少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜   作:山田太郎

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危ない危ない。コピペミスって内容全削除してしまいビビったビビった。

iPhoneのメモ帳だと振ることで直前の編集に戻れるんだよね。
この機能がなかったら、早くも投稿を諦めていたかもしれない……。


小島での生活6/ 月夜に咲くガラスの花弁

金属と金属が互いを押し潰す、そんな耳をつんざく反響音が木霊する。

あまりの音に視界が歪む。

 

戦艦の直撃弾などを貰えば駆逐艦など1発で海の藻屑だ。

しかし、どうやらまだ自分は海に浮いているらしいと自覚し、そして時雨にもすぐ状況が把握できた。

 

 

戦艦ル級の放った砲弾が直撃する寸前、比叡が眼前に割り込んだのだ。

「比叡さん?」

 

「いてて、大丈夫ですか?」

比叡さんこそ、なんで……。あまりのことに、それは言葉にできなかった。

比叡は時雨を海面に押し倒し、覆いかぶさるようにして庇ってくれていた。

戦艦の砲撃をまともに浴びた比叡の艤装はブスブスと焦げ、装甲が凹んでしまっている。

 

そして、比叡の身を案じるより前に、彼女は言った。

「私は金剛型戦艦の2番艦。お姉さまの顔に泥を塗るような真似はできません」

慈しむような、そんな笑顔で、時雨の頭を優しく撫でる。

「1番死地に近いところにいるのはあなた方駆逐艦娘です。そんな駆逐艦の子たちを守れないでなにが戦艦でしょう」

 

時雨の手を取り、再び海面に立たせる比叡。

体に傷がないことを確認すると安堵するかのように息を吐いた。

「お姉様にもよく言われたんです。私たちの装甲はなんの為にあるのか、きっと今のためにあるんです」

 

自身は傷だらけなのに、それをおくびにも出さず。くるりと背を向けル級に対峙しながら時雨に問いかける。

「さぁ、もう一踏ん張りです。できますか?」

「もちろんだよ」

この借りは返させてもらう。守られてばかりの自分になることを、とても許せそうにない。

 

 

湾内では、水上を切り裂くように走る綾波が反転し、残った重巡に肉薄している。

至近距離から砲撃を行ったかと思えば、装甲を叩き割るような凄まじい音を海に響かせた。

 

それは衝撃的な出来事だった。

駆逐艦の本懐は大型艦喰い。しかし、それは通常雷撃によるものだ。

昼の砲戦で重巡の装甲を抜くなど、到底考えられないこと。もっと言うと、駆逐艦が格上相手に砲戦を挑むといった選択肢自体が、海戦の当たり前からすると有り得ないことだった。

 

「さーて、やりますよー」

綾波が踏み込み、その勢いのまま砲弾を繰り出す。

軍艦の墓場と呼ばれるソロモン海域で黒豹の2つ名を持つ本物がそこにはあった。

 

 

戦艦への睨みを利かせながら、泊地棲鬼への攻撃は比叡と龍驤が行なっている。

駆逐艦の砲撃では泊地への決定打となるような攻撃は期待できないからだ。

派遣された艦隊に戦艦が1隻だけ。戦力に不安を覚えたが、見誤っていた。

敵は侮れない。そう思ったから比叡が参じた。御召艦比叡は、ただの1隻で十分だったのだ。

 

時雨の知っている比叡はいつだって優しく、時に騒がしく場を盛り上げてくれる存在だった。初めて接した戦艦ということもあり、この懐の深さこそが、国の威信を背負った戦艦なのだと気遅れしたことも事実だが、それさえも親しみを持って接し、緊張を解いてくれた。

だから、このような比叡を時雨は知らない。

ただ優しく、ただ親切なだけで御召艦に選ばれるわけがないのだ。金剛型の2番艦。長く、長く戦い続けた歴戦の艦。

 

彼女は、夜叉と呼ばれた大戦艦なのだから。

 

 

彼女は煤に汚れ、艤装はところどころ凹んでしまっている。それでも真っ直ぐに前を見据え、仲間に不安を与えない背中を今も見せ続けている。

艦戦を先頭にした龍驤の攻撃隊が、雲霞の如き敵機を抑えて制空を確保する。

断末魔の叫びを上げる泊地棲姫。

 

二人だけで姫を圧倒する姿は戦神のもの。

駆逐艦では真似のできない、そんな戦いだった。

 

 

これで目標のほとんどは達成された。あとは、残存艦を掃討するだけだ。

ここからが僕らの戦いだと、時雨は静かな闘志を燃やす。

 

駆逐艦には駆逐艦の役割と、そして戦い方があるのだ。

大型艦にも負けない水雷の戦いを、しっかりと彼女たちに見せなければと奥歯を噛み締める。

 

 

日が遠く水平線に沈んでいく。

南方の海が墨汁をぶち撒けたように、見せる風景を塗り替えていく。

 

「さて……」

空気が変わった。

周囲の気温が一気に下がったかのような錯覚。張りつめられた緊張感の中で、静かな殺気を含んだ声が言う。

 

 

「私たちの時間だ」

 

 

水雷戦隊旗艦の姿がそこにはあった。

夜戦を十八番とするのは帝国海軍のお家芸。その中でも特に3水戦は、軽巡川内は、自身の持つ戦果のほとんど全てを夜戦で挙げるほどの、生粋の帝国海軍水雷戦隊旗艦だ。

 

 

「いつものように早い者勝ちだよ!」

そうだった。射的で的を射るように、さもそれが当たり前なのだと嬉々として戦場を駆けていく。3水戦は夜の王だった。

 

「この海域は譲れません!」

 

その容姿や物腰を見て、誰が想像できるだろう。夜陰に紛れて果敢に突撃。手を伸ばせば敵艦に触れるような至近距離で戦艦を滅多打ちにする姿を……これが、鬼神と呼ばれた駆逐艦。

上手いとか、凄いだとかではない。もっと単純に、これは強いのだ。昼戦でも驚いたが、本当に驚愕するのは夜戦で更に火力を増すという事実。

 

綾波や敷波に指示を出しながら、敵の水雷戦隊に囲まれても笑顔を絶やさない。

誰よりも疾く、誰よりも前を駆けていく僕たちの道標。川内にかかれば2隻3隻の敵艦など数のうちには入らないのかもしれない。

次々と砲撃を繰り出し、敵艦は炎に姿を変えていく。

 

 

「僕も負けてはいられない」

時雨に派手な火力はない。条約型と呼ばれる駆逐艦として生を受けた時雨の性能は、お世辞にも高いとは言えないものだ。しかし堅実な積み重ねの果てにたどり着いた精緻な動きは自分を裏切らない。

そうやって時雨は、艦隊決戦型駆逐艦の完成形と呼ばれた陽炎型の艦娘と並んで、奇跡の駆逐艦と言われるまでになったのだ。

 

 

誰にも負けないと言えるモノがあった。提督を支えるために、提督を守るためにと鍛え続けた時雨の刃。駆逐艦の本懐、それは雷撃による一撃必殺なのだから。

 

その光景を見ていた比叡が、美しいと感じ目を離せないでいたことを時雨は知らない。

川内や綾波らの観客を魅せる激しい演舞が終わり、次いで訪れたのは静寂の水面を流れるように舞う姿。月光に照らされた戦場は時雨のためのステージだった。

 

後で見返しても、これ以上はないという絶妙のタイミング、絶好のポイント。これが黙々と積み重ねた時雨の絶対。

放った魚雷は迷うことなく直撃コースを突き進む。

それは、決して華々しい大花ではないが、触れると切れる、儚く薄い精緻なガラスの花弁。

 

 

巨大な水柱に包まれた戦艦ル級が、轟音を上げつつ水底へと姿を消した。

 

 

「ちぇっ、今回の殊勲は時雨かぁ」

 

「ちょっと戦い方変わった? 動きのキレが増したのもあるけど、なんていうのかなー、前とは違うように感じたよ」

「動き方が変わったのかな、秘密の特訓をしているからね」

 

戦艦を沈めたのは確かに自分だ。しかし、足を引っ張ったのは紛れもない事実。

繰り返された訓練は役に立っている。しかし、まだまだ先は長い。

 

 

「そうだね、小島での1年はいろいろと為になったよ」

 

提督と2人きりで過ごした、南国の楽園でのぬるま湯のような生活は終わりだ。

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