少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜 作:山田太郎
ほとんど過去のオマケで投稿済みだが、若さ弾けるスカートの中を描写したかったんだ。
後書きに続く↓
リンガ泊地に所属する艦娘の数も徐々に増え、小さいなりにも艦隊としての形ができてきた。そんな頃の話だ。
執務室では提督と時雨、それから霞が集まり、提督の目指す艦隊の、その根底を成す重大な事柄について話し合っていた。
「何かしら興味を惹くものがあれば集めてみるのもいいんじゃないか? そうすれば知識も増えるし個性ってやつも育まれていったりするだろう。スポーツで体を動かすなんてのは実戦にも役立つかもしれないし、バンド活動なんかで音楽に親しみ感性ってやつを磨くでもいい。とにかく、まずは興味を持つことを教え、今までより広く人間社会ってやつとの関わりを感じさせたい」
執務机の天板に腰をもたれ掛けさせた提督がそう話して聞かせると、すぐさま霞が自分の意見を述べる。
「物を蒐集するのは個人の勝手だから、給与の中でやる分には好きにさせたらいいんじゃない? 趣味や嗜好についても殊更口を挟むつもりはないわ。公序良俗を乱さなければ、ね」
「でも、いきなり趣味を持てだなんて言われても対応できないんじゃないかな? 何をしていいのかわからないよ」
提督の願い、その理想は知っている。
しかしそれらを現状の艦娘に落とし込むと、今のままでの実現は難しいと時雨が言う。
基地に所属する艦娘に趣味を持たせる。
それらは世の中の様々なものに興味を持たせ、自己や個性を形成するのに役立つはずだと提督は考えていた。
提督の目的は人間社会に艦娘の居場所を作ることだ。他人と繋がるために、まず艦娘がしなければいけないこと。それが、確立した自分を持たせることなのだと言う。
では、どうやってそれを実現するか。
「そうだな、何をしてもいいってのは何もするなと同じくらい不自由なもんだ」
時雨の言うとおりだと提督も思う。
戦争の中でしか生きてこなかった少女に、今から自由にやってみろは土台無理なことだ。
「選択肢が与えられているくらいでちょうど良いってことかな?」
「なるほどね、いきなりが対応できないって言うのなら、じゃあ一例を提示するからとりあえずやりなさいな、か」
提督の真意を察した時雨に、すぐさま霞が同調して形を作る。
そう、必要になるのは選択肢の中から選べる自由。
まずはそれを考えてみることにする。
「ワタシとしては、実戦に還元できるよう体を使う趣味を提案したいところだけど?」
人型を持って生まれてきた艦娘。軍艦の魂と性能を有する彼女たちは人間では太刀打ちできないポテンシャルを秘めてはいるが、それでもやはり人型の初心者なのである。
たとえば、「おいおい、そんな持ち方すると腰を壊すぞ?」といった体勢からでも重たい荷物を腕力だけで持ち上げてしまえたりするのだ。
人間よりもはるかに高スペックな艦娘ならではのことで、だいたいはそれで済んでもしまうのだが、それでも人型をしている限り構造上の限界はある。
下手に軍艦としての自分の能力を知ってしまっているからこそ、関節などが限界を超したところでいきなり破綻する諸刃の剣なのだとも言える。
この嘘みたいに高い身体能力が仇となり、彼女たちの多くは肢体の正しい使い方を知らないのだ。
それらを踏まえた結果が霞の言う「体を動かして慣れろ」。それはどこまでも愚直で、何よりも正しい。
どこまでいっても実務最優先で効率重視な意見だが、それはとても彼女らしいと思う。
「うん、一つ目に提示する趣味としていいんじゃないかな」
楽しく汗をかき、ついでに体の使い方を覚えることができるその案。時雨が同意を示したものに、当然提督が反対する理由などない。
全ては手探りなのだ。で、あるのならなんでもやってみたらいい。
そこで、人型の先輩として霞の提案に沿った意見を述べるならこれ。
「だったらダンスとかがいいんじゃないか?」
「理由があるのかい?」
「スポーツなんて訓練の延長みたいなもんだしな。ダンスなら全身を使うし、そこから音楽を聴くことにも楽器演奏にもスライドしやすいかも、みたいな些細な理由だ」
そう、取っ掛かりなどなんでも構わないのだ。
趣味なんてのは義務じゃない。やらせてみて本人が気に入ったら続けたらいいし、そうでないなら次を探せばいい。
これは提督が出した、ただの選択肢の一つにすぎない。
あごに手を添えてしばし考え込む霞。頭の中ではこの基地で艦娘たちがダンスに励む姿を想像し、それによって起こりうる問題点をさらっていた。
しかし結局、どんな趣味を持ち込んだところで今の環境にはないものだ。だったら大なり小なり何かは起こるのだろうとの考えにいきつく。
新しいことを始めるというのは、そういうものなのだ。
大問題にさえ発展しなければどれを選んでも大差なく、それはダンスでは起こらないものだろうとも思う。
「そうね、いいんじゃない?」
「うん、僕も賛成だよ」
こうして、リンガに所属する艦娘たちが最初に取り組む趣味はダンスとなった。
それから数日が経ったころ、グランドには呼び出しをかけられた白露たちが並んでいた。
突然基地の首脳たる艦隊司令部から艦娘の趣味を推奨する旨が通達され、それぞれ自分に合った趣味を見つけられるよう司令部が主導までするときたもんだ。
本日はその第一弾として、とにかく一度ダンスなるものをやってみろと、手隙の艦娘全員がここに集められたのだ。
事前に配布された資料でダンスについてを大まかに知った白露たち。
なにぶん初めてのことだ。行われる催しについては率直に興味がある。
だが、果たしてそれは実際にやって楽しいものなのだろうか。戦争と訓練しか満足にしてこなかった乏しい人生(艦生?)経験だけでは判断できず、期待の半分を胸に秘め、所在なげに立ち尽くす。
そこへ、水の入ったバケツを運んでいるような足取りの霞が近づいてくる。
集合時間からぴったり5分前に現れるあたり彼女はとても彼女らしい。
「はいこれ、ダンスの曲」
そう言った霞は両手で持っていた円柱型のゴツい物体を持ち上げ、白露に「重いんだから早く持って」と手渡す。
「わっわ、何これ」
手渡されたのは音楽プレーヤーだ。ただし、屋外で使用するのを前提に作られた物のようでかなり大きい。
「うへー、重い」
それもそのはず、武骨なデザインをしたそのプレーヤーは長さが60cmを超え、重量も7kg以上ある。
さすがの艦娘と言えど、小柄な体躯である駆逐艦娘にとって、それは陸上で持つには少々しんどい代物だった。
「まずはウチの備品扱いにしてあるから、大事に使ってちょうだい」
ダンスをするため必要になるのがこの音源。ないわけにはいかないので、それは必要経費として基地で購入した。
数を増やしたいだとか、もっと性能の良い物が欲しいなんてことになれば、それはそのときダンスを趣味にしている者同士で購入してくれたらいいだろう。
マニュアルを熟読してきた霞が慣れた手つきで機械を操作しながら簡単に使い方を説明していく。
「ええと、まずはこのボタンで電源を点ける。そして三角印で音が流れる……なんで三角印がたくさんあるんだぁ?」
代表で白露が触ってみるが、現代知識に疎い艦娘にこのボタンの多さは酷のようで、苦悩の声がグラウンドに響いた。
「いろんな媒体に対応してるのよ。今使うのはこれだけ」
霞が指さしたボタンを押すと、プレイヤーから軽快な音楽が流れ出す。
ふと白露の頭に艦だったころの記憶が蘇る。
この体で現代に蘇ってからは遠のいていたものだが、あの頃は艦に乗り込む男たちがよく歌っていたものだとの郷愁に駆られ、胸に温かいものを感じた。
うん。好きかもしれない。
どうやら私は歌や音楽が好きなようだと、今になって新しい発見ができた。
それだけでもここに来た甲斐があるというものだ。
上機嫌の顔をした白露がメロディーに合わせ指でリズムをとっている。どうやらこの曲が気に入った様子だ。
何気に目を落としたモニターには曲名らしきものが表示されており、興味を持った白露が霞に問いかけた。
「なんて読むのこれ?」
「アナタのとこの次女が、ウチの司令官に嫌味を言う他所の海軍高官を見てるときの様を表したいい言葉よ。四字熟語くらい知っておきなさいな」
これは、遠回しに自分で調べろと言っているのかな。あとで時雨にも聞いてみようと思った。
気を取り直して、そもそもの疑問も口に出してみる。
「ふ〜ん。でもなんでこの曲なの?」
「さぁ? 艦娘が踊るならまず外せない課題曲の一つらしいわよ。難易度の低そうなものを選んだから、とりあえずこの曲を練習するといいわ」
↑の続き
しかし、それが叶えられることはなかった……。
さて、艦娘には踊らせたくなるよね!
ここからリンガの艦娘は踊るようになり、その成果の一端をリンガの基地祭でお披露目することになったわけだ。
なお、基地祭の話はいまだ存在しない……。
その後、練習風景をチラチラ提督が覗きにくることから今ではジャージ姿で踊る艦娘も増えたのだとか。(←本当に書きたかったのはコチラ)
制服姿で踊る艦娘。山田さんもぜひ一度ゆっくりと観賞したいものです。
翻るスカートの裏で踊る張りのある白露姉さんの柔肉ぅ\(๑´ω`๑)/
なお、登場するプレイヤーはJVCから販売されていた物で、なかなかにヤバめな代物。
それでは良いお年を