少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜   作:山田太郎

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割と重要な設定

阿武隈さんはトリンプのAMO’S STYLE「夢みるブラ」がお気に入り。他にはピーチジョンが多い。


舞台の幌筵島はカムチャッカ半島の南に位置する千島列島の島。1つ北側には占守島がある。


おすすめの艦これ小説は「提督(笑)、頑張ります。」です。



第2章 北方海域
幌筵泊地で


今日もいい天気ですね! 生憎とコチラは灰色の空模様ですが、きっとそちらは晴れていることでしょう。

つい先日までは、呼び戻された横須賀で久々に文明的な生活に触れていた私ですが、ご覧のとおり北の大地にやってまいりました。

 

こんなところに住んでる奴いるの? と、現地にお住まいの方に怒られそうな感想を胸に秘めつつ、なんの罰なのかあれよこれよという間に船に乗せられて北上。

ここは試される大地よりもさらに北に位置する幌筵島(ぱらむしるとう)です。

 

北方四島を遥か南に見ることのできるこの島まで観光に来た感想を一言でお伝えすると、こんな環境の船で眠れるわけねぇだろ。に尽きます。

寒いし揺れるしでもう大変。時雨が側にいなかったら凍えていたかもしれない。あとポッケに住んでるカイロ代わりの妖精さん。おかげで命を繋ぎました。

 

人間の生活できる北限は宮城県くらいまでだと思うので、ここはもう宇宙か深海か、はたまた幌筵島なのかと言うところ。冗談です。

 

しかし、ここは曲がりなりにも泊地として機能している場所なので、道中の船よりは暖かくして寝ることができると信じています。

 

 

 

泊地に到着したらまずは時雨と二人でお世話になる現地の基地司令官に挨拶だ。

基地司令官。遥か雲の上の存在なので、あんまり会いたいもんでもなかったのだが、話してみると気さくで親しみやすい方だった。少しは呉に居座る方々にも見習ってほしい。

 

挨拶が済むと、時雨は基地の軍人さんに案内されて一足先に用意された部屋へと消えていった。荷物を置いて来るから散歩でもしていてよ。なんて軽く言っていたが、目的地も知ってる所もないこの極寒の中でどこを散歩しろというのか。

 

そうやって当てもなく、しばらく身を寄せることになる建屋内を歩いていると見覚えのある駆逐艦娘を発見した。

 

窓の外を眺めるその姿はぱっと見では可憐な印象を与える女の子。しかし、ここからでは確認することができないが、きっとその眉間にはシワが寄っていることだろう。

 

 

 

「霞じゃないか! 北方に来ていたのか?」

「アンタ、佐世保の……」

よほど想定外のことだったのだろう。出会い頭、大袈裟にハグしてやったのに反応がない。

せめて迷惑そうな顔をしてほしかった。

 

しばらく呆然とした様子を見せた霞だが、我にかえると一言。場所変えるわよとだけ告げ、俺の袖を引いてさっさと歩き出す。

ツンツンと歩く霞に引っ張られるように大人しく着いて行くことにする。

霞は背丈の割に大きめの歩幅で歩く。

几帳面で行動が早い彼女は、ツンツンという形容が似合う歩き方をするのだ。その懐かしい歩き方を見て、霞と過ごしたあの短い時間を思い出す。

そのまま後ろを着いて行くと、建屋を出た先にある桟橋付近まで来てようやく足を止めた。ちょっと寒い。

 

 

「アンタあれから何してたのよ?」

口調は厳しいが、言葉の裏からひしひしとなんの音沙汰もないことを心配していたのにという感情が読み取れた。

 

「すまない。南方でまるっと一年、哨戒任務についてたんだ」

「艦隊は?」

「変わらず時雨だけ」

 

声にこそ出なかったが、返答を聞いた霞の口は確かに「はぁ!?」と形作っていた。

 

「で、何をやらかしてこんな最果てまで飛ばされて来たのよ」

「違う違う、高練度の駆逐艦がいるって聞いたから来たんだよ」

呉で別れたときと同じように気安く接してくれているが、どうにも周りを窺うような態度が気になった。

 

 

霞と感動の再会を果たしていると、ちょうど哨戒から帰ってきたのか桟橋から金髪の駆逐艦が上がってきたところで、こちらに気が付いて声をかけてきた。

 

「霞チャンのお知り合いですかー」

想像よりずっと幼い、それでいて甲高い声に驚きつつも素直な気持ちを声に出す。

「親友……違うか、戦友かな? そして命の恩人でもある」

 

艦娘を道具のように扱う人間や、壊れ物を扱うかのように接する人間が多いなか、提督はまったくの対等に、まるで人間同士だとでも言わんばかりの自然体。

一緒に死線を潜った中だ、少なくともお知り合い程度の絆ではなかろう。

 

「ワタシは霞ちゃんのお友達の阿武隈です」

そう言って阿武隈と名乗る女性が頭を下げた。

そういえば、艦娘と知り合うのは霞たち以来のことだ。今後のことを考えると仲良くしておきたい。

 

「それで、ここに来た目的はなんだって?」

 

「ああ、上から俺の指揮下に入る艦娘を選べって言われてね、北方海域解放を手伝いながら探して来いって追い出された」

自分が幌筵を訪れた理由を説明し、それから目的であるかつての戦友のスカウトだ。

 

 

「噂に聞いた駆逐艦が霞なら話は早いな。お前なら安心だし、良かったら俺の艦隊に転属してくれないか? と言ってもまだ時雨しかいないから、お前からみたら左遷もいいとこなんだけど」

 

「……遅い、のよ」

初めて会ったときと同じ言葉を口にする霞、しかし違うのは音の温度と二人の距離感。

言葉を詰まらせ、涙を滲ませた霞が服を摘み縋り付いてきた。

 

「ど、どうした」

狼狽する提督を横目に、霞が泣いているのに気付いた金髪の駆逐艦娘がこちらを窺い知るような目をして霞との間に割って入る。

 

「ちょっと待て! 俺はなにもしていない、ハズだ」

つい両手を上げて無害アピールをしてしまった。彼女からは猜疑心を向けられている。

ないとは思うが、下手をすればこのまま砲撃の1つでも貰いそうな剣呑とした雰囲気だ。まずいぞ、第一印象が最悪のものになってしまう。

 

「阿武隈、違うの。コイツになにかされたわけじゃないの」

空気を察した霞が慌ててフォローしてくれたおかげで事なきを得た。勘弁してくれ。

 

 

「恥ずかしいところを見せちゃったわね。アンタの前では泣いてばっかりな気がするわ」

「恥ずかしいことなんかじゃないだろ。なにがあった?」

変わらず俺の服を掴んだままだが、少しばかり落ち着いたようだ。霞が取り乱すなど、尋常じゃないものを感じる。

 

「どうして北に?」

再開の驚きと喜びがあり深く考えていなかったが、霞は呉鎮守府に所属していたはずだ。

 

「朝潮姉さんと皐月が異動になるって話は、伊勢から聞いてたんだったわよね」

その二人の件については横須賀への出発前に伊勢から聞かされている。あのときはまだ異動先が決まってなかったはずなので、どこの基地に行ったのかまでは把握していないが。

 

 

「あの日の、朝潮姉さんの行動が問題視されたのよ」

自分の目を真っ直ぐに見る霞の瞳は深い感情の色合いを映している。

問題にされる理由はわかる、しかし問題になる理由がわからない。

 

「持ち場を離れて勝手に作戦行動を開始した。そのせいで被害が拡大した恐れがあるって」

「ちょっと待て、それは」

「そうよ、提案したのはワタシ! 朝潮姉さんは何も悪くない」

「その件なら横須賀でも証言した、あの判断は間違ってない! あそこで防いでなかったら、下手すりゃ民間人にも被害が出てたはずだ」

霞の判断は正しかった。そして、それを受け入れて見事に守ってみせたのは朝潮もだ。

そうまでして粉を付けたいのか、誰の思惑だよ。いや、どうせ呉のアイツなんだろうけどさ。

 

 

「だから言ってやったのよ。作戦図を見てそんなことも分からないのか、あの新米士官だって一目で気付いたのにって」

霞のことを駆逐艦だからと明らかに下に見ていた奴だ。霞の意見に耳を貸したりはしなかったんだろう。

 

「そしたら翌日には皐月と一緒にここに来ることが決まってたわ」

霞がここにいる理由。つまりは呉鎮守府で基地の将官相手に噛み付いた、そういうことだった。

 

「それだけか?」

「……怒らない?」

「ああ」

 

霞にしては珍しく、こちらの顔色を窺っているような仕草で重ねて確認された。

「絶対に?」

「約束する」

「素人司令官の足元にも及ばないヘボ頭なら軍人なんて辞めてしまえ、なんならあのクズの爪の垢でも送ってもらえばいいわって……」

 

「言い過ぎだ」

コツンっと、霞の頭に拳骨を落とす。その顔は安堵と、変わらぬ霞への形容しがたい感謝の顔。

 

 

「よく営倉入りにならなかったな」

重い罰が下されたようではないので、とりあえずはホッとした。しかし、霞はそうは思っていないようだ。

「営倉入りの方がよっぽどマシだったわよ。こんなところで冷や飯を食べ続けるくらいなら、いっそ解体処分でも……」

 

パチンっと今度は衝撃を伴わせて、霞の頬を両側から挟んでいた。予想だにしない行動に霞も阿武隈も動けないでいたが、霞の額に額を重ねて提督が言う。

 

「解体だなんて言うな。俺はお前とまた会えて嬉しかったんだ」

「うん……。ごめん」

珍しく素直でかわいいモードの霞だ。慰めるついでに軽く抱きしめておこう。

 

小さな体を抱えながら思う。

 

 

さて、呉のあの野郎。よくも霞をここまで追い詰めやがったな。

あのときも海に突き落としてやりたいと思ったが、これで俺の中のいつか殺すリストのトップランカー殿堂入りは確定だ。




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