少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜 作:山田太郎
良い匂いのする花で、小さい紫陽花みたいに固まって花が咲く。
花言葉は栄光、不死、不滅など。
学名の語源は女神ダフネ。
アポロンから執拗な求愛を受け、それを断り続けるも追い詰められて月桂樹へと姿を変えた女神。
アポロンは悲しみ、その月桂樹で冠を作って常に頭に乗せている。
アポロン目線では純愛の逸話だが、ダフネさんからみたらいい迷惑だろう。そんな話。
あ、ソロモンの続きです!
霞の胸中にある懸念は本隊の位置どり。
なんだろう。それは妙に外れている気がする。
ワタシたちとトラックの隊。その2つを最前線に張り付かせているのは囮半分といったところだろう。
どちらも高練度の水雷戦隊だ。うまくいけば、夜の混戦に持ち込んで敵の戦艦部隊に大打撃を与える目もある。できなくても、しょせんは小型艦。そう思われるのは想定内だが、本隊がこれほど離れる理由が分からない。
もともと海戦なんて有視界戦闘に限るものではない。艦と艦の間隔など手を取り合えるなんてバカバカしい距離ではない。それが隊と隊にもなればなおのこと。ちょうど前線で、ワタシたちとトラックの隊がそうであるように、間に島の1つくらい挟まっていてもおかしくないくらいなのだ。
しかし、これは離れすぎだと思う。
嫌な思い出が蘇る。これは過去に参加した海戦の記憶だ。
本当に参戦していたのかと問われたら、ワタシは参戦していないと答えるだろう。それで同じ海域にいたと言えるのか。それほど、ワタシはなにもさせてもらえなかった。
そういえば鈴谷さんもいたわね。
大掛かりな戦いだったもの。ここにいるほとんどの艦は参加して、そして参戦してはいなかった。
ワタシは開戦から同じ生活を共にして、ずっと護ってきた彼女たちの最期にさえ立ち合うことができなかった。
ワタシの艦生を狂わせる発端となった、そんな情けない記憶。
ブインの司令官が及び腰になっているだけなのだろうか。にしても、ここまで離れてしまえば彼女たちは前線の援護もできないだろうし、いざ本隊に敵の脅威が迫ったとき、前線から慌てて戻っても間に合わないのではないか。
言いようのない心の澱がワタシを後方に向かわせた。
どちらの可能性のほうが高いかを考えると、前線が壊滅することのほうだろう。
さすがは
深海棲艦に上限などないのではないか? そんな悪夢のような考えまでが鎌首をもたげる。
そしてそのような状況になったとき、救いになるはずの本隊は直ぐには駆け付けられない距離に在るのだ。
しかし、その予想は外れてしまった。
霞と鈴谷は本隊に近づきすぎない程度には距離をとって並走していた。
内地の海と違い外洋は波が高い。自分の身長より低い波がこないくらいだ。この波間からは本隊が目視できないが、後方にも目を届かせておきたかった。
本隊に近づくということは前線から遠ざかることを意味するが、前線は任せてきたのだ。
長波を信じているし、そこには金剛だっている。
いくら遊撃を許可されているとはいえ、他所の基地に所属する別働隊に混ざって航行するなどあり得ないことだし、下手に近づくことでこちらが観測され、前線へ戻れなどと命令されてしまうわけにもいかない。
今もはるか先の海で奮戦しているだろうウチの幸運艦や、同じく前線を任されているトラックの隊にいる幸運艦ほど自分を幸運に恵まれた艦だと自認したことなどないが、悪い予感ほど当たるものだ。
杞憂であればそれで問題はない。
作戦が終わったあとにせいぜい身内から、自分たちだけ後方に戻って楽をしやがってと笑ってもらおう。
波に揺られながらの航海。
自分の足で戦場に立つのは随分と久しぶりな気がする。
駆逐艦にとって大洋の荒波を越えるのはビッグウェーブに乗り続けるサーファーのようだ。
この驚異的ともいえる波の落差に揉まれ続け、はるか昔から戦ってきた記憶がある。
あぁ、これが戦場だ。
波に洗われ、海に潜り込んでしまうのではと心配になる前甲板。飛沫に当てられ、まるで雨の中を走っているかのような視界になる小さな艦橋。止まない振動と敵の砲火に耐えて持ち場を固守する乗組員に、狭いワタシの中を忙しく駆け回る乗組員。
そして、そんな中でも超然と立ち、ワタシが、他の乗組員たちが迷わないようにと明確な指示を出した男。
みんないなくなってしまったが、それらは今もワタシの胸にある。
みんな過去になってしまったが、それらは今もワタシと共にいる。
ワタシの乗組員たちは、今も妖精さんとしてワタシに乗り込んでくれている。
長い戦いを共にして、ようやく家に、家族の元に帰ったのだろうに。
ようやくゆっくり休むことができていたのだろうに。彼の英霊たちは、またワタシに乗って戦ってくれるというのだ。
ワタシの自慢の妖精さんたちは一騎当千の
そして……。
今も母艦にて、心配にやつれた顔をしながらワタシたちの帰りを待ってるだろう司令官の姿が頭に浮かぶ。
ワタシの航路を指し示す彼は、あのときの男たちに比べると情けないヤツなのかもしれないが、負けないくらいの男なのだ。
今は彼が行き先を教えてくれている。移ろいやすいワタシが迷ってしまわぬようにと。
本人にはとても言えないが、世界で2番目くらいに有能な司令官だと思っている。
思えばあの男は、なんでも自分でやらなければ気が済まないワタシの性格を読んで、艦隊司令艦なんてものをワタシにさせているのかもしれないなと、フッと思った。
過去のワタシなら、少し前のワタシなら。前線を放り出してまで後方に下がろうなんてしなかっただろう。
任せる選択がワタシに生まれた。まだまだ足りないのだろうが、少しは彼が思い描いた理想のワタシに近づけているのかもしれない。
ワタシにとって戦場は怖いところではない。あの戦争でも恥じることなく戦った自負がある。
ワタシはこの戦場で、なにもできないことが怖いのだ。
最初にソレを観測したのは鈴谷だった。
霞も電探の扱いには自信があったが、さすがは大型艦。そして鈴谷自身も、索敵自慢なのだと言う。
ブエナビスタの島の影から現れた深海棲艦の一群。まだハッキリとは分からないが、重巡を含んだ艦隊のようだ。
敵は大洋を越えて東側から、もしくは豪州のある南から攻めてくるとばかり考えていた。まさかソロモン諸島の北側から下りてくるとは思わなかったのだ。
ソロモン攻略艦隊の本隊は今も東に針路を取っており、後ろを無防備に晒している状態。
「ここにきて大正解ね、本隊付近まで鈴谷さんを戻しておいて助かったわ」
霞と鈴谷はサボ島の北側を航行している。ここからなら最大戦速で向かえば1時間かからず敵艦隊と衝突する距離。
もちろん長く本隊を危険に向き合わせて放置するなど考えていない。
そのための切り札を、わざわざ前線から引き抜いて連れて来ているのだから。
重巡の射程に収まるギリギリの距離まで足を進める。
ここはまだ射程に捕らえただけの距離。良好な散布界を持っていても、敵艦を狙うには常識的ではない距離に思える。
そんな中で霞が言う。
「鈴谷さん、期待してるわよ」
「初めてなのに、人使いの荒い司令艦だねー」
それに対した鈴谷の口調に非難の色はない。
きっと、この距離から撃たせるのだろうと鈴谷自身も覚悟をしていたから。
観測機はとうに放ってある。電探の用意も万全で、心の準備もできている。
さぁ見せましょう。
戦場で活きる鈴谷の価値を。期待されたなら応えるのが重巡としての誉れだ。
「鈴谷、行っくよー!」
狙うは敵艦の未来位置。
この距離から砲撃を行うと、実際に砲弾が落ちるのはしばらく後になる。
敵艦の速度と針路。そして自分の艦体を洗う不安定な波の動き。それらを予測し、今はまだなにもない海へと砲を向けるのだ。
不思議な感覚だった。
砲撃の音など珍しくないほど耳にしたが、彼女の放つ砲撃音は耳に馴染む。
音は振動だ。至近で爆ぜるその暴力的な炸薬は、まるで音楽を奏でるように次々と音を生んでは空へと放っていく。
それは、とても心地の良い衝撃として霞を包んだ。
「初弾で夾叉、聞いてる以上ね」
なにが、と鈴谷は思った。
彼女は鈴谷の能力を把握している。素早く相手を行動不能にさせられると判断したからこそ、この距離で撃たせたのだろう。
まったく、頼もしいことで。
今まで自由気ままにやってきたが、自分がやらなければいけないことが明確だと動きやすい。与えられたミッションを一つひとつクリアしていく、ゲーム感覚とでも言えばいいのか。そして自分がソレをやることで、確実に勝ち戦に繋がる実感が持てる。
「鈴谷さん?」
考え込んでいたように見える鈴谷に霞が話し掛ける。
「鈴谷でいいよ、艦隊司令艦殿」
それは、この艦隊のみんなと戦っていこうと、そう決めた鈴谷の心の現れだった。
「さてさて、やっちゃうよ!」
不意を突けたなら追撃だ。
本隊に食らいつく敵の遊撃艦隊など、このまま追い返してやる。
陽の傾きかけた空の下。たった二人の騎兵隊が戦場を駆けていった。
霞の言う「嫌な過去」はミッドウェー海戦のこと。
開戦の真珠湾から南雲機動部隊の護衛を続けてきた霞たちが、彼女たちの最後を見ることなく終えた戦いであり、エリート駆逐隊だった第十八駆逐隊と霞の運命を大きく変えることになった発端の戦いです。
【雛祭り】
長い伝統を持つ文化は面白いですよね。
内裏雛のほか、官女や随身など。人形の名前や役割、並べ方などちゃんと知っておりますか?
娘などから聞かれ「ちょっと待って、調べるから!」よりも、さくっと答えられたほうがかっこいいぜ!
さて、我が家では向かって右側が男雛です。
古来日本は左のほうが格上なので、2人いる随身も年配の方が向かって右側。随身は警護担当者です。
最近左側に男雛を置くことも多いですが、それは明治天皇ですね。
西洋文化を取り入れた婚礼の儀が元になってます。
天皇といえば、元号+天皇呼びは崩御の後に贈られる名前なのでご存命の間は使いません。今上天皇陛下と呼びましょう。名詞としての天皇ならいいですが、個人を指すときは注意しましょう。名前のようなものなので、陛下と敬称を付けねば不敬です。
男雛をお内裏様。女雛をお雛様呼ばわりする人も多いですが、2人合わせて内裏雛なので間違いです。とある童謡のせいで広まった勘違いです。呼び分けは男雛と女雛。
内裏は場所を指しますね。北政所みたいなもんです。
三人官女は1人だけ座ってるか立ってる方がおります。
この方は眉がないかお歯黒してて、つまりは既婚者。いわゆる人妻です。
この人妻官女は艦これ瑞穂が持ってるのと同じ三方を持ってます。
官女は身の回りのお世話をする人。並べ方は向かって右から銚子、三方、提子。
つまり瑞穂は人妻の可能性が?
瑞鶴、瑞鳳、瑞穂と並べて書くと読み方に迷いますね。
この3人だと瑞穂だけ知り合いにいます。
瑞鳳ちゃんと出会うことができたらまた報告します。