以前より彼女のツンケンした性格が軟化したような気もしなくもないですが…
そんなことはどうでもよいのです。
私は、彼女のパーカー姿を所望します。何処かで見た気がしたのですがpixivで調べても出てこないんですよね…残念(´・ω・`)
時は流れて3学年末。現在雄英高校入試、実技試験の説明会場に私はいた。
筆記試験に関しては、前日まで奈子らに邪魔こそされ続けられたが、模試結果で筆記のみなら余裕で合格出来るであろうラインを維持し続けた。事実、試験中もスムーズに解くことが出来た。
しかし問題なのはこの実技試験だ。私の個性がどれだけ通用するのか…実際のところ不安で仕方ない。
個性は制限が掛かっている以上、実技を最後までやり抜くには、この異形型特有の一般よりもやや高い身体能力のみで戦わなければならない。
…考え続けても答えは出ない。とりあえずは試験前の説明がある。それを聞きながら作戦を練るのが今1番出来ることだろう。
やや足早に説明会場へ向かい、指定席へ座る。暫くすると奈子が隣に座った。失念していた…同学校の受験希望者なのだから隣になるのは必然だった。
「アンタ、ホントに雄英受けるとかさ〜、マジ馬鹿だよね〜?アンタみたいなつっかえない個性持ちが受かる訳ないのに〜???無謀すぎってゆーか?ウケるわ〜」
うわでた。ここでも絡みに来るのか。素行も見られてるかもしれないというのに、よく突っかかりに来ようと思うものだ。面倒極まりないので奈子へ背を向ける。スマートフォンにイヤホンを繋げて耳栓代わりに音楽を流し聴く。
奈子の言葉を無視しながら延々と実技の立ち回りを考え続ける。そうして10分くらいだろうか、受験生が集まり試験の担当教師が説明を始めたためイヤホンを外して閉まった。
要約すると、各自にポイントが割り振られた仮想敵を破壊して点数を稼ぐ。というのが実技試験らしい。それならばまだ私にもやりようがあるのかもしれない。
最悪個性を使って点数の高い仮想敵のON/OFFを切り替えれば点数を稼げるだろう。問題はそれにどれ程の体力を取られるかであるが。
──────────
会場へ移動し、試験開始の合図が出るまで身体を解す。肩を回し、膝を曲げ、ジャンプし、太ももやふくらはぎを伸ばす。
準備運動をしていると、不意に近くのやり取りが耳に入ってきた。
「君はなんだ?妨害目的で受験しているのか?」
眼鏡で、明らかに真面目そうな男とモッサモサ髪で気弱そうな男とのやり取りだ。普通なら気にも止めないやり取りなのだが、あの気弱な男には見覚えがあった。ああ、そういえば何時だったかの無謀にもヴィラン相手に飛び出して行った少年だっただろうか。
そう分かると、どうしても絡みたくなるのが私の性である。
「よぅ、死にたがり少年君。約10ヶ月振りくらいかな?」
ヘラヘラとしながら声をかける。モサ髪男も私の顔を見て思い出したのか「あ、あのヘドロ事件の…」と蚊の鳴くような声で話している。
「アンタも雄英受けてたのは予想外だったよ。まー、困った人はほっとけないみたいな性格してるからヒーロー科志望は当たり前か。兎に角、だ、お互い頑張ろうじゃあないか。な?」
肩を組み、親しく話す。何かブツブツと言ってはいるが良く聞こえない。気にせずに私が言いたいことだけ言う。「ま、私は絶対受かってやるけどな」と一言、そうして離れてから周りの様子を見渡す。先程からヒソヒソとモサ髪男に対してのdisが聞こえて微妙な心境だったのだ。
「お前らさ、他人を下げて保身に走ってると本当に下の人間に足元すくわれるぞ。私みたいな人間にな」
イケナイ、気に入った人間を貶されると喧嘩を売ってしまう性格はどうも直らない。周りがザワザワとしていて私にヘイトが向こうとした時、試験監督の「スタート!」合図があった。
それを聞き、呆然としてる周りを他所に
「お先♪」
全力ダッシュで演習市街地へ私は駆け出した。
──────────
「標的!ブッ殺ス!」
私は今、1P仮想敵に対して戦闘中だ。
私の建てた作戦は開始序盤から音を立てて崩れた。仮想敵をもう少しばかり小さいものだと思っていだのが間違いだった。流石にあの機械の塊を人間の身体に、ちょっとばかしバフのかかった状態で破壊は厳しい。
しかし、やらざるを得ないため半ば強引に破壊してポイントを稼いでいるのが現状だ。
両方の拳は機械を殴り壊したせいでズダボロ。血が滴っている。幸い、アドレナリンが分泌しているからか痛みはそれほどではない。
反転能力も本来なら3Pの仮想敵のみに使うつもりだったのだが、そうは言ってられなかった。状況が状況になると、1P相手にも能力を使用しなければならない。
能力を5度程使用した段階で汗が止まらず、息切れを起こし、膝に手をつかなければ立ってられなくなった。それでも仮想敵はお構い無しにと襲いかかってくる。
「今、これ…で、17…P目ぇ……っ!」
呼吸が難しい。意識が保てない。目の前がぐにゃりと変形して見える。それでも私がヒーローになる、それだけのために自身を鼓舞して何とか立っていられた。
「あと3分〜!!!」
時間のアナウンスが聞こえた。不味い、非常に不味い。このポイントだと確実に落ちる。しかし体力は底を尽き欠けている。周囲に仮想敵は存在しない。
大きく息を吸い込み、自分の身体に鞭を打つ。そして今出せる全力で走りながら仮想敵を探す。
ズシン────!
なにか巨大なものが落ちてきた。地面を揺らし、市街地のビルを破壊していく。
0P仮想敵だ。あんな規格外を相手にする程私は馬鹿じゃない。というか0Pな以上戦闘なんてするべきでは無いのだ。試験監督もそう言っていた。
周りの受験生が逃げる中、私もあの巨大仮想敵から逃げ出そうと踵を返…
「いったぁ…」
巨大仮想敵の目の前に下半身を瓦礫の下敷きにされた女の子がいた。
あのままでは0P仮想敵に踏み潰されるだろう。そんな後味の悪い展開などあってはならない。
私は女の子の元へ駆け寄る。
「おい、お前。光栄に思え…!この私が直々にお前を助けてやる…ッ!」
そういいながら瓦礫の重さを逆転させる。重いものを軽いものへ…しかし反動は私の身体に来る。
数十キロ、下手をしたら百キロ以上ある瓦礫の重さが私の身体に加算される。膝をつき、潰されそうになるのを耐える。
「早…く、そこから、抜け……だし、やが、れ…ッ!!!」
「ごめん…ここまでしてくれたのに、ウチの足…折れてるかもしれへん…。動こうとしてるのに、動けへんのよ…!」
あー、くそ。そこまで考えていなかった。このままだと2人諸共、仮想敵にペシャンコにされる。それだけは避けねばならない。
「くそ…っ、たれ……!!!よく、聞け…!私が、その足、治して…やるから、治った瞬間……その瓦礫から、抜け出して…私担いで、逃げ…ろよ…いいな…?」
そう言って女の子へ触れる。彼女の怪我を…ひっくり返す。
ボキリと嫌な音が体から響く。瞬間、激痛が身体中を走る。
「あ、アァァア゙ア゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァア゙!!!??」
思わず悲鳴を上げ、地面へ張り付けになる。百キロを超える体重の増加に加え、折れているであろう足の怪我を私に移し替えたのだ。当然と言えば当然だ。
今にも意識を飛ばしそうな中で無理やり意識を保つ。意識を失った瞬間、瓦礫の重量は戻る。そうなると彼女は瓦礫から抜け出せない。
「早゙ぐ!!!早゙ぐじろ゙!!!!!」
そう叫びながら女が瓦礫から脱出するのを確認する。その瞬間、プツリと音がして目の前が真っ暗になった。
しかし、私が意識を手放す瞬間、聞いた事のある声が叫んでいる気がした。恐らくはあのモサ髪男だろう。
…ああ、これは私、不合格だな。奈子の言う通り、私はヒーローにはなれないのかもしれない。
若干ネガティブキャラにもなった気がしなくもありません。