少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜   作:山田太郎

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霞さんのお守り役であるお伊勢さん。
松田司令官をすこれ。

艦ってやつは1度缶を止めちゃうと再始動までに時間がかかる。
なのでフレッチャーなんかはネットを使ってすれ違いざまに海に投げ出されている乗員を救助してたりしたよね。

空襲の隙間を縫って、戦場のど真ん中で止まって救助を敢行した伊勢からは霞と同じ匂いがする。



立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は

どこぞの基地への指導やらなんやらで、わざわざリンガを離れて出向くことになった俺。

最近特にフットワーク軽くない? 決して望んだ結果なわけではないんだけれども。

 

滞在予定期間は10日。確かにそう聞いたわけだが、ええそうね。道中の移動にだって時間はかかるわけ。再びリンガに帰るのに倍近く日が過ぎるじゃん。もう帰りたい。

 

ここに着いてからウチの艦娘さんたちは演習と訓練の毎日だ。近隣基地どころか内地からも艦隊が集まっては演習に参加し、また散っていく。

入れ替わりが激しい慌ただしい場所になっているので落ち着かない。

そして演習と合わせて行われる訓練指導。そっちはまだいい。主に艦娘同士で行われることだし、成績が伸びるのであれば文句も言われないだろう。

頭が痛いのは艦娘の運用方法である。

 

「俺です」

「あ、どうも」

「こちら秘書艦です」

「あ、どうも」

「こちらリンガで艦隊運用と基地運営の責任者をしている司令艦です」

「あ、どうもぉぉん?」

 

基地の面々との初対面を果たしたときのことだ。

戦場の主役を艦娘に奪われたと感じる奴らには荷が重いことだろうな。これ以上職域を侵されるなど許せないなんて下らない妄執に取り憑かれてもいるのだろう。

分からないことではないが、下らないことには違いあるまい。

 

勘違いもそろそろ正したほうがいい。艦娘は争う相手などではなく、ただの仲間だバカめ。

 

とはいえ前途は多難。

ウチの基地ほど艦娘に寄っかかって丸投げなぞ望むべきもないが、理解を示した少数の司令官の下でなら、少しは艦娘にとっての環境も改善されることになるだろう。これは少々の期待込みでの感想だと言っておく。

出来上がってしまっているシステムを変えていくには時間がかかるものだ。それでも平時に行うよりもはるかに早く、それらは変容していくのだとも思う。

 

他の誰にも言えないが、戦争中で良かった。

 

 

 

 

この基地に到着して数日。本日も変わらず他基地の艦娘さんたちとの演習が予定されている。

他所の基地でも変わらず、提督はふらふらと日課の散歩を楽しんでいた。

港を歩いていると、今から演習に出るのだろう。伊勢が誰かと歓談しているのを見つけた。

 

当初は参加の予定になかった伊勢だったが、本人の希望により一緒に来ることになった。

教導が目的ではなく、自らの練度を上げるため演習に参加したいとの理由だ。

霞たちに比べて合流が遅くなったので、早くリンガの艦隊に馴染みたいのだそうだ。練度と言う意味ではそれほどの差はないと思うのだけど、戦い方や考え方がやっぱり違うらしい。

相変わらず真面目な伊勢である。堅物とまでは言わないけどね。

反対する理由も特にないので、こうして演習に参加しているわけだ。

そして、そのような目的での参加であるため、彼女だけはそろそろリンガに引き上げることになっている。明朝の訓練を終えたら一足先に帰投するんだったかな。

 

 

「じゃあ、私はもう行くわね」

そろそろ声が聞こえる程度まで近づいたとき、そう言って別れを告げた伊勢の声が届いた。相変わらず重そうな艤装だが彼女の足取りは軽く、その表情も朗らかだ。

 

残された艦娘はどこか名残惜しそうに、儚げな表情を浮かべた笑顔でそれを見送る。

初めて見る艦娘だが、色白の整った顔に触れると折れてしまいそうな繊細な空気をまとう文句なしの美人さんだった。スラリと伸びた背は結構高いので大型艦であるのは間違いなさそうだが。

 

 

「伊勢と仲が良いんですね」

伊勢が立ち去った後、交代するかのように提督が胡散臭い笑顔で軽く挨拶をすると、先ほどまでの印象をぶち壊すかのように彼女は顔を歪め、怪訝な視線をこちらに向けてきたので慌てて付け加える。

「怪しいものじゃないですよ、伊勢の司令官です」

しばらく身を庇うようにしてこちらを窺っていたが、ようやく警戒を解いてくれたのか花のようなその女性がツンケンとした声で応えた。

 

「いきなり話し掛けられて驚いただけよ」

 

可憐な外見に似合った耳触りの良い声だったが、その口調は刺々しく気の強そうな話し方だ。

それから奥ゆかしさを思わせる控えめな笑みを浮かべたのを見て、彼女の印象を再び書き換えなければならなくなった。

 

表情と態度のころころ変わる艦娘だが、やはり芯には凛とした美しさを宿しており仕草の一つをとってもどこか気品を感じる。この猫のような振る舞いは、気を許すと簡単に心を翻弄されてしまいそうだ。

 

「おかしかったですか?」

「違うのよ、少し前なら私たちを見て『仲が良い』なんて言う人間はいなかったわねって、そんなことを思い出しただけ」

「へぇ、それは意外ですね。長い付き合いを感じさせる空気かと思ったのですが」

 

伊勢と話している彼女は今よりずっと穏やかな顔をしていた。立ち去る伊勢を見る目は寂しげで、もう少しだけここにいてほしい。そんな口から出ない秘された言葉を代わりに告げているようにも見えた。

 

「そうね、付き合いは長いかもね。でも、私たちと伊勢型を同じ艦隊で運用しないようにって、そんな配慮が通達されるくらいの仲だったわよ」

 

いろいろあったのだろう、懐かしいだけではなく、その言葉には様々な色が隠れているように思えた。

それから急に空の遠いところを見るように顔を上げ、彼女は言った。

「変わったのは私たちだけね。彼女は昔からあんなだったから」




山田さんが日常生活で気を付けている言葉。

「意外」
意外と◯◯だったって、結構失礼な言葉だよね。
本当に意外なのかどうか、もう少し考えてみてもいいかも。

意外とかわいいとか、意外と美味しいとか。
期待されてはなかったんだなと感じるかも。
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