 

「ちゃんと、聞いてね?」

「ちっす……」

 

もう怒られたわ……。

 

ちゃんと聞けよって怖くなる様な笑顔で私に釘をさした善逸くんの説明によると、最近この邸からお手伝いさん……まぁ現代で言うメイドさんっすね。メイドさんが夜毎に一人ずつ消えて困ってるみたい。18歳未満の若い女の子ばっかり狙われるもんだから自分の娘も拐われるんじゃないかって思ったそうな。

それを、親戚の人に話してみたら「鬼の仕業なんじゃない?」って言われて。なんで親戚の人鬼のこと知ってんねんと思ってつっこんだら「襲われたことあるらしい、鬼殺隊に助けて貰った」とか。だから念には念を。鬼を知った今もしかしたらの可能性も考えて、備えあれば憂いなしの精神で鬼殺隊の人に頼んだと。

 

「つまりは娘さんの護衛をすれば良いの?」

「そう言うこと!」

「あんな長々と話さなくても良いのに……」

「ちょっと黙ろうか」

 

身内話とか興味ない的なことを言ったら善逸くんに怒られた。手で口塞がれた。

ごめんって嘘じゃん嘘。身内話超興味ある超興味ある。いて、いてててちょっと待って手に力いれないで痛い痛い!痛いって!

 

もごもご口を動かして痛いって伝えると善逸くんは謝りながら手を離してくれた。だからいちいち顔赤くするのやめようか、君がやったことでしょうウブか。

 

「でもまぁ鬼殺隊を呼んだ判断は全然正解だと思うなぁ」

「うわびっくり!起きてたのねいおりん!!」

「さっき起きたところだよぉ。おはよう白兎。と、我妻だっけ?」

「ひっ」

「いおが喋ること知ってるのになんで怖がるの、酷いなぁ」

 

おはようって言いながら起きたいおりんが善逸くんの方に視線を向けると怖がって飛び退いた。

 

いやいおりん。驚くなは無理があるんじゃないかな、多分私が特殊だっただけだぜ。私も最初は驚いたもん、山彦返ってくるくらい叫んだよ。

普通だったら喋らないもん、だって……いや鬼とかいたり鴉が喋ってる時点で普通も何も無いんですけどねぇ。

 

「ねぇ白兎、ねぇ」

「なぁに?」

「ここの鬼は中々かもしれないよ。嫌な死臭がする、キツい。気を付けてね」

「それはさ、初任務の時には言わないのね、あれも中々だったのにね」

「………」

「ちょっと~?目そらさないで頂けますぅ!?」

 

いおりん絶対分かってたもんねぇ初任務の相手あれって絶対気付いてたもんねぇ匂いでわかるもんねぇ!!教えてくれたら行かなかったのにぃ!

とか考えてたら「だって教えたら行かなかったでしょ」って言われた。お!良く分かってんじゃん行くわけないもんね!死にたくないし怪我したくもないもんね!!

 

「ねぇ善逸くん!どう思う……善逸くん?え、善逸くん!?」

 

鬼を怖がる彼なら分かってくれるかなって話しかけたら。

善逸くんの口から魂が!!魂が抜けてますよ!!?待って待って死なないでよ!?私の推しぃい!!おいこら魂待てこら戻ってこい!!

 

三分くらいたってもうマジで善逸くんがそのまま死んじゃうんじゃないかってちょっと泣いた。ちょっとね?

そしたら善逸くんガバッて起き上がったかと思ったら深呼吸を開始。

 

「よかったぁぁあ!善逸くん生きてたぁぁあ!!」

「勝手に殺してたの!?縁起でもないことやめてね!!?」

 

その節は大変申し訳ございませんでした(どの節かは知らんけど)。

取り敢えずほんとに良かった、魂戻ってきてくれて助かった。いや本当に。

 

 

いやほんっとうに(2回目)。

 

 

もしこのままキミの魂飛んでいってたらビンタしてでも起こしてたからね、推しの顔とか傷付けたくなかったから良かったよ(真顔)。

 

 

いやでも私が傷付けるのも……(何かの扉を開く音)。

 

 

話を聞いてみるといおりんの『中々の鬼がいる』発言に意識を飛ばしたらしい。ちょっと忘れてた、この子強いくせにとっても怖がりだったわ。

 

「いやでもここにいるの十二鬼月でも何でもないんだよ?キミこれから十二鬼月と沢山戦うことになるんだから、ちょっとは慣れよう!」

「ん!?ちょっと待ってくれないか!!十二鬼月と戦うことになるとか縁起でもない!負けるに決まってるじゃんか!!死んじゃうよ!?俺死んじゃうよ!!」

「うん死なないから落ち着いてね、大丈夫だって。仮にも主人公枠にいるキミが死ぬわけないだろう。十二鬼月上弦の陸の片割れ斬るのはキミと猪くんだから。後は炭治郎くんと派手柱さん……あ、でも私が介入しちゃったからいずれかが死ぬ可能性も……」

「上弦の陸!?嘘でしょう!!?俺そんなに強くないのに!あと猪って何!派手柱!?炭治郎って言うのも誰!?それと最後の最後で自信無くさないで貰えるかなぁ!?」

 

善逸くんのツッコミスキル高すぎかよ。全部につっこんだよこの人やばぁい。

呑気にパチパチと拍手してると善逸くんに何の拍手!?ってまたつっこまれたけど。

 

二人して話して?ると多分この邸のお嬢さんであろう人が二人ほど現れた。顔が良かった。

 

「初めまして、鬼狩り様」

「私たちは東藤乃菊(のぎく)と、こっちは双子の妹の乃亜(のつぎ)と言います」

 

 

声も良かった。

 

 

「初めまして!我妻善逸って言います!!」

「うわ急にやる気出したよこの人……。初めまして、凩白兎と申します。此方は相棒の伊織!」

「まぁ、白い子狐ですか?」

「はいそうです!」

 

狐らしくキューキューと泣きながらいおりんが彼女らにバレないように睨んでくる。そんなに私の相棒が嫌なのかごめんって。私が悪かったからその人を射殺しそうな目を止めてくれ。怖いんだってキミのその睨みはね。

 

「すみませんでした」

「え?」

「なんでもございません!」

 

ポツリと口に出して謝るといおりんは満足そうに口角を吊り上げて笑う。けどその謝罪が聞こえていた他三人、乃菊さん乃亜さん善逸くんに、それは何の謝罪だと言わんばかりに聞き返された。

 

ねぇいおりん。私初めてキミの笑顔が悪魔のように見えたよ、妖怪だよ、怖いよ。妖怪ニンマリいおりんのご登場だよ、その笑顔が今は憎い。

 

 

私の第一印象、ヤバい人とかヤバくなぁい?(他人事)

 

 

「それで、私たちはそれぞれどちらを護衛したら良いんでしょうか?」

 

乃菊さんと乃亜さんの動きは早かった。

二人して私を挟む。

 

「「はくちゃんが良い!!」」

「待ってくださいちょっと耳が可笑しくなった。なんて??」

「「はくちゃん」」

「誰それ、そんな人存在するっけ。また私の知らない原作のモブキャラかな」

「白兎ちゃん、現実逃避はやめてくれないかな俺が惨めみたいになるじゃん」

 

なんでだよ。……いやなんでだよ!

分かってるよ!?分かってるけどな!!?なんで私なんですかね!!

善逸くんやめて変われるもんなら変わるからその変な目で見るのやめておねーさん悲しい。……いや今の私十四歳だから年下なんですけど前と合わせたら……考えるやめるわ。

 

なんで私なのか、その疑問が顔に出てたのか乃菊さんと乃亜さんは声を揃えて宣言する。

 

「「伊織ちゃんが可愛いからはくちゃんで!!」」

「っし!伊織だけ行ってこーい!!」

 

私の仕事は全部キミに任せたぁ!私の出る幕はなぁい!!って言ったらいおりんに思いっきり顔面に蹴りかまされた。

おでこに足跡残りましたけど髪の毛で隠すわコンチクショウ。

 

「だって求められてるのは伊織ちゃん(・・・・・)なんだから良いじゃんか……ごめんってねぇ冗談じゃん」

 

ちょ、マジで冗談ですやんそんな睨まないで、だから怖いんだってさっきも怖かったんだけど、ねぇ。今日2回目じゃんごめんなさいすみませんでした。

 

「……流石に二人とも、と言うのは無理なんですケド」

「それもそうですね、すみません」

「あと伊織は男の子です。男の子です、大事な事なので二回言いました」

「可愛いから伊織ちゃんで良いでしょ?」

「………乃菊さん、さっきから口調ボロボロですよ大丈夫ですか?」

「ん~、大丈夫だと思うわ、此方の方が落ち着くし!」

 

庶民っぽいお嬢さんですな、馴染むわぁ(大嘘)。

てか結局どうすんねん、どっちがどっちを護衛すんねんて……。




・東藤邸
巷ではそこそこ名の通った名家。メイドさんが何名か、執事が一名を雇っている。ご主人は心配性で若いメイドさんが一人ずつ毎夜居なくなるので娘の事が心配になり護衛を雇うことに。何処のが一番いいか、なんて親戚に問うたところ鬼の仕業かもしれないとか言われて鬼殺隊隊士を呼ぶことに。
東藤邸って何処ぞのド○ド○亭みたい()


・乃菊さん乃亜さん
東藤邸の双子の娘さん。姉は乃菊、妹は乃亜。一卵性の双子なので見た目と性格が非常に似ている。声質は乃菊さんが明るく煩いくらい。口調が崩れている方。乃亜さんは優しく穏やか。基本的に口調がピシッとしている方。



オマケ。
「もうさ、乃菊さんと乃亜さんの護衛いおりんやってよ」
「無理だよ、いお一人しか居ないもぉん」
「分身とかしようよ妖怪ニンマリ伊織ちゃん」
「ん?」
「ねぇごめんって冗談じゃんやめて怖いんだってその顔。ねぇ」
「ん??(威圧)」
「ごめんなさいもう言いません」
「うん、そうしてね」
「(大悪魔いおりん……)」


チキチキ☆突然!
大正コソコソ噂話(?)!
伊織は男の子です。なので「ちゃん」をつけられるのが嫌いです。だけど東藤双子の前では狐として振る舞っているので喋れないから我慢してるみたい!ただし主人公がちゃんつけて呼ぶとすっごい形相で睨んでくるよ。
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