少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜 作:山田太郎
最近更新こなくて寂しい。
彼は知識が凄いよね。過去の大戦と艦これ世界をとても素敵に繋げて書いてる。センスも頭ひとつ抜けてるしホント凄い。
も一つオススメなのが「ラストダンスは終わらない」。
妖精さんが熱い! 彼は繰り返しの天才。
文法運びの巧みさは見習いたいところ、読んでて熱くなるよね。
艦これ、始まります。
「ようやくの到着だな」
辛そうに腰を押さえた提督が、サンサンと降りしきる太陽光線に目を細めて言った。
新たな赴任先となった、ここリンガ泊地はシンガポールの南に位置する南西海域の重要拠点で、トラック泊地と並ぶ海軍の要所の1つだ。
「ほら、アンタはさっさと着任の挨拶してきなさいな」
「いやぁ、緊張するっていうか、会いに行くの怖いなぁ」
「はぁ? アンタねえ。ワタシたちをここまで引っ張ってきて今更なにが怖いって言うのよ」
軍令部より仰せつかった命令はここリンガ泊地への赴任だった。
またどこかの僻地にでも飛ばされるのかと思ったが、予想を大きく外して任されることになったのは海軍の一大拠点。しかも、なんの冗談か基地司令官としての着任。
本当の意味で、ここが今日から自分の基地となるのだ。
ようやっと艦隊と呼べるものにはなったが、軽巡と駆逐艦しかいないウチに任せるには足らないということでリンガに配属されていた戦艦が一人、そのまま仲間に加わることになっていた。
「だって戦艦だよ? 戦艦を指揮下に置くって言っても、下手すりゃ俺より階級上なわけじゃん」
「下手しなくても提督より階級は上だと思いますけどー」
ひょんなことから指揮下に入っている一水戦旗艦の阿武隈が呆れた風に言い、それに霞が追従する。
「ったくいつまで少佐なんてやってんのよこのクズ! ワタシの司令官なんだからさっさと少将くらいにはなってよね」
「木村少将と一緒にすんな。俺をいくつだと思ってんだよ。すでに現段階で異常な階級に座ってるんだ」
言葉通りの意味で、三階級特進など死んでも起こり得ない。
数年前まで学校出たての少尉だったのだから少佐となっている今の階級のほうがおかしいのだ。
艦隊指揮官であり、基地司令官となる自分のために中将が反則技で無理矢理帳尻を合わせた奇跡の産物ではあるが、霞の言うとおり本来ならあと3つほど階級が足らない。
なにせこちとら無理を通してもらってもまだ少佐なのだ。真っ当な軍人をやっていたなら駆逐艦長にも抜擢されない階級である。
「しかし戦艦さまを指揮するだなんてなあ」
「いつまで言ってんのよ、アンタそもそも初陣で伊勢の指揮執ってたでしょ!」
「伊勢は部下っていうより戦友だし」
確かに佐世保で伊勢と共に戦ったが、あれはイレギュラー中のイレギュラーと言えるだろう。そもそも指揮したのかどうかと問われれば非常に判断に困る。
「南方では比叡さんを指揮しなかったっけ?」
続けてツッコミを入れるのは時雨だ。小島での最後にして唯一の作戦となった棲姫攻略時には援軍として比叡を旗艦とした艦隊が駆けつけてくれたが、それだって比叡艦隊に時雨が編入しただけのようなものだったと思う。
「どっちも状況としては微妙なんだよなぁ」
「まぁ確かに少佐で基地司令官だなんて異例も異例だけど、ここに提督を呼んでくれたのも……」
そうなのだ。およそ軍隊では他に例をみない特殊過ぎる自分の立ち位置で、今後どう軍内を渡り歩くのか頭を悩ませていたところだった。
そこへ、リンガ所属の艦隊旗艦であった戦艦が興味を持ち、行く宛がないのならと自分に呼びかけたのだ。そして、処遇を決めかねていたであろう軍令部が渡りに船とばかりにリンガ泊地の基地司令官として着任するよう辞令を出した。
ほぼ確実に中将の思惑が絡んでいると確信を持って言える。
もちろん、艦隊旗艦であるとはいえ艦娘が人事を決められるハズもないのだが、今回ばかりは事情が違った。
ここリンガを根城にするのは歴戦の武勲艦。艦娘運用の創設期から第一線で活躍し続ける、現役の艦娘最古参の古兵。ある意味で、全ての艦娘の母とも呼べる大戦艦なのだ。
俺が気後れするのも仕方がないと、自分では思う。
「じゃあ行こうか」
秘書艦の時雨がそう言ってグチグチ垂れている提督を促す。
「先に六駆のみんなが着いているハズなので、呼びに行ってきますね」
「私たちは食堂にでもいるから、後で来なさいよ」
阿武隈も霞もこれ以上付き合ってくれる気はないらしく、早々に別行動となってしまった。
さすがに今までの任務地であった小島や単冠湾泊地とは違い、基地の建物もしっかりとしたものだ。
しかし暑い……。生憎と、雪と流氷に囲まれた世界から来て、わーい、今度は暖かいぞ! と楽しめるほどの適応性を人間は持ってねぇんだよ。
よく見ると汗をかいている。くらいの違いしかわからないが、時雨たち艦娘はどうなんだろ。
重厚感のある扉をノックする。ほどなく中から返答の声が聞こえた。
「ドウゾー」
鎮守府と遜色のない。は言い過ぎだが、扉に似合った調度品で仕立てられた執務室。
「僕は秘書艦の時雨。基地に慣れるまで迷惑をかけると思うけど、色々と教えてくれると嬉しいな」
当たり障りのない俺の挨拶に続き、時雨も着任の挨拶を行う。
そして、そんな二人に微笑みかけ、執務室の中で待ち構えていたその戦艦はこう名乗るのだった。
「ワタシは金剛型戦艦1番艦の金剛デース!」
そう、提督要らずと呼ばれる帝国海軍の生き字引。戦艦金剛が笑顔で迎え入れた。
「お、お前!」
「Ohー覚えていてくれたみたいで嬉しいデース」
「提督、上官になるとはいえ初対面でソレは良くないんじゃ」
時雨が心配そうに小声で忠告してくれたが、こちとらそれどころじゃなかった。
「か、艦娘だったのか?」
「あのときはついつい名乗るタイミングを逃してしまったネー」
佐世保を生き延びた後、横須賀で査問会が行われている間に通った喫茶店で度々一緒にお茶を楽しんだ娘がそこにいた。
「提督と呼ばれてるんですカー」
「期待と皮肉が込められたあだ名だ」
「いいですねー。それではワタシも提督と呼ぶことにしまショーカ」
やけに手慣れた風に、金剛はウインクを決めてそう言った。
できれば提督呼びをこれ以上広めたくはないのだが、もう手遅れな気もする。
「アナタのことはあらかた調べましたし、比叡からも信頼できる人だと聞いています。期待してますよー」
さて、1から作り上げる俺の艦隊。
リンガでの生活はどうなることか。
ようやくほんへ