少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜   作:山田太郎

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え、好きな駆逐艦ですか?
話に出てきてない駆逐艦だと朝雲が好きです。

彼女、実はすっごい子なんだ。
大好きな艦だし、この子には絶対改二が来る! そう思って育ててから5年が経ちました。

そういや、霞さんの当初の名前が朝雲なんだよね。
建造が始まる前には改名されて霞になってたけど。

あさぐもは護衛艦になったが、かすみは実現していない。
なんだ、名前の響きが悪いのか?



幌筵泊地で5

翌朝。北方海域開放のため、臨時の水雷戦隊の指揮権を移譲してもらった。

 

早朝から時雨を連れて霞の部屋に乗り込んでの相談をした結果。

メンバーは秘書艦時雨の他、霞とその僚艦の初霜、佐世保組の皐月、それから阿武隈と六駆からなる一水戦でということになった。

 

初霜が協力してくれることになったのは嬉しい誤算だ。

叩き起こされて迷惑そうな顔をする霞の同室だった初霜。ついでに起こされてしまい、さらに朝っぱらから自室にほとんど見知らぬ男性が乗り込んで来るという不幸な出来事に遭遇したにも関わらず、終始穏やかに対応してくれた。

お前も見習うがいい、霞め。

 

協力を取り付けたきっかけはこうだ。

狭い二人部屋の中に四人が押し込まれて北方海域開放について話している。

初霜は当事者ではないとはいえ、室内だ。完全に話は聞こえている。そんな状況。

 

選抜メンバーについてを相談しているときに俺が言った。

「もう一人、もう一人戦力になる駆逐艦が協力してくれたら……」

 

すかさず時雨がそれに乗った。

「僕が、僕が二人分の働きをするよ! 例え沈むことになってでも!」

 

 

自分から手伝うと申し出てくれた初霜。

気概に満ちた素晴らしい女性だ。

その間、霞は聞こえてないフリをして傍観を決め込んでいた。霞め。

 

皐月については不在なので本人の同意が取れていないが、それについては霞が問題ないと言うので、問題はないのだろう。

 

まぁ早朝から部屋に押しかけたことについては申し訳ないと思ってるよ?

寝てないからちょっとテンションおかしいんだ。ナチュラルハイってやつ。

昨夜阿武隈との話を終えて、部屋に戻ると真顔の時雨さんが待っていたんだ。必死に慰めていたら気付けばもうこんな時間。そんな感じ。

 

特に、俺は二人の寝間着姿も見られてさらにハイだ。

寝起きの女の子ってなんかドキドキするよね。

 

 

そしてそのままのノリで朝から基地司令官に話を持って行ったというわけ。

ホントは億劫で仕方がなかったんだよ。

だってそうだろ、ポッとやってきた中尉くんだりが、迷惑はかけないからまずは俺にやらせくれ! なんて言わなきゃならないんだぜ?

 

霞と初霜の力添えあればこその成果だ。

 

 

ところで、一水戦の指揮権移譲を求める際に一悶着あるかと身構えていたが、元々借り物のサポートメンバーであるからか、さほど問題にならず安心した。

基地司令官が気にしたのは六駆が輸送船護衛で手に入れてくる資源だった。それも横須賀に連絡して手配すると伝えると意外なほどスムーズに話はまとまった。

後は横須賀のじじいがなんとかするだろう。

 

 

 

さっそくメンバーに辞令が下り、北方海域攻略に参加してもらう選別メンバーと朝食後、宿舎の裏手にあるちょっとしたスペースにて顔合わせを行うことにした。

 

「不在の皐月と六駆のみんな以外は昨日あいさつをしていると思うが改めて。今回の北方海域攻略作戦で遊撃部隊を預かることになった。しばらくの間よろしく頼む」

まだ7時過ぎ。テンポが良いだろ? 昼過ぎまでこのテンションを維持することは不可能だと冷静に自己を判断した結果だぜ。

 

 

「で、なんでわざわざこんな場所なのよ?」

「ついでだし、早速ここで訓練してもらおうと思ってな」

「……ここで? 走り込みでもさせる気なら運動場があるし、艦隊訓練なら艤装を付けて海上でやるべきでしょ」

 

いつもの霞節、いやこの程度ならむしろいつもより丁寧な霞だろう。

しかし、提督と霞のやり取りを初めて目の当たりにする艦娘にとっては、これで青天の霹靂だったようだ。階級差がひっくり返っているとはいえ、これから自分たちを指揮する司令官を相手になんて口の利き方をするんだと。もちろん自分は気にしていないし、秘書艦の時雨もいつもと変わらぬ笑顔のままなので問題はない。

 

「うんにゃ、まずやってもらうのは筋肉トレーニングだよ」

霞が1番胡散臭そうな顔をしているが、他のメンバーも大体似たり寄ったりの顔をしている。真面目な顔で聞いてくれてるのは初霜かな、響は聞いてるのかどうかも表情からは読み取れず、電ははわはわ言っている。

 

「なんでワタシたちに筋トレが必要なのかがまずわからないわ」

「まぁそういう反応だよね。わかってはいたけど、ホントお前ら陸上訓練と縁遠いよな」

「当たり前でしょ、ワタシたちは艦娘。海の上で戦う艦艇なのよ?」

 

他の艦娘は黙っているが、それは提督の考えに理解を示しているわけではなく、たんに自分の言いたいことを霞が代弁してくれているので口に出さないだけだろう。

いかん、このままでは選別メンバー発表から間も無く不信感の蔓延する危ない水雷戦隊になってしまう。

だが大丈夫。毎度毎度、秘書艦がお前で良かったと思う。さぁ説明してくれたまえ、時雨さん!

 

「アンタそのうち時雨に出て行かれるわよ」

 

指名された時雨が一歩前に出て、咳払いを一つ入れ説明をする。

「確かに僕たち艦娘は陸上でのトレーニングを普段しないけれど、騙されたと思ってやってみてくれないかな、海上での効果は間違いなくあるよ」

 

「信じていいんでしょうね」

「僕の名に誓って」

 

霞が溜息を一つ。それだけで気持ちを入れ替えてくれた。

「いいわ、アンタを信じるって決めたわけだし、やってあげるわよ。で、何したらいいの?」

 

実は、寝ていない俺たちは夜な夜な用意していたのだ。提督お手製懸垂スタンド二号と三号。

時雨に言われて三号スタンドは小さめに作ってある。

 

「まずは懸垂をしてもらう。時雨、お手本」

「それじゃあ、やるよ」

相変わらずガタガタと不安定な鉄棒を前にし、小島でずっとやっていたように懸垂を始める時雨。両手をいっぱいに広げたスタンスでゆっくり10回をこなして見せた。

「こんな感じかな。まずは肩幅くらいで掴んで10回やってほしい」

 

なんなく10回をクリアした阿武隈。三号スタンドの方では、霞がなんとかクリアできた。

阿武隈や霞がクリアするのはなんとなく驚かないが、意外だったのは10回やり終えた後でもケロリとしている響だ。

 

「10回上がって余裕のある人は少しずつ握る間隔を広げて」

アドバイスを入れつつ、ゆっくり全員が二周まわったところで一呼吸おく。

 

「ちょっと、疲れるわねコレ」

「はいはーい、次はスクワットいきますよー」

手を叩いて注目を集めるも、マイ秘書艦に投げる。

「はい時雨さん」

 

指名された時雨がまたお手本を見せる。

スクワットの注意点を話しながらフっと気付いた時雨が言った。

 

「お手本って、別に提督でも良かったんじゃないかな」

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