少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜 作:山田太郎
なんとビックリ。海戦の話はこれで終わってしまう予定どす。
必要なのは海戦後の話なので……。
追撃を行う霞と鈴谷が見たものは、信じがたいものだった。
それは、朝潮を含む駆逐隊を置いて本隊が転針していく姿。
この場に時雨や長波、トラックから援軍に来ている雪風がいたら、嫌な過去を思い出していただろう。
前線に捨て置かれた彼女たちは、霞が後に見聞きしたマリアナ沖の海を彷彿とさせる。
アレでは残された駆逐隊は戦場で孤立し、いい的だ。
そして砲撃音が響きだした。ついに戦闘が始まったようだ。
敵の主力艦隊を叩くため、戦力を維持したいというのはまだ理解できる。
しかしそれは、駆逐隊の被害を飲んでまで為さねばならないことなのか。
検討する余地などない。ソレは、ワタシにとってとても許容できるものではない。
「鈴谷! 頼むわよ!」
「まっかせときなー!」
そうは答えたものの、内心はギリギリだ。
いけるか? 砲を構える鈴谷の額を汗が滑り落ちる。
目視できないこの距離を全速で駆けながら、内海の凪いだ海じゃない、この体を揺さぶる大海原の上で。
今狙われているのは駆逐艦たちだ。装甲のない彼女たちが執拗に狙われれば沈められるのは時間の問題。
鈴谷が止めなければ彼女たちは沈むのだ。
それを、霞に任された。
リンガの所属艦娘たちから期待される初めての海戦で、この鈴谷がそれに応えないでどうする。
観測機から送られてくる着弾を元に狙いを修正、波の彼方のまだ見ぬ敵艦を狙う。
本隊からは伊勢が駆けようとするが、それはブイン司令官からの命令で止められる。
無理もないことだ。伊勢は本隊の要。
彼女が抜けてしまえば戦域全体が危うくなる。敵は前方からも進軍してきているのだ。
そして、朝潮達の動きがあの男の予定どおりの行動であれば、伊勢を戦力として充てがうなどあり得ないことだろう。
その波間でもう一団。
霞たちに、そしてブインの艦隊にも悟られることなく猛スピードで朝潮たちの元に向かう艦娘たちの姿があった。
間に合って!
霞の願いを込めた鈴谷の放った砲弾が、吸い込まれるようにして敵重巡に直撃する。
装甲に当たった音だろう。辺りには鈍く重い衝撃音が響いた。
そして、敵重巡の砲撃が止む。
衝撃で電源が飛んだ?
鈴谷が根性で作り出したその隙。
その間隙を突いて、誰にも悟られることなく全速で駆け付けていた者たち。
飛び込んで行くのは第十六駆逐隊だ。
海軍史上最強の駆逐艦と謳われた雪風が時津風と、そして初風が天津風と組んで敵艦隊に猛攻を仕掛ける。
乱戦になってしまっては、外からできることなどなにもない。今はひと時でも早く、速く駆け、あの場に。
その後はあっという間だった。
沈黙した重巡が機能を回復させる間もなく、雪風の放つ雷撃がソレを海に還した。
旗艦でもあった重巡が討ち取られたことで、敵艦隊は撤退。
朝潮たちを救った懐かしの戦友。十六駆たちには感謝しかない。
「敵艦隊は撤退する。追撃の必要はありませんよ」
そこへ届いた無線の指示はブインの司令官からのものだ。
「追撃のタイミングなんじゃん?」
鈴谷がそう言って霞に意見を求めた。
「朝潮たちを囮に使った。でも十六駆やワタシたちが駆け付けたことで、朝潮らは囮として機能しなくなった」
「……だから追撃しなかったって?」
「本隊への万が一を防いだんでしょ」
いつぞやに提督から戦後の展望について聞かされたが、これは早すぎる。
戦後のイニシアチブを取りたい勢力、艦娘たちの扱い、それらを戦力に見立てた国家間の主導権の握り合い。
意欲旺盛であること、それは一面からすると頼もしい限りだが、戦争は、未だにその全容を明らかにしてはいない。後世の歴史に記されるはずの全体の形からすると、まだ折り返してもいないだろう。
戦争を終結に導いた派閥に属していれば、戦後スターダムに上るのは確約されているも同然だが、他の派閥の足を引っ張るにしてもルールはある。
強大な戦力を残すために小を殺す。
それは戦争の必然だが、こんな序盤戦で軽々しく使い捨てられていい命があるはずがない。
「やることができたわ」
鈴谷は気が付かなかった。
いつもの霞なら、眉間に深い皺を刻んでこの場でブインの司令官を扱き下ろし、弾劾を始めてもおかしくないことに。
しかし、そう呟いた霞はどこか冷静で、嵐の前の静けさを感じさせるものだった。
伝えなければ伝わらない伝統。
「 家 紋 」
雛人形で思い出したけどー。
これ、親に確認とかしないと知らないまま大人になりそう。
あと60年もしたら無くなっちゃったりしそうで心配。
山田さんの家は、雛人形や五月人形なんかの小物や台に家紋が描かれていたので、子供の頃から自然と自分の家紋を知っていましたが、もし自分の家の家紋を知らないと言う読者さんがいるなら、親御さんなどに確認しておくといいかもしんない。