少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜   作:山田太郎

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劇場版でほむらがこめかみに当てる銃は、この艦これ物語の中で金剛が所持しているのと同じワルサーP5だ。

この話は次話で終わります。長くお付き合いさせてしまい……ごめりんこ。

それでは、魔法少女しぐれ⭐︎マジか? 始まります。



The future that might have been.5

ガタゴトと音を立て、そして跳ねながら車は進む。

真上に来た太陽は春らしい暖かさを地上へと降り注がせ、大地に新しい生命を芽吹かせていく。

夏のような肌を焼く日差しではなく、もっと柔らかいものだ。これをして人は、良い陽気だと言うのだろう。

 

 

はいはーい。ちょっと現実逃避気味の村雨だよ。

帰りの道中も助手席に座る権利をゲットした新しい幸運艦の村雨のこと、覚えていてね!

 

白状すると、白露と夕立はタケノコ掘りにより缶の熱が上がりすぎたのかオーバーヒート気味で、自ら荷台で涼やかな風を浴びることを強く主張したのだった。

おかげで助手席争奪戦は姉である元祖幸運艦との一騎討ちだったのだけど、神は私に微笑んだようだ。私のチョキが時雨姉さんのパーを粉砕し、膝から崩れ落ちる姉を横目に助手席に乗り込んだ。

 

そして気付いたのだ。もしかすると、私に微笑んだのは悪魔だったのかもしれないと。

 

 

軽トラックの車内は狭い。

それは提督と近い距離で過ごすことができる夢のような空間ではあるのだが、今はちょっとその距離と狭い密室具合がありがたくない。

タケノコ掘りで私は汗をかいたのだ。

この密閉された空間に私の汗の匂いが充満している気がする。

それは恥ずかしいことだし、恐ろしいことでもある。

 

気になってないだろうか、匂っていないだろうか、臭くはないだろうか。

 

先手を取って窓を開けようとしたのだが、それより早く彼が言ったのだ。「熱いからちょっと空調入れるぞ」と。

私は行動する前に持てる手立てを防がれ、もはや打つ手がない。

 

これではまな板の上の鯉だ、乙女としてのピンチなのだ。

いつもなら背景に花でも飛ばしているくらいに嬉しく楽しい提督との時間。彼がとりとめもない会話を振ってくれている、このなんでもない時間が私は好きだ。

特別なことなんて話さなくてもいい、むしろどうでもいいような、そんな日常の会話。心の距離が近づいたようで、それが嬉しいのだ。

しかし今は体臭が気になってそれどころではない。提督の汗の匂いはいいのだ。男の人には分からないかもしれないが、女性の中で匂いというのはカナリ大きく好き嫌いを判断するファクターとなる。

匂い、声質、笑い方、指の形にお尻の形、そして立ち振る舞い……挙げていくとキリがないが、純然たる減算方式で男を見るのが女性なのだ。

好きな人の匂いと言えば好感も持たれようが、実際のところ匂いが好きだからその発生源にも好意を持っていると言える。

 

一部には時雨姉さんのように、好きな男性だからその全てが愛おしいタイプの女性もいるにはいるが、アレは特殊で病的な類なのであまり参考にはならないだろう。

 

もちろん私は例外ではない。提督の匂いも声も好きだ。そして提督に好意を持っている。

私の匂いを気にせず、彼の汗の匂いだけを嗅いでいられるならこの空間はパラダイスだったはず。彼の匂いに包まれているのを思うと、下腹部の深いところがジュンと熱を持つのを感じる。感じた。

 

しかしなぜ、私は今日に限って制汗剤を持ってこなかったのか、悔やんでも悔やみきれない。そして下着の替えも当然ながら持っていない。新たに気になる匂いの元を作ってしまったかもしれないと頭を抱える。

 

隣には胸元まで服をはだけさせ、熱くなったそこに風を送り込んでいる提督がいる。

その汗ばむ体で力強く抱いてもらえれば、天にも昇る気持ちでまさに昇りつめるのだろう。

ダメだ、そんな妄想をしていたらますますマズいことになった。気持ちは昇ったが、それとは逆につーと下りるなにかを感じた。

女は視覚的、触覚的である即物的なものではなく、雰囲気や脳内イメージでこそ滾るのだ。今そんなことを言ってる場合ではないんだけど。溢れるなにかを感じたのは妄想ではなく、残念ながら現実臭い。臭くはないはずだが。

 

吐く息が熱を帯びている気がする。流し目で見る目も獲物を狙う女の目になっているかもしれない。

抱えていた頭からこびり付いた妄想を振り払うかのように、今度は頭を振ってそれらに抗う。

 

 

「どうかしたか? ちょっと酔った?」

 

突然そう提督が話し掛けてきた。

隣で急に頭を抱え、そして頭を振ってる女性がいたら心配の声くらい掛けるのだろうから、それは全然突然のことではないのだろうが、私的には急なことだったので驚いて変な声が出た。落ち着け、村雨。

 

「いえ、あの、村雨汗をかいちゃったから、匂いとか気になるかなって」

 

 

おいおい、この女は俺を色気で殺すつもりか。そんな風に提督は思った。

やけに艶っぽい声と瞳でそんなことを言う村雨。ついでにその(なま)めかしい仕草で脳が焼かれそうだ。

彼女は背景に花を飛ばしてはいなかったが、妖しげな魅力を持つ体臭を飛ばしてはいたのだ。先ほどから車内に充満するその村雨フェロモンと相まってカナリ下半身にくる。

村雨は知らないだろうが、提督的にそれはクリティカル。むしろ村雨は誇ってもいい戦果をここで挙げていたのだった。

 

しかしとにかく今は、彼女にその不安がないことだけは伝えなければならないと、そう提督は思った。

きっと女性としては気になる大きな懸念なのだろうからだ。

 

 

「これ、お前の汗の匂いか? いい匂いすぎてクラクラしてるところだ。とりあえずありがとうと言っておこう」

「や、嗅がないでくださいよー。やっぱり匂っちゃいます?」

「嫌な匂いじゃないし心配すんな。俺くらいの年齢になると、お前らの汗の匂いなんてご褒美にしかならねぇよ」

「もう、恥ずかしいなぁ」

 

軽く肩を叩かれたが、先ほどまでと違って笑顔の村雨だ。

思い詰めたりせずに済んだなら大成功だろう。

 

 

 

変な気分になってしまっているが、それは一旦忘れて山菜採りに取り組もう。先ほどからルームミラーには後ろの窓にべったり張り付く夕立が見えているのだ。

とても邪魔だが、いや、いてくれて良かった。村雨と二人なら過ちを犯していたかもしれないからな。この女はヤバい。魔性の女とは村雨みたいな奴を言うのだろう。

 

 




タラの芽……全然話題にもならなかったね。
天ぷらにして食卓に並ぶまで書こうと思ったが、それはまたの機会に持ち越しのようだ。


謎の村雨嬢を書いただけの話になりましたー。

そういえば村雨さん。艦これ開始時に1番空気だった艦娘なんだって。Pixivの辞典なんかで最も個別ページ作成が遅かった子なんだとか。
この子の場合は姉妹が姉妹だからね。しゃあなし。
遅咲きながら立派に咲いたのだから、ただそれを誇れば(๑˃̵ᴗ˂̵)و ヨシ!

史実の村雨はなかなかに悲劇の艦だったりもする。
夕立無双した妹や、幸運艦としてはあっけない最期だった時雨を差し置いて、実は戦死者の数が上の6人姉妹艦の中で1番多い村雨。
夕立ははっちゃけた割には沈む前に結構救助されているんだよね。
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