少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜 作:山田太郎
少女のつくり方は時系列を吹き飛ばし、細切れの本筋と番外だけで進んでおりますが、考えてみると提督やその周辺の逸話が弱いなと。
そういったエピソードがあるにはあるのですが、なにぶんそれぞれのエピソードが完結していないのでぶっ飛ばして進めてしまった。
これでは感情移入も難しく、関係性も伝わらないだろうと反省。
この話は読者のみなさまのたくましい妄想力必須の話で、それらを強いてしまうものではありますが、丸投げで理解しろは無理がある……。
提督は提督として信頼される理由が必要だし、周囲を固める人物にも本編で“そうされる”理由を書かなければ(;´д`)
「はぁ」
机に縋り付くようにした男が肩を落として盛大な溜息を吐く。
背中にあからさまな哀愁を漂わせた男だ。
「なによ、さっきから鬱陶しいわね」
今は霞しかいない管理部の部屋で、特になにをするでもない山崎が何度目になるのかわからない溜息を吐いた。
基地内では特に六駆のみんなと仲が良い山崎だが、彼女たちは輸送で基地を離れがち。輸送護衛に着いて行くことも多いが、時期によって彼女たちは出ずっぱりになる。さすがに人間であるところの山崎は途中で休息期間を入れないと体が保たないのだ。
そういったとき、なにかと霞のところまでやって来てはこうして近くに陣取っていることが多い。
山崎なりに、雑務を言いつけやすい位置にいることで気を遣っているのかもしれない。
霞もなんとなくそんな山崎の配慮らしきものに気が付いているので、居着かれても文句は言わない。
なんだかんだと霞は寂しがり屋でもあり、人が好きなヤツなのだ。
が、これは盛大に迷惑だ。
「で、なに? どうでもいい話なら追い出すからね」
女の腐ったような、なんて言うとワタシも含めた女性に失礼だと思うが、形容としてはそんなものだ。
うじうじと煮え切らない山崎がたどたどしく話した内容は青天の霹靂。
それは、南方海域へ進出する段取りで頭を悩ませていた霞の脳天に違う角度から一撃を喰らわせる予期せぬものだった。
「想像はできても実感は湧かないわよ? 人の恋愛感情なんてわからないんだから」
「相談のしがいがないっすね」
山崎の口から出たのはそんな話。
つまり気になって仕方がない艦娘への想い、なるものでヤキモキしている。と……。
溜息を吐きたいのはワタシのほうだ。
「うるさいわね。アンタにはワタシがそういった機微を得意としてるようにでも見えてるの?」
「いえ、まったく」
この男、一度本気で殴ってやろうかしら。
律儀にも書類から目を離し、山崎の話をちゃんと聞いてあげようとしたらこれである。
「しっかし由良さんって、ホントお淑やかでキレイな女性ですよねぇ」
そんなことを言う山崎に、つい反射的に小さく片眉が上がった。
由良がお淑やか? 残念ながらその感想には同意しかねる。
男と女、それも人間と艦娘だ。視点が違うのだろうか? ともあれ、この男には由良がお淑やかに見えているらしい。
それもいいかと霞はすぐに考え直した。
誤解がなければ人間関係など成り立たないと司令官も言っていた。せっかくの思い込みをワタシが粉砕しても仕方がない、好きにさせておこう。
「それで、あんまり聞きたくはないけど、それはなに? 由良と男女のお付き合いがしたい的ななにかかしら? もしそうならワタシは立場上後押しも協力もできないんだけど」
ついぞ出た溜息と共に机に肘をつき、手のひらでアゴを支えるようにした霞が言う。
山崎の人間性は知っているし、いつも真面目に職務に励んでいる山崎のことならばと思う気持ちもある。有り体に言えば山﨑は良いヤツなのだ。
そういったことに明るくはないが、どうやら人の男は女性のためなら実力以上の力を発揮するものらしい。
しかし事は男女のことだ。
そういったものは永続を保証するものではないと、これまた司令官から聞かされている。
いざそうなったとき、両者共にほいほい異動させるわけにもいかない人材だ。
両者を天秤にかけると、避けられる面倒ごとなら避けたいとの考えに傾く。
他にも懸念はある。人間社会に溶け込む艦娘というものを目指してはいるが、いまだに艦娘の立場は不明瞭。人間との恋愛がそれにどう影響するのか、そういった感情の話は正直よくわからない。
できれば司令官にでも振ってしまいたい話だ。あの人ならこういったことにも卒なく対応し、この機会を利用して。なんて、ワタシには考え付きそうもない方法で事態を一つ押し進めるかもしれない。
もっとも、彼に任せてしまえばワタシの代わりに粉砕してしまう可能性もないではないわけで、その場合はワタシがするよりよほど容赦のない方法を取りかねない。
しかしそれだって、山崎の同意なしに話を持っていくのはお門違いだろうことくらいは理解できている。
他人の色恋沙汰を誰彼構わず吹聴してまわるのはマナー違反だろう。
自身に渦巻く感情をうまく言葉に変換できないのか、山崎からの返答は遅れた。
霞は自分がせっかちなほうだと理解している。そしていつでも忙しい。
しかし、そうやってして悩む山崎を急かすことはなかった。
こういった面も、山崎が山崎たる所以で、それは信頼に値するものだと霞は思う。
思えばワタシはこれでも周囲に恵まれているのだろう。ワタシの周囲にある男たちは不用意な発言を決してしない。
だから、彼の感情が彼の言葉に変換されるまでは待ってやろうと思ったのだった。
「いや、これはそういうのとは少し違いますね」
ややあってから山崎がそう言った。
「畏れ多い、なんて言うのは艦娘のみなさんに失礼かもしれませんが、やっぱり普通の恋愛ってやつとは違うんだと思います」
「由良を抱きたいとか、そういった話ではないってこと?」
「いや、そんな直球な話ですか!」
「そういう欲求がないとも言えませんけど、そうじゃなくって! 側で支えたいとかそういうのですよ。自分なんかが彼女の役に立てるかはわかりませんが」
「まず“なんか”なんて自分を卑下するのはやめなさいな。それはアンタを評価してる司令官やワタシに失礼なことよ」
相変わらず机の前にしゃがみ込み、顔だけ出しているような情けない顔をした山崎の額を指で押しやってそう言ってやる。
それから、この憎めない男に自分の実感を乗せたエールを贈った。
「誰かが側にいてくれる。それはとても良いことで、そして能力によらない話だわ」
霞から見た由良。
彼女も山崎のことは認めているように思う。
二人は互いに尊敬し合い、気にもかけているようだが、あまり恋愛という感じではないようにも感じる。とはいえ、そういった感情に疎い自分が頭の中だけで考えたことにいかほどの信頼性があるのかはわからないことだ。
男女の行為なんてものは別に恋愛感情などなくても、別の繋がりを持てるのだから結構なことじゃないか。なんてあのクズが言っていたことがあるが、それもある意味真理だ。
特に、ここは明日の我が身がどうなっているのかわからない戦場。
どのような繋がりであったとしても、その繋がりが生なのか性へなのか、ともあれ執着が芽生えるのなら別にいいだろう。
人間と艦娘とのそういった感情の先にあるものが幸せな未来なのか、それとも不幸な現実なのか。
さて、どうしたものか。
つまりは山崎と、そして提督と時雨の話なのです。
山田さんだけは知っているので不都合を感じないが、投稿されてないのに本編でそれを察しろはちょっと違うよね。
今さらの話ですけど。
息抜きがてらこういった“今までの話”を混ぜないと進行中の本編投稿がつらいので、現実逃避的な意味合いもある。
遅くても初投稿から一年で終わらせようと思っていたのですが、まだしばらくお付き合いしていただければ幸いですm(_ _)m