少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜   作:山田太郎

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愛と言うものはだな。

サーニャが好きな私は、エイラも好き。
そんな二人のためにサーニャを諦める選択をすること、これが愛だ!





なにもない。がある島2

「はぁ? 寝るところがここしかない?」

 

 

覚えておいでだろうか、ここ小島にある施設にはベッドが1つしかないことを!

やけに大きいベッドなので、五人で寝るにも余裕のやつさ。

 

北方と違い、この辺りは夜でも暖かい

キャミソール1枚にパンツ姿の時雨と皐月。そして制服を着込んでいる霞と阿武隈が寝室で顔を見合わせている。

 

時雨と初めて小島にやってきた日のことを思い出すようだ。

 

 

「うん。言ってなかったっけ、ゴメンね。お昼に案内したように、他にはなんにもないんだよ、ここ」

ベッドの上で柔軟をやりながら時雨が言う。

1年間そうやって提督と過ごしてきた時雨にとっては慣れた日常である。

そのせいか、さほど問題だとも思っていないような……。

 

 

しかし実際問題、他に寝るところといっても部屋の外にあるソファーか、もしくは桟橋のところに停泊している提督が乗せてきてもらった船かくらいしか選択肢はない。

ソファーに二人は寝られないだろうし、船の乗組員たちの中に飛び込んだら逆に迷惑だろう。いろんな意味で。

 

そろそろ提督たちとの付き合いも長くなり、良い意味で諦め癖がついたのか、阿武隈、霞両名はしぶしぶながらもベッドでの雑魚寝を受け入れた。

 

 

 

「うぅぅ、夏用のパジャマも用意しておくんでした」

 

北方に在籍していた阿武隈や霞が使っていた寝間着は傍目にも温かそうなもので、小島で着たら痩せそうな代物だ。

 

うん。デジャビュだデジャビュ。

デジャビュというか実際に体験したことなんだけど。

 

 

「大丈夫だよ。提督はあんまりそういう目で見たりしないから」

 

気軽にそんなことを言う時雨に納得したわけでもないだろうが、すでに下着姿で寛いでいる提督たち三人を見て、制服を脱ぐ決心をした。

 

 

 

そんな心温まる、小さくも大きな出来事を終え、全員で柔軟をし体を伸ばす。

ストレッチに関しては北方でさんざんさせてきたわけだが、これって日常化すると癖になるんだよね。

 

さすがにこれだけの人数がベッドに上がると余裕はないが、そもそもこの部屋はベッド以外のスペースに余裕がないので、他に選べる場所はない。

 

 

この狭い室内の大きなベッドにはほとんど下着姿の美少女たちが四人もいらっしゃる。

多分この世で1番天国に近いスペースがここだ。

お風呂上がりの女性がこれだけ並ぶと、いつも以上に空気も美味しい気がする。

そんな眼福を味わっていてフッと思った。

 

「ふむ」

「どうかしたのかい?」

「お前らって人と比べると持久力も反射速度も半端ないし、身体能力はかなりのもんだが、やっぱり筋肉の付きかたは一般的な女性そのものなんだな」

 

 

腕、肩、背中、お尻に太もも。特別変わったところは見当たらないが、見比べてみると軽巡である阿武隈や、駆逐艦娘としては大きい時雨のほうが骨格ができているようにも思う。

 

 

「それで、それがどうしたのよ」

「筋肉を鍛えることでさらなる身体能力の向上が見込める、そのことに確信がいった」

時雨、と手招いて隣に立たせると背中を向けさせ。

「ほら、筋トレを続けている時雨。腕も引き締まってるし、服の上からでも背中とかができてるのわからないか?」

 

女性の体は、筋トレをしても筋肉量の増加などしれているのだが、それでも筋肉によって引き締まった時雨の肩や背中は見てわかるものだ。

 

しかし阿武隈が喰い付いたのはソコではなかった。

「時雨ちゃんの腰細いー、お尻もキュッと上向いてます!」

「いや、あまりそういうところは」

背中越しに顔を出し照れる時雨が、手でお尻を隠す。

お前のお尻は俺の自慢でもある。柔らかそうな逸材なので自信いっぱいに見せつけてやるといいぜ。

 

 

「筋トレはいわゆるダイエットに対する特効薬でもあるから、引き締め引き上げは筋量アップの副次効果だな」

「そうだね、今の生活を始めてからスカートを詰め直すことになったし、その効果も実感はしているよ」

 

「羨ましいですー」

「阿武隈は今のままでも十分なスタイルだと思うけどな」

そう言って腰に手を添える。

「ひゃあ、普段のお触りは禁止です」

 

普段の? 二人きりならいいってことなのか……。なんてことを一人真剣に思い悩んでいたら、そっけない風に霞に言われた。

「訓練や柔軟の補助でしょうが」

 

頼むから、俺の心を読むスキルを上げるのはやめてくれ。

 

 

 

「時雨は今の時点でもう完成って言える状態だから、これ以上筋トレメニューは増やさなくていいぞ。あとは維持だけ」

 

二の腕を摘む時雨はちょっと不満そうだ、もう少しパワーが欲しいんだと言うが、性別的にこれ以上の筋量は望めないだろう。もしそれらを望むのなら、それは人生やら生活やらとトレードオフしなければならない。

骨格や体格が人間のそれと変わらないので、ないことだとは思うが、もしも艦娘に筋量の上限がなかったとしても、ムキムキの時雨は見たくないので、やっぱりこれ以上を望むのはやめておいてほしい。

 

 

「練度向上なら次は技術のほうだな」

「格闘訓練は阿武隈が相手をしてくれるし、突入訓練なんかもみんなのおかげでフォーメーションが組めるようになったから、楽しいよ」

 

本当に楽しそうに話す時雨。彼女だけでなく、北方で共に戦った子たちはみんな訓練に文句も言わず、いや、文句は言っていたが、それでも課せられたことは完遂していたので、基本的には訓練が大好きなんだな。

俺しか居なかった小島時代ではできなかったことだ、良きかな良きかな。

 

 

「じゃあワタシたちは、とりあえず時雨を目標にすればいいわけね?」

「体の話なら、時雨を目指すのは阿武隈だけね。皐月と霞は様子見ながらやってくよ」

 

それはなぜなのかと聞かれたので、人型の先輩である俺から説明しておこう。

 

「時雨は駆逐艦としては体格があるから問題ないが、お前らは小さいからな。骨格ができてない体に無茶な負荷をかけると故障する」

 

理に適った話なら、望む望まないに関わらず理解を飲み込む霞だ。その説明にもすぐに納得して「人体についてはアンタに任せるわ」と言った。

 

 

 

 

 

開脚をしている阿武隈をぼんやりと見ながら、またも心の声が漏れる。

「やっぱり阿武隈は駆逐艦よりちょっと大きいんだな」

 

「やっぱ見てるんじゃない!」

途端、霞が立ち上がり弾劾の様を見せるが、もちろんそんなつもりで言ったのではない。

自分を弁護させてもらえるのなら、「だって大きくないじゃん!」と言ってしまうところだ。

より心象を悪くさせること請け合いなので、当然口には出さないが。

 

「多分、提督は身長の話をしてるんだと思うけど」

自己弁護に励むまでもなく、マイ秘書艦時雨大天使がそう言ってくれた。

俺はお前を離さないぜ!

 

「うぅぅ、慣れるのかなぁ」

新たな艦隊、新たな環境。不安なのはわかる。わかるよ? しかし俺の手を取り望んだのはお前だ。

お前も逃がさないぜ!

 

 

 

ひとしきり柔軟が終わり、車座を組むようにして一息つく。気分は修学旅行の夜のようだ。

そして大きく違うのは、男が俺しか居ないこと。勝負をするまでもなく、すでに勝負に勝っていると言える。

俺の信条は「戦う前に勝負の趨勢(すうせい)は決まっている」だ。

 

真面目な話、これからは今まで以上にそれが重要になるだろう。

海に立って戦うのは彼女たちだ、俺の戦いは、彼女たちを戦場に送り込む前に万全な状態で終わらせておかなければならない。

 

 

 

「よし、せっかくだしトランプでもしようぜ」

「久しぶりだよね」

 

小島にいるときはたまに遊んだが、二人でやるトランプはなかなかに残念なものだった。それは小島のほろ苦い思い出として心に刻まれているが、楽しい思い出として上書きできたのなら、それは良いことだろう。

 

手にしているトランプはもちろん帝国海軍トランプ。

スートと一緒にそれぞれ軍艦のイラストが描かれている代物だ。これは小島に転属が決まったときに姉から餞別にと渡されたものだが、実のところ時雨はこのトランプが好きではない。

 

 

理由は購入して実際に遊んでもらったらわかるかもしれないが、時雨はこう見えて根に持つやつなのだ。

メーカーさんにはぜひ新型を販売するよう切にお願いしたい。

 

あと、ジョーカーが非常にジョーカーなこともあり、当事者を交えて遊ぶときには配慮が必要になるかもしれない絶妙すぎる艦セレクトになっていることを付け加えておく。

 

 

 

「8切りあり、革命あり、階段や縛り、クーデターはなしでジョーカー1枚だね」

「なんの話よ」

 

まるで暗号のようなことを言う時雨に向かって霞が突っ込む。

 

「最初に宣言しておかないと提督がズルするんだ」

「俺の地方にはあったんだよ」

 

 

トランプを配りながら、簡単にルールの説明をする。基本的に優秀揃いの艦娘なので、飲み込みが非常に早いことは学習済みだ。

 

配られたカードを確認しながら、さも自然を装った風に阿武隈が言った。

「なんか賭けます?」

 

 

絶対手札が良かったんだろ、お前。

とはいえ、トランプからすぐ賭け事を連想するあたり、とても軍人らしい発想だ。見た目が乙女な阿武隈に言われるとあまり諸手を上げてよく言った! とは言い難い。

が、どうだ。賭けを提案されたのならば、帝国軍人として、そして日本男子として乗らないわけにはいかない。すぐさま爽やかな声でこう返す。

 

「負けたら脱ぐってのは?」

 

「それだと2回負けたら終わっちゃうね」

 

 

自分的にはそれでまったく問題はないのだが、どうやら言外に却下されたらしい。

 

 

 

 

「ついに皐月がダウンしちゃったか」

ババ抜きや7並べなど、手を変え品を変えトランプを楽しんでいたが、気付けば皐月がウトウトと船を漕いでいる。

船が船を漕いでいると言いたかっただけだ。

どうでもいいが、四人全員から「提督とは2度と7並べをやらない」と宣言されたのが解せない。

 

いいか? 7並べとは本来、誰が最初に上がるのかを競うゲームではないのだ。

自分以外を全員負けさせたら勝ちという、非常に男らしく攻撃的なゲームなのだ。

なぜそれがわからん。

 

 

「明日も早いんだから、そろそろ切り上げて寝るわよ」

結局日付が変わる頃までトランプを楽しみ、それから夢の世界へと旅立った。

 

 

明日には新天地だ。

不安は期待で押し潰し、必ず最良の結果まで辿り着いてみせる。

 

こいつらの寝顔を見ながら、改めてそう決意した。

 

 

 

 




実は提督と一緒に入浴するシーンがあったのだけど、掲載用に書き直しボツに。

阿武隈の足の指の間まで一本一本丁寧に洗ってあげるという、禁断の入浴シーンだけで1話分くらいのボリュームあったからね、仕方ないね。


あ、帝国海軍トランプは実在します。
そして7並べの件は実体験です。
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