少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜   作:山田太郎

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「水母」

はて、「くらげ」と読むべきか「すいぼ」と読むべきか。
知り合いの娘さんが「海月」だって? それは「くらげ」だ。


もうすぐ繋がる※シリーズです。
もう一度、「え、ここで?」をお届け。



※リバイバル※

いやだ……。

 

それは声にもならなかった。

ただ虚空を掴むように手を伸ばし、刹那の先に訪れる避けられない未来に嘆いたのだ。

 

 

いやだ、こんなのはいやだ──。

 

 

その砲弾は、ひどくゆっくりに見えた。

大切な物を壊すその凶弾。

まるで吸い込まれるように──。

 

 

こんなのは、イヤだ。

 

 

それは、僕の世界を壊すモノ。

それは、まるでコマ送りのように彼の艦へと……。

 

 

 

 

体が燃えるように熱かったのを覚えている。

燃えていたのは世界だった。

 

なにも聞こえないほど、うるさかったことを覚えている。

耳にこびりついているのは世界の悲鳴だ。

 

そこは地獄だった。

空が落ちてきたように、簡単に街を壊した。

瞬く間に火の手が上がり黒煙が空を染めていく。

 

繋いでいたはずの手はいつの間にか離されていて、立ち尽くすことしかできなかった。

逃げることも、助けを呼ぶことも、なにも。

幼かった自分にはなにもできなくて。

ここで死んでいくのだと、なにもわからないなりに理解した。

 

悲しかった。寂しかった。そして、怖かった。

自分の世界が壊れていく。それがなによりも、恐ろしかった。

 

 

ああ、これは夢だ。

また、あの時の空に囚われている。

まだ、あの日の炎に囚えられている。

 

息をすると空気が熱い、肺が焼かれているようだ。心臓の鼓動が速くなっていく。

この炎に焼かれた町で、俺も焼かれていくのだろう。

あの日と同じで体が動かない。迫りくる赤は死そのものだ。

体を端から舐め尽くし、人も建物も一緒くたに黒く変えてしまう。

 

 

そんなときだ、熱さではない温もりが右手に触れた。

誰かが優しく握ってくれているのだ。

 

大丈夫だよと、声が聞こえる。

安心できるように、何度も繰り返されるその声。

 

大丈夫だよ。

大丈夫だよ。

 

 

呼吸が落ち着きを取り戻し、静謐な空気で肺が満たされていく。

高鳴っていた鼓動は静かに、また命を刻みだす。

 

誰かが優しく抱いてくれている。

 

 

 

「僕が、君を護るから……」

「し、ぐれ……?」

 

 

 

「提督、無事かい? 本当に、本当に良かった」

 

どうやら時雨に抱き抱えられているようだが、視界が滲んでその姿は捉えられない。

なぜ、お前は泣いているんだと尋ねたいのに、うまく声も出ない。

なぜ、俺たちは揃って濡れ鼠なんだと問いたいが、頭がうまく働かない。

 

 

「司令官、お目覚めですか? 時雨さん、まずはここを離れます。司令官をどこか陸地へ運びましょう」

「うん、うん。そうだね」

 

朗らかな空気を作っている。

そんな綾波が提督を覗き込み、時雨に当座の行動目標を伝える。

それに、声までが水に濡れたような時雨が応えた。

 

いつも笑顔を浮かべながら泰然としている綾波が強張った空気を隠しきれないでいる。

それで十分今の状況が提督には理解できた。

 

 

 

「提督、少し痛むかもしれないけど、大丈夫だよ。僕は提督を離したりしないから……僕が提督を、死なせたりしないから」

「行きますよ。妖精さん、なんとかボイラーに火を、ここで沈むわけにはいきません」

 

 

 

ボロボロになった二人に抱えられ、音の暴力が支配する海を渡る。

 




急にシリアスになったりもする。
落差の激しさが凄いです。

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