少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜   作:山田太郎

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最初の逸話である「邂逅の夜」続きはずーーっと下のほうにある……。
楽しみにしつつ、切り替えて次へ!



邂逅の夜

── これで、俺と君とは共犯者だ

 

 

── そうだね。じゃあこれから僕は、君を見張っていなくちゃいけないね

 

 

 

 

珍しくもない光景 ──。

そう言えるだろう。空気をこそぎ剥いでいくような低い轟音と赤く染まった空。じっとりと体にまとわりつく熱を帯びた風。

癇癪を起こした大勢の子供が、思いおもいのオペラを狂演でもすれば、これほど雑多な不協和音を鳴らすのかもしれない。

 

──まるで地獄だ。

 

耳に届く不協和音の正体は、もはや聞き取ることもできない悲鳴と怨嗟の声だ。それに砲撃音がかぶさり、少し遅れて破砕音や轟々と燃え盛る炎の音が主旋律を追いかける。

そう、これは珍しくもない、ただの地獄の一コマだ。

どこか現実感のない情景を横目に、港湾部の海沿いを戦火が激しい基地の方へと歩いていく。

 

「時間の問題だな」

目的があって歩いているわけではない。ただ、最期を迎えるのであれば基地で迎えたい。そう思っただけのことだ。

 

 

海上で燃え盛る艦娘だったモノと止むことのない砲撃に照らされるだけの世界を、まるで変わらぬ日常のように歩く男の姿は、非日常である現実とのギャップでタチの悪い冗談に見えた。

 

右側のポケットを優しく撫で、改めて基地の方を見る。

夜よりも黒い煙が空高く舞い上がり、緞帳の降りた舞台のように鎮守府の終焉を告げていた。

それはどこか遠い世界の出来事のようで、酷く現実感がない。

 

 

そうやって歩を進める男の姿も奇妙なものだったが、同じように、港の縁でまるでスクリーンに映った戦場を見るかのように腰掛ける少女もまた、現実感を失わせるものだった。

彼女もまた、男と同じ演目を観ているのかもしれない。

 

運命があるのだとしたら、それはここから動き出したのだと思う。

男はここで、自らの半身を手に入れたのだ。

 

 

3mほどの距離を残して足を止めた。

少女は変わらず海を眺めている。

その間も、こちらを狙ったものなのか、それともただの流れ弾なのか、砲撃の破片や火の粉が降ってくる。

 

先ほどまでの喧騒が鳴りを潜め、静寂が2人の間に横たわっているかのようだ。

 

ただ、キレイだと思った。

こんなときだから、そう思っただけなのかもしれない。彼女の横顔に引き寄せられたかのように目が離せなかった。

ふと我に返ったのは、絵画のモデルのように静止した彼女から唐突に声をかけられたからだ。

 

「君は逃げないのかい?」

 

変わらず海上に視点を定めたままだったが、不思議と良く通る声だった。

たっぷりと沈黙をおいてから男が答える。

「生憎と逃げたい場所も思いつかなくてね。基地にでも向かおうかと考えていた」

 

遠く、海上からはリ級の咆哮が聞こえる。

自分と少女の周囲だけが世界から切り取られ、時を止めてしまったかのようだ。

相変わらず彼女は海上の火を眺めたままだったが、それが彼女の目に映っているかも怪しかった。

 

「君は?」

沈黙に耐え兼ね、男が絵画の少女に尋ねる。

黒髪の三つ編みを垂らした少女がようやくこちらに目線を合わせた。

推し量るような澄んだ青色の瞳と真っ直ぐに視線が交差する。その瞳の色で、この子が艦娘であることの確証を得た。

 

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