少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜 作:山田太郎
そういえば、リンガの執務室には、とある海戦で吹き飛ばされた霞の右腕が日本刀よろしく飾られている。
根元からいっているので結構大きい。
本人の腕は再建済みだ。
釣竿でもないかと倉庫を漁っていた。
本日もカラッとした晴天で、絶好の釣り日和である。
書類仕事の合間の息抜きにでもなれば、と始めた探し物だが、前任者の残した物には興味をそそる趣味的な物が少なく、こうして小さな島をくまなく探し回るハメになっている。
浴室のある建屋の裏にまわる。
木々が開けており、ここからは南海の絶景が見渡せる。ここに初めてきた日のことを思い出す。まるで絵画の世界だ。
良い風が吹いており、暖かな日常と非現実な風景を同時に楽しめる名スポットのように感じた。
風になびく真っ白なタオルやシャツは、哨戒前に時雨が干していったものだろう。それを横目に海の方へと近づくと、建物の影に隠すように干されている洗濯物に気付いた。
「しまった」
すっかり忘れていたのだ。確かに、洗濯まで提督にさせるわけにはいかないと言われ、ここに近づくことを固く禁止されていたことを。
目の前には、自分の下着に隠されるように女性用の下着が3セット。時雨らしくない、と言うほどにはまだ時雨のことを知っているわけではないが、黒系の下着のほうが多いというのは意外だった。
もちろん、今干されている下着が偶然そうだっただけで、全体で見れば黒は少数なのかもしれないが、女性用下着などめったと目にする機会がない男の子として、よからぬ考えが頭に浮かぶ。
ふと、初日の夜に時雨が履いていた赤いリボンにドット柄の下着が目に留まり、これを身に着けていたときの時雨を思い出す……。
「なに考えてんだ」
我に返り、そそくさとその場から撤退。
こんなところを見られでもしたら、深海棲艦との戦争どころではなくなってしまう。
「しかし女性が居るということを、もう少し真剣に考えておかねばならなかったな」
今のところそういった問題に直面してはいないが、現状では必要な物など報告でまとめられ、それらを提督決裁で輸送船に発注していた。
これでは女性特有の物など頼み辛いのではなかろうか。
まだ先の話ではあるが、今後艦隊規模を大きくしていく過程でも、それらは必ず問題になるだろう。作戦に関連しない日用品や食料などの在庫管理と発注を時雨に一任しようと決めた瞬間だった。
「わ、大丈夫なのか?」
「平気だよ。調子に乗って回避していたら波をかぶっちゃってね」
いつものように哨戒に出ていた時雨を桟橋まで迎えに行くと、彼女は惨憺たる有り様だった。
至近弾でも貰ったのだろう。濡れた制服はところどころ破れているが、幸い傷は見当たらないようでホッとする。
さっき見た下着のこともあり、時雨の太ももに張り付くスカートが扇情的に見える。水に濡れた漆黒の生地と、足の付け根あたりまで大きく裂けた箇所から覗く真っ白い肌のコントラストが艶めかしく、つい視線が向きよからぬ妄想が頭に浮かぶ。
深海棲艦との戦いと共に、内なる悪魔とも戦わねばならないようだ。
とりあえず時雨を風呂に突っ込み、この気持ちが霧散するまで無心で走り込んだ。
時雨はきっと気付いてるね。
あと、時雨さんだって別に黒ばっか履いているワケじゃないと思うの。