少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜 作:山田太郎
山場までは書くことができたので、このまま波に乗れたら素直に終われるかも。
趣味はバイクです。
小さいのから大きいのまで用途別に揃えてます。
──愛してる。愛してる。アナタを深く愛している。
基地に戻り、俺たちは所属の三人娘から話を聞いた。
普段の生活、軍務、それから司令官のこと。
三人の口から語られたそれは、どこにでもある普通の基地だった。
島の調査では硫化水素が溜まる洞を発見したが、他に原因となるようなものは見つからなかった。
病気については明石待ちだ。まだ時間がかかるとのことなので、彼女をおいて時雨、霞と三人での聞き取りをしたわけだが、やっぱり気になるようなところはない。
今のところは濃度の薄い硫化水素を吸い続けたという可能性が残ったくらいかな。
「司令官の症状はどんなだった?」
少女たちが口にした男の症状をまとめるとこんな風だったらしい。
まず腹痛を訴えるようになり、嘔吐と下痢を繰り返し衰弱していった。それから意識が混濁し始め、うわ言を口にしていた。と、なんか悪い物でも食ったかな。
硫化水素は主に気管支系だからこれは違うだろう。選択肢から硫化水素が消えた。ますます明石に期待するしかないかな。
朦朧とした中でのうわ言。そして二人目の男が最後に口にしたのが「あの女」。
司令官は二人とも素晴らしい人物だったと口を揃えてこの子たちは言う。
ホントにそんな聖人が存在したのか? ってくらい。当たり前のことを当たり前にする普通の奴だ。「普通の人」、こいつは誰の頭の中にも存在するが、しかし実在はしない。
マーケティングにおける、どこを対象としているのか分からない下手なペルソナはコイツと同一人物かもしれないな。
心理用語にもあるが、そちらは他者と接するときに自分が被る仮面のことなので意味が違う。
可もなく不可もないコイツは、実在したなら結構な優秀マンだ。
やったほうがいいのは分かっているが、しかし実践するのは難しい些細なこと。誰にだって思い当たることの一つや二つあるだろう。それらをこなしていく普通の人なんて聖人か超人くらいのものだ。
故人の悪口は言いづらい。そんなところなんだろうか。しかも上官で、この子たちにとっては俺がそちら側でもあるわけだしな。
だから実像はもっとかけ離れていると思うよ、ねぇ霞さん。そんな目で俺を見るのはやめてくれ。
だっておかしいでしょ。素晴らしい人物だったと言うが、ではなぜ、指子ちゃんは呪いなどと言ったのか。沈んでしまったと言う艦娘は、どんな子だったのだろうな。
呪いと言うくらいなんだから、その女は司令官を呪っていてもおかしくなかったと、指子ちゃんは思ってるわけだよな。
そして司令官には呪われる心当たりでもあったのか。
素晴らしい人物が呪われるような世界は殺伐としすぎているだろ。
さて、しかし二日目もこれにて終了だ。
あまり長時間かけて彼女たちから聞くこともないので、想定していたよりも早くに解散することになり、俺たちは部屋へと戻った。
明石はまだ帰ってないようだが、ギリギリまで楽しむ……間違えた。ギリギリまで調べてみるとのことだったので、先に三人で風呂を済ませることにした。
もう幾日もここには滞在しない予定なので、この島から撤去するまでは毎日湯の準備をすることにした。おかげで今日も湯を楽しめる。
島中歩き回って汗をかいたし、卵の腐った臭いも染み付いている気がするので早く風呂に浸かりたい。
なんて話していたら、服に付いた臭いもなんとかしたいので先に洗濯をすると霞が言い出した。
気温が高いとはいえ、早く干さないと明日までに乾かないもんな。了解だ。
ではそのように……。
「なんで提督が着いてこようとしているのかな?」
「え?」
なんでって、洗濯するんだろ。俺だって洗いたいし。
基地での洗濯物などは業者を入れているので出しておけば勝手に仕上がってくるが、ここではそんなわけにもいかない。
俺だって海軍。洗濯くらいは自分でできるのだ。
しかし業者に頼んでいる洗濯物のはずだが、なぜか護衛に出ていないときの雷は自分の休みを潰してまで俺の制服や私物なんかを洗濯してくれている。霞とは別ベクトルで休まない奴だ。
何度か無理をしてくれるなと言ったが、雷としてはアレで休みを楽しんでいると言うのであまりしつこく言うこともできない。ちょっと心配ではある。
そして雷のいない間は基本的に由良が俺の分の洗濯をしている。なぜだ、考えてみたら俺は業者の世話になってはいないんだな。
出しておけば勝手に仕上がって戻ってくるところだけが事実だった。
思考だけがリンガに帰ってしまっていたら、そんな棒立ちの俺に焦れた霞にケツを蹴り上げられるところだった。
実際に蹴られてはいないが、もたもたしていたら本当に蹴られてしまいそうだ。なんでそんなにキビキビしてるのよ、いいだろ洗濯物くらい。
「いいから、早く脱いでよこしなさい。ワタシたちでやるから」
「いやいや、そんなところまで甘えてられないって、ちゃんと手伝うよ」
あ、そういえば小島でも洗濯は時雨が譲らなかったな。
普段からあれだけチラチラさせてて、寝るときなど下着姿だが、洗濯物は恥ずかしいのか。乙女心は複雑怪奇。
結局、二人に脱がされて置いていかれた。
10分経ってから来いだってさ。扉が閉まる前に「持っていかれたぁぁ」と言ってやったが、それも無視された。ちょっと扱いひどくね?
ともかく着替え。裸のままで他所の基地を闊歩するわけにはいかないしな。
基地に所属する三人娘のどなたかさんにでも見られたら調査どころではなくなってしまう。俺のお茶目心のせいでそんなことにでもなれば、霞に絞め殺されかねないからな。命は大切にしなくてはいけない。
しかし扱いが悪かったのは事実なので、その抗議のために悪戯心くらいは出しても平気だろう。人のネタを封殺するのは許されないことなのだ。
そして5分も待たずに部屋を出る俺である。
俺が浴場に突撃したときの二人の顔を想像すると、スキップしたいくらい心が躍るのだが、大の大人が一人でスキップをしている図は想像だけで悶死するものなのでグッと堪える。
逸る気持ちを抑え込み、浴場まで歩いていると廊下で彼女と出会った。
スキップしていなくて良かった。そして服を着ていて助かった。
浴場に行くのは遅れそうだが、せっかく出会えたのだ。
いろいろと教えてもらうとしよう。
言葉には出ない感情や意思まで、それを俺に推し量らせてくれ。
書ききらない美学を強要していくスタイルで進んでいくよ!
奥歯に物が挟まった感じを楽しんでくれ。
……頼む。
「硫黄の臭いと硫化水素の臭い」
ネット上で荒れる原因となるが、物質としての「硫黄」は正しく無臭。あの卵の腐ったような臭いは硫化水素で間違いない。
ただその「硫黄」がなにを指しているかは文脈によるので分かりづらい。
「卵の腐ったような臭い」を硫黄臭と言うので、「硫黄臭い」の表現が間違っているわけではない。つまり「硫黄は無臭」と「硫黄の臭い」は両立してていいのでは? と思う。
まぁハッキリ言ってしまえば、そんなに目くじら立てなくても……だ。
日本語の間違いについてうるさく言われるようになったのは、予想に反して現代が1番だと言われてる。スマホとSNSが流行ってからだね。
日本語の大家、金田一先生はそこらへんゆとりを持ってるのになぁ。