始話
やることがない。
とても暇である。
最終選別終了から早十二日。刀が出来上がるまで任務はつかないと聞いてる。とても有り難い。
刀は十日から十五日で出来上がるらしい。もうその範囲内だから本当に嫌だ。
隊服のボタンつけも既に終わっちゃったし、やることないなぁ。薬草集めて塗り薬作ろうにも作りすぎてストックがなぁ!大変なことになってるんだよね。
浬來くんとこに遊びにいきたい。けど家知らない。こう言うときネットがあれば特定とか容易いのになぁ多分。不便だなぁ……。
いおりんはいおりんで今お昼寝中だし……。
「ねぇ、佐島さん。ねぇ、暇だね」
当たり前だけど佐島さんは何も答えない。
ただ静かに、私の頭のしたで寝転がってる。おじいちゃん狼だもんね、ゆっくりしてよ。
私が任務に出ることになってもおばあちゃんの事守ってあげてね佐島さん。おばあちゃんは私の事気にかけてくれるから。母さん共々お世話になったんだから。
あーあ。ほんとは私がおばあちゃんを守らなきゃ駄目なんだろうけど。でも任務に出たらきっと戻る頻度も少なくなるんだ。この間みたいに七日じゃ済まないんだ。佐島さんなら分かってるんだろうなぁ。
「ねぇねぇ佐島さん。あと十日したらおばあちゃんの息子さんが奥さんと子供たち連れて帰ってくるんだって。おばあちゃん、もう実質一人暮らしになっちゃうからって心配してるんだって。あの人達にもお世話になったね」
だから佐島さんにはあと十日だけでも良いからちゃんと生きてて欲しいなぁ……。
「しろちゃん?」
「んえっ、はい!」
しろちゃん、なんて特殊な呼び方をするおばあちゃん。
突然呼ばれて驚きながら返事をして飛び起き、家の入り口にいるおばあちゃんの方を振り返る。おばあちゃんが呼ぶってことは何かあったのかな。あ、お使いとか?今日は何買うのかな。
「しろちゃんにお客さんよ」
「えっ、私に?」
なんだろう、と思いながら畳の上で正座して姿勢を正すとおばあちゃんは多分お客さんにだろう「どうぞ上がってください」と声をかけた。
上がってきたのは、ひょっとこのお面を被った男。
えぇ……ちょっと待ってよ、もしかしてもしかしなくても刀鍛治の人ですか早くないですかまだ十二日……いや普通か。やめてまだ任務行きたくない。
「やぁ。凩白兎殿かな?」
「あ、はい」
「俺は刀鍛治の里から来た
なんか意外と礼儀正しい人だ。青年って感じ。優しいお兄さんだ。声が良い。何より声が良い。
低すぎず高すぎずのちょうど良い感じでふんわりしてる。声好き。
「はい、これが凩殿の刀だ」
「ありがとうございます!」
出された刀を見てみると、柄の部分が少し工夫されていた。こう、なんて言ったら良いんだろう。三つ編みみたいな柄してる。わかるかな?なんか可愛い。……うん、伝わらなさそうだから止めとこうかな。
鞘には他のと同じように紐がつけられてるんだけど、リボンみたいになってる。可愛く工夫してるなぁ……。
「抜いてみて貰っても良いかな?」
「あっはい!」
錙鉄路さんに言われて刀を手にとってゆっくりと抜いてみる。何色に変わるのかなってワクワクしながら。
刀を完璧に抜き終わったとき、色に変化が現れた。
ジワジワと下から刃先に向かって色が変わる。
………赤紫だ。まぁもっと詳しく言えば紫式部色。
「これはまた綺麗な色だ」
「ですね……」
「……凩殿は身体が華奢だと聞いていたから少し薄めにうってみたんだが、どうかな?」
「あぁ、選別で使った刀より軽くて持ちやすいです。華奢かどうかは知りませんが、私にあわせてくださりありがとうございます」
「いやいや、刀鍛治として当然だよ。それと、きみには別のものもあるんだけど……」
錙鉄路さんの言葉に首を傾げる。
別のもの?刀以外に何かあるのかな。
錙鉄路さんが取り出したのは、小さめな鎌みたいなもの。刃だと思われる部分には危なくないようにか、鞘がついていた。
「きみは少し特殊な呼吸を使うと聞いたんだ。だからこんなのも余った玉鋼で作ってみたけど、役に立つと良いな」
「へぇ、わざわざありがとうございます!でも誰から聞いたんですか?」
「
「お館様が………?」
教えてない……って言うか会ったことすらないんだけど。
あぁ、鎹鴉かなんかに聞いたのかな!選別合格者の時も原作だと確か鴉が五人ってちゃんと報告してたし。
にしても凄いなぁ鎹鴉。何処から私の使ってる呼吸の情報仕入れたんだ。選別中か?優秀じゃん。
まぁなんにしろこれは使いやすそうですね。特に拾ノ型。普通の刀だったら逆手持ちにしなきゃいけなかったからね。修行の中でしか使ったことないけど……。手捻ったんだよね。痛かった。
「そっちも多分同じ色だろうけど……、一応抜いてみて貰えるかな?見てみたいから」
「了解です!」
錙鉄路さんに言われて鞘から抜いてみる案の定鎌。刃は小さめで多分普通より薄い。これは腰には差せないから背中に背負ってたら良いかな、横から取れば取りやすそう。
でも色………。
「……
刀の色は紫式部色で鎌は葡萄染色。
何が違うかって言われたら困るけど……、紫の渋み?かな。紫式部は赤みがある渋い紫色で葡萄染は赤味がかった少し薄い紫だから……あ、あんまり変わんないのかなぁ……??
「どっちにしろ赤紫って感じ……ですね」
「そうだね」
刀と鎌を見比べながら私と錙鉄路さんは暫くぼんやりとしていた。
特に意味はない。
「刀に問題は無いみたいだ。このまま使ってくれて構わないよ。あぁそうだ。鎌の方の重さはどうだい?改善点があれば次回から参考にするが」
「全然問題ありません。軽くて、それでいて握りやすいです」
「そうか、良かった。じゃあ俺は失礼することにするよ」
「遠いところわざわざありがとうございました!」
玄関へと向かう錙鉄路さんを追い掛けて扉前で藁でできた帽子を被る彼に頭を下げる。
きっと、本当に遠くから来たんだろうな。鬼なんかに会わずに無事に帰ってくれることを祈ろう……、いや初対面なのに縁起でもないなこら。
「おや、お客さんは帰ったのかい」
「おばあちゃん!錙鉄路さんは刀を届けてくれたんだよ!」
「おやおやまぁそうかい。もう少しゆっくりしてってくれても良かったんだけどねぇ」
「仕方ないよ、刀鍛治の里は遠いんだから……。それよりおばあちゃん!今日の夕飯はどうする?手伝うよ!」
「ゆっくりしてて良いんだよ?しろちゃんはもうすぐ仕事なんだろう?」
「だからだよ、中々戻ってこれなくなっちゃうからおばあちゃんと少しでも長く過ごしたいの!」
私がそう言うとおばあちゃんは「そうかい」と何度も言って満更でもなさそうに笑った。
今日の夕飯は何にする?え、お芋と
・慎太郎、千郷、優太
主人公にとって、おばあちゃんや狐崎さんと同じくらいお世話になった人。慎太郎さんはおばあちゃんの孫で千郷さんが孫嫁、優太くんはひ孫。主人公と最初に会ったときはとても驚いてたが家がないと言うことを聞くと快く受け入れてくれた心優しき人たち。おばあちゃんのことを心配して引っ越してくるそう。
・おばあちゃん
もうお歳。主人公の事を「しろちゃん」と言う特殊な呼び方をする唯一無二の存在。狐崎さんとも仲が良かった。とっても優しいおばあちゃん。
・錙鉄路翆(してつじみどり)
主人公の刀を打ってくれる刀鍛治。里では若い方で声が良い。優しい青年と言う感じ。鋼塚さんと正反対みたいな……。
ここで大正コソコソ噂話(?)!
主人公の鎌を作った玉鋼は、主人公が二卓で悩んで結局選ばなかった方の玉鋼なんだって!どうしてこれで悩んだって知ってるんだろうね?なにかの情報網かな?