少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜 作:山田太郎
文量がというより完結までの期間がってこと。
なぜなら未完なので……。
完成していないエピソードを投稿するのは初めてになります。
他の人はよく書き足し書き足しで投稿できるね、怖くて真似できねぇ。
一応本筋はできてて、なんとか書ききれるだろう。との目論見で見切り発車。あとは神の味噌汁(ワカメ)。
後味の悪い事件。俺たちが絡むのは大体そんな類のものばかりだ。
考えてもみれば、白黒はっきりしている事柄などこの世にはそれほどないのかもしれない。
二元論を信奉しているわけでもないが、社会が正義と悪だなんていう単純なもので構成されたものではないと知ったのは、いつ頃のことだったろう。
祟り。
そんなものを現代日本に生きる俺が大真面目に語ることになるとは思いもしなかった。
しかし、感情が極限まで高まったとき、あるいは、そういうものもあるのかもしれない。そんな風に思った。
解決するには遅すぎた。
これは後味の悪い話であり、また結末のない話だ。
最終的にそれらは報告書にまとめたわけだが、軍の体面的なことや、なにより彼女たちのために。
基地の場所や所属艦娘について、ここで多くを語るのは止めておこう。
それでもよかったら、まぁ読んでくれたらいい。決して面白くは終わらないこの話の顛末を。
座上艦に揺られて海を往く。
甲板から海を眺めると艦前方を並走している時雨と霞が視界に入る。もう一人いるはずだがやっぱり遅れ気味なようだ。きっと艦の後方を航行しているに違いない。
時雨と霞がいるので万に一つもないだろう。心配する必要のないところでの心配はするだけ無駄。彼女たちのことは信用しているのだ。
基地でのお留守番をしているときならいざ知らず、視界に入る状況でなら安心もできる。いや、俺の視界には入っていないんだけどね。生憎と余裕がないので勘弁してくれ。
こうして海を渡っていると海が俺に見せる姿はいろいろだ。場所によって海はその色を変える。
転落防止柵に体を預けるようにして、俺がそれらに目を奪われているのには理由があるのだ。
「ちょっと、遠目でも酷い顔してるわよ。もう薬飲んで寝ちゃいなさいな」
無線から届くのは霞の声。
電池の切れたロボットみたいな動きで視線を霞に向けると心配そうな顔でこちらを見ている。実のところ一般的な人間の視力しか持たない俺にはその表情までは見えていないはずだが、そう見える。
なんなら眉を下げているところまでハッキリと捉えている気までする。うっぷ。
反対側に目を向けると時雨が心配を通り越して泣きそうな顔をしている。一般的な人間の視(ry
「いや、大丈夫。峠は越えたはずだ。それにもう着く、寝てるわけにもいかんだろ」
分かってくれたろうか。艦首付近で海風を全身に浴びているのには、のっぴきならない理由があってのことだ。
ああ気持ち悪い。海風に当たっているせいで無駄に体力も消耗している。アイツらよく平気だよな。
どうでもいいが、お前らは前を見て走れ。
幸い対向する船も飛び出す人もまったくない海上なので、なにかにぶつかってなんて心配もないわけだが、気分的なもんだ。
電車の運転席が前にあるのと同じようなもんかな。実はアレって完全に管理された環境下でなら前に無くても構わないらしい。
今は遠い地、四連装砲なるちょっとアレな主砲で有名な国なんかでは無人の電車が走っているが、いろんな理由で我が国での導入ははるかに先だろう。きっと深海棲艦との戦争が終わるほうが早いと思う。
うん? なぜ体力を奪われながらも船首に立つのかって? まだ分からないか。
決してタイタニックのアレをしたいわけじゃないぞ。たとえ二人でもそれはしない。
風に当たっていると多少はマシになる気がするのと、俺に美しい景色を見せてくれるのは海だけではないということだ。
隠したいものを隠すのに、アレでは防御力が低すぎる。俺がセキュリティ担当者なら一も二もなくデザインを見直すところだが、幸いにもその仕事は俺の担当ではない。
そもそも艤装の一部らしいので、変更も改良も考えていないそうだ。ありがとう。
あれは、紺色か? 相変わらず暗めの色が多い時雨はこの距離から観察するには少し無理がある。おかしいな、表情が分かるくらいに感じてたのに、やっぱり俺にも艦娘並の視力が欲しい。
過去の大戦で見張り員を務めた者など、2km先のタバコの火が判別できたという。人間やってやれないことはない、俺も訓練すればその視力を手に入れることができるはずだ。
基地に帰ったら色々調べてみようと思う。
視線を左に向けると未だにチラチラとコチラを振り返って伺う霞が見える。ありがとう。
なんの柄だろうか、さすがにそこまでの判断はつかないが、明るめの色なのでそれ自体は良く見える。ありがとう。
「提督、見えてきたよ」
おっと驚いた。
俺に見えているのはお前らだけなわけだが、時雨が報告してくれたとおり、そろそろ船旅も終わりのはず。
二人を薬にしながらなんとか耐えきり無事に到着だ。
島に着いたらありがとうと伝えておこう。
さて、到着したのは今までで二人。配属された指揮官が衰弱死したという基地。
横須賀のクソじじいから有無を言わさず願われたのは、ザックリ言うと、その原因を調べて報告しろとのことだった。
俺は雑務担当じゃねぇんだよ。なんなら命令じゃなかったところにまで悪意を感じてしまうのは考えすぎだろうか。
さて、その原因だが、気候も気候だしな。ここいら特有の風土病かもしれないし、この基地を取り巻く環境のせいかもしれない。
先の大戦で犠牲となった軍人の多くは戦いによって命を落としたわけではなく、疫病と飢えによるものだったのは有名な話だ。俺たち日本人にとって熱帯の世界は生きづらい環境なのだろう。
いや、熱帯と一括りにするのも間違いかな。熱帯の定義は赤道を中心に北回帰線と南回帰線の間の地帯全域を指す。具体的に言うなら台湾の南端からオーストラリア北部までの範囲だ。ほぼ全ての戦域が熱帯に属し、もちろんリンガもそのど真ん中にある。
完全無風のリンガだって快適とは言えないが、ご近所であるシンガポールを過酷な環境とは言えない。俺たちにとって生活しづらい地域がある。それだけのことなのかも。
衰弱の原因が気候や病でないのなら、深海棲艦による生物的、または化学的な攻撃の可能性もある。ヤツらを一言で説明するなら「未知」。なにがあっても特に驚きはしないだろう。嘘だ。人語を解する深海棲艦の存在を知ったときには普通に驚いた。そんなわけで、彼らなのか彼女らなのかは分からないヤツらの未だ知られざる攻撃方法であっても、驚きはすれど不思議ではないと思う。
考えれば考えるほどに、そんなものは大学の研究者や軍のそういう担当部隊に任せておけばいいと思った。
同じことを言って断るつもりだったのだが、姉から言われてしまったのだ。この基地に所属している艦娘が不安がっているのではないか、彼女たちの心のケアが研究者や軍の担当部署の人員にできるのだろうか、と。
それが俺ならできると? 期待のしすぎだ。しかし姉からの珍しい頼み事。無下に断るのは気が引ける。決して彼女が後に言った「坊ちゃんができないと言うのなら、トラックに配属されている彼に頼むしかないかしら」のセリフで決めたわけではない。
「普通の基地に見えるけど?」
「そうだね、規模は大きくないけど、僕たちがいた小島に比べたら普通の島に普通の基地みたいだ」
基地施設を目にした霞と時雨が最初の印象をそう述べた。ここまで近づけば俺にも見える。
短い期間で二人が死んでいるとの色眼鏡で見てしまっているのだろうか、そのたたずまいが俺には辛気臭いものに見えた。
「ところで、調子は大丈夫か?」
今回一緒に派遣されてきた最後の一人に声を掛ける。
「結局私に合わせてもらっちゃってすみません。長距離走は自信あるんですが、足が遅いもんで……」
そういえば一緒に出歩くのは初めてかもしれないな。紹介しよう、足が遅い足が遅いと言いながらも実は結構足が速い夕張と違い、本当にしっかり足が遅い彼女は工作艦の明石さんだ。
私だって本気を出せば結構イケるんですよー。タービンもチューニングしたんです! なんて出掛けに言っていたが、そもそものポテンシャルが全然違った。
最高速で移動したいわけではないので燃費優先の巡航速度。それで海を渡ってきたのだが、やはり速度に差は出てしまう。
ハイエースと走りが自慢のスポーツカーたちを比べても仕方がないので特に問題はないのだが、言っておかねばならんこともある。
「お前、帰りは座上艦に乗れよ?」
「うぅ、すみません」
桟橋から陸に上がり、港からでも望むことができた基地のほうへと歩いて行くと、案内役の艦娘が入り口で待っており、俺たちを招き入れてくれた。
さりげなく時雨が俺を支えているのは内緒だ。まだちょっとふらつく。
いやしかし、待たせてすまんな。遅刻の原因は明石だ。
途中で座上艦に乗せようとも思ったが、航行中の座上艦に飛び移ろうものなら転覆してしまうと言うから結局それもできなかったのだ。
帰ったら明石にも陸上訓練をさせることにしよう。上達する未来が想像できないものだが、やらないよりはやったほうがいいだろう。
「さて、ここには他に二人いるんだっけ」
「はい。執務室に集まってもらっています」
出迎えてくれた艦娘に確認をすると、すでに執務室にて俺たちを待ってくれていると言う。
司令官不在だし、他にすることもないのかもしれないな。なにもしなくていい。なにもすることがないという状況は案外と疲弊するものだ。やらねばならんことならさっさと終わらせて、また彼女たちには働いてもらいたいと思う。
「まずは話を聞かせてもらいましょうか」
「そうか、そういうこともあるかも知れないな。ところで時雨はいつも……」
「また来てるな、あのおっさん」
「ああ、ホントだ」
軍艦の停泊する港で、若い軍人らしき男が二人。
艦に向かって話をするいつもの男を見ながら言う。
「あの人、戦争の生き残りらしいぜ」
「ホントか?」
「聞いた話だけどな。海軍だったんだと」
「それで、あんなになっちまったって?」
「かもな」
「あの人には、どんな風に艦が見えているんだろうな」
ボツになった一つの結末。