少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜 作:山田太郎
こっちの世界はパラレルなわけだけど、本編を補強する世界観の説明だったり裏話だったりが散見されるかもしれない。
どこまでが本編に準じており、どこからが本編から逸れた先の未来であるのかは各人のお好みで。
つまり謎ってことさぁ。
明日も投稿するよ!
「連れ出してくれるのは嬉しいんだけどね、できれば事前に行動内容の伝達を徹底してもらえるかな?」
「いやぁ、もう立案の段階から混ぜてもらったほうが確実なんじゃないかなぁ」
なにやら失礼なことを口にしているのは白露姉妹の上二人。
「なに言ってんだ、MI作戦を見ろよ。道行く一般市民にさえ周知の事実みたくなってて、『次はミッドウェーというところを攻めるんですよね?』と軍人さんは声掛けられて辟易したらしいじゃないか」
「いや、当時の陸の上でのことを言われてもちょっとわからないけど」
「攻勢作戦じゃあるまいし、秘密にする必要性に疑義を唱えたいなぁ」
「それには僕も同意だね。共通認識のすり合わせ、必要な情報は徹底的に共有するべきだって霞がいつも言ってるじゃないか。教えたのは提督だよね?」
おっと、どうやら分が悪いぞ。この論法で引っ張るには無理があったようだ。
ならば早めに方向転換。その判断が出来るかどうかが指揮官の資質を推し量る。
元々ただの思いつきだからな。
急に思い立ってやって来たここはそう、山である。
気分が盛り上がったら即日行動が人生を楽しむためのコツだ、勢いで行かなければ結局行かないってのは大人になれば誰しもが経験で知っている。
とは言ったものの、当然だが一人きりで山登りを楽しめるような素敵な感性を持ち合わせてはいないので、思い立ったとき偶然目に入ったこの二人を連れて来たというわけ。
白露については全くの偶然だが、時雨のほうは偶然とも言えない。大体が目につく範囲にいるからだ。
なので、時雨が俺に連れ出されて山にいるってのはもう偶然と言うよりは必然だったのだろう。
「登山か、訓練でなら島中を行軍したけど、純粋な山登りは初めてだね」
「そうだろ? たまにはこういうのも良いと思うんだ。まぁ登山って言うより渓谷の行軍だけどもよ」
別にこれだ! という定義はないだろうが、登山は尾根を、渓谷は沢なんかを歩く気がする。
今回は渓谷を往く。標高はそれほどでもないし、行程は登ったり下ったりなので登りっぱなしの登山よりは心情的に楽だろう。多分。
「もちろん文句はないんだよ」
そうしてスカートの裾を少し持ち上げて時雨が言うのだ。
「事前の準備ができていればね」
そうなのだ、随伴する二人は制服でこそないものの、このまま街でデートができそうな装い。
白露は最近ハマってるらしい三本ラインが特徴的な某スポーツメーカーの物で揃えており、夏らしい薄いイエローが目に眩しいピチピチとしてる割には着丈の長い、そんなノースリーブのカットソーに真っ白い短パン姿。
お前、背中と脇がガッツリ空いてるけど大丈夫なのか? おかげでブラ線どころかってところまで、そのグレーでスポーティーな代物を確認できているわけだが、見てても怒られないんだろうな。あと、やけに短いその短パンは透けないのかと、心配なのか期待なのかの感情を胸に呼び覚ます素敵な姿で自慢のおみ足を思う存分見せつけてもいる。
足元がサンダルじゃないのだけが救いだな。
同じメーカーで揃えてる白露のスニーカーはどこぞのオッサンが描かれた定番の物だ。中身まで含めて全体を動きやすい服装で固めてるあたりが活動的な彼女によく似合ってるとは思う。
あ、わかってるわかってる。短パンじゃなくてホットパンツなんだろ、なにが違うんだよと言いたいところだが、口に出すと小馬鹿にされそうなのでそれは心の中だけに留めておく。
そして時雨。
俺的ラインの美しさに定評があるエゲレスメイドのブランド服で固めていらっしゃる。俺がプレゼントした物なので素直に嬉しいし良く似合ってもいる。
服は値段じゃないとは言うが、やっぱそれなりに値が張る物は生地も縫製も全然違うのだ。身に着ける物を選ぶのにわざわざ高い物を買う必要はないが、安いと良くない。実際に、高くても品質の悪い商品ってのはある。が、安くて良い品などこの世にはないのだから。
そこへいくと、本日の時雨は総額いくらなんだろうと気になっちゃう出で立ち。白露姉さんの倍のお値段じゃ効かなそうってのが一目でわかる程度には上等な装いであり上品だ。
シャツ一つ取っても腰元のラインが女性の美しさを存分に引き立てている。具体的にラインがどうなっていれば女性らしさってのが醸し出されるのか見当もつかないが、事実女性らしく美しいので文句のつけようもなく、これがブランドの、ひいては金額の違いなのかと納得せざるを得ない。
ところで、時雨はあまり大胆に足を出したりする服を着ない。
本日もプリーツの入ったスカートを、膝よりは少し高いかな? くらいの丈で抑えている。いや、普段艦娘さんたちの制服姿を見過ぎて麻痺している懸念はある。白い太ももをお日様の下に出している時点で一般的には十分短いミニスカートに分類されるのかもしれない。
ともあれ、当人から面と向かって聞いたわけでもないが、どうやら本人は足の太さを気にしている様子。
時雨の名誉のために言っておくが、足が太いだなんてことは全然ない。
どっちかっていうと白露や夕立が細すぎるんだよな、女の子は少しくらい肉感的なほうがいいぞ、むしろ時雨の足がいい。
しかし山を歩くのに向いてるとはお世辞にも言い難いね、白露のほうはそれでもスポーツメーカー。これ以上ないほど動きやすそうではあるが、角度によっては脇の下から全開しそうだし、後ろは肩甲骨まで丸見え。さらにボトムスは腿の付け根までいくんじゃないかという危険な短さで、肌を覆う布地が極端に省エネすぎる露出具合だ。
足首まであるロングタイツでも穿いてりゃ、まぁ山ガールと言えなくもない。
時雨に至ってはそのシャツってシルクだよね? シルク独特の質感でついつい触りたくなるほど肌触りが良さそうだ。スカートも同ブランドの定番であるあの有名なチェック地でこそないが、知ってる人が見たら一目でわかる黒い方のチェックなスカートである。
活発女子コーデの白露と対照的に、デートに行く気満々のフェミニン勝負服を纏う時雨。
重ねて言うが、時雨の魅力を存分に引き出すほど似合ってはいるので問題はない。山では絶対に見かけない類の服であることを除けばだがな。
「それで、なんで提督はそんなに準備万端なんだい?」
さて、対する俺は何事も形から入るタイプである。俺は普通の人間だからね、タウンユースの格好で山に入るほど捻くれてはいないのだ。
インナーには筋肉の動きをサポートするSKINSまで着込んでいる。筋トレやスポーツなどなんにでも使える愛用の品だ。
トップスには白露とは違うほうの有名スポーツメーカーからDri-FITのカットソー。熱を逃していつでも快適な俺ってやつを全力サポート。
ボトムスはお買い求めしやすい価格設定が嬉しいアメリカンなカジュアルブランド製カーゴパンツ。ほら、白人優遇の求人で物議を醸し出したアソコのやつだ。
カーゴパンツはなにかと使い勝手がいいので一本は持っておくといいんじゃないかな。重くならないようにデザート色で、そしてカーゴはタイトに穿くのがかっこいい。
「あれ、珍しい。いかにも軍人さんが履いてそうなブーツだね、提督は戦争中でも普通の靴だったと思うけど、持ってはいたんだ」
意味もなく動きやすさをアピールする変な動きをしていると、白露が目敏く足元に煌くブーツに気が付いたようだ。
戦争中は履いてなかったって? そりゃそうだ、なんで南国でこんなムレそうなブーツを俺が履くと思うのか。あと甘いぞ、これは帝国軍のブーツではない。
「山を歩くのに一番気を使わないといけないのは足元だからな。くるぶしまでしっかりと固定でき、さらにソールの硬いものがいい」
ドヤ顔でそんなウンチクを垂れると、いや、僕たちは普通に街歩き用なんだけどね、なんて時雨が呟いているが聞こえなかったことにしよう。
それにだ、ウンチクを垂れたところで、未開の地を駆け回るなんてのは俺よりよっぽどこの二人のほうが体験してるんだよなぁ。なにこれ、釈迦に説法、孔子に論語ってやつか? まぁいい。
「これは今はなき米軍の特殊部隊が使っていた由緒正しき代物だ。濡れた岩場でも驚きのグリップ力を発揮する頼れる相棒なんだぜ」
アイテムに凝るのは男の子の持病みたいなものだと思う、こればかりは仕方がない。戦争前にあった「幸福の時代」まで逆戻り、とまではさすがにいかないが、ようやくネット環境なども復帰しつつあり昨今はネット通販なるものが盛況だ。意外だったのは若者よりも年配の方々のほうがインターネットってやつに親しんでいる風なことだな。戦前はほとんど全員が小型の端末で暇を見つけてはネットの世界を彷徨う時代があったらしい。
果たしてそれが人間の幸せに繋がるのかどうかは想像しかねるところだが、生き生きとした表情で若輩に指南する彼らの顔を見るに、まぁ幸せな時代であったことは間違いないのだろう。
そうやってして手に入れたこのブーツ。山を歩きたいのか、このブーツを履きたいから山を歩くのかと問われれば答えは微妙なところだ。
結構な文量でジワジワと書き進めているが、まだ歩き始めていない状況なので、ちゃんと目的地にたどり着くかどうかはわからない。
彼女らの服装や使用するアイテムなんかは実在する物ばかりなので、妄想しながら調べてみるのもいいかもしれない。
もちろんそこまでしなくとも、雰囲気だけで読めるようには書くつもり。つもり。