待たせてしまいまして大変申し訳ありません。
だって色々面白いものが多すぎてあっち見たりこっちみたりしてて…
い、いえいい訳では無い…です。
ゆっくり進めていきます
──────
ここは、何処だろうか
ぼんやりとした背景だ
恐らくは…屋敷の中、だろうか
目の前に誰かが2人いる
1人は、私だろうか
もう1人は…よく見えない
だが、なにか懐かしい。
私…?が、よく分からない相手のことを「姫」と呼んでいる辺りこの屋敷の主との会話、なのだろうか。
ふと、私の顔を見て不快に感じた。
これは、人を騙そうとしている表情だ。
何故城の主を騙そうとしているのか。何故そんなにも楽しそうな顔をしているのか。何故心にも思ってないことを平然として言えるのか。
…何故だ。何故なんだ。今の今まで私の積み上げてきた善行はどうしたんだ。ヒーローになりたいという願望はどうしたんだ。この個性で、人の役に立ちたかったんじゃないのか
──────────
知らない天井が目に入る。
身体中が悲鳴を上げる。先程の夢の続きを見たいが、一度意識が覚醒してしまうと意識を手放そうにも痛みで無理やり夢から現実へ引き戻される。
やっとの思いで体を起こす。アドレナリンもとっくの昔に切れていて、痛みで涙が出そうだ。自分の体の状態を確かめるため、腕や身体へ目をやるとどこもかしこも包帯でぐるぐる巻きにされていた。
…無理もないか。頑丈なロボットを両手がボロボロになりながらも殴り壊していたせいで、両腕の筋肉は限界なのだろう。包帯が巻かれているのも両手拳の出血を抑えるためや、負荷をかけすぎた筋肉を休ませる為の包帯なのだと、湿布特有のひんやりとした薬品の匂いがしたため、何となくそう感じた。
「気がついたかい?」
カーテン越しに声がする。老婆のような声から察するに、この病室の看護師か。
カーテンが開き、看護師が私の様子を見に来た。予想通り、老婆であるが…どこか見覚えのある顔だ。
「全く、やり過ぎだよアンタ。両足は粉砕骨折、その上全身に打撲が見られたよ。オマケに両手の裂傷は仮想敵を腕力だけで殴り壊してたせいだね?」
試験とはいえそこまで無茶して、死んだら元も子もないよ!等と説教を聞かされた。
「うるせーよババア。その試験のせいでクソデカいロボットに踏み潰されて死にかねない奴がいたからこうなったんだよ。文句言うなら雄英の試験官に言え」
悪態つきながら言葉を返す。そして自身の両足を確認するために布団を捲る。粉砕骨折と言われたが、アニメやドラマのように足を吊るされているなんてことも無く、なんならギプスも取り付けられていない。
「両足の骨折はこっちで治癒したよ。婆に対してそこまで口悪く話せるならもう十分みたいだね。ほら、さっさと帰りなさい」
そう言われ、部屋から追い出され…いや、蹴り出された。ベッドの中だったから分からなかったが、身体中が痛いだけでなく、非常に気だるい。窓があり、ちらりと目をやるともう既に夕方近くなっていた。
何とかゆっくりと廊下を歩いていると、見覚えのある女の子がいた。私の顔を見るや否や心配しながら駆け寄ってきた。
「あっ!!試験の時の、大丈夫やった!?」
「…全身打撲に両足の粉砕骨折だとさ、個性である程度治癒してくれたらしいけどな。まだ身体中が痛いし、だるくて仕方ないよ」
自嘲するような顔で笑うと、彼女は「途中までになるけど…ウチの肩貸したるから!助けてくれたお礼したかってんよ!」そういい、私の断る間もなく片腕を担がれ、身体を支えられた。
「でもさ、なんであん時助けてくれたん?試験的にはライバルが1人減るやん?」
彼女が不思議そうな顔をして問いかけた。私は正直に話すのが恥ずかしく感じ、ただ「別に…」としか返せなかった。そこから少しだけ無言の時間があったが、しんとした時間に耐えられないのか彼女の方からどんどんと話をかけてきた。
「…そういえば、名前聞いとらんかった。ウチ、麗日お茶子ってゆーんよ」
「……鬼人正邪だ」
「じゃあ、正邪ちゃんやね!折角だしさ、連絡先交換しよーよ!ウチ、また今度会った時にお礼したいからさ!」
「お礼言われるほどの事してねえって言ってんだろ。お前私がさっき言いづらい雰囲気作ったの見て察しろよ。というかこれがそのお礼なんだろうが。これ以上貰うつもりもねーわバカがよお」
「またまたー、もしかして正邪ちゃんって誤魔化す時とかどんどん口に出しちゃうタイプなんやね?」
「違うっt…アイタタ……」
「そんな大声出そうとしたらアカンよ!全身打撲って言っとったやん」
──────────
「雄英の試験、ウチら受かってたらええな」
「……」
「2人でヒーロー科入れたらさ、仲良くしよーな?ウチと正邪ちゃん、もう友だちやし!」
「……」
「なんで黙っとるん?もしかして、正邪ちゃんウチと友だちと思っとらんの!?えー…ショックやわー…折角こうしてお話出来とるんやし、もうお友だちやろ〜?」
「まだ受かるって決まってないからライバル同士だろうが。それともなんだ?お友だちになったとして片方しか受かってなかったら慰めるなりなんなりしよーなってか?」
「うっ……そういうつもりやなかったんやけど…」
「…連絡先は交換してやるよ。私が気絶した後、ちゃんと安全圏まで連れてったんだろうしな。その礼だ」
「……もしかして正邪ちゃんって、ツンデレなん?」
「ちがわい」
──────────
結局、お茶子は最寄り駅まで肩を貸してくれた。彼女が一方的に話していた内容から考えるに、待つホームが違うはずなのに私が電車内に乗り発車するまで手を振っていた。
…お人好しの馬鹿にも程がある。試験を受けたライバル同士だというのに、私の気まぐれで助けただけだと言うのに、会って1時間も経ってないだろうに。それでも私を友だちだと言っていた。
麗日お茶子、彼女の思考が私は理解出来なかった。
──────────
「……次、鬼人正邪。」
「彼女のヴィランポイントは17ポイントと例年で比較した場合、ヴィランポイントオンリーで見るとギリギリ合格出来る数値ではありますが…」
雄英高校の会議室、教師陣の全員が集まり、実技試験の映像を早送り、巻き戻しを繰り返しながら評価を下していた。
「今年は粒揃いですからね。ヴィランロボットの破壊だけで見たら…残念ですが不合格です」
「個性を上手く使いこなし切れていないな。異形型特有の上がった身体能力だけでロボットを破壊してる印象がある」
正邪がヴィランロボットを拳で力いっぱいに殴り付け、破壊してる様子が流れる。
教師人的には正邪の戦闘面の評価的には『ヒーローの卵としては心もとない』という結論に至っていた。
「でもよぉ、アレが出た時に俺ら側の不手際で負傷しちまったリスナーを助けた能力を見るに…複合型だよな?」
「そうなのさ。彼女の情報を見るに、異形型と発動型の複合した個性みたいなのさ」
サングラス金髪の男が疑問気に話し、それを肯定するようにネズミが口を開いた。
「どうやら個性名は『天邪鬼』と言うみたいだね。鬼のような見た目に、何事もひっくり返せる力があるみたいなのさ」
正邪がお茶子を助け出すシーンへと切り替わり、唐突に正邪が片膝を着いて重苦しそうにし始める。かと思いきや、べシャリと倒れ込み、両足が曲がってはいけない方向に曲がり、両足からちらりと覗く肌の色が人がしていい色ではない色へ変わっていく光景が映し出されていた。
「この映像を見るに、レスキューポイントを含めた場合は合格圏内…いえ、それどころか成績TOP10にも行けそうですね」
異議なしと他教師陣も肯定した。
「コイツについては、俺が担当に持つ。如何せん個性を使いこなせてないのが映像からハッキリとわかる」
「それについては私も同意です。先輩が心配になるのも分かります」
「そういえば、彼女と同学校からもう1人受験生が居ましたね。たしか…この子」
…………こうして、会議は進んでいく。
──────────
試験から数日が経過し、雄英高校から封筒が届いた。
この数日はお茶子からメッセージが鬼のように送られて来たり、学校では奈子がいかにも受かったように実技試験について自慢げに語っていた。正直なところ、何方もウザったらしくて仕方がなかった。
実を言うと、つい先程のお茶子からのメッセージで彼女が受かった事は既に知っていた。なので今日中には結果が届くのだろうと思っていたのだ。
とはいえ、やはり緊張はするものだ。封筒を自室へ持ち込み、封を開けると、そこには投影機がひとつ入っていた。
『私が投影された!』
映像が映され、デカデカとオールマイトが現れた。
「うわ、まじかよ雄英、ここまでするのか」
態々オールマイトを雇ってまで合否判定を彼に話させるのかなどと思っていたが、次の彼の一言でそれを否定される。
『実は今年から私は雄英に勤めることになったんだ。ま、それはいい。結果を話そう。』
ゴクリと生唾を飲む。筆記に関しては何も問題はなかった。だが実技は終盤のあの失態もあったため、受かっている気がしなかった。行けても普通科になるのだろうとネガティブに考える日が何日も続いた。
私は、全身に力を無意識に加えつつオールマイトを見ていた。
『筆記は十分合格圏内。だが実技が17ポイント。この点数では不合格、ヒーロー科には入れない…』
スっと身体中の力が抜けていく。ダメだったか…と燃え尽きたように身体をだらんと垂れた。
悔しさもある。だが、昔からの夢だったヒーローに、一歩遠ざかってしまったと思うと、悲しくて堪らなかった。自然と涙が零れてしまう。
『だが、それだけならの話ではあるがね』
その言葉を聞き、服で涙を拭きながらオールマイトへ再度目をやる。
『こちらのVTRをどうぞ!』
そう言って映し出されたのは麗日お茶子の姿だった。
『2本角の生えた、試験終わりに大怪我してた女の子と…頭モッサモサした地味目の〜…その人たちに私のポイント分けるって出来ませんか?』
お茶子が私ともう1人、誰かに自分の持つポイントを分けたいと教師に伝えている光景だった。
…何をそこまでしているのか。赤の他人だと言うのに、お人好しにも程があるだろうと、そう感じた。
曰く、ヴィランポイントだけでなく、教師陣の審査制でレスキューポイントもあるということだった。そして、私が獲得したレスキューポイントは50ポイント。合計67ポイントで、実技試験6位という結果だった。つまりはぶっちぎりの合格である。
既にこの時には、目から零れる涙は悲しさからではなく、喜びと安堵から出てくる涙になっていた。
──────────
「…もしもし」
「正邪ちゃんから連絡、しかも電話なんてそれ程の事あったん?」
「まあ、そんなとこだよ」
「へー…もしかして正邪ちゃんも受かったん?」
「…そうだな。打算的にお前を助けたおかげでな」
「もー、またそー言って。やっぱり正邪ちゃんはツンデレやなー」
「……もうそれでいい」
「あ。あと電話はもうちょっと時間経ってからでもよかったんよ?」
「あん?どういうことだよ…」
「正邪ちゃん、鼻水啜る音聞こえる。合格聞いてすぐに電話かけたやろ?」
「っ……ち、違うわ。これは花粉症だわ」
「…そーいうことにしてあげるわー」
「気分悪い、切るわ」
「うん、じゃーね正邪ちゃん。次は雄英でやなー」
「……ありがとな」
「えっ、正邪ちゃん今なんt(プツッ…
──────────
友情、私にとっては自身で、または他人が相手へ勝手に押し付ける関係性のひとつ。そんな認識だった。
実際、幼少からの腐れ縁であった奈子との関係がそんなものだった。だからこそ、私にとって友情や友人、友だちなんて言葉はクソ喰らえだと思っていた。
しかし、彼女…麗日お茶子と出会ったことで、私の中の辞書にある友情や友だちという言葉の意味が変わりつつあるのが分かった。
どーせ次も1年後なんだよきっと…
モチベーションはあるのでもっと早く執筆出来たらと思ってます。
新訳は私としても納得出来る内容を今のところかけてるし、旧訳は消そうかな…?