少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜   作:山田太郎

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なぜこのタイミングで?

というような話なのですが、ここで公開しておかないと後々詰まってくる気がしなくもないので投稿。

でも大きく期待されるような絡み方はしてこないよ!

とてもマニアックな話をすると、この間まで「メーン」だったものが「メイン」に変わったのが感慨深い。すぐに理解できた人は仲間だ。


愁嘆慟哭そのあとに

久々に内地の土を踏んでいる。

俺の昇任のことがメインなのか、俺が南の海でやらかしている数々のことへの嫌味がメインなのかは分からないが、再三に渡るじじいからの召集命令だった。3回無視したがいよいよ逃げきれなくなった。このままスルーし続けるとそろそろ姉が俺の首根っこを掴みにやって来かねないので仕方がない。

 

俺が本当に嫌がっていたのなら、姉が掴む首根っこはじじいのものになっていただろうが、単に面倒なだけだったので渋々ながらも応じたわけだ。俺のせいで家庭内不和が起こるのはできれば避けたいしな。

 

 

日程は何事もなく無事に消化しており、ちょっとしたハプニングで阿武隈と旅館で温泉を、昨日は鈴谷とマル秘のデートを楽しんだ。そして明日にはもう基地に帰る。そんな予定だ。

 

ついでだから墓でも参ってこいとのありがたいお言葉をさんざんチクチクと俺を責めたあとにじじいが言ったので、これ幸いにと脱出してきたところ。

比叡からの要望で、たまに横須賀に出向する五月雨の元に時雨を置いて、警護艦の綾波だけ連れて外に出た。贅沢にも続けざまに相手を交換して行われるデートみたいになっているが、時雨には今のうちに姉妹水入らずを楽しんでほしいとの気持ちから出た配慮だ。下心はあんまりない。

 

 

実家に置いたままのバイクにもたまには火を入れてやりたかったので、まずは家に帰る。

じじいか姉か、大穴でサエさんなのか、たまにエンジンを動かしてくれていたようで、久方ぶりにも関わらずバイクは絶好調のコンディションを保っていた。単にホンダが凄いだけなのかもしれないが、感謝を忘れる人間に未来はないと思うので誰か分からないままに心の中でありがとうと伝える。

 

部屋に転がっていたヘルメットを一つ綾波に手渡してベルトを締めてやる。女性のアゴ下あたりでもぞもぞしていると、なんかイケナイ気分になるよね。ね!

根城にしている放置国家リンガと違いここは法治国家だからヘルメットはもちろん必要だ。と、言うより、多分シートベルトやヘルメットに関する法律がなくなっても俺は変わらずそれをする。

 

あれは夏のことだった。美しい夕暮れの中、俺はバイクで走っていた。

「ここで回想に入るんですかー?」

意識がとっ散らかったのでヘルメットのベルトに苦戦していた俺である。アゴを上げて待っている綾波からそんなクレームが出るのは仕方がないが、まぁ黙って聞け、すぐに終わる。

 

そう夏の話だ。

ちょっと遅くなった。家では姉が心配しているだろうと、あまり大声では言えない感じのアレで家路を急いでいた。

川沿いを走っていたとき、突然俺の頭が後方に吹き飛ばされたのだ。

ハンドルにしがみ付いていなければそのまま後ろにひっくり返っていたかもしれない。そんな衝撃。あり得ないことだが、割と真剣に脳裏に浮かんだのは「銃撃された?」だった。当時一般人だった俺が銃撃されることなど普通にないのだが、それほどの衝撃だったのだ。

 

なんとか転倒を免れた俺は速度を落として改めて脳細胞に血を送る。

落ち着いてきたところで状況を確認すると、ヘルメットのシールドになにやらベットリとした物が付着していた。

なにかの体液らしき物と(あし)らしき物。そう、それは甲虫が激突した衝撃だったのだ。島風な速度で走っていた俺に飛んでいた甲虫がぶつかった。その結果、俺は下手すりゃ鞭打ちになる程度には首を持っていかれたわけだ。

ヘルメットをしていなかったら顔面に突き刺さっていたかもしれない。

 

そんなわけで、速度の出るバイクにはフルフェイス。まったり走るならジェットヘルメットといった具合に、用途に合わせて用意してある。

「ヘルメットの値段は頭の値段」だと、某巨大掲示板群バイク板では語り継がれていることでもあるし。そんなわけで、法律の有無に関係なく俺はヘルメットを被るのだ。

くぐもった声でどこかから、まだですかーとの声が聞こえる。どこからかというか、俺の手元からだけど。まぁ待て、もう終わるからな。他人にヘルメットを被せてやるのは勝手が違うんだよ。

 

ともあれ、曲がりなりにも海軍の要職に就いている俺が艦娘と二人。今さらノーヘルなどで捕まるのは避けたいところ。ポリシーの有無によらず、みんなもヘルメットは被ろうな。

 

 

さて、250kgを超すこのデカいバイクはしばらく乗っていないとちょっと重い。こりゃ夜には太ももが心配だ。街中なのでそんな振り回すような運転はしないつもりだけどね。後ろにお嬢さんを乗せるわけだし。

 

もっとも、転倒したところで綾波が怪我をするとは思えないんだけど。地面に叩きつけられる前にバイクを蹴って離脱しそうな身体能力を持っているし、アスファルトで削られていかほどのダメージを負うのかも想像できない。なんなら転けた瞬間に俺を掴んで二人で脱出するまで考えられる。

タンデムしていたほうが安全とは、世の中は不思議でいっぱいだな。

 

バイクの後ろに乗せるのに、綾波の格好は制服のままである。

元々鎮守府に呼ばれて来てたわけだし、着替えなど持ってきていないので他に選択肢はない。

生足と言うかモロ足なんだが、後ろに乗せるのが艦娘でもない限り真似をするのはお勧めしない。

 

「いいぞ、乗ってくれ」

「はーい、お邪魔します」

 

しまったな。後ろに女の子を乗せるのならば、もっと違うバイクを買っておくべきだった。このクソデカいバイクはシートもデカい。漫画なんかでよくある、後ろに女の子を乗せて胸の感触が背中に……なんてのは夢のまた夢だ。

 

メーカーのコンセプトが200km/h超でもタンデムツーリングを快適に、みたいなトンデモなものだからな。世界の四大バイクメーカーのポジションを獲得している国内大手4社はどこも変わらずおかしなことをやらかす企業だが、ホンダは大真面目におかしなことを考え、神懸かりのする技術でそれを成し得てしまうのが問題に思う。

 

とりあえず国内で遺憾なくその実力を見せつけると事件になるので、そのスペックは無駄以外の何者でもないのだけれど。

信号が青に変わり、アクセルを回すと交差点を抜けるころには100km/hを余裕で超過するバケモノエンジンを積んではいるが、それの真価は発揮されない。ということにしておこう。いろいろとうるさい世の中だから面倒なところは書かないに限る。明確にしないというのも大人の嗜みというわけだ。

 

 

しかしさすがは綾波、スカートをしっかりとお尻の下に敷いて完璧なるタンデム状態だ。完璧ならズボンを穿いているだろうが、そこは気にしない。

まぁスカートがドラッグレースのパラシュートみたいにならなければ、それでもういいとしておこう。

 

精密時計のようなエンジンが静かな咆哮を体内だけで上げ、モーターのような音を響かせていざ出発。

慣れない子を後ろに乗せるとバランスが悪いものだが、そんな程度をものともしない超安定のバイクである。しかもそれに乗っているのは綾波だ。コイツはフィギュアスケート選手なみの平衡感覚とバランス力を持っているので、サイドカーレースのパッセンジャーを乗せているみたいでむしろ走りやすい。今なら葉山町のコースレコードを更新できそうでもある。さすがに綾波はタンデムシートで逆立ちしたりはしないと信じてもいるので、タイムを狙ったりの予定は特にないがな。

なにを言っているのか気になった人は、ぜひ口に牛乳を含んでから「サイドカー パッセンジャー」で画像検索をしてみてくれ。深夜テンションのときがお勧めだ。

 

ところで綾波ならこの大きなバイクも運転できそうだな。あとで練習させてみようかな、なんてちょっと思った。

 

 

 

なんとか太ももが焦げる前に寺に到着。◯分ほど走って、なんて書くといろいろと逆算される危険があるので、それなりの時間を経てと言っておこう。

このバイク、エンジンに抱きついて乗ってるようなもんなので厚手のズボンじゃないと火傷するんだよね。雨でも降ったら一瞬で蒸発した雨がモクモク水蒸気となって湯気を出すくらい熱い。冬場にそれを見たら催し物としては面白いかもしれない。自分ではやりたくないが。

 

バイクに乗らない人なんかは、バイクに乗っている人に対して「夏は気持ち良さそうだよね!」なんて言うが、夏にバイクなんて乗っていられないんだよね。

さっき言ったようにバイクってクソ熱い。車のボンネットの上で運転している気分だ。

特にこのバイクは車体がカウリングされているので熱が逃げない。そして運転席の前にはスクリーンも付いているので200km/h程度なら無風に近い。結果灼熱なのだ。300km/h付近まで出すとさすがに寒い。震えてくるのは気温のせいじゃなくビビっているから体温が上がっているだけなんだけどね。

心霊スポットで急に寒く感じることがあるのと同じことだ。あれは周囲の気温が下がったのではなく体温が上がったことによる温度差が原因。

 

 

「マフラーには触れないように気を付けろよ、熱くなってるから」

 

駐車スペースにバイクを停めて綾波を降す。くっそ、俺が運転手じゃなければタンデムシートから降りるスカート姿の見た目JCが見られたものを。

座席のポジションがかなり高いので、スカートで乗り降りすると結構際どいことになっていると思うんだけどなあ。残念極まる。

 

 

綾波との楽しいプチタンデムツーリングを楽しんでからの墓参り。

バイクで来ているので花も線香もないが、土産は俺の笑顔で十分だろう。幸い水はタダなので、水くらいなら掛けてやる。

 

懐かしい、というほどご無沙汰なわけではない。前回は時雨と来たな。

むしろ海の向こうで働き住んでいる人間としては、高頻度で訪れているんじゃないか? 同じ市内に墓があっても、そういやここ数年参ってないなの人も多かろう。

寺には桜が咲いていることも多いし、散歩がてらお邪魔してみてはどうだろう。

 

綾波から預かったヘルメットと自分の分をまとめてヘルメットホルダーにぶら下げ、敷地内へと足を向ける。稀にヘルメットをミラーに被せるようにしてる人も見かけるが、アレはライダーかどうかを判断する基準の一つだ。

ヘルメットは正しく扱わないと内装が痛んで想定された性能を発揮できなくなる。それでなくともヘルメットの交換頻度は3年と思いの外短いのだ。痛んだヘルメットでもしもがあれば、そのときは君の頭が痛むことになるので大事に扱うほうがいい。

 

さて、さりげなく綾波はいつも俺の後方を歩くが、横に並んでくれてもいいのよ? なんなら腕を組んでくれてもいいのに。そんなことを考えていると、目の前を雰囲気のある少女が横切った。

 

 

気が付いたときにはその子の側まで駆け出し、つい声を掛けてしまっていたのだった。

 

「き、君っ!」

 

綾波を残して駆けてきてしまったが、これでは下手なナンパか不審人物だ。

一緒にいたのが時雨や霞なら、「急に走るな」と文句の一つでも貰っていたところだろう。

綾波はあんまりそういったことも言わないから感謝だ。多分、その程度の距離が空こうとまったく問題なく対処できるとの自信があるのだろう。

 

 

「なに? そんなにこの髪の色が珍しいわけ?」

立ち止まった少女は、キツい目をこちらに向けながらそう言った。

髪? まぁ、言われてみたら人間離れしているとは思うけど……。

 

「いや、そうなんだが。俺は」

「この髪は生まれつきよ、話は終わり」

そう言ってひと睨み。俺を睨んだあと、後ろを歩いてくる綾波にも同じように目を向けた。ちょっと驚いた顔をした気もするが、なんだろうか。しかし睨み目を律儀にして回る必要があったか?

 

それきりなにも言われなかったので、なんとなく彼女の後ろを着いていってしまった。完全に危ない人だ。綾波、せめて隣にいてくれー。

俺が誰かと話をするとき、綾波は一定以上の距離から近づいてこないのだ。そんな影に徹して見守るスタンス。今は気まずい。

というか、いつもよりもさらに距離をおかれている気がする。その気の使い方は間違いだぞ綾波。

 

件の彼女は入ってすぐにある墓の前で立ち止まり、手を合わせる。

それについつい声を掛けてしまう。

「お知り合いが?」

「……話は終わりって、聞いてなかったの?」

困った子でも見るように、溜息と一緒に肩を落としてそう言った。

ツンケンとした表情と口調だが、彼女も、懐は広いらしい。

 

「身内みたいなもんよ。私の大切な人」

「それは、お悔やみを」

「いいわよ。もう慣れたところだし」

花も生けたばかりのようで、墓石にはくすみ一つない。

きっと頻繁に足を運んでいるだろうに。……もう慣れた、か。

いろいろと考えさせられる。

 

「ずっと一緒にいてくれるって言ったのに、アンタが逝ってどうするのよ」

 

独り言のようにそう呟いた彼女。これは聞かなかったフリをしておくべきかな。

想像でしかないが、二人の間にはどこにでもありふれた、しかし大切なドラマがあったのだろう。

 

 

「ま、このご時世。布団の上で逝けたんだから、アンタは幸せだったのかもね」

 

顔を上げた彼女は、もう溌剌としたものだった。いつまでも悲しい顔をして過ごすのを良しとしない、そんな潔ささえ感じる。

 

「さて、私はもう行くわ。私には、彼の望んだ私の生活があるの、邪魔はされたくないわね」

 

意思の強そうな彼女の、これは決意だ。

それを聞いた提督は半歩ズレて道を開け、彼女にこう言った。

 

「貴女の今後が、貴女にとって良いものであるのを祈ってます。またここでなら、出会うかもしれませんね。そのときは挨拶くらいさせてください」

 

 

彼女はそれに答えず、笑顔だけを残して去って行った。

彼女の言いたいことは伝わった。俺の気持ちは伝わったのだろうか。彼女の笑顔を見る限り、そちらも伝わったのだと思う。

 

「大切な人を亡くした少女に出会っただけだ。誰かに告げなきゃならんことではないよな」

「言いませんよー。綾波は艦隊の指揮系統には属していません。司令官の命令だけを聞く私兵なんですから」

 

連れてきていたのが綾波で良かった。他の誰かなら見過ごせないことだったのかもしれない。

しかし綾波は他の誰にも話さないだろう。

 

時雨や霞は広く物を見て俺のために行動する。もし俺と意見を違えることになっても俺のためだけに行動をするのだ。でも綾波は違う。正しいも正しくないも、俺にとってそれがどう作用するかも関係ない。ただ俺の望むことを望まれるように行うだけだ。

 

俺を殺してくれと頼んだとき、躊躇わずに俺を撃ち殺してくれるただ一人の艦娘。

大きな事を為すのなら、そういった者がいてくれるかどうかが保険になる。

時雨たちと並んで、彼女も手放せない艦娘だ。

 

 

「さて、帰るか」

綾波の頭をグリグリしてやりながらそう口にする。

いつもの微笑を顔に張り付けながら、歩き出す俺の後ろをいつものように着いてくる。

そしてバイクの元へと戻り、ヘルメットの用意をし始めた俺に彼女は言うのだ。

 

 

「お墓参りはよかったんですか?」

 




さりげなく回収したり撒いたり。まぁ、そんなに気にしなくてもいい。


最近になって、墓石に水を掛けるのはよくない勢力の声が大きく聞こえてくるようになったね。

???「うるせぇ!」ドンッ!!!

好きにしろよ、そんなの。
どうせそこに入ってるのは俺らの爺さんや婆さん、その祖父母だ。
なにやってても適当しててもヘーキだよ。

怒ったりしないし恨んだりもされないだろ。
心霊ものでも供養がーとか、墓参りがーとかあるが。そんなわけもねぇ。
なんで爺ちゃんや婆ちゃんが俺たちを祟るんだ。
山田さんの死後、子供や孫が墓に立ちションしたとしても、山田さんは身内を呪ったり祟ったりはしねぇよ。生温かい目で見守るだけだぜ。


そう考えると、幽霊自体が怖いものじゃないよね。
どこぞの踏切やらトンネルやらに出たとして、それは誰かの親であり誰かの子供だ。
山田さんにそんな事実はないが、もし山田さんの母親が無残に殺された廃ホテルで、のちに恨めしい顔をした女の霊が出るなんで言われたらきっとこう言う。

「ワイの母親やぞ!」
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