悪ノ王子――ボカロ(悪ノ娘)二次小説――   作:PlusⅨ

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第三話・カイト~孤高の独奏者~

 舞踏会の夜は長い。

 

 一通りの主要な挨拶や紹介、イベントが終わったあとも、王宮の各所各間を開放して、そこで夜通しの社交が続けられる。

 

 リンもまたメイド長として、食事や飲み物の追加、各部屋の整理、酔った客への対応や介抱など、様々な仕事を慌ただしくこなしていた。

 

 そうやって王宮内を忙しく走り回る中、リンの耳に、あちらこちらで先のカイトの歌が話題に上っているのが聞こえてきた。

 

 

――それにしても、あの歌には寿命が縮まったものだな。陛下が居眠りしていなければ、今頃、大騒ぎになっていたところだ。

 

――まったく、陛下がまだ子供でよかった。しかし、カイトにお咎めなしというのも困る。いくら諸侯から民衆にまで人気があるとは言え、あそこまで無礼な真似をされては国家の威信に関わる。

 

――カイトめ、その人気を傘に来ての無礼であろうよ。若年国王と侮られているのだ。……ふん、国王も国王だ。何も知らずにイビキなどかきおって、結局、恥をかいたことに変わりはない。

 

――無能な国王を担ぐと、臣下は苦労するものだな。しかし、下手にさかしいよりかは無能の方が担ぎやすいのも確かだ。

 

――姉離れのできない小僧のままの方が我々も助かるか。まぁ、もうしばらくは剣術遊びでもさせておくさ。

 

 

 好き勝手な批判が漏れ聞こえてくるたびに、リンは怒鳴り込みたい衝動に駆られた。

 

 レンの居眠りが狸寝入りだったことぐらい、リンもちゃんと分かっていた。

 

 レンがああでもしなければ、あのとき、カイトを紹介したミクの立場まで拙くなっていたところだ。

 

(それに気づけず、それどころか自国王を影で批判するなんて!)

 

 だが、何よりも一番許せないのは、事の発端となったカイトだった。

 

 まさかあんな真似をするなんて思いもよらなかった。

 

 彼の評判を聞いて密かに憧れてさえいたのに、リンは、裏切られた気分だった。

 

 カイト、

 

 カイト、

 

 カイト、

 

(私の弟をバカにした無礼な男。レンは許しても、私は許さない!)

 

 リンは忙しく働きまわる傍ら、カイトの姿を探し求めた。

 

 しかし、彼はどこにも見つからなかった。

 

 それも当然かもしれない。あれだけのことをしでかしたのだ、まだぬけぬけと王宮にとどまっているとは考えづらかった。

 

 とっくに退散したに決まってる。

 

 リンはそう思うようになり、カイトの捜索を諦めた。

 

 夜も更けた頃、ようやく王宮内の様子も落ち着いてきて、リンたちメイドの仕事も一息つけるようになってきた。

 

 部下のメイドの一人が、ずっと働き詰めだったリンを気遣って、休憩を取るように勧めてくれたので、その言葉に甘えることにした。

 

 会場を離れ、さてとりあえずどうしようか、と悩むまでもなく、その足は自然とレンの元へと向かっていた。

 

 カイトの批判を、レンは平然と受け流してみせたけれど、その内心が穏やかであるはずがなかった。

 

 明日には緑国との重要な会議も控えているし、やはり一度くらい様子を伺っておきたかった。

 

 レンはすでに会場を辞していて自分の部屋へと戻っているはずだった。

 

 リンが今いる場所からなら、王宮内を通っていくよりも、庭園を突っ切って行ったほうが早い。

 

 といっても広大な王宮の庭園だ。しばらく歩くと、もう会場のざわめきも遠くなり、周囲から人気も消えた。

 

 勝手知ったる庭園で、空には月明かりさえあるものの、やっぱりどこか心細くなってくる。

 

 そんな時、庭園に規則正しく植えられた木々の向こうに、白い影がスっと横切っていくのを目撃して、リンは思わず悲鳴を上げそうになった。

 

 しかし、何とか悲鳴を押し殺して、その人影の方向を注視する。

 

 月下に、木陰を泳ぐように進む不気味な人影――

 

 ――そう見えたのは、華美なドレスを身にまとった女性の姿だった。

 

 長い緑の髪が、月光に煌めいている。

 

「ミク様……?」

 

 レンとほぼ時を置かずに会場を退いたはずのミクが、従者もつけずに一人で庭園を横切ろうとしていた。

 

 彼女は一体、どこへ行こうとしているのだろう。

 

(も、もしかして……レンのところ?)

 

 リンの心臓が、さっきとは違った意味で跳ね上がった。

 

 確かにレンとミクは婚約者だし、仲も良い。

 

 でも、まだ恋人同士というような感じではないと思っていたのに……

 

 いくらレンの姉でも、これ以上は深入りしちゃいけない。

 

 そういう理性は働いたものの、リンは、ミクの後を尾けることを止められなかった。

 

 けれど、ミクは途中で脚を止め、何かを探すように左右を見渡し始めた。

 

(尾けてるのがバレた……?)

 

 リンはそう思ったが、どうやらミクに気づかれた訳ではなさそうだった。

 

 ミクは、二~三度左右を見渡すと、レンの部屋とは違う方向へ歩き出した。

 

(レンのもとへ行くんじゃないの……?)

 

 好奇心に別の疑問も加わり、リンはミクの後を尾け続けた。

 

 ミクの向かう先には噴水があったはずだった。

 

 そこは、王宮内で働く者同士のカップルが待ち合わせでよく使う場所として、メイドたちの間でも密かな評判になっている場所だった。

 

 あのガクポとルカが月光下で踊っていたのも、その噴水である。

 

(もしかしたら、レンはそこでミク様を待っているのかも……)

 

 でも、あの朴念仁のような弟に、そんなロマンスが期待できるのかしら。

 

 そんなことを考えながらミクの後を尾けているうちに、例の噴水が見えてきた。

 

 そこに、ひとりの男が佇んでいた。

 

 月光のゆらめきが噴水のある池の水面に反射して、青い光が、水辺に立つ男の青い髪を幻想的に照らし出していた。

 

 夜空高くにかかる蒼い月を見上げて立つ、その男。

 

(カイト――っ!?)

 

 まさか、まだ王宮にいたなんて。

 

 リンは、探し求めていた憎らしい相手に飛びかかっていこうかと思ったが、それよりも早く、カイトに向かって駆け出していった者があった。

 

 ミクだった。

 

「カイトっ!」

 

「……ミク様?」

 

 ミクはためらうことなく、その男の胸に飛び込んだ。

 

 カイトは驚きつつも、少女を優しく抱きとめる。

 

(嘘っ!?)

 

 その光景に、リンは驚愕した。

 

 見てはいけないものを見てしまった。

 

 リンはとっさに木陰に隠れた。

 

 本当は立ち去るべきなのだろうか。それさえ判断できぬまま、その場所を離れることができない。

 

「カイト……どうして、あんな真似をしたの?」

 

 ミクのよく通る声が、リンの耳にも届く。

 

 しかしその声は、レンに対する非礼をなじる調子ではない。

 

 カイトの身を案じる、切ない女の声だった。

 

「申し開きのしようがございません。ミク様には、大変なご迷惑をおかけしてしまいました」

 

「謝らないで、私のことなんかどうでもいいの。ただ、あなたのことが……」

 

 その声が湿り気をおび、男の腕の中でミクが顔を上げた。

 

 カイトの指が、ミクの頬を伝う雫を、優しく拭った。

 

「わたしのような男のために、涙を流すのはおやめなさい」

 

 幼子をあやすような、低く落ち着いた声だった。

 

「わたしは、今日のためにあなたを利用した男です」

 

「今日のため……って、レン君を批判するために? そんなの、一歩間違えたらあなたの首が飛んでいたところなのよッ!?」

 

「それで本望……というより、それが狙いだったのです」

 

「っ!?」

 

(っ!?)

 

 カイトの言葉に、ミクだけでなく、隠れ聞いていたリンも息を飲んだ。

 

 カイトは落ち着き払った声で続けた。

 

「わたしはね、元はこの国で生まれた人間なのですよ。この城下の片隅の、貧しい者たちがひしめき合って暮らす路地裏で育ちました。そこでの暮らしはね、ひどいものでしたよ」

 

 カイトの声が、笑った。

 

 自嘲だった。

 

「その日を生きるための糧さえ手に入らないような日々。擦り切れた毛布に身を寄せ合って眠ることが寒さを凌ぐ唯一の方法であるような暮らし。そんな毎日でした。冬をひとつこすたびに、飢えと寒さに耐えられなかった兄弟や友人たちが、ひとり、またひとりと死んでいく。そんな絶望的な暮らしに耐え兼ねて、わたしは、野垂れ死に覚悟でこの国を出たのです」

 

 着の身着のまま、金も食物も持たず。

 

 ただ一つの財産は、生まれ持った美貌と、神の如き美声。

 

 それに目をつけた貴族に拾われ、愛玩動物のように社交界で流行歌を歌わされた。

 

「幸運……だったのですかね。気がつけば声楽家として生計を立てられるくらいになりました。人間、暮らしに余裕ができると過去を懐かしむようになるものらしく、わたしにも里心というものが芽生えました。……たとえそれが、どんなに辛く苦しい思い出しかないような場所でも、帰りたいと思うようになったのです。しかし……久方ぶりに帰ってきたこの国は、何も変わっていなかった。いや、さらに悪化していた。貧しい者は更に増え、絶望と苦しみが病魔のようにこの国を蝕んでいる」

 

 カイトの声が陰りをおび、しかし口調は更に強くなった。

 

「それなのに、この国の支配層はそれを正そうともせず、それどころか向き合おうとすらしない。誰もが己の目先の利益だけを求め、この国と民衆を食いモノにしている。わたしには、それを放っておくことができなかった」

 

「だから……だから、あんな真似を?」

 

「こんなわたしでも、名前だけは売れているようでしてね。首一つかければ、国の内外にそれなりの衝撃はあろうかと思ったのですよ。国王の怒りを買う結果になろうとも、そうなれば嫌でもこの国の現状に目を向けざるを得ないだろうと。……しかし、浅知恵だったようです」

 

 カイトは、胸にすがっていたミクを離すと、彼女に背を向け、遠くに視線を向けた。

 

 その視線の先は、レンの部屋がある方向だった。

 

「レン国王には、残念ながら聞き届けられなかったようで」

 

「レン君は、まだ子供だから……」

 

「果たして、そうでしょうか」

 

「え?」

 

「あの少年、とても強い目をしていた。ふふ……」

 

「カイト?」

 

「ミク様、あなたの花婿はなかなか見所のある男です。きっと良い夫となるでしょう。お早く嫁がれてしまうがよろしい」

 

「そんな言い方はやめて。レン君との婚姻は、兄様と父様が勝手に決めたことよ。私は、カイト、あなたのことが――」

 

「――言ったはずです。わたしは、あなたを利用したのだと」

 

 すがりつこうとしたミクに、カイトは背中を向けたまま、冷然と告げた。

 

「まだお判りになりませぬか、ミク様。わたしにとって、あなたはもう用済みなのですよ」

 

「……!?」

 

 カイトの冷たい言葉に、ミクの細い肩が震えた。

 

 ミクはしばらくその場に立ち尽くしていたが、やがて顔を伏せ、かすかな嗚咽を漏らし始めた。

 

 嗚咽は少しずつ大きくなり、やがて堪えきれないほどの声が漏れ出したとき、ミクは身を翻し、カイトの傍から走り去った。

 

 その時、リンの隠れるすぐそばを通り抜けたが、彼女がその存在に気づくことはなかった。

 

 リンもまた、声をかけることができなかった。

 

 ミクの想い、

 

 カイトの真意、

 

 そしてレンの立場。

 

 その全てがリンの心の中でごちゃまぜになって、その足を縛り、彼女をカイトの側に留まらせ続けた。

 

 そのカイトは、立ち去るミクに対して、最後まで背を向け続けた。

 

 彼は、ずっとレンの部屋にその眼差しを向け続けていた。

 

 

 

 

 

 庭園の木々の影からようやく見えるレンの部屋の窓は暗く、カーテンが降ろされていて、その奥の様子をうかがい知ることはできない。

 

 しかし、そのカーテンの影に佇み、隙間から外を眺めている者がいた。

 

 言うまでもなく、その部屋の主・レンであった。

 

「カイト……か」

 

 おそらく向こうからレンの姿は見えていないだろうに、それでも二人の視線はまっすぐにぶつかり合っていた。

 

 一介の声楽家ながら、一国の王を、真正面から批判してみせた男。

 

 そして、どうやらミクの想い人でもあるらしい。

 

(まぁ、ミク姉の件は置いておくとして、だ)

 

 結婚と恋愛感情は別物だ。

 

 特に王族同士の婚姻なんて政治的意味合い以外ないのだから、形だけでも結婚してくれれば、あとは誰を好きになろうと知ったことではない。

 

 そんなことよりも、レンはカイトの方に強く興味を惹かれていた。

 

「できることなら、二人きりで話し合ってみたいものだな。……カイト」

 

 暗い部屋で、ひとりつぶやく。

 

 月光の下、カイトがかすかに頷いたように見えた。

 

 そんなことはある筈がないのに、そう思いたがっている自分がいた。

 

 カイトがようやく視線をそらし、噴水のそばから去っていった。

 

 レンはそれを見送ると、カーテンを閉め、窓から離れた。

 

 机の前に戻り、ランプを覆っていた遮光布を取り払うと、暗い部屋に温かなオレンジ色の光が拡がった。

 

 その灯りに、机の上に山と積まれた大量の資料が浮かび上がった。

 

 そのほとんどが明日の通商交渉会議に関連した資料だった。

 

 しかしそれに加えて、今日ふと気になった国内の囚人に関する資料も混じっていた。

 

 レンは読みかけていた囚人に関する資料を、再び読み始めた。

 

 資料を読むレンの眉間には、深いシワが刻まれていた。

 

 囚人の数は、レンの想像を遥かに超えていた。

 

 自分の持っている服と囚人服を交換しようにも、とてもクローゼットにある分では足りそうにない。

 

 それどころか、全国各地の刑務所の数から考えても、その収容数を大幅に上回っている様子だった。

 

(治安が悪くなっているとは聞いていたが、それにしても多すぎるな)

 

 囚人の全員が全員、凶悪犯であるはずがない。

 

 重犯罪者もいれば軽犯罪者もいるわけで、割合から言えば後者のほうが圧倒的に多いはずだった。

 

 レンは、机上の資料の山の中から、裁判所の判例集を引っ張り出した。

 

 黄王国には、城下以外にも各地に裁判所が設けられている。

 

 レンが今引っ張り出したのは、城下街にある裁判所のもので、去年一年間、それも軽犯罪のみを扱った判決の資料だった。

 

 それでもその量は膨大で、判例集はひどくぶ厚かった。

 

 レンは夜通し、その資料に目を通し続けた。

 

 

 

 

 結局、徹夜した。

 

 朝食を持って部屋にやってきたリンは、机に向かい続けているレンの姿を目にして、呆れてため息をついた。

 

「レン、またやったのね」

 

「頼むから“国王は徹夜するべからず”なんて法律は作らないでくれよ」

 

「体調崩すようなら、考えざるを得ないわよ。……はい、お茶」

 

 眠気覚ましになるよう、ミルクも砂糖も入れない濃いストレートティー。

 

 レンはそれを受け取り、うまそうに飲み干した。

 

「ねぇ、会議は三時間後でしょ。少しは眠ったら?」

 

「会議以外にもいろいろと仕事があるからな。好きでやった徹夜のせいで休ませてもらうわけにも行かないさ」

 

「その責任感は立派だけど、体調管理も仕事のうちってことを忘れないでね」

 

「あぁ、気をつけるよ。ところで、ミク姉は?」

 

 レンは、自分の言葉で、昨日の夜に見たミクの様子を思い出した。

 

 思い出しただけで特に感傷はなかった。

 

 リンもまた、その言葉に昨晩のことを思い出したが、平静を装い、答えた。

 

「まだ御寝所でお休みになられてるわ。あちらの従者が、まもなく起こす予定らしいけれど」

 

「確か今日は、王宮内を見学してから、キヨテル殿の館へ移られるんだったな」

 

「ええ、そうよ」

 

 それを聞くと、レンは腕組みをして、しばらく目を閉じて考え込んだ。

 

 リンは、レンがそのまま眠ってしまったのではないかと疑ったが、その矢先、レンは目を開いて言った。

 

「悪いが、今日はミク姉の見送りには行けそうもない。今日の会議は、きっと長引く」

 

「どうして?」

 

「色々と問題が山積みってことさ」

 

 レンは朝食を食べ始めながら、リンに、他にも何人かメイドを呼んでくるよう指示した。

 

 机の上に山積みにされた資料を、会議室へと運ぶためだった。

 

 リンは一度部屋の外へ出て、そこに控えていたルカにその内容を伝えた。

 

 だが、ルカは困ったように表情を曇らせた。

 

「実は、昨晩からお泊まりのお客様への対応で忙しく、人手が足りない状況なんです。資料を運べるのは私ぐらいしか……」

 

「私たち二人であの量を……う~ん、ちょっと厳しいわよねぇ」

 

 何しろ分厚い資料が山のように積まれているのだ。

 

 女手では、文字通り荷が重すぎる。

 

 なんとか人手を確保できないかと、リンとルカが悩んでいると、そこへ声をかけてくる者が現れた。

 

「これはリン様。おはようございます」

 

 がっしりとした大柄な身体付きの、三十半ばほどの男だった。

 

 衛兵の制服に高級将校の階級章を付け、その胸には国王直属であることを示す王家の紋章が刺繍されている。

 

「あ、レオ」

 

 現れたのは、国王親衛隊隊長・レオンだった。

 

 その傍らには、副隊長のアルが影のように控えている。

 

 二人とも、リンとレンがまだ幼い頃からずっと親衛隊員として傍に仕えてきた気心の知れた旧臣たちだった。

 

「陛下に朝のご挨拶へ参ったのですが……リン様、いかがなされました? まさか陛下のご様子に異変でも?」

 

「いえ、そうでは無いの。ちょっと陛下から荷物を運ぶよう命じられたのだけれど……」

 

 リンから、大量の資料を会議室へ運ぼうにも人手が足りないことを聞くと、レオンはニッコリと笑って頷いた。

 

「なるほど、でしたら私たちがお手伝いいたしましょう」

 

「ありがとう、レオ。でも催促したみたいで悪いわ。それに親衛隊も忙しいんじゃないの?」

 

「なんの、意外と暇なものです。それに陛下とリン様のお役に立つことが私たちの務めなのですから」

 

 レオンの言葉に、リンは苦笑した。

 

 レオンを始め親衛隊員たちは未だに、リンを王族であったころと同じように敬っていた。

 

 しかもそれが彼らの純粋な気持ちから発していることが分かっているだけに、リンも彼らの好意を無下に断ることはできなかった。

 

「じゃあ、甘えてもよろしいかしら」

 

「ええ、甘えてください。それが我々の喜びです。ではリン様、ルカ殿。私とアルは陛下に挨拶がございますので、御手数ですが、近くの親衛隊員に声をかけてきてくださいませんか。なぁに、私の命令と言わずとも、お二方の頼みならば連中は尻尾を振って付いてくるでしょう」

 

 レオンの優しい笑顔に見送られ、リンとルカはその場を立ち去っていく。

 

 親衛隊を率いる二人の男はそれを見送ると、国王の部屋の扉をノックした。

 

「親衛隊、レオン及びアルにございます」

 

「入れ」

 

 部屋に脚を踏み入れたレオンは机の上に山積みにされた資料に目をやり、苦笑を浮かべた。

 

「相変わらずご熱心ですな。しかしこの量を女性に運ばせるのは、いささか酷であるかと」

 

「ん?」

 

 レンが朝食を取る手を休め、怪訝な顔をした。

 

「リンには、メイドたちを四~五人くらい連れてくるように頼んだのだが?」

 

「客人が多く、皆忙しいのですよ。人手が足りずリン様が困っておいででした」

 

「そうか、悪いことしたな。――なぁレオ、悪いが」

 

「おっしゃらずとも、手伝わせていただきますよ。ですがその前に、例の件に関してご報告を」

 

 レオンはそう言って、傍らのアルを促した。

 

 アルはひとつ頷き、懐から一枚の紙片を取り出した。

 

「……昨日の舞踏会までにキヨテル卿の館に出入りした我が国の貴族は八名。北クリプトン領令治官のワット候、同領取締役のセント候とマーデル候、東ヤマハ領税務官のポンド候……」

 

 アルがリストに綴られた名を読み上げていく。

 

 レンはそれを聞き、やれやれとため息をついた。

 

「反主流派の主だった連中が勢揃いだな」

 

「昨晩の舞踏会においても、指物運用方子役のマット候、町方倉庫番のジート候が、キヨテル卿の滞在されている部屋を訪れております」

 

「反主流派が王宮内に残した人脈か。キヨテル卿の方から彼らを招いたと思うか?」

 

「判断しかねます。しかし、そのまま夜更けまで出てこなかったところを見ると、少なくとも拒絶はしていないかと思われます」

 

「リップサービスぐらいは与えていそうだな」

 

 レンは、アルからリストを受け取ると、それを眺めて眉をしかめた。

 

 いま話題に出てきた“反主流派”とは、かつての権力争いに絡んだ継承者騒動において、リン側についた者たちのことである。

 

 したがって“リン派”もしくは“旧リン派”とでも呼ぶのが適当なのだが、レンはその呼称を嫌い、便宜的に“反主流派”と呼んでいた。

 

 レンは、リンがこの反主流派にまた政治利用されてしまわないよう、親衛隊を使って彼らの動向を密かに監視させていた。

 

 もっとも、レンが気にかけているのは反主流派ばかりでもない。

 

 反主流に対する、主流派。

 

 すなわちかつての継承者争いでレン側についた“レン派”の動向についても、レンは神経を尖らせていた。

 

 レンはこの黄王国の頂点に位置する王であるが、実はその権力基盤はさほど強くない。

 

 当時の王権というのは権力機構の頂点に立つ独裁者ではなく、諸領地を保有する貴族たちの調整者として、国家全体の統制権を委任されている存在だった。

 

 つまり有力貴族たちの支持を得た上で、その権力が成り立っているわけである。

 

 現在、各大臣として政治の実態を握っているのは主流派(レン派)の有力貴族たちであるが、だからといって彼らがレンに対して忠誠心を抱いているかといえば、そうではない。

 

 むしろ、彼らにとってレンが疎ましい存在になれば、彼らは何の躊躇いもなくレンを廃位に追い込もうとするだろう。

 

 その代わりの操り人形として担ぎ上げられるのは、リンだ。

 

 その可能性がある以上、レンにとって主流派は、反主流派よりも危険な“敵”と言えた。

 

 レンが、自分の立場とリンの身を守るには、強力な権力基盤を築くことが必要だった。

 

 そのためにはレンを支持してくれる強大な後ろ盾が不可欠である。ミクとの婚姻も、実はそれが目的であった。

 

 両家の婚姻は、政治・経済・軍事において強力な大国である緑公国との関係を強固なものにすると同時に、レン自身、大公という大きな後ろ盾を得る絶好の機会でもあったのだが……

 

 ……しかし、その大公の代理人である全権委任大使・キヨテルが反主流派を相手に怪しい動きを見せている。

 

 そのことを考えれば、緑公国を手放しに信用することも危険だった。

 

 このように、レンは齢十四ながら厳しい綱渡りのような現状を強いられていたのだ。

 

「レオ、アル。ご苦労だった、引き続きよろしく頼む」

 

「はっ」

 

「それと……」

 

 レンはリストをアルに返しながら、二人に言った。

 

「悪いが、別件でもうひとつ頼まれてくれないか。少し気になることがあるんだ」

 

「なんでございましょう」と、レオン。

 

「うん、国内の刑務所の現状を知りたいんだ」

 

「刑務所でございますか?」

 

「受刑者たちがどんな環境で暮らしているのか。食事や、寝床、とにかくなんでもいい。資料を読んだだけじゃ分からないところが知りたい」

 

「ふむ、了解しました。しかし差し出がましいようですが、それならば一度、ご自分で刑務所をご見学なされてはいかがでしょう」

 

「公式の訪問で都合の悪い部分を見せてくれるとでも? 汚いところは全部隠して、綺麗な部分だけがさも全てであるように見せられるに決まっている」

 

「まったくその通りですな。失礼いたしました。つまり汚い部分を知りたいわけですな」

 

「あくまで僕の個人的興味だから急ぐ必要はない。噂でもなんでもいいから耳にした情報を知らせてくれればそれでいい」

 

 そのとき、部屋のドアがまたノックされた。

 

「リンです。資料を運びに参りました」

 

「入れ」

 

 ドアが開き、リンとルカが部屋に入ってくる。

 

 その後ろから、親衛隊の制服に身を包んだ屈強な男たちが、二十人ほど列をなしてぞろぞろと入ってきた。

 

 レンの前に並び、キビキビとした動作で敬礼を捧げる親衛隊員たちに、レンも軍隊式の敬礼で応える。

 

「リン、また随分と大軍を率いてきたもんだな」

 

「二~三人で良かったんですけど、話が一気に広まって、次から次へと」

 

 リンがちょっと困ったように笑うと、親衛隊員の一人が胸を張って答えた。

 

「ご婦人の頼みとあらば、全力でお応えするのが騎士道であります!」

 

「貴様らの騎士道には下心が透けて見えるんだよ。まったく、予想していたとは言え恥ずかしい連中だな」と、レオン。

 

「いいさ、人数が多くて困ることはない。レオ、アル、よろしく頼む。ついでに資料も」

 

「はっ」

 

「リン、資料運びはルカと親衛隊に任せて僕の着替えを手伝ってくれ」

 

「はい」

 

 レオンとアルも含めて鍛えられた男たちが二十二人もいれば、山と積まれた資料も一度で運べる。

 

 むしろあぶれて手ぶらの者さえ出る始末で、

 

「隊長、あなたが運ばずとも、ここは我々が!」

 

「これぐらい運べないとでも思っているのか。舐めるな、まだまだお前らには負けんぞ!」

 

 そうやって、わざわざ重い荷物を取り合うほどだった。

 

「くそっ、もう運べる物がない。こうなったら俺はルカさんをお運びするぞっ!」

 

「なんだとっ!? そうか、その手があったか。おい貴様、この荷物を持て!」

 

「隊長、横暴です!?」

 

「だまれ。――さぁルカさん。どうぞ、我が胸へ!」

 

「……いえ、結構です」

 

 やいのやいのと一行が賑やかに部屋を出ていくのを待って、リンがクローゼットから職務用の制服を取り出した。

 

 レンは、リンの手を借りて服を着替えながら大あくびをかました。

 

「やっぱり少し休んだらどう?」

 

「大丈夫、大丈夫」

 

 レンはそう言うと、細かい着こなしを整えているリンの手を取り、引き寄せた。

 

 胸に飛び込んだリンの背中に手を回し、ギュッと抱きしめる。

 

 柔らかな感触と、優しい香り。

 

 レンはそれを胸いっぱいに感じ取ると、リンを離した。

 

「よし、元気出た」

 

「……レン、あんたいい加減に姉離れしなさいよ」

 

「リンが弟離れしたら考える」

 

 レンはそう言って笑うと、部屋を出ていった。

 

 リンはそれを見送ると、レンが脱ぎ残した服をたたみ始めた。

 

 その表情は、どこか嬉しそうだった。

 

 

 

 

 

 

 それから数時間後。

 

「今日の協定についてだが、本日中の締結は見送ろうと思う」

 

 レンが告げた言葉に、列席する大臣たちはどよめいた。

 

「陛下、どういうことでありましょうか?」

 

「丸呑みするには、我が国にとって条件が悪すぎる」

 

 レンの答えに、大臣たちの何人かが顔をしかめた。

 

 余計なことに気がついてくれた、とでも言いたげな表情だった。

 

 緑公国通商交渉団から協定の提示を受け、それに対しての説明と質疑応答に午前中いっぱいを費やし、双方それぞれの意見をまとめるために別々の控え室に引いたあとの場でのことだった。

 

 時刻は既に正午をまわり、レンは、大臣たちと軽い昼食をとりながら、先の意見を述べたのだった。

 

「緑公国からの輸入枠の拡大と関税の引き下げだが、前年度で既に我が国に大きな貿易赤字が発生している状況で、これ以上の拡大は望ましいとは思えないのだが?」

 

「しかし陛下、輸入枠の拡大と関税引き下げは、我が国のみならず緑国においても同様の条件であります。こちらからの輸出を増やす良い機会でもあるかと」

 

「我が国からの輸出は、綿花や鉱石などの原資が主であろう。対して緑国からの輸入は紡績などの工業品が主体。この拡大によって安い工業品が更に出回れば、国内の工業産業が立ち行かなくなる。……現に、今既にそうなりかけているのではないのか?」

 

「それは、その通りでありますが……今さら、弱体化した産業を保護するよりも、発展が望める分野を優先すべきでありましょう」

 

「………」

 

(第一次産業を外国に切り売りし続けている状況で、どんな発展が望めるというのだ!?)

 

 レンはそう言い返してやりたかったが、それを胸の内になんとか押しとどめた。

 

 ここで感情的になったところで、得るものは何もない。

 

 大臣たちがレンの意向になかなか従わないのは、彼らの所有する荘園の経営の大部分が、綿花や農園、鉱山などの第一次産業で成り立っているからだった。

 

 緑国への輸出が増えれば、それだけ彼らの収入も増えることになる。

 

 それで国への税収も増えてくれれば問題無いのだが、彼ら有力貴族らに対する税率は、極めて低く抑えられていた。

 

 一方で、緑公国からの工業品を必要としているのは、下層階級や、二次産業を主とする都市部の住民などであった。

 

 彼らは自分たちの産業のライバルと分かっていながらも、安くて質の良い生活必需品を外国から買わざるを得なかった。

 

 もちろん、黄王国にも輸入品を取り扱うことで利益を上げている貿易業者がいる。

 

 だが、その者たちはたいてい有力貴族とつながっており、市場をほぼ独占状態で牛耳っている上に、彼らに対する税率もまた低く抑えられていた。

 

 つまり有力貴族や、貿易業者あたりからもっと税を取り立てることができれば国の財政的にも手っ取り早いのだが、大臣を始め有力貴族がことごとく反対するのは火を見るよりも明らかだった。

 

 したがって、レンとしては弱体化しつつある二次産業を盛り立て、内需の拡大を目論みたいところであったのだが……

 

(大臣どもめ、思っていた以上に強欲だな)

 

 彼らは緑公国が提示してきた案を、ほとんど無批判に受け入れようとしていた。それだけ、彼らにとって美味しい話だったということだ。

 

 だが、黄王国全体としてはそうではない。ごく一部の私腹が肥えるだけでは、国は却って痩せ細ってしまうのだ。

 

 そんな不利な条件を易易と承諾しようとする大臣たちも度し難いが、そこをうまく突いてきた緑公国のしたたかさが、レンには脅威に思えた。

 

「陛下、ミク様との婚姻をお控えになっている今、いたずらに大公の機嫌を損ねることもありますまい」

 

 と、別の大臣が言った。

 

 レンはその言葉に頭が痛くなってきた。

 

 どんな状況でも、己の国益を第一に考えるのが国際社会というものだ。王族同士が婚姻関係を結ぶからといって、甘い考えは通用しない。

 

「婚姻を控えているからこそ、不利な状況に置かれたくない」

 

「しかし――」

 

「これは僕だけではなく、国家の面目の問題だ」

 

 国家の面目という言葉に、何かを言いかけていた大臣は押し黙った。彼らとて、流石に表立って国家を無視するような発言はできないらしい。

 

 レンはそこをうまく利用すべく、「そういえば」と、話題を変えるふりをして、言った。

 

「ここ最近、税が払えずに逮捕される民衆が増えているようじゃないか。この城下街だけでも逮捕者の二割近いと聞く。民衆の暮らしも、だいぶ厳しいらしい」

 

「は、はぁ……」

 

「ミク姫を迎えるのに、国王のお膝元がこの有様では見苦しかろう。先ずは国内経済の安定を図りたい。緑公国との協定は、そう急ぐこともないと思うのだが、どうであろうか?」

 

 大臣たちは、誰も答えなかった。

 

 レンの意向に賛同した訳ではないのだろう。しかし、表立って反論するには、レンの意見は正論過ぎた。

 

 つまりレンは、正論をもって大臣たちの意見を封じたのだった。

 

 しかしそれは同時に、今後の緑公国との会議に、レンはたった独りで立ち向かわなくてはならないことを示していた。

 

(わかってはいたが、援護は無しか)

 

 長くなるな。

 

 レンが予想したとおり、午後の会議は難航した。

 

 

 

 協定の本日中の締結の見送りを告げたレンに対し、緑公国通商交渉団も、大臣たちと同じような反応を示した。

 

 だが、レンは他に何も言わなかった。

 

 国同士の交渉は、大臣たちを説得するのとは訳が違う。レンは、協定の条件が黄王国にとって不利であるということだけを盾に突っぱねた。

 

「しかし条件は両国とも同じですぞ」

 

「それでは困るから、見送らせて欲しいと言っている」

 

「今から協定の内容を見直すのも時間がかかりますぞ」

 

「今すぐに見直せと言っているわけではない。見送る、と言っているのだ」

 

「今日、見送って、ではいつ締結していただけますかな?」

 

「それは確約できない。内容を再度精査し、こちらの事情も踏まえた上で改めて協議に臨みたい」

 

「ミク様との婚姻も近いというのに困りましたな」

 

「それは関係なかろう」

 

 あっさりと話がまとまると思っていたのだろう。通商交渉団の面々は、レンの態度に対して不満を隠さなかった。

 

 ただその中で、通商交渉団代表であるキヨテルだけは、終始穏やかな表情を崩さず、黄王国側の大臣たちの様子を伺っていた。

 

 結局、話は平行線を保ったまま時間だけが延々と過ぎていき、夜も遅くなるまで会議が続けられた挙句、ようやく閉会となった。

 

 協定については、後日あらためて協議の場を設けるということで決まり、協定締結の見送りというレンの目標は達成された形になった。

 

 しかし、次の協議で黄王国にとって有利な条件を引き出せるかどうかは、不透明なままだった。

 

 代表団は憮然とした表情で席を立ち、会議室を出て行った。

 

 キヨテルは、最後まで一言も発言しなかった。

 

 

 

 

 緑公国通商交渉団の一行が表門を目指し、王宮内の長い通路を渡っている途中、

 

「お待ちください」

 

 と、物陰から呼び止める者があった。

 

「黄王国内務大臣の使いの者にございます。キヨテル閣下、本日は誠に申し訳なかった。と、我が主が申しておりました」

 

 彼が言う“我が主”とはレンでは無く、内務大臣のことだ。

 

 しかしキヨテルは、その使いの者と目さえ合わせようとせず、黙ったまま通路を歩み続けた。

 

 使いの者はキヨテルのその態度を見て、慌てて彼の後を追いながら、低頭して言葉を続けた。

 

「れ、レン国王はいまだ若年なれば、物の道理もわからずに思いつきで物を申されます。深い考えがあっての事ではないゆえ、後日必ずや説得してみせます。ですから、何卒、何卒……」

 

「………」

 

 キヨテルはようやく足を止め、使いの者に向き直った。

 

「お心遣い、痛み入ります。そちらには、そちらのご事情があることは充分承知しておりますゆえ、どうかお気にはなさらぬようお伝えください」

 

「は、はい!」

 

 キヨテルの言葉に、使いの者はあからさまに安堵し、キヨテルに向かって深々と頭を下げると、小走りにその場を去っていった。

 

 その後ろ姿を見送りながら、通商交渉団の一人が、吐き捨てるように呟いた。

 

「自国王を卑下してまで我らに媚を売るか。だがその卑下した国王は、我らが主の娘婿になる男だぞ。物の道理も分からぬ暗愚に、誰が大切な姫君を嫁がせるものか」

 

「もとより、国家よりも己の利益を求めることにしか関心のない売国奴どもだ。度し難い連中だよ」

 

「もっとも、そんな連中であればこそ、我らにとっては扱いやすくて助かるのだがな……」

 

 通商交渉団の間で、冷ややかな軽蔑と侮蔑のささやきが交わされた。

 

「……しかし、レン国王。まだ子供と思っていたが、なかなかの男に育ちつつあるようだ」

 

「さすがは我が主が見込んだ少年だけあって、手強いものよ。末恐ろしいわ」

 

「しかし」

 

 と、キヨテルがここでようやく口を開いた。

 

「……しかし、あの少年の不幸は、彼自身がこの国の王であったことです。およそこの世の中で、国王ほど孤独な人間はいないでしょう。もしも、あの少年が国王を補佐する立場であったならば、その聡明さを持ってこの国の未来を明るいものに変えられたでしょうに……」

 

 残念そうに言ったキヨテルに、共の者が訊いた。

 

「キヨテル閣下。それでは、この国はもう……?」

 

「………」

 

 キヨテルはその質問には答えず、再び通路を夜の暗闇へ向けて歩き出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

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