少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜 作:山田太郎
ソロモンで煮詰まった結果、予期せず新シリーズが始まってしまいました。
ほのぼの日常が書きたかったんや……。
もしかすると畑や山菜話がいずれ作られるかもしれない。
ところで、桃の節句イベントやってますね。「お雛様」これは女性への性教育だったとの説もある。
下に続く。
「よ、兄ちゃん。今日も若い子らをはべらかしていい身分だな!」
「朝の挨拶みたいに俺をろくでなしにするのやめてくださいよ!」
陽気の良い朝の空気が美味しい時間。
提督は時雨たち数人を連れ立って、家から海へと繋がる道を歩いていた。
もう少しで目的のガードレールが見えてくる、そんな道すがらに出会った地元のおっさんといつものようにふざけた挨拶を交わす。
ここ数ヶ月でいろいろとお世話になってる近所の男とは、俺だけでなくウチの娘っ子みんなが世間話をできる程度には馴染んだ顔見知りとなっていた。
「潜りに行くのか?」
シュノーケルや足ヒレを持った俺たちの格好を見ておっさんが言う。
「最近潜水の才能が開花した気がしてまして。今日こそはアワビをですなぁ」
「無理無理。そもそもお前、アワビなんて見つけたことないだろ」
朝からやる気に燃えている俺に対してなんて言い草。俺のやる気が萎えたらどう責任を取るつもりなんだこのおっさん。
しかしおっさんの言うことももっともなのだ。潜水して海の底、岩場なんかを探ってもいっこうにアワビが見つからない。
たまに獲ったやつだとお裾分けを頂くので、確かに存在はしているはずなのに、だ。
そして皮肉なことに、深海棲艦が跋扈して人が海から離れていた間に、海の生物は栄えに栄えた。
今が1番海産物の豊かな時代と言えるかもしれない。
にも関わらずアワビが見つけられないのだ……。
「アワビセンサー搭載の目はどうやったら身につくのか」
この春から飽きることなく繰り出した山菜採りでは、何度か山に入るたびにタケノコを発見する目、タラの芽を発見する目、ワラビやゼンマイを発見する目などを次々開花させてきた俺だ。
しかしアワビの目だけはまったく身につかない。地元のおっさんズに聞いても「見りゃ分かるだろ」しか返ってこないので、コツもなにもあったもんじゃねぇ。サザエは発見できるのになぁ……、軽く自信を喪失する。
「姉ちゃんたちがしっかり見ててやらなきゃな、この兄ちゃんだけだと溺れそうで心配だ」
「そうだね、僕もそれが心配なんだよ。流されていきそうだからね」
彼女らが艦娘だと知っているこの日に焼けたおっさんは、「まさか姉ちゃんたちのほうが先に泳げるようになるとはな」と言って豪快に笑った。水上艦である彼女たちの最初の潜水訓練は傍目に見ても笑え……酷いものだったからな。
まともに潜水ができていたのは、リンガにいたときからフロッグマンの訓練をさせていた鈴谷と、それを訓練に先立って実際に自分で試した上でやらせていた霞くらいのもんだった。
あと言っておくが、俺は最初から泳げる男だぞ。このおっさんたちの言う「泳げる」の水準が海の男基準なだけだ。
2時間海に浮かびつつ、潜水を繰り返して貝を獲ってくるレベルの泳ぎだ。
俺はここに来て初めて波酔いなるものを体験した。2時間も海に浮いていると、自分単体でも揺られて酔うんだな。
そういや横須賀のじじいが昔そんなことを言っていたっけか、先の大戦で沈んだ艦から海に投げ出され、救助を待つ海兵の話かなんかで。
「畑のほうはどうだ? 後で見に行ってやるからよ」
「マジ? おじさんが手伝ってくれるなら超ラッキーじゃーん。暁ちゃんたちが草抜きしてるはずだから、見てやってよ!」
おっさんがそう言うと、間髪入れずに鈴谷が飛び付いてさりげなく人員を確保した。
こぉ〜の親父転がしが。女性特権をナチュラルに使いこなす鈴谷はこうやってして自分たちの生活環境向上を果たしていく。
つまり鈴谷を相手にした町の男どもは決まってこう言うわけだ。
「おいおい、手伝うとは言ってねぇよ。仕方がねぇなぁ」
気持ちは分からんでもないが、ちょろいゾ。
「そういや朝の会合でお前とこのツンツン嬢ちゃんが役人相手に怒鳴り散らしてたらしいぞ。帰ったらまた荒れてるかもしれねぇなぁ」
「またやったのか……。帰るのホント怖いんですけど」
説明なんて必要ないとは思うけど、会合とやらで怒鳴り散らしたのはもちろん霞さんだ。
ここ最近の地域の問題点としては医者不足ってこと。1時間と少しも走れば街に出られる程度の立地ではあるので、緊急を要するほどではないのだが、いかんせんここの住人の平均年齢は高い。
おかげで常駐医の一人でもと、行政とやり合うのが彼女の日課になりつつある。なにやら他県の寒村地域とも連絡を取り合っているようで、そのうちなんかの団体の代表をしれっと務めそうなのがちょっち怖い。ゆくゆくは地方議員から政治家へなんてなんないだろうな。一応まだ軍属なんで、それは無理だぞ。
「まぁ俺のとこからスイカでも採って帰れよ、土産に渡しておけばちょっとは機嫌も良くなるんじゃねぇか?」
「頂いていきます。すみませんね、いつも」
「なぁに、俺らのためにやり合ってくれてるんだ。お前らのためならなんでもやってやるからよ、困ったことがあったら言ってきな!」
男の腕を掴んだままの鈴谷が、「言ってくれるじゃーん」なんてやってるおかげでおじさんタジタジだ。
手を振りながら笑顔で離れて行くおっさんのだらしない顔を見るに、こりゃ畑の手伝いだけじゃなく、採れたて野菜なんかも今晩の食卓に並びそうだなと思った。
どこにでもあるような日本の一地方だが、ここは面白い土地だ。
山からすぐ海になっているような……それって平地が少ないとも言えるけど。まぁ、山の尾根が海まで続いているような土地なので、海が山で仕切られてまるでそれがプライベートビーチのようになってるところがある。
俺たちの目的地はちょっと歩いた所にあるガードレールの隙間から下りて行った先。道沿いからは木々が邪魔して見えないが、下は浜になっているのだ。
道からは結構な高低差があり、ここを抜けた先に空の青さと溶け合ったような美しい海が待っているとは思うまい。知らない人から見たら死体でも林に捨てに来たのかと思われそうでもある。
この道をもう少し走れば、普通に整備された海水浴場があるので、わざわざこんな所から下って海に潜る物好きは地元の人間以外にいないだろう。
そんな中で、着ていた上着を脱いで海に入る準備をする時雨たち。
家から水着を着込んでいるので上着を脱いでも下着なわけではないが、女性が服を脱ぐシチュエーションは中身がなんであれ男を興奮させる魅力があると思う。特にスカートを下ろすときなど、俺の手もついつい止まって凝視してしまうというもんだ。
相変わらず僕らの着替えをじっくりと観察している提督。昔はそれでもチラチラと横目で……いや、勘違いだね。昔から結構容赦なく見ていた気がする。
裸を覗かれているわけではないし、いつも頑張ってくれている彼に目くじらを立てるほどのことでもない。時雨はそう考えると、彼を放っておいて準備を進めることにする。
今までなら、僕らが海を往くともなればまず艤装だったが、それもゴーグルにシュノーケル、足ヒレの3点セットが定番へと変わった。素潜りで貝を狙うなら手袋も忘れちゃいけない。波に揉まれて岩場に当てられると、そこに張り付いている貝たちで指を切るのだ。
提督なんかはビキニで潜ってくれとうるさいが、ラッシュガードを着込んでいないと泳ぎ終わった後には目も当てられない状態になっているので、水遊びをするときでもなければ彼の要望には応えてあげられない。
だいたいみんなが1度はやらかして酷い目にあった。
彼からは非難轟々だが、貝などを採取するときの時雨潜水スタイルはショートパンツ型だ。下にはアンダーショーツも着込んでいるので彼の目の保養にはならないはず。
その割に平泳ぎをしているときなど、後ろにピッタリと張り付いて追いかけてくることもあるけれど。
提督に言わせればそれがどうしたというものだ。
見せパンだろうが水着だろうが些細なこと。それを成すのが提督の、そして紳士たる男の一分なのである。
足を大きく開いた時雨の、その短いショートパンツの隙間から覗く太ももの付け根に走る一筋。アレの破壊力が酸素魚雷をも上回ることなど、男性諸君なら今さら説明も要らないだろう。
いっそビキニよりも感じさせるなにかがある。秘するエロスというやつだな。
さて、この半島は海沿いの道を走ると山、海、山と交互に開けており、その山と山の間に集落が点在している。
はっきり言って過疎化が進んだ限界集落ってやつだ。
特に、深海棲艦が出るようになってからは加速度的に人口が減り、滅んでしまった過去の町と言えるかもしれない。
それでも、戦争が終わってからは少数の人間が生まれ育った町だからとこの不便な土地に戻ってきた。
故郷ってやつなのだろう。
過疎化が進んだここは、戦後に移住者を募っていた。田舎特有の大きな家屋、畑が作れる土地、目の前は大きく湾が口を開けており海鮮も豊富にある。そして後ろを見渡せば深い木々が生える山だ。季節になれば山菜などもたくさん採れる。
街と違い、適度な人数しかいない隣人たちも、多くの艦娘を連れている提督としては都合が良かった。
そうしてここに移住してきた提督たちは、彼らの故郷に間借りするように住み着いたわけだ。
村社会。というほどあからさまな差別はさすがになかったが、最初はやはり異物のように接せられた。
それも最初の1ヶ月と保たなかったな。
移り住んだ当初は畑や漁やの前に、まず戦争により破壊されたインフラなんかを艦娘総出で修復する土木作業に従事した。
ヘルメットを被って軍手。首にはタオルを掛けてツルハシを持つ少女たちはなかなかに面白い姿だった。
先の戦争で勲章をたらふく貯め込んだ俺たちの艦隊は、終戦後揃って退役を口にして海軍も大わらわ。
一悶着も二悶着もあったが、予備役に近い形で決着がついた。
地方赴任の即応艦娘集団として戦争や災害に現地で備える。そんな無茶を押し通したのも霞だった。「無理なら辞める」がよほど効いたのだろう。
つまり艤装を持っての民間生活だ。
俺たちの集団生活は、なので軍としては地方駐屯地の軍人なわけ。
さすがに砲を構えて地形を変えたり、爆雷漁で魚をゲットなどできはしないが、土砂をどかせて土を掘るのに艦娘のパワーがとても役立った。
まぁ広くみたなら、これだって復興支援だろう。もちろんそういう体裁で軍には話を通した。
砲弾跡で抉れた大地を均し、道を通して橋を渡す。あげく不発弾の処理まで全て自前でやってしまえる俺たちはここで重宝された。
なぜか寒村の漁港に不釣り合いな立派な港ができてしまったが、それはご愛嬌として……。誰だよ港の指揮を執ってたのは、俺じゃないぞ?
そうこうしている間に、村の青年団なんてのはまるでウチのご家族がやるべき仕事のようになっており、代わりに男衆から海や山でのいろはを教えてもらった。女衆からは畑の世話や生活に関しての手ほどきをしていただき、今では俺を含めて娘さんたち全員が地域住人の仲間入りを果たすに至る。
超絶に濃い人間関係を構築するハメになったが、不特定多数の人間と関係を築くより艦娘にとっては良かったかもしれない。
こういった集落の人間関係の濃さは想像のはるかに上を行く。まさかそれぞれの住民が家のどこで寝ているのかまで把握できているなど予想できるものか。
ちょっと待ったーー!
長袖ラッシュガードの下、たわわに実った美尻を惜しげもなく晒すビキニスタイルなのは称賛に値するが、なぜお前はカメラなんぞの準備をしているんだ鈴谷さん!
「えー、熱帯魚の写真を撮りたくてさ。今までそんな機会もなかったし」
ツッコミを入れると悪気もなくそう答える鈴谷。
ラッシュガードのZIPを胸半ばまで下ろしているソレは鈴谷自慢の20cm砲を余裕で上回る凶器。87cmはありそうだ。アンダー細っこいのにそのサイズは超ド級だな。
ソレで俺の狂気が揺り起こされたなら、ここは戦場に変わってしまうがお前は分かっているのだろうか。
鈴谷の水着姿を見て俺が1番に思うこと。それは、透けない白水着を開発したメーカーよ滅べということだ。
ホルターネック? それは敗北者の水着じゃけぇ。と鈴谷が言ったかどうかは定かではないが、フレアでもタンキニでもなく、これぞ正真正銘のビキニだ。そんな水着。
ちなみにビキニ水着のビキニはビキニ岩礁からきている。
米国が行ったあのクロスロード作戦だ。
原爆レベルの衝撃を男性陣の股間に与えることからこの水着がビキニと呼ばれるわけだが、なるほど。参加した
しかもその丸出しのボトムはサイドが紐というおまけ付き。メーカーロゴがデカデカと鈴谷のお尻に鎮座するすんばらしい代物だが、いっそメーカーからスポンサー料を徴収したほうがいいんじゃないか? とも思う。
ならば許そう。
今のお前に俺が言うべきことなどなに一つを持ってない。ついでに時雨たち他の子の水中写真も頼みたい。
なんだかんだとこの戦闘マシーンさんは、浮輪片手だろうがカメラ片手だろうが銛で魚を一突きウーマンだからね。
撤収の時間になれば1番戦果を上げている女だ。もう放っておこう。
おっとすまない、タンキニスタイルの長波に対してなにかを思っているわけではないぞ。
その豊満な胸を持つお前がタンキニだなんて世界の摂理に反してるだろうが! なんて思っているわけではない。
お前があえて胸をアピールしない水着を着ることで、世の女性の多くを敵に回しているのではないか? と心配しているだけだ。
アピールしたならアピールしたでより多くの敵を作ることが目に見えているけどな。やはり女性の敵は女性だ。
しかしお前の胸はいったいなんなの? 上着を強烈に押し上げるソレは少女のものではないだろう。アピールしない水着でもアピールしてしまっているソレ。下手すりゃ殺人の動機にもなりそうだ。
背丈の割に特別な威圧感を持ち、やもすれば鈴谷の持ち物より大きいのではないだろうか。
今は伸縮性に優れたラッシュガードを着ているので、おっぱいミサイルのようになっている長波サマ。家では普通にTシャツで寛いていることが多いので、そのときにはTシャツの裾が浮いて大変けしからんことになっている。
どちらも甲乙つけがたい、おっぱいに貴賤なしである。
「なんだよ?」
「いや、なんでも?」
なんて思っていたら長波から怪訝な目を向けられてしまった。よし、とりあえず次に街へと買い出しに行ったときには新しい水着を買ってやろう。艦だった頃の記憶からか、文句を言いながらも買い与えられた物ならなんでも使う貧乏性の長波サマなのだ。
俺たちのいつもの狩場はここから沖に泳いで行った先。
ちょっと向こうに見える岬を曲がったところにある岸壁に面した海だ。
全員でそこまで泳いでいき、足の着かない場所で2時間ほど体力の限界と戦い自然と戯れる。そこまで泳いでいくと浜からは俺たちの姿が見えないので、最初はちょっとビビった。そして終了のタイミングはだいたい俺の体力が切れるまで。
ウチの娘たちは美艦ばかりだが、これで揃って体力バカなのだ。
「さーて、今日もやっちゃうよ!」
ぴちぴちのお尻を振りながら海へと駆けていく鈴谷。あれ、準備体操したか?
1番乗りを果たした彼女に続き、俺たちは着替えなんかが入った荷物を置いて、太陽を眩しく照り返す波間へと追い掛ける。
家では眉間に皺を寄せた霞や、畑で精を出している阿武隈たちが待っている。
せいぜい食卓を飾る海鮮を持ち帰られるように努めるとしよう。
これが俺たちの新しい海鮮、もとい海戦の姿だ!
初めは会合でキレてたのを、名前を出さずに表現しようと思ってました。あぁ、霞でしょ? と思わせておいて、実は沈んでしまった彼女の代わりに朝潮が……みたいな。
しかしそれだと筆休めにならねぇなってことで、普通に日常話に振り切ることに。
この話は「いつか訪れたかもしれない未来」。
架空の世界線のお話です。
ちなみに上の霞はネタバレじゃありません。霞は本編でも沈まないので。
ミリオタ豆知識。
鈴谷らが積んだ砲は20cm、長門の砲なんかは40cm連装砲と呼ばれてたし書かれてる。
cmの呼び方はサンチメートルだ。
センチメーターは英語。サンチメートルは仏語。
センチメートルは……日本語? ここ20年くらいで新しく普及した日本独自の呼び方だと思う。
英軍の弟分である帝国海軍が仏語でサンチ読みなのは理由がある。
??「陸の奴らがセンチ読みするなら、ほなワイはサンチや!」
学術的な理由だった。
上の続き。
そもそも「ヒナ」って女性器の隠語なんですよね。
菱餅がソレを表している、なんて説もある。菱餅集める艦これイベントは、艦娘の……。
この話でも貝を獲りにいくわけだが、桃の節句でも貝を出す地域がある。
貝は如実に女性器を表していたりする。
サクラガイ→シジミ→ハマグリ→アワビ
これは年齢別の成長していく女性器を表す言葉。
年齢を重ねるごとに値段が高くなっていくのが面白いね!
さて、海から上がったらショートパンツを脱がして、運動で柔らかくなった時雨のシジミをだなぁ。
通信はここで途絶えている。