少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜   作:山田太郎

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うーん本編……。


The future that might have been.11

自然のなす業なのか、長い年月を経て水で削られた奇岩は見ているだけで世界の広さを思わせる。

地球の覇者として大きな顔をしている人類なんてちっぽけなものだ。きっと自然が一度その優しい顔を脱ぎ捨てるだけで、俺たちではどうしようもない猛威を目の当たりにするのだろう。

しかしそのあくなき探究心だけは称賛に値するとも思う。

 

このような場所にもわざわざ足を運び、人類の手垢を残さねば気が済まないとは病的なまでの偏執さ。正気を保つ他の動物にはとても真似できまい。

 

 

 

足元に注意しながら、山で磨かれた水が流れ込む天然物石造りなトンネルを抜け、俺たちはさらに先を目指す。

山に入ってから2時間ほど歩く頃には少し飽きてもくる。進むごとに違う景色を見せてはくれるのだが、尾根を歩くでも稜線に出るでもなく基本沢に沿って縫うように進むからだ。

果たして山間なのか谷なのか、さらにここはこのまま隣県までずーっと奥深い緑が続くので、たまに開けた場所に出ても足元の岩と緑以外は存在しない。

 

軽快に前を歩くケツでもなけりゃ心が折れていたかもしれない、挑発のつもりか? 振るな。

「見るなぁ!」

 

 

さっきまでより濃くグレーを透けさせた白露尻が俺の視界から逃れるように上へ上へと登っていく。

またこんな急傾斜かよ……と、バテる体に鞭を打って追いかけると、ようやく一つ目のピークらしき場所にたどり着いた。そこには質素な東屋が建てられていたので早速荷物を置いて一休み。

結構な高さまで登ったことで隣を走る川はここからは確認できない、視界に映るのは360°山、そして山。

 

それだけであれば、ここにわざわざ休憩に使える東屋などを建てたりしないだろう。

 

歩いているときから耳に届いていたこの涼やかで力強い音の正体、それがここからはよく見える。

谷向こうに見える山の頂から絹のように流れ落ちる滝だ。

 

エンジェルフォールとまではいかないが、樹々を蓄えた深い山の中で見るそれは神々の頂と説明されたら信じてしまうかもしれない神秘。非日常の中にあってもなお異彩を放ち、しばし時間を忘れて見入ってしまうほどだ。

それは二人も同じだったようで、180mもの落差があるというその滝に目を奪われたまま茫然と立ち尽くしていた。

 

 

「凄いね」

 

ややあってようやく口を開いた時雨から出た一言が全てを表している。

本当に凄いものを見たとき、人は身に付けた語彙を忘れるものなのだ。

 

滝を眺めながらタバコに火をつける。

時雨のサックスブルーエネルギーはとうに尽き、なんとか白露グレーだけでここまで歩いてきたが、そろそろニコチンを入れておかなければガス欠になってしまうからな。

 

 

横目でチラリと二人の様子を眺めながら、凄いね、なのはお前たちのほうだと言いたい、ホントにタフだな。

俺のTシャツは早々に、一回川に飛び込んだのかと思うほど汗に濡れたし、ついにタオルまで絞れるほどだと言うのにこの二人はようやく額から汗を流し始めたところだ。

代謝がすこぶるいい奴らなので、これからは尊い汗をいっぱい流すのだろう。流し始めるベースとなるものが俺と全然違うだけで。

 

どんどん汗をかけばいい。お前らの汗は太陽の光を反射してまるで宝石かなにかのようだ。人魚の涙なんて宝石があるなら、艦娘の汗なる物があっても別段おかしくはないはず。涙も汗もどうせ同じ物だし。

なんでなんだろうな、男の汗などドブを流れる排水くらいの価値しかないはずだが、女の子の流す汗には特別な価値があるように思えてならない。聖水か? いや、それは別の物だったな。しかし同じ体液なので薬にはなりそうだ。

 

 

当たり前だがタバコだけでエネルギーの回復は不可能だ。あくまでも精神的カンフル剤だと思ってくれ。山歩きは想像以上に超大なカロリーを消費するので、その分のカロリーも補充しなくてはならない。乾ききった口内にスケッチャーズを無理やり押し込み、水で流し込むようにして胃袋まで届けてやる。

街で食べると甘いだけだが、疲れきった体にはこの甘さがいい。

 

ようやく腰を落ち着かせた二人も今はモグモグとスケッチャーズを頬張っている。

さすがに俺みたいな野蛮な食べ方はしていないようだが、艦娘だってカロリーは消費するのだ。むしろ燃費が悪いまである。

 

まだまだ全然平気そうではあるが、比べてみると時雨のほうが少し疲れている様子。

白露のほうが重い荷物を持っているだって? あの人はほら、スタミナゲージ振り切ってるから。

登坂速度は結構なペースだけど、先導してる白露はアレでペースを落としてるんだぜ、きっと。時雨と二人だったら今頃駆け足で走り抜けてるだろう。その場合はさすがに時雨がバテているはずだ。

 

俺たちと比べると規格外なだけで、コイツらだって疲れもするし限界はあるのだ。

 

 

しかし白露姉ちゃんめ、もたもたしてるようなら俺がケツを押し上げてやろうと思ってもいたが、俺が引っ張り上げられることはあってもその逆はないともう理解した。

最後尾が時雨なのも良かった、これが白露なら体当たりの勢いで後ろからぐいぐい押されていたはずだ。

時雨は俺のペースに合わせてくれるし、もとより男の沽券に関わる領域を土足で踏み荒らしたりはしないのだ。

 

近年稀に見るレベルで足が棒のようになっている俺、これが軍の訓練なら今頃無心で歩いているだろう。

今は邪な気持ちで意識を保っているに過ぎない。

 

ま、ここまでこれば目的の場所まで1時間を切ったくらいだろう。なんだかんだと白露のペースに引き摺られているおかげで予定よりも早く着きそうだ。

 




毎年「伊勢湾台風を超す」台風がやって来ている気がする。
しかしその表現は飽きた。
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