少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜   作:山田太郎

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艦歴からしたら、初霜さんはもっと人気があってもおかしくないよね。



幌筵泊地で6

「レディのするポーズじゃないわね」

太ももをプルプルさせながら暁が空気イスのような状態で耐えている。かわいい。

 

「足が太くなったりしませんかー?」

スタイルを気にするのは阿武隈。かわいい。

 

 

「むしろヒップアップして魅力度が増すと思うぞ」

そう言って、ホラっと時雨のお尻を指差す。お尻に注目を集められた時雨は少し赤い顔をして「やめてよ」と飛び退いた。

 

合わせて30分ほど筋トレを行い、心地良い疲労感が体を支配している。

ちなみに一緒に訓練に参加していた提督は10分ほどで早々に傍観者にジョブチェンジした。

 

車座を組み、ちょっくら休憩タイム。

トレーニングも必要だが、まず最初にしなければいけないのはコミュニケーションを取ることだろう。

なにせ時雨と霞以外は昨日今日出会ったばかりだ。

 

「上半身が鍛えられれば主砲を支える役に立つ、下半身が強くなれば海の上でも踏ん張りが利く、どれも時雨が実践済みだ。効果が出るまでは少し時間がかかるかもだが、無駄にはさせないよ」

筋トレをすることで得られる効果を説明する。みな素直に取り組んでくれてはいるが、効果の見えない訓練ほど気が滅入るものはないだろう。期待感はなにをするにも重要なのだ。

 

「で、これを何回繰り返せばいいの?」

「懸垂とスクワットを交互に2回、それを日に3セットもやれば十分かな」

「は?」

 

先ほどは説明も兼ねて行ったが、慣れれば1セット20分くらいで終わってしまうだろう。それを3セットだと1時間だ。

 

「まさかこれだけってわけじゃないんでしょ?」

「うーん。あとはストレッチとか?」

「合わせても1回40分ってとこだね」

霞の問いに提督が答え、時雨が補足を入れる。

 

トレーニングと言うにはあまりに時間をかけない内容に一堂不安そうだが、さらに畳み掛けるように注意点を話す。

「あ、そうそう。腕に筋肉痛が出たときには懸垂、足が筋肉痛になったらスクワットお休みね」

 

「今日から5日、まずは様子を見る。その間は海に出なくていいから」

艦娘にとってのアイデンティティを否定するかのような物言いだが、諦めなのか開き直りなのか、文句が出たりはしなかった。

 

「それで、空いた時間はどうするのよ?」

「座学とレクリエーションかな?」

 

 

こうして、時間を持て余す日々がスタートしたのだった。

 

 

2日目。予想通りと言うかなんと言うか、時雨と阿武隈以外のメンバーは全員太腿の筋肉痛を訴えた。

 

「はい、小さい子組はスクワットお休みね」

 

ちなみに自分の推測が正しければ、基本阿武隈が付きっきりだった六駆の皆さんは純粋にトレーニングによる筋肉痛。霞と初霜は自室などで自主練でもやってたのだろうと思われる。

 

いつもより1.2倍くらいのしかめっ面をしている霞が、連絡事項を入れる。

「今日のお昼には皐月が戻ってくるわ」

 

 

 

「これでいいんでしょうか?」

「まったく、なに考えてんだか」

手持ち無沙汰で地面に腰を下ろす初霜と霞が不安と不満を口にしている。

チラリと提督を窺うと、懸垂している時雨を後ろからチェックしているところだ。

なんだかんだと、ワタシたちのことを真剣に考えてくれてはいるのよね。そう納得していた。

 

「提督、いい加減後ろから僕のお尻を凝視するのは止めてもらってもいいかな」

 

前言撤回だ。不安ばかりが募る無為な時間だけが過ぎているように思う。

 

 

 

お昼はみんなで食堂。

昨日からほとんどの時間を一緒に過ごしている。その成果もあって、だいたいどのような性格をしているのかがわかった気がする。

 

頼りなく思えることもあるが、その実で芯にブレないものを持つ阿武隈。一部艦娘からいじられキャラのように扱われることもあるが、信頼されているのも伝わる。彼女たちにとっての親戚のお姉さんって感じだ。

一水戦の旗艦を務めるだけあって、練度は神懸かりするほどだと時雨、霞が口を揃えるので、カナリのものなのだろう。

 

初霜は当初の感想どおり。

生真面目で意志が硬い。じゃあ杓子定規で取っ付きにくいのかと聞かれれば、全くそんなこともなく。一歩引いたところから、周りとの調和を大切にする優等生だ。

彼女を小隊の2番艦に置いておけば、その能力を遺憾なく発揮するに違いない。艦隊内の戦技評定で時雨が勝てなかったというのだから、期待は高まるばかりだ。

 

第六駆逐隊の子たちはみんな優しい。困っている人を見つけると放っておけないタイプばかりのようだ。詳しく分けると、上の二人がなんだかんだと放っておけないタイプで、下の二人が素直に放っておけないタイプ。

長姉の暁は背伸びしたがる女の子。1番見た目を気にするレディだ。

次女の響はクールビューティー。飄々とした不思議な子。そして不死鳥と呼ばれるほど強いらしい。

三女は雷。昨日会った、お姉ちゃんに任せなさいの子。面倒見が良く1番気にかけてくれる。

四女は電ちゃん。一見気が弱そうだが、実は気が強いのだと教えられた。昔とある重巡を臆病者呼ばわりで酷評したとかなんとか。

 

個性的な子が多いが、優しい奴らばかりで助かる。

ワイワイと飯を楽しんでいたら、佐世保振りの皐月が帰ってきた。あのときは負傷してぐったりしていたので、ほとんど話せなかった子だ。元気になったのだろうか、そんな心配はすぐ杞憂に終わった。

 

「あれ、司令官かい? 会いに来てくれたんだね!」

 

そう言って元気良くこちらに駆けて来た。

天使じゃん。キラキラと輝く金糸の髪に太陽の笑顔。天使じゃん(2回目)。

ついつい両手を広げて受け入れ態勢を取ってみたら、そのままの勢いで飛びついて来た。

 

「皐月、元気にしてたか?」

 

調子に乗った俺は、そのまま皐月を抱えてくるくる回る。

皐月は元気良く笑いながら元気だよと、元気いっぱいに返事をしてくれた。

元気のバーゲンセールのようになったが、多くても困るものじゃないだろう。

皐月の笑顔の前では些細な問題だ。

 

なんの根拠もなく、皐月とは良い関係を築けると確信した。

 

 

飯を食べた後は訓練の再開だ。

皐月は帰ってきたばかりだから、休んでからでも構わないと言ってあげたのだが、それに対しては「ボクだけ仲間外れにする気? そうはさせないよ!」と返してきたので、休むつもりはなさそうだ。

 

「いいから、そろそろ降ろしなさいな」

 

なんとなく収まりがよかったので、皐月を抱っこしたまま宿舎の裏まで歩いてきてしまった。

 

もう、妬くんじゃないよ。交代でやってあげようね。多分そんな顔をしていたのだろう。

一言も発していないのに霞が「結構よ」と言った。

 




皐月を抱っこして生活したい。

皐月は武勲抜群。
改二で持っている白木の小刀は駆逐艦長の形見。
護身用としては使えない。

皐月を抱っこして生活したい。
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