少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜   作:山田太郎

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楽しい話もいい。感動する話もスカッとする話もいい。
でもたまに、どうしようもないほど悲しい、悲劇的な話が読みたくなったりもする。

え、ならない?
なかったから書いたのが「少女のつくり方」なの……。

しかし本日はクリスマス。
恋の話をしよう。



〜リンガ艦隊「恋愛大作戦」〜2

山崎と霞が重要そうで、特に重要でもなかった話をしてから幾日がすぎた頃、山崎はまた六駆の輸送護衛にくっついて近隣の基地を回っていた。

もうそろそろリンガに到着する、そんな帰路での近海。山崎の乗る輸送艦には休息中の暁と響が乗艦しており、輸送艦の前方には電、後方を雷が警護をしながら順風満帆。

 

そんなときだ、山崎の隣で座っていた暁がふと顔を上げ、方位二七◯。つまり西側の海を見ながら言った。

「四水戦ね、哨戒の帰りかしら」

 

 

 

四水戦と言えばウチでは由良を旗艦に第二駆逐隊で編成されている戦隊である。

近海とは言え、作戦時でもない海上で偶然出会うのは結構珍しいことだ。

反射的に転落防止柵から身を乗り出すようにした山崎が慌てて暁の目線の先を追うが、その姿は米粒サイズでだって見えはしない。

 

これが人間の限界か、などと思っていると、そっと隣から伸びてきたのは響の腕。

その手には何を言うでなく双眼鏡が握られている。

 

 

俺は何を慌てているんだ。

ちょっと冷静になって辺りを見渡すと暁が小首を傾げてクエスチョンマークを飛ばしている。

提督ほど他人の表情から真意を読み取るなんてふざけた真似ができるはずもないが、その顔は『海を駆ける艦娘がそんなに珍しいのかしら』とでも思っているのだろうことが窺えた。

 

前を行く電は近海でも気を抜くことなく周囲を警戒しながら輸送艦を導いている。

後方の雷はなぜか頷きながら優しい目をこちらに向けていた。

 

 

あの日霞に説明したとおり、これは肉欲的恋愛感情ではなく、もっと健全なものであるはずなのだと山崎は思っている。

そうであるはずなので、後ろめたいことなどなにもないのだが、どこか居心地が悪い。

 

これらの状況から推察するに2:2なのか? いや、電ちゃんにまで気付かれているなら1:3だ。

ただの憧れ。言うならば、これは秘する想いなのである。

……そんなに自分はわかりやすく顔に出していたんだろうか。

 

 

 

 

「由良が被弾しているようだね」

隣に並ぶ響が言った。

それを聞いて山崎が慌てて双眼鏡を覗き込むも、それでもまだ米粒サイズと言ったところ。何かが海上にいることはわかるが、姿形を判別するにはいまだ遠い。

 

 

「哨戒で何かあったんですかね、大丈夫なんだろうか?」

自分の目で確認できないもどかしさから山崎が不安の声を上げると、同じく山崎の隣まで歩いてきた暁が手で(ひさし)を作るようにして遥かな海の先に視線を集中させる。

 

「至近弾でも貰ったのかしら? ちょっと煙を噴いているけど、航行に問題があるほどの損害じゃないみたい。あ、こっちに気付いたわ」

 

結構な距離があるはずだが暁にはしっかり見えている様子で、落ち着かない山崎に心配するほどではないと教えてくれた。

ついでに山崎たちの乗る輸送艦をリンガまで護衛してくれるつもりなのか、こちらに気付いた四水戦が合流しようとしてくれているらしい。

 

 

自分は、そして艦娘たちは戦争をしているのだ。

いつでも無事に帰って来てくれるわけじゃない。わかっているつもりだったが、そんな当たり前のことを今さらになって実感した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、なんでアンタはまたここで項垂(うなだ)れてるのよ」

 

 

無事に四水戦と合流し、リンガへと帰投した後。山崎はまたぞろ管理部へと足を伸ばし、こうして書類仕事に精を出す霞の机の前で不景気な顔を見せているのだった。

 

脳裏に浮かぶのは無事港に着いたときの由良だ。

会話こそなかったが、心配気な眼差しを向けた山崎に彼女はいつものように朗らかな笑みで応えてくれた。

 

これが戦場での日常だ。

大きな被害があったわけでもなく、腕を片方落としてきたなんてこともない。

確かに被弾はしていたものの、本人も随伴の艦娘たちもそれほど気にした風ではなかった。

 

その程度のことなのだ。

これが自分たちの生きる現実で、戦争の世の中なのだ。

しかし、だからと言って慣れるようなものじゃない。当たりどころが悪ければ、もしも何かが少し変わっていたならば、彼女たちは二度とここに戻って来ないのかもしれないのだ。

 

自分たちのために、日本の未来のために。

何もできない人間の代わりとなって戦ってくれている艦娘に、自分たちができること。

それはあまりにも少ないように思う。

 

 

 

 

「そんなに気になるなら本人に直接労いの言葉でもかけたら?」

 

相談なのか感想なのか、はたまたただの独り言なのか。なんだって構わないが、目の前でそれらを聞かされている身としては邪魔でしかない。

そして霞は優柔不断と最も縁遠い艦娘だ。

 

故に霞は、煮え切らない態度の山崎に、それらはとても簡単な問題で、気になるなら伝える。そうでないなら気にせず仕事に戻ればいいだけだと断じる。

 

霞に言わせれば、するかしないかを迷ってるときはだいたいやりたいときなのだ。

答えの出ない悩み事ならまずやってみて、それから起こった問題に対処すればいい。自分で選んだことであればどのような結果になっても後悔だけはしないだろう。

 

そして、起こるだろう問題を想定して事前に潰しておけるならそれが何よりわかりやすい正解だとも思う。

この問題に対して山崎にそれができるとは思わないが、行動を起こさない限り何かが変わることなんてないだろう。

 

 

だからわかりやすく、由良のことが気になるのなら声をかけてこいと背中を押してあげたわけだが、山崎の気持ちはなかなかそれを簡単には選べないらしく、こんな風に言う。

 

 

「いや、だって、軽巡さんってなんか気軽に話しかけづらいじゃないですか」

 

 

 

それを聞いてピクリとペンを止める霞。

この男の中での敬意というものがどんな風に分けられているのかはわからないが、基地内で話しかけづらい立場にあるのはきっとワタシや時雨のほうだろう。

大した理由も目的もなく、ここや提督の執務室に入り浸る男のセリフとは思えない。

 

そしてこの男が忘れているのか、それとも最初から頭に入ってなどいないのかはわからないが、アナタの茶友達であり上官でもある阿武隈だって軽巡で、なんなら由良の妹だ。

 

やっぱり一度殴っておこうかしら、なんて考えが頭をよぎる。




それでも本筋に絡まない悲劇な話はガッツリ切り落とされている。
「提督の艦隊」は、まぁしゃあなし。


ところで、世界的に1番多い誕生月は10月らしい。
特に10月5日は米国で最も多くの人間が誕生日を迎える日なんだとか。

つまり、逆算すると誤差も含めて今くらいから年始なわけだ。
さらに「性の6時間」なる言葉がある。24日の21時から25日の3時まで、この時間帯が一年を通じて1番……。
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