少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜 作:山田太郎
趣味は自転車です。
Panasonicとキャノンデール好きです。
「じゃあなにから調べようか?」
「まずは環境かな。上陸したときに感じたが、この島ちょっと硫黄臭くない?」
「確かに臭いを感じましたね」
提督の懸念には明石が同調した。
管轄が違うので行ったことはないが、硫黄島も上陸しただけでその臭いを感じるレベルらしい。硫黄島がどの程度臭うのかは知らないが、この島は風に乗ってなのか、なにかの拍子に微かに臭う。
「硫黄が噴き出してるならそれだけで害があるし、そんな環境なら他のガスの可能性もある。地下やら低いところに溜まってるなんてのも考えられるな」
「ならアンタ危ないじゃない。もう出歩かないでよ」
待ってくれ霞さん。心配はありがたいが、いきなり俺の仕事がなくなってしまうじゃないか。長時間吸いたいものではないが、硫黄だってすぐさま体に影響があるわけじゃない。
俺たちが居座るリンガの南にあるジャワ島を見ろ。青い炎で有名なそこではマスクもしてないような方々が日々硫黄採取のお仕事をしているくらいだ。
いや、アレは普通に体に悪いだろうから真似したいとは思わないけどさ。
「窟とか窪地とか、そんな所が島にあるのか聞いてみるか。お前らってガスとか平気なの?」
「さぁ? 気にしたことはないけど、少なくとも司令官よりは平気だと思うわよ」
まぁ艦娘相手にガス実験なんてしたことないしな。もししてるバカがいたらポアしてやろうな、ポア。
規制されてない迂遠な言い回しではあるが、あんまり日常で言うといらぬところから睨まれるかもしれないので、もう使うのやめて封印しちゃいましょうね。
しかし艦娘さんってば重油の煤煙モクモクを浴びてもへっちゃらな奴だし、耐性くらいはあるんだろうなぁ。
硫黄はともかくとして、得体の知れないガスを俺が吸い込むのは不味かろうことくらいは分かる。
申し訳ないが時雨と霞にはカナリヤになってもらうか。明石? 明石には別に調べてもらうことがあるのでカナリヤ役は免除だ。
「明石は検疫やってくれ。島で飼ってる豚や鶏から始めて、その後はここに生息してる野生な奴ら」
「はぁ、やりますけど、私一応工作艦なんですけどね」
セリフだけ聞くと乗り気じゃないようにも思うが、心配は要らないだろう。目がめっちゃ輝いてる。むしろ別の心配をしたほうがいいくらいだ。
「疫病の可能性もあると?」
「1番可能性のあることって言ったらソレじゃない? 前大戦の経験を踏まえて」
「ですね。家畜に鳥、猿なんかがいるなら人間に感染する病原菌や寄生虫なんかも疑われます。あとは自生している草木とか」
つまり、環境の調査だ。
各々がやるべきことを共有、確認して最後をまとめたのは時雨。
「なら明日は島についてと、ここに着任していた司令官の病状や食生活なんかについて詳しく聞くところからだね」
行うことは明確に。当時の軍令部や聯合艦隊の面々にも教えてやりたいことだなんて無体なことを思う。
歴史の顛末を知っている者だけがする意味のない考えだ。膏薬などどこにでもくっ付く。それが後出しのジャンケンであるのなら尚更。
俺たちのことも、いずれはそうやって誰かに語られるのかもしれないな。
あのときこうしていれば、あのときはこうするべきだった。なんて。
話し合いも終わったなら電気を消して就寝。
狭い部屋に女性を三人も詰め込むと殺風景で味気なかった部屋も芳しい香りを放つ。
誰かの寝息が聞こえるようになったころ、耳元で霞が囁いた。
「で、沈んだ子については?」
その声に、安眠のお供であるアイマスクを引き上げる。顔が近いぞ。
あと下ろした髪もかわいいね。
「真面目に聞いて」
「もちろん調べる。その人となりまでだ」
お返しに霞の耳元でそう言ってやる。
この場で深呼吸したら肺が健康になりそうな匂いがした。
おっと、言い忘れた。
「残った三人についてもだ。彼女らにもなにか問題がある。ついでに調べるぞ」
言われたことだけをやって帰るなら子供のお使いだ。問題があるのなら、今後に活かすためにもそれは把握しておきたい。
それだけ言うと、霞は小さく「そう」とだけ呟いた。そして、慈しむような顔でこう言った。
「安心して眠りなさいな。うなされるようならワタシが起こしてあげるから」
硫黄って実は無臭です。
それについては次の話で書いてます。
「アヒルと鴨のコインロッカー」を始めて読んだときは驚きました。好き。
別にアレからネタを拾ったりはしていないので、ネタバレではありません。