少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜   作:山田太郎

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この話はこれでお終い。
理由は後書きで!


前に落書きした霞の絵だが、アレは完成しないことがわかった。
ペンタブを出してくるのが面倒ってのと、提督を描く気になれないってのが理由だ(¬_¬)

しまっておいてもアレなので供養がてら置いておきます。
マウスオンリーな下塗りと「だいたいこんなイメージ」ってのを掴むためだけに配置した提督(偽)がいるので、それなりに感じは伝わるだろう(そのはずだ)。


【挿絵表示】






南遣艦隊2

「もしもがあれば、その時は武力で政権を奪取する。いわゆるクーデターってやつだな」

「それが少々の無茶か?」

 

飽きれたようにジジイが言うが、字面から感じる印象ほどの無茶ではない。

結局のところ、現代社会に属する民主主義ってやつはソレを防ぐよう苦心して作られてはいるが、頭でっかちな方々が言葉で守っているだけのものに過ぎないからだ。

 

特にこの国ではそうだ。

最終的なところを良心とやらに頼っているのかもしれない。

 

いつの世界でも、とどのつまりは力の強いものが勝ち、その後の世界を構築していく。

力にも種々あるが、物理的パワーに勝てる力は本当のところ存在しない。

 

もっとも使われるべきでない力。

それは軍事力であり、やっぱりただの暴力だ。

 

 

「平和ボケした奴らの意識改革を待てる余裕はすでにない。今すぐにでも戦時体制を整えねば遠からず前線が干上がる。そうなりゃ内地の生活も破綻するだけだ。これが鈍化するようなら、それは前線で戦う軍人として許容できない」

 

 

政治と軍事はいつの時代でも折りが悪い。日常では見えにくい保険に金を払っているようなものだが、特に軍隊は金食い虫だ。

当時は大蔵省だったか、大不況を前にダルマさんと呼ばれた大臣が軍事費を削減したが、アレも結局軍部の反感を喰って暗殺されてしまった。

 

戦争の影がジリジリと忍び寄る悪い時期だったとも言えるが、今はすでに戦争中だ。

当時ほどあからさまな力があるわけではないが、軍にはいつだって反旗を翻すだけの力がある。

文官の治める現代社会の軍隊、特にこの国にあるのは良識の行き届いた文明的な軍隊だ。それでも、国家を護るために必要とあればやらねばならない。

 

邪魔者を順に暗殺していった当時と比べれば、よほど良心的で平和的な解決策だと思う。

 

 

 

「私に人の政治はわかりません。けれど、二人にとっての最良がそうなのだとしたら、私は最善を尽くすつもりだわ」

 

荒唐無稽な提督の発案に静まり返った場は、加賀がそう言ったことで一気に現実的な空気を帯びる。

 

姉のそれは本心でもあるのだろうが、空気を読んださすがの発言でもあった。

 

会議での基本テクニックだ。

通したい案を発表するとき、放っておけば次にあるのは反論だ。

しかし間をおかず同調意見を寄せてしまえば場の流れを一気に引き寄せられる。通したい案がある時、2人目の発言が場の流れを変えるキーマンとなる。

本来なら仕込んでおくべきことだが、打ち合わせなしでもそれをやってくれるのが姉である。

 

 

その盲信に近い、愛情だか信頼だかの感情は重すぎる気がしないでもないが、育ててもらった恩義は間違いなく感じている。

艦娘なるものがいつか老いるかどうかは知らないが、もしそうなれば老後の面倒はしっかり看るから任せてほしいと思う。ついでにジジイの面倒だって看てやるつもりでいる。一人も二人も違いなどないからな、仕方がなくだ。

 

口に出すと怒られそうなので口にしたことはなかったが、それも今後の進展次第ではどうなるかわからなくなった。

 

 

 

「具体的には?」

ポッと出の案に思案を重ねていた中将が話を詰める気になったらしい。内容についてを尋ねてきた。

 

それが実現可能で、どのような障害や問題を孕んでいるかは今から考えること。

まだ可能性を示した段階だ。選択肢を提示したにすぎない。

 

 

 

 

「現政権との強力なパイプが不可欠だ。そいつらが途中で日和らなければだけどな。実行するのはもちろん現政権が倒れた後になる。仔細はそっちでやれよ、餅をつくのは餅屋に任せるさ」

 

これらはまだ、たらればの話に過ぎない。

現政権にとてつもない追い風が吹いて盛り返すかもしれないし、次の政権も思ったほどには変わらないかもしれない。

だが、そうなってしまってからでは遅いのだ。

 

軍が身動きを取れなくなる前に、それらは準備しておかねばならない。

まずは戦争の内情を知ってくれているという現政権と繋がっておくのが大前提。いざ政府を打倒しても、軍人にいきなり(まつりごと)が務まるはずがない。

政治を知っている協力者がいなければ、クーデターを成功させたところで過去に例のない酷い新政権が誕生してしまうことになる。

 

 

 

「戦争を始めるのは簡単だ、ただ引き金を引けばいい。問題になるのは終わらせ方だが、最後まで見えているのか?」

 

一番重要になること、それが結末。

過程の問題はこれから話せばいい。希望としては現政権の人材をそのまま立てたい。俺たちが仕切るよりよほどうまく官僚を動かせもするだろう。政治のことは政治家に、だ。

 

ただ俺たちが始めるのなら、終わらせ方くらいは話しておかなければそれもただの夢想になる。

 

 

問題はない、終わらせ方だけなら決まっているのだ。

本当の問題は、終わらせた後のこと。

それを伝えておかなければならない。

 

 

 

「当然のことだか終戦が成れば政権は返上する。そのときには責任を取る形で首を差し出す必要があるだろうな」

 

平和の訪れた世界で軍事政権など笑えもしない。これはあくまで戦争に勝つための方法なのだ。

軍が主導して国を動かすなど碌でもない未来しか見えないと俺も思うのでできれば避けたいが、それが避けられないのであれば、の案だからな。

 

だからこそ、終戦の後にはその責任を取る者が必要だ。

そのことを告げると、間髪入れずに待ったを掛けた人物がいた。

 

「まさか、坊ちゃんの首を差し出させるつもりではないでしょうね」

 

 

もちろん言ったのは姉だ。

先ほどの最善を尽くすというのは嘘らしい。

 

いつもと変わらない平坦な声だが、姉のことならわかるのだ。絶対に看過できないとの強い意志を感じる。

姉が俺に甘いことは承知しているので、いつもなら彼女が反対をしていても最終的に俺の希望が通ることも多い。しかし、これはまず間違いなく通らないときの姉。

 

だがそれは杞憂だ。自分の命で事が足るのなら、戦後にそれを差し出すくらいはしてやるつもりではある。あるのだが、それは無理だろう。

なので俺では足らない理由を話す。

 

 

「残念ながら、俺では若すぎる」

 

 

責任を取る立場。それはいわゆる世間様とやらが納得できる者でなければならない。

発案が俺である、などの内実はともあれ、俺の首では不足する。

階級だけなら今しがた准将なるものになったところだが、それでもまだ足りない。年齢のこともあり納得はしてくれないだろう。

 

じゃあつまり、誰がその立場に立つのかと言うと、

 

 

「ふぅ、だからワシにやれと、そう言うことか」

「生憎と、アンタ以外の奴に死んでくれと言えるほどの神経は持ち合わせてないんでな」

「ふん。海軍中将だ、格としては問題あるまい」

 

責任を取って死ね。そう言われたに等しいことだ。

しかしジジイは特になんのことはないと、それも受け入れてくれた。「ふざけるな」と言ってくれたなら、大人しく時世の流れに乗って、そこでの最善を目指そうと思ったんだけどな。

どうやらジジイの中でも、今軍が目の(かたき)にでもされれば終戦が遠のくってのは確定事項らしい。

 

 

自分の行動が半ば『試し行動』みたいで嫌になるな。

それは里子が育ての親にするという愛情の確認作業らしい。わざと問題行動を起こすなどして、それでも自分を愛してくれるのか……なのだそうだが、親の心子知らずでもないが、それは逆効果だろう。

愛情も信頼も積み重ねていくものだ。貰われてきたその日から問題行動を起こせば積み重ねる土台ごとなくなりかねない。

 

もっとも、サエさんの話では俺も存分にしていたらしいけど。

よくも見捨てずに育ててくれたものだと思う。

 

 

俺は家族になれているだろうか。

当然のことだが、俺だって好んで家族の命を賭けたいだなんて思わない。

 

しかし、他の誰にも頼めないことだ。

癪なことに、ジジイよりも信頼できる大人を俺は知らない。

途中で逃げ出すことなく、その役を真っ当できる大人を俺は他に知らないのだ。

 

 

 

「戦争だけをさせてくれるなら、もっと楽に戦えるんだろうにな」

 

 

これは愚痴だ。

自覚はあるのでたまにの愚痴ぐらいは見逃してくれ。

 

俺たちは前線で命を秤にかけながら戦っている。この国の未来のためにだ。

それを、生活水準を落としたくない国民サマの都合で横槍など入れられたくはない。

 

艦娘が死ねば俺たち軍人は戦えない。

そうして俺たちが死んだあと、いったい誰がお前らの生活を護るのかと、そんな当たり前のことがわからないようならクーデターもやむなしといったところだろう。

 

 

 

「人には役割がある。成せる能力があるならただ成すだけだ」

 

俺も、ジジイくらいの年齢になればそう思えるようになるだろうか。

親の背中は大きいと聞くが、これがそうなら正しいことのようだ。

 

そうだな、割りを食ってるんじゃない。

できることを与えられているだけだ。

だったら、むしろ俺たちは恵まれてるじゃないか。

 

 

「なら国民の生活を向上させるために、俺は精々戦場で足掻くとしようか」

 

 

俺を救い、育ててくれた男に死んでくれと言わなければいけない世の中など世知辛いものだが、光明があるにはある。

 

軍が完全なる勝利を治め、戦後が豊かであるならば、戦中に必要だった処置に過ぎないと開き直ることもできるだろう。

一時的とはいえシビリアンコントロールを蔑ろにした日本は諸外国から叩かれるかもしれないが、戦後を軍事国家として歩んでいくような頭の悪い選択をしない限りは、まぁ内政干渉をするな程度で済む話だ。

 

 

希望的観測ではあるが、誰も傷付かない未来は確かにあるのだ。

少々頼りない薄氷の上を歩くことにはなるが、希望ってやつがなければ人は歩けない。

戦後の世論が俺たちにとって都合の良いものになるよう、俺たちは前線で戦うだけだ。

そうでなければ、こんな提案誰がするものか。

 

 

面倒なことこの上なかったが、『佐世保の英雄』なんて名前を背負ってきたことに感謝するときがこようとは、人生わからないものだな。

立ってる者は親でも使えを地で行く俺だ。

ジジイの命を担保しての一世一代の賭け事と洒落込むのも俺らしいと、ジジイも姉も理解してくれるだろう。

 

 

俺が勝利を重ねれば重ねるだけ、戦後の責任を軽減できる可能性がある。

俺は負けるのがわかっていて戦うタイプではない。俺がやれば、それは叶うのだ。

 

 

佐世保の英雄が勝てばいいだけの話だ。




【ネタバレ注意】


前回の前書きに、なければないで構わない逸話だと書いたけど、その理由はこの未来を辿らないからです( ͡° ͜ʖ ͡°)


この未来を辿るほうのストーリーでは、クーデターの計画を事前に察知した別の派閥によりジジイが失脚させられ、他に回せる人材がいないってことで提督がその席に座り、あわや反乱軍として長門を主力とする艦隊に追われる! くらいまでの流れがあったのですが、全く終わる気配を見せない超大作(文量的な意味で)になってしまうので投稿にあたりボツ案に。

ラバウルの加藤基地司令官とかも再び登場するはずだったんだけど、人間ドラマばかりで艦娘の活躍もあんまり期待できない話なのでしゃーなし。

すでに予定を大幅に超過して長いしな〜(。-∀-)


ってことでボツとなった未来の、ちょい先のお話をオマケで置いておきます。
文量はオマケ用に削ってある。まぁオマケなので。


【ボツ!】

「旗艦長門、出る!」
遠く横須賀の地でその一報を受け、おもむろに出撃を決めた。
凛とした佇まいに、いつでも冷静でどっしりと構えるその姿。それはどのような苦境にさらされた戦場においても、友軍にこれ以上ない信頼と安心を与えてきた。


護国の象徴としてある戦艦長門は、そうあるべきという姿勢を崩さず、海軍の道標であったのだ。

その長門が額に汗し、落ち着きを捨て港を進む。

長門の耳に空より聞き慣れた音が届く。
「艦載機? あの識別は……」

「どこへ行こうというのかしら?」
「加賀!」

「あの子のところへは行かせません」
「……そこをどくんだ、加賀。私は行かねばならん」
「いいえ、どきません。あの子の脅威となる貴女を、みすみす通すわけにはいきません」

「脅威となっているのはアイツのほうだ! 奴が国家の安寧を損ねるというのなら、それは止めなければならん」
「今後の艦娘のためよ。あの子は艦娘の未来のために戦っているんだわ」

「だがその方法が間違っている! 間違いを正してやるのは大人の仕事だと言う。ならば、この長門が目を覚まさせてやらねば」
「たとえ間違っていたとして、それがどうしたというの!」

あの加賀が大声を上げている。
長門以上に冷静沈着な加賀が、その感情を抑えることなく言ったのだ。その胸中を想うと胸が痛む。


「あの子は私の守るべき家族です。間違っていたとしても、私はあの子を守ります」
「この、分からず屋が!!」

堪らず加賀の襟首を掴み、壁へと押しやる長門。
艦隊で知らぬ者などいない、大御所2艦の言い争い。それは横須賀を揺るがす大事件と言っても大袈裟ではない。
その場に居合わせた軍人たちはさぞ肝を冷やしたことだろう。



「アイツはお前の息子だ! ならば、ならばアイツは、この長門の甥とも言える男だろう! 身内が道を踏み外したのなら、頬を叩いてでも道を正してやらねばならん」

そして一呼吸置いた長門が言う。
「なぜ……そんなこともわからんのだ」
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