少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜   作:山田太郎

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今になって「ここすき」なる機能を発見。
本文でフリックすると「ここすき」が出るのね。増えろ(迫真)。

お気に入りとかしおりとか増えて嬉しい。お気軽に(作者の心に優しい)感想書いてくれると嬉しい。増えろ(懇願)。

全部すっ飛ばしてクライマックスと最終話を投稿したい欲に駆られているが耐えている。最終話はやはり最後に投稿しなくてはね。
安心してくれぇい。


今年もあの都市がカタカナで呼ばれる時期がやってきた。
黙祷。



お出かけの艦隊6

少し遡り、提督のお使いで足を伸ばした銀行では時雨が一人考えを巡らせていた。

 

「さて、困ったな」

 

彼女はそう口の中だけで呟く。

 

 

いつも静かな場所なのだろうが、今は特に、静まりかえった空間と言って差し支えはないと思う。

 

そんな中で、できるだけ目立ってしまわないようにと小さくなりながら椅子に腰掛けるのは、パリッと糊付けされた襟で清潔感を漂わせながらもタータンチェック柄のスカートから覗く太ももが美しい。透き通った赤色のフレームがさりげないアクセントになっているアンダーリムの眼鏡を掛けた私服姿の時雨だ。

 

お洒落のためというより、目元を隠すのに都合が良いとの理由で眼鏡を掛けることが多い時雨だが、こんな風に役立つのはさすがに想定の範囲外である。

しかし、こういった状況にはピッタリだった。

 

人の印象は瞳で大きく変わるのだと、基地幹部を対象にした講習で教わった。

太めのフレームで瞳を隠すように振る舞えば、それだけで相手の印象に残りづらい。

あまりオススメはしないが、ちょっと前に流行したレイバンなどの黒縁眼鏡を一本持っておけば強盗するときに役立つかもしれないので、余裕があれば買っておくのもいいだろう。

 

特にレイバンは軍人とは切っても切れない関係にある。マ元帥こと連合国最高司令官ダグラス・マッカーサーのトレードマークでもあるレイバンのサングラスは、米陸軍航空隊のパイロットが太陽光線から目を守るために進化し、軍隊と共に成長したとも言えるブランドでもあるのだ。

 

 

 

 

「強盗……なんだよね。どうしようか」

 

銀行内には目視できるだけで八名の男がそれぞれ小銃を携えて陣取っている。

まさかそんな姿で借り入れの相談に来たわけではないだろう。

 

まずは大人しく人質になりきり、どう動くべきか様子を見ようと思う。

ただの強盗であれば、このまま一般人を装い事件の収束まで息を潜めていればいい。

できる限りのことはするとして、それでも万が一が起きた場合。ここにいるのはただ人質になっていただけの一般人。問題はない。

気になるのは提督の元へと帰るのが遅れることくらいだ。

 

ただ……。

 

 

 

「妙だね」

 

突入が鮮やか過ぎやしないかい? と思った。一度考えが及ぶと、その奇妙さはしこりのように違和感となって思考を占拠した。

そうだ。突入に手間取っているようなら、その混乱に紛れて自分一人が外に出ることもできたはずだ。

 

なぜそれができなかった?

 

 

受付の番号札を受け取り、自分の番を待っていた。ただそれだけだった。

突入は瞬きの間に完了し、まず出口を封鎖された。ほぼ同時に行内の客に銃口が向けられ、時雨たちが人質の役割を受け取ったときには、すでに行員の身柄は抑えられていたのだ。

 

ものの1分もしない短い時間で行内は完全に制圧されていた。

視線を上げないまま、美しく磨かれたガラス玉のような瞳で行内を観察する時雨。

強盗の立ち振る舞い、交わされる会話、銃の構え方に歩き方。

 

街で見かけたなら、それは非常に目立ったことだろう。時雨にとっては日常的に目にしているそれら。そこから導き出される推論は──。

 

 

 

「この人たち、軍隊経験者だ」

 

 

妙に姿勢が良く、視線も上半身もブレがない。一般人に混ざるとそれがよくわかる。

人は見た目が9割と言うが、それは顔の造形だけではなく、そういった所作も含めてのものだと思う。

姿勢の良い人間は良くも悪くも目立つのだ。

 

 

時雨に経験はないが、銀行強盗などを行う場合、もう少しキョロキョロと、忙しなくしていても良さそうなものなのにとも思う。

 

特に、その銃の扱いが目に止まる。

普段から慣れ親しんでいる者でもない限り、武器を持つと浮き足立つものだ。

提督なんかも『銃を持つと強くなった気になり興奮するのが男の子だ』と言っていたし、小銃を何気なく持つ姿だけで持ち慣れているかどうかはすぐわかる。

 

今となっては遠い過去の事件に過ぎないが、なんとか国なる集団が定期的にネットにばら撒いた動画の中には、明らかに小銃の携え方が慣れ親しんだ者のソレではないとのことから、エキストラ疑惑が持ち上がった物まであったらしい。

ソレを指摘するネットの有識者たちが、じゃあどれほど小銃に親しんでいたのかは謎のままだが、時雨にとってはそうじゃない。

 

リンガの艦隊では小銃、いわゆる自動小銃(アサルトライフル)の採用はしていないが、短機関銃(サブマシンガン)のMP5なら訓練でも使う。

時雨自身もMP5を担いだまま動けなくなるまで走らされたものだ。

 

もちろん。艦隊で行われる訓練は実戦で使える、実戦のための訓練である。なにもMP5を3kgの重り代わりに使っているわけではない。

ただ持って走るだけでなく、担当教官(主に鈴谷)は常にその銃口の向きをチェックし、それが正しくなければ容赦なくペナルティを与えてくる。

 

『銃口を人に向けるな』

 

これが、リンガにおける陸戦教練の合言葉。

厳密にはそれに『銃口はクソったれ野郎に』と続くが、霞が難色を示しているのであまり大っぴらには言えないのだとか。

 

ともかく、そういったポリシーの元で行われるリンガの訓練では、ローレディと呼ばれる銃口を下げたポジションにて、いついかなるときも銃口が友軍の足に向かないように。それを無意識に、呼吸をするように自然にできるまで繰り返し行われる。

 

 

それが、ごく当たり前にできている強盗たち。

友軍の足はもちろん、その銃口は人質にだって向けられていない。

まず間違いなく、正規の訓練を積んでいる軍人だと、時雨が判断した理由だ。

 

 

時雨が思考の海に沈んでいると、意識の外で子供がぐずり出したのか、声が聞こえて来る。幸い激昂した犯人の声も、実力で黙らせる意思も感じない。男たちは案外と紳士的なのかもしれない。それは喜ばしいことだが、作戦行動に支障が出ないというハッキリとした自信も感じてしまう。

 

早く提督の元へと帰りたいが、やっぱりそれは叶わないだろう。その願望はそっと胸の奥へとしまいこみ、今、考えなければいけないのは、どう行動すれば一番彼の足を引っ張らないかだった。

 

 

自分がただの人質でありさえすれば、事件の結末などどうなっても構わない。そう言い切ってしまうと語弊もあるかもしれないが、ソレは自分たちの仕事ではないだろう。

問題は、自分が軍関係者であると、艦娘であるとバレてしまった場合。

 

艦娘として人質を守り、事件を解決できたなら、それが最も望むべきことだろう。

そして最悪の事態とは、そのように行動した結果、人質に犠牲が出てしまった場合だ。

 

 

何人助かったではなく、何人が犠牲になったかを数えるのが日本人だと、いつか提督が言っていた。

故に、それはハイリターンではあるもののハイリスク。

 

時雨に行動を起こさせないのは国民世論のせいだとも言える。こんなところで、提督の考える友人たる艦娘に泥を付けるわけにはいかないのだ。

それらを念頭において考えると、行動を起こさないことこそ、ベストではないがベターの選択であると時雨が判断するのも仕方がないことだった。

 

つまり、この状況で目立つのはゴメンだ。に尽きる。

 

 

その時雨の考えは、ある意味で強盗犯を信頼した上で検討されたものだ。

 

時雨にとって強盗の成否は問題ではないが、成功してもらうのが一番拘束時間が短く済むだろうと考えただけ。

無事に解放され、提督の元へと帰って日常を過ごすだけが時雨の望みなのだから。

 

 

男たちの練度から、強盗は短時間のうちに成功し、そして逃亡するのだろうと思っていた。もたもたと、警察が駆けつけるまで現場に立て篭る理由が思いつかないからだ。

 

 

そしてその期待は、残念ながら裏切られることとなった。




とても今さらだが、124話『愁嘆慟哭そのあとに』の前日が11話の『〜ブレザーと対物ライフル〜』だったりする。

そして85話『〜初めてのおつかい〜』は送り出す話で、それを迎えたのが18話の『〜長波サマと一緒!〜』。

だからどうしたって感じだが、特に意味はない。

もひとつオマケに、なぜか60話の『〜ハチミツを落とした紅茶〜』だけ『※』で始まっていないが、アレは未来の話。95話の『※絶望は、君の顔をしている。※』よりももっとずっと後で、多分本編では書かれない隙間の期間。

アレの後はもう最終話が1話あるだけで144話の『※それは蛇足の物語※』に続く。


さて、このあとどうしよう。
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