少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜 作:山田太郎
キスカ島撤退の「駆逐艦とは、こんなにも大きな艦だったのか」は涙を堪えきれない。
三船敏郎さんの『太平洋奇跡の作戦 キスカ』は古さを感じさせない良作です。そこまでは……の人は『リアル劇場 キス島撤退作戦』をニコニコ動画で視聴しましょう。
ところでこのデストロイヤーさん。元の艦種を「水雷艇駆逐艦」と言います。想定された敵が水雷艇なので、格上の軍艦を狙うようにはできてないんですよね。もちろん本編の水着とは関係ない。
「ねぇ、下着もあるんだけど」
「白露も普通に女の子らしいやつを持ってるんだな、大人っぽいやつもあって驚いたよ。でも穿かなきゃ意味ないぞ?」
しばらくハイライトの消えたような目をしていた二人だったが、コーヒーを飲むことで心を落ち着かせたようだ。
そんな気にしなくてもいいじゃないか。同じ屋根の下に暮らす家族のようなものだし、別についでだからと漁ったりはしていないよ? まぁ、選びはしたけどさ。
「着替えるにしても、どうしようか?」
「完全に屋外だし、他の登山客も通るもんなぁ」
時雨が白露にそう声をかける。
兵士の切り替えは早いのだ。二人はせめて前向きにこの状況を捉えることにしたらしい。
戦中なら、移動に数日かける航海や陸上での作戦時など必要に応じて屋外で着替えを済ませることもあった二人だが、ここは戦地でもなければ人っ子一人いなさそうな南方の離島でもない。
時雨の場合はスカート姿なので、いつも海に潜るときに使っているショートパンツタイプの水着を穿くだけなら簡単だろう。
問題はトップスのほうだな、時雨の水着はタンクトップだが、ビキニだろうがタンクトップだろうがシャツとブラを外さないと着れないことには変わりない、結局上は脱ぐことになるわけだ。
パレオのほうの水着もあるにはあったが、時雨は泳がないときにしか着ないんだよね、あれ。タンクトップ&ビキニからなるタンキニ水着も悪くはないが、やっぱりどこか味気ない。
白露のほうはもう今のままでも泳げそうな姿なのだが、コイツの持ってる水着はビキニなのだ。
立派な持ち物をしっかりと支えるホルダーネックは、まだ青く清涼感のある柑橘類を思わせる鮮やかなライムグリーンに縁取られた太陽のような色合いで、真夏の元気少女白露の魅力を力いっぱい引き出す良アイテム。
ただ、下は水着の上からデニムのショートパンツを穿いちゃうことが多いからこれまた残念ではあるのだけど、今の服装のまま泳がれるよりはいい。
いや、川に入ることで完全にグレーの下着を透けさせることになる白いホットパンツ尻は、それはそれで素敵なものだとは思うんだよ。だけどそれでも、誰も胸をアピールしないだなんて寂しいじゃないか。正しくないじゃないか。
もっと長波サマを見習うんだ。
彼女には三角ビキニを買い与えてやった。黒のTバックとチェリーピンクのフルバックを二枚穿きしているように見える素敵なやつだ。上も同じデザインになっており、黒地とピンク地が二重構造になっているから長波サマが着けるとそりゃあもう凄いことになる。
ボトムのTバックはあくまでそう見えるだけで、実際は普通にフルバックの水着なんだけどさ。よくよく考えるとノーマルなビキニよりも肌を隠す面積が大きいはずなのだが、セクシーに見えるのはなぜだろう。
それでも両端を紐で結ぶタイプってこともあり俺の目を十分に楽しませてくれる。
プレゼントの袋から取り出した長波は「これじゃあ支えきれないんだよ!」とブーブー文句を言ってはいたが、根が貧乏性なのは戦争が終わっても治らないのか結局それ以降愛用してくれているのだ。
陸上戦闘時にずっと長波と組んでいた白露姉ちゃんはいろんな意味で長波に引けを取らない存在なので、ぜひ役目を全うしてほしいと思う。
「幸いでっかい岩がゴロゴロ目隠ししてくれてるんだ、パパッと陰で着替えちまえば平気じゃないか?」
少し逡巡した時雨だったがそれも束の間、すぐに着替えに適したポイントはないかと探し始め、ほどなくして目ぼしい岩を見つけたのか白露に意見を問う。
そして岩の陰へと歩き始めた白露は、しっとりとした瞳で優しく提督を見つめながらこう言うのだ。
「じゃあ着替えるけど、提督も一緒に着替える?」
あれ、俺と一緒の着替えはいいんだ? と思ったが、俺だって好んで他者に見せつけるよう開けた場所で着替えたいわけじゃない。
ここはお言葉に甘えてっと足を踏み出すよりも前に、半ば呆れたような顔で白露が続けた。
「……嘘だよ?」
だよね。わかってるよ、時雨までそんな残念な人を見る目をしないでくれ。
大人しく自分も登山道から陰になりそうなところまで移動し、そそくさとカットソーやボトムを脱ぐ。あっという間にパンイチ姿、いつでも準備万端の俺。
やっぱズボン履いての水泳はないなと考え直した結果の姿だ。
ちょいと移動したおかげで時雨たちの着替えスポットが視界の端にチラチラと映る。視界の端と言うよりすぐに真正面、瞳のど真ん中に映るようになったわけだが、これは不可抗力だろう。もちろんそれを狙ってこの場所を着替えに使ったわけではないとだけ言っておく。
しかし、もし万が一そうであったとしても誰も俺を責めることなどできないはずだ。
だってそうだろ? ちょっとそこいらにはいないレベルの美少女が晴天の山の中で服を脱いでるのだから、人類のオスなら全員が見ると断言できる。見ない奴がいたならそれは正常な状態ではないはずだと、大きなタオルで目隠しを作ってあげていた時雨とバッチリ目が合ってしまった俺は言い訳、もとい人間にとっての摂理を彼女に述べるハメになった。
「着替え中の女性を覗くのはマナー違反だと僕は思うな」
仰るとおりです。
先に述べたとおり、見てしまうのは不可抗力だが、だからと言って覗きの行為が赦されるわけじゃない。
しかし言い訳ってやつは、まず口に出さないと効力を発揮しないことを俺は知っている。
そして人ってやつは会話すればするだけ怒りを治めていくものだ。できることなら怒っている人間には冷たい飲み物を出すといい。
「待て、話せばわかる。昔偉い人もそう言ってたくらいだからそうなんだろう」
「その人はその後に撃たれていたけどね」
俺の精一杯の弁明を話して聞かせようとしたら、思いの外に物騒な返答がきた。
この場合に俺が取るべき行動、それは素直に謝罪することだった。
やっぱり素直が一番だね、岩に登って高いところから確信犯的覗きを行っていたほどではなかったので、とりあえずは受け入れてもらえた。
時雨の日記にまた一行余分な文言が増えるのは止められないかもしれないがな。
さすがに二度目ともなると後が怖いので大人しく荷物の番をしていると、それほど時間を掛けずに白露 Ver.水着と時雨 Ver.水着がお目見えした。
海での姿と変わらずビキニにデニムのショートパンツを重ねる白露と、白を基調としたノースリーブに濃紺のショートパンツ水着な時雨。
見どころとしてまず外せないのは白露の胸。繰り返すがビキニだからね、しっかり凄い。
時雨は露出抑え気味ではあるが、同じショートパンツでも時雨のは重ねているわけではなくこれが水着だ。裾の隙間が気になるね。
さて、せっかく着替えたのだ。観賞会は泳ぎながらするとして、さっさと疲れた体を水に浮かべて身を清めてもらうとしよう。
どこから川に入ろうかって、そんなの決まっている。
コーヒーを飲むために川近くの平らな岩を探し、その陰には荷物を固めて置いてあるわけだが、この岩は飛び込むのにちょうどいいわけだ。
上流にある川にしては川幅はそれほど狭くはないが、透き通った川底から判断すると結構浅いところが多い。
とはいえ、川は場所によって急に深さを変えるものだ。
件の岩は川の流れがちょうど良い感じに曲がってくれているのか、川底が深く掘られている場所に突き出している。「ここから飛び込めよ」と、そう誘ってくれているかのようなベストポジションにあるのだ。
「いっちばぁぁぁん!」
二人の水着姿を舐めるように見ていたら、助走をつけて一気に飛び出した白露に先を越されてしまった。
ここは先に俺が水深を確認していた場所だから良かったものの、本当に見る前に飛ぶ奴だな。
水着姿くらいいつも見ているだろって?
確かに夏の間は頻繁に見ている。二人の水着姿だけでなく、一緒に住んでる艦娘さんたちとも交代で海に繰り出しているのでカナリの数の水着を日常的に見ていると言っていい。
じゃあなにか、昨日見たから今日はいいだろってなるか? いや、ならない。当たり前である。
特に本日はいつものシチュエーションではなく山に川で水着なのだ、そりゃあ見るだろ。
ここまでの思考0.2秒。
心地良い水飛沫の音を立てて飛び込んだ白露が、とても良い顔で「つめたぁぁい!」と騒いでいる。
見ずに飛び込むのもどうかと思うが、体を水に慣らさず飛び込むのもどうだろう。これは一応言っておくだけの大人の意見だ。
川への入水。その一発目は勢いよく飛び込むのが正しいと、実は俺も思っているからな。
しかし真似はしないように、山の川は夏でも本当に冷たいぞ。
目敏く確認したが、水面下では飛び込んだ勢いで白露のビキニがズレて大変なことになっている。紐で結ぶだけの水着に防御力を期待しても無理な相談。特に飛び跳ねる白露胸を完全に支えられるビキニなど、それはもはやビキニではないだろう。俺が川に飛び込む理由なんてそれだけで十分だ。
ここまでの思考0.5秒。
ならば俺だ。その胸に目掛けてとはいかないが、すぐさま白露に続いて飛び込んだのは言うまでもない。状況は秒を争う。
清流は、予想どおりと言うか予想以上に冷たく、そして気持ちがいいものだった。
飛び込んだ衝撃で泡立ったものが落ち着くのをじっと水中で待ち、川の透明度を活かして問題の白露を確認すると水に浮かぶ少女の伸びやかな肢体が目に映る。
水の中で、そして至近距離で改めて見る白露の健康的な腹部は惚れ惚れするほど美しく、水中を掻く足も肉感的で素敵だった。
でだ。問題の箇所を見上げると溢れたものをいそいそと水着の中にしまいこんだところで、柔らかそうなことだけはハッキリ伝わる普段お目にかかれない白露の下乳が、水着に押し潰されて形を変えながら、あっという間に布地の下へと包み隠されていった。
潜水していることもあり、ちょうどのところまでハッキリと見えたわけではないが、しかし薄っすらと色が変わりつつある辺りまで見えたような気がする。いや、見えたのだと自分に言い聞かせるほうが幸せになれるはずだ。
それらは一秒にも満たない出来事で、さらに水面下だけで行われたこと。
きっと白露自身は誰かに見られたなんて意識も持っていないはずだ。
なに食わぬ顔で俺が水面に顔を出すと、交代に時雨が飛び込んでくる。
時雨の場合は水着が水着だからな、アクシデントもなく無事に合流した。
水に浸かることですでに十分に不快な気持ちとおさらばできたわけだが、じゃあ汗も流したから上がろうか、では味気ない。
やはり上流に見えている滝くらいまでは間近で見ておくとしよう。
先ほどまで歩いてきた登山道はここで川と別れ、この先はまた山を登って行くルートをなぞるので、ここから見ることのできる川上の滝に行きたいなら川の中を行くことになる。
多分よほどおかしな精神でも持っていない限り、「よし、道がないから滝まで泳ぐか」とはならないんだろう。
そう考えると、さほどの距離があるわけでもないあの滝を間近で見た人間の数はそれほど多くはあるまい。
そのカウントを三人分ほど回してやるとしよう。
【予告編】
「その男は君が身を挺して守るほどの価値があるのか?」
「はぁ? 知らないよそんなこと。ただ提督は弱っちぃからな。私が守らないと死んじまう、そんだけだ」
小さな体で精一杯腕を伸ばし、提督を庇うように前に立ち銃弾を体で防ぐ。銃弾がめり込んだところが焼かれるように熱い。
幸い自慢の顔にはまだめり込んでいないようだが、側頭部を掠めた弾丸のせいで右耳が半分ほど吹き飛び予期せぬ軽量化を果たしてしまったようだ。
だからと言って提督の前からどくことなど考えてはいないが、このままではいずれ陸の上で自ら作った池に沈むことになる。
「いくらなんでも陸の上でこれ以上喰らうと保たないぜぇ! どうするんだい?」
「もう少し耐えてくれ」
「肩に手を置くな! 提督の指が千切れ飛んだら治せないんだぞ! ちょっと待て! 腰でも一緒だ、掴むなっ!」