短編or短編集
耳かきって良いよね~

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春蘭の場合

「あっ、あぅ、だめ、ほ、ほん、北郷っ、いきなりそんな奥まで。。。」

 

「うるさいぞ、春蘭。あんまり騒ぐと外に聞こえるぞ」

 

「そんな、っこと、言われても…あっ、また。。。」

 

「へぇ、ここが弱いんだ?じゃあもう少し…」

 

「あっ、だから!やめっ!!あぅ。。」

 

「可愛いな~春蘭は」

 

自分の下で可愛らしく鳴く、いのしs…もとい美少女を見て一刀は、

 

「華琳に見られたらやばいなぁ」

 

 

 

 

愛おしいと思いつつ、こうなった原因を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

透き通るような青空、ふかふかの緑芝、寝転がるにはちょうど良い坂、たまに吹く生暖かい風は心地よく、北郷一刀はたまの非番を太陽の下で満喫していた。

 

戦時中の偽りの平和とはいえ、久しぶりの休みを満喫しても誰にも咎められないだろう。

 

「と言う訳で、一休み一休み…」

 

誰もいるわけではないのに、言い訳をしてしまうのは、覇王たる少女に使える事に毒されすぎたかな。。。

 

 

 

「はっ!せやぁ!ふっ!」

 

安眠を貪っていると、目の前で威勢の良い声が聞こえてきて、目を覚ました

 

赤い死装束に髑髏を模した鎧、身の丈程もある黒刀、それを振るうは長い黒髪を靡かせた片目の鬼人。

 

魏の大剣、夏侯惇。その人だった。

 

女の子が剣をふるう。

それが当たり前の時代。

早く平和になってほしい。

いつもそう思う。

目の前で頑張る少女が、剣ではなく、別の何かに打ち込めるような。

誰も悲しまなくていいような世界に。。

しかし、きっとこの少女は戦いが終わってもこうやって剣をふるうのだろう。

「まぁ、頭動かすよりは体動かしてる方があってそうだもんな~」

「誰の頭が可愛そうだって!!」

ビュンッ

「うおっ」

いきなり大剣が目の前を通過したかと思うと、なんか飛んでもない聞き間違いをしたやつがいる。

「誰もそんなこと言ってない!」

「嘘だ!私の耳にはちゃんと聞こえたぞ!」

「どんなだよ。耳垢たまってうまく聞こえてないんじゃないか?」

ギャーギャー

ワーワー

いつも通りたわいないことで騒いで、追い掛け回されて、最後は二人で覇王様の前に正座させられて。。。

幸いなことに覇王様も今回のことは誤解とわかっているようなので(というか大半が誤解だが。。)

春蘭への貸し一つということで、解放された。

誤解だとわかってるなら、一緒に正座させないでほしい。

あの笑顔は分かっててやってるんだろうが。

 

うん、もっと普通の平和になってほしい。。。

 

 

 

 

 

 

 

「びゃっ!!」

 

「!!?」

 

その夜夕食を終え、凪達と談笑し部屋に帰る途中に、絶叫が一刀の耳に飛び込んできた。

 

部屋の場所は。。。

 

「春蘭か。。。」

 

昼間のこともあるので、

あまり関わりたくないなぁ~どうしたものかな~

と悩んでいると、

 

「びゃ!?」

再度悲鳴のような声が、

「ちょ、ちょっと、どうしたんだ春蘭?」

ガチャ

 

「!? ほ、ほんごぉ~」

部屋の入ると、涙目で小刀を耳にぶっ刺す猪…春蘭がいた。

「な、なにしてるんだ!?」

「なにって、見てわかるであろう?耳かきをしているのだ」

「耳、かき…?」

よく見れば春蘭の右手には、細い木の棒、耳かきが握られていた。順手で。。。

「って順手!??」

普通耳かきは箸を持つように指で挟むのだが、この猪は愛刀を握るのと同様の握り方をしていたのだった。

「何を言ってるのだ?耳かきとは、こうやって」

カリッ

「こう」

カリッ

「やって」」

カリッ

「こうする」

ガリッ

[びゃああ!!」

 

 

「…まぁ、そうなるよな」

そもそも細かい作業が苦手な春蘭のことだから、得意ではないだろうと思っていたが、

まさかここまでとは。。。

「な、なんだ北郷!なにか言いたいことでもあるのか!!」

キンッ

どこからか自慢の愛刀を振りかざし、涙目で睨んでくる

「え、えぇと、俺がしてやろう…か?」

 

 

 

ポンポンッ

「はい春蘭、膝枕」

「なっなんd」

「いうこと聞くって言ったよね?」

「ん、んん~」

悔しそうにしながらも何も言わずに頭を預けてくる

まぁ春蘭貸しを作っておいても、そのうち忘れてしまうので

今ここで使うことにした。

そのうち忘れてしまうので!!

「。。。」

「貴様、頭が軽いとか思っただろう?」

「べ、べつにソンナコトハオモッテナイデスヨ…」

本気で思ってしまった。。

「やっぱり止める!」

「まぁまぁ」

ナデナデ

「んっ」

起き上がろうとする春蘭の頭を撫でて、とりあえず落ち着かせることには成功した。

意外と甘やかされるのに弱いのだ。

「さて、まずは中の手前からだな」

「痛くしたら殺すからな!」

「はいはい、始めるからもう動くなよ」

「うぅ」

横目で睨んでくるが、おとなしくはしてくれるようだ。

華琳様の命令の効果もあるがね。

 

 

 

「入れるぞ」

「ん、うむ。。」

スッ、、

「先ずは手前のところから」

 

かりかり、こりっ、かりかり、こりっ

 

「やっぱり手前のところはたまりやすいな」

「そうなのか?」

「うん、ところで痛くない?」

「あ、あぁ大丈夫だ」

「じゃあ続けるぞ」

 

かりっ、かりっ

 

「おっと大物がいるな、もう少し奥に入れるぞ」

「う、うむ」

 

すぷっ、

 

かりかり、かりかり、こりっ

 

「んっ」

「あ、ごめん、痛かった?」

「い、いや、大丈夫だ」

「OK、じゃあ続けるよ」

 

かりっ、かりっ、するっ

 

「おっ、思ってたより大物が釣れたよ」

「おぉ、本当だ、こんなのが私の中に入っていたのか!」

寝たまま視線だけを向けると、良い感じに大きい耳垢が耳かきの先に乗っかっていた。

「もうちょっと細かいのも取るから動くなよ」

「分かった!」

良い感じの大きさのが連れたのが嬉しかったのか、笑顔で目を閉じる春蘭。

 

すっ、すっ、すっ

 

今度は耳かきの先が薄く当たるように調整しながら、

何度も素早くかき出す。

 

「ん~」

「お、痛かった?」

「ん~大丈夫~」

段々猫みたいになってきたな。

 

「ん~」

「あ、そこ、、、」

「北っ、、」

「ふ~」

「びやっ!」

 

 

もっと~とぐずる春蘭の頭を反対にし、両耳ともにいい感じにきれいにしてやると、

ずいぶんと時間が経っていた。

そしてその頃には、魏武の大剣様はただの猫な変わっておりましとさ

 

「なぁ北郷」

「ん?どうかした?」

「。。。剣などではなく、皆耳かきを持って笑ってる世界にしたいな」

「。。。そうだね」

 

 

平和のために明日からも頑張らないと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

『あっ、あぅ、だめ、ほ、ほん、北郷っ、いきなりそんな奥まで。。。』

『うるさいぞ、春蘭。あんまり騒ぐと外に聞こえるぞ」』

『そんな、っこと、言われても…あっ、また。。。』

『へぇ、ここが弱いんだ?じゃあもう少し…』

『あっ、だから!やめっ!!あぅ。。』

『可愛いな~春蘭は』

「本当に可愛いな~姉者は。。」

 

『華琳に見られたらやばいなぁ』

「安心しろ北郷、見ているのは私だけだから」

 

「だからもっと姉者を可愛く。。。ふふふっ」

 

 

 



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