少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜 作:山田太郎
そして30話目。
次回、廃ホテルに棲む亡霊少女。
極楽へ行かせてあげるわ!!
駆逐艦が指揮を執る。
それは軍隊の常識では考えられないことだ。
しかし、それに囚われるだけの理由はない。
彼女たちは軍艦ではなく艦娘なのだから。
「水雷戦隊の指揮は阿武隈だが、全体指揮は霞に任せたい。どうか?」
「ワタシに問題はありませんー。霞ちゃんにならワタシの一水戦だって任せられると思ってますよ」
この中で最も格上となるのは、艦種的にも役職的にも阿武隈だ。
その彼女がいの1番に賛同の声を上げてくれた。頭の回転がめちゃくちゃ早く、配慮感もマックス。本当に感謝したい。
後で腰でも揉んで差し上げよう。
そして続けて響が言う。
「阿武隈がそれでいいと言うのなら、私が反対する理由はないよ。暁たちはどうだい?」
「レディはね、決められたことにああだこうだと文句を言わないものよ」
「よろしく頼むわね」
六駆のまとめ役でもある響が率先して意見をまとめてくれた。電ちゃんもにこにこしているので、全員が納得してくれたのだろう。
「初霜はどうだ?」
「初霜も同じです。霞さんの指揮になら、その全てに従えます」
初霜と霞は先の大戦から付き合いがあり、そのときから霞の指揮下で作戦に従事していたそうだ。そしてその経験から、初霜は霞に敬服にも似た信頼を持っているらしい。
彼女なら、指揮に専念している霞のサポートも万全に行ってくれると思う。
目線を隣の天使に……、違った、皐月だね。
「皐月はどうだい?」
「ボク? ボクは霞が指揮を執るもんだって思ってたからね、今さらだよ」
そうなんだけどさ、それはそれでちょっと寂しい。
時雨のほうはまったく問題ない。
今回の作戦方針は、もともと霞を踏まえた三人で話し合ったものだ。
1番反対の立場にあったのが当の霞だが、俺とお前の仲じゃん? と言いながらにじみ寄ったら快く納得してくれた。
全員の意思を確認したところで、いよいよ作戦開始。
「さて、行きますか。海原へ」
なんて言うと、俺も海に出る感じだけど。残念ながら乗る船がないのでお留守番。
せめて俺の代わりにこの妖精さんたちを連れて行ってくれ。佐世保からみんなを生還させたお墨付きのラッキーアイテムだ。
その佐世保を生き残って時雨を秘書艦にした頃から、本格的に艦隊を作るつもりだと横須賀の中将に所信表明をぶち上げたところ、なら座乗艦を造ってみるかと結構簡単に言われた。
資材不足に悩む日本だが、定期的に艦の発注を行わなければ企業も保たないし、技術が途絶えるのも平時と変わらず。苦心しているらしい。
ならばと、できる限りの希望を伝えて俺用の艦を造ってもらうことにしたのだ。
希望と言っても既存の艦をベースにカスタムするので、突飛な機能を持ったスペシャルメイドは無理だったんだけど、どうせ造るのなら快適な航海ができる艦が良い。俺だけじゃなく、艦娘にとってもだ。
武装? そんなものは必要ない。俺の艦の武装は艦娘になる。
言ってしまえば艦娘の母艦になればそれでいいのだ。
こだわりを実現するためにはまず造船所だ。
内装に定評があり、かつ国防に絡む仕事を代々こなしていることから頼みやすい。そういう企業。白羽の矢が立つのは三菱重工業長崎造船所。
小島に異動させられるまで時間がなかったが、電話とメールで話を詰めた。
艦娘も乗せるからこんな感じにしてほしい。なんてふんわりとした話をしていたら、興味を持った担当者がわざわざ横須賀まで足を運んでくれた。
担当者がノリに乗ってくれたので、素晴らしい代物が完成すると思う。
「艦娘が乗る艦って面白いじゃないですか!」
彼が言った言葉だ。そして、彼とはお友達になった。
あれから1年と半年あまり、完成するのはいつになるのかな。
楽しみだけど、それまではお留守番確定。
出撃の後で俺たちにできるのは彼女たちを信じること。応援とお祈りをすることだけだ。
俺が本当にしなければいけないことは、出撃の前に終わっているべきなのだから。
建造中の艦の名前は「そよかぜ」。