少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜   作:山田太郎

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1月24日に特別な話を投稿しようと妄想しつつ……挫折


提督の艦隊4

気を失っていたのだろうか。誰かが覗き込むようにして窺っている気配に気付く。

 

気怠い目蓋に喝を入れて片目を開けると、ぼんやりとした視界に小さな影。

もはや輪郭もはっきりせず、半ば群体のようにも見える複数の顔らしきもの。

 

 

「バカ、ガキどもに見せるようなもんじゃねぇよ」

 

これは“ガキども”に言ったわけではない。

海面にたゆたう視界からは見えないが、もともと視界にさほど頼らず戦ってきた彼女には、その気配、耳にも届かない息遣いだけで十分だった。

もちろん戦場で、コイツらの側に保護者のアイツがいないなんてことがあるはずない。そんな確信めいた信頼もあった。

 

 

 

ガキどもの一人から消え入りそうな、そして言葉にはできない様々な感情を織り交ぜた声で名を呼ばれた。

くそ、ポンコツ耳め。

あと何度その声を聞けるのか。そんな程度のことを数えなきゃいけない状況であるのに、耳に届く声は不鮮明だ。

 

まぁ構いやしねぇさ。

耳に届かなくても俺には聞こえている。

姿が朧(艦娘ではなく)でも、俺には鮮明にその愛くるしい姿が見えている。

 

そして、そんな声で名を呼ばれるのも悪くない。そんな思いと、そんな声で名を呼ばせてしまった自分への不甲斐なさが同時に胸を刺す。

 

 

おいおい、俺を誰だと思ってるんだ?

不安がらせるだけの情けないヤツになんて死んでもならねぇ。

 

だからこそ、名前を呼んでくれたことへの返事は決まってるのだ。

 

「情けねぇ声を出すな。傷に染みるぜ」

 

それは、ガキどもを引っ張っていく水雷戦隊旗艦を長年務めてきたモノの矜持だ。

殊更になんでもない風に返答するが、その声色にはいつもの彼女の、隠しきれない深い慈しみが込められている。

 

いつだってぶっきらぼうで、竹を割ったように男勝りのサバサバした気風。

どこから冗談で、どこまでが本気なのかわからないような、そんな、勢い任せなのではと勘繰りたくなるような口調が常の頼れる古参艦。

 

 

彼女は最後まで、その姿勢を崩すことはなかった。

 

 

 

「阿武隈っ!」

「はい」

 

突然名指しで呼ばれた阿武隈だったが、水面に浮かぶ彼女を取り囲む駆逐艦娘の後ろに控えながらも、その声に直立不動の体勢で軍人らしいハッキリとした返答をする。

 

いつまで経っても甘ちゃんだと思っていたが、頼もしくなったじゃねぇか。なんて、ガラにもないことを思い、海水に顔を洗われながらも気付けば口角が上がっていた。

 

 

「ガキんちょを頼むぞ。輸送艦には山崎も乗ってんだろ、何があっても、両者を本隊に合流させてリンガまで連れ帰れ。できるな?」

 

「阿武隈は、僚艦と輸送艦を本隊に合流させた後、必ずリンガに帰投します!」

 

「いい返事だ。道は俺が作ってやったんだ、不足はねぇだろ。俺は昼寝でもしてから戻るからよ。ついでに、どっかで泣いてるはずのバカも見つけておいてやるよ。さ、行け」

 

 

「本隊に合流します。輸送艦を中心に輪形陣! それから……、第二水雷戦隊を作り上げた偉大なる軍艦に敬礼っ!」

 

バカいってら、俺はただのロートルだよ。

次の時代に求められてるのは、オマエみたいな奴だ。

 

まさか、自分がこんな風に思うとはなぁ。

絶対に言うことなんかないセリフだと思ってたが、案外と素直に浮かぶもんだ。

 

あとは、頼んだぜ

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