少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜   作:山田太郎

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前回明かされた衝撃の事実。

ヒロインは阿武隈だった?




艦これ、始まります。4

風呂上りの夕涼みがてら、ちょっとした休憩だ。食堂の席に座り冷たい麦茶でも……。

あ、ないんだ。そだね、作ってないもんね。

明日から交代でお茶番だな。

 

団扇でもあるといいんだけどな、なんて思いながらタバコに火を点ける。すかさず妖精さんがどこかから灰皿を持って来てくれた。

慣れていない金剛はその様子に驚いたようだ。全自動灰皿フェアリーだからな。驚くだろう。

 

なんか大人しかったね妖精さん。

新しい基地を見回っていたのか? ここに常駐してる妖精さんたちとも仲良くやってくれよ。なんて思う。

 

 

 

手に顎を置いた妙に(なま)めかしい金剛がこれからのことを聞いてきた。

「方針はわかりマシタ。でも具体的にはこれからどうしますカ?」

「そだね、人数も少ないしみんなで仕事を分担しなくちゃな」

 

 

「まずは泊地で生活するのに必要な作業の書き出しと役割分担、それから求められている軍事の内容と担当だな」

生活と軍事、つまり運営と運用。これらが泊地で必要となる二本柱だ。

 

「今回はそれなりの予算も出てることだし、足りない人員はアウトソーシングで賄おうかと思う」

「基地に人を入れるんデスカ?」

言外に大丈夫なのかと問う金剛。

軍人ともあまり話をした経験がない艦娘たちだ、一般人ともなればさらに不安にもなるのだろう。その心配だ。

 

 

「炊事洗濯、日用品の仕入れや管理。投げられるところはみんな外に投げちまおう」

 

妖精さんたちの手伝いがあるとはいえ、浴場の床マットの洗濯や風呂上りの飲み物と、今だけでも足らない物だらけだ。

生活に関わる泊地運営も重要だが、それらにかかりっきりになって訓練や哨戒が疎かになるようでは本末転倒。

ここは軍事施設だからね。

 

 

「大丈夫なんですかー? ワタシあんまり外の人と話したことないんですけどー」

心配そうな顔をしているのは阿武隈だ。まだ下着姿を見られるのに慣れないのか体を小さくしてイスに座っている。

 

「軍人さんとあんま変わんないよ。お前たちはちょっと隔絶されすぎだから、もう少し外の世界と接点を持った方がいい」

 

「確かにそうデスが、外と接点を持つメリットはなんです?」

お前はグラマラス過ぎて視線の先に困るんだよ金剛。そして距離が近い。

 

 

「片側からばかり物を見てる奴は偏ってるんだよ。人と接することで視野を広げる。お前らが手にするのは一般観ってやつだ」

「一般観デスカ」

「一方向からの視点だと袋小路に陥ったときにどん詰まる。ついでにお前らは、自分たちが護っているものについてもう少し知っておいていい」

 

 

「なるほど、人が足らない状況下ですぐに外部の人間を入れるって選択が出てくるのが重要ってことだね」

銀髪の美しい響。ちょっと高級なぬいぐるみみたいだ。

さっき頭を撫でてやったら、嫌なのか嬉しいのか判断のつかない無表情っぷりでされるがままだった。大丈夫か響。

止め時を見失った俺は結局、阿武隈に引き剥がされるまで響の髪をワシャワシャしてしまったぞ。

 

 

「それで、どこまで投げるのよ」

意外に思うかも知れないが、距離の近い艦娘の代表は霞だ。そういえば霞は常に手の届く範囲に陣取ってる気がする。

成長途中の体はよく見ると柔らかそうな丘を形成しだしており、青い果実は青いまま捥いでみたい欲望にかられたりもする。

 

「変な感想入れるのはヤメテ、あとジロジロ見ないで」

飛んできた手で顔を逆側に極められるまでが様式美。お前とは今後も仲良くやれそうだぜ。

 

 

 

「まずは軍事に関わらないところだな。信頼関係を築いた後なら任せられるパートはもっと増えるだろ。将来的に艦娘が増えたら、それぞれの部署は艦娘と外部の人間との混在でいい」

 

いきなり軍内部に関わる情報まで民間人に触れさせるわけにはいかないが、幸いなことに戦争の相手は人類共通の敵だ。敵対勢力に情報を漏らす輩はさすがにいないだろう。

 

 

「どこまで任せられるのか、リストアップしなくてはいけませんネー」

切り替えの早い金剛が顎に指をやり思案していると、時雨が疑問を口にする。

「なら、それらを管理する仕事が必要にならないかな?」

 

「いい質問だね時雨くん。外部の人間を基地に入れるからには管理側の部署は必須。ここに居るお前らは、今後艦隊のコアメンバーとして働いてもらうので、そのつもりで」

 

ピタリと右隣にはべるのは我が半身。秘書艦の時雨だ。

小島でも、結局寝るときはずっとその格好を貫いたので、もう慣れっこ。

それでも要所要所で体を隠す仕草を入れてくるのが高ポイント。これが計算尽くなら誰も太刀打ちできない女子力を持つ艦娘だ。

 

 

「具体的には管理部や経理部が必要だな。人事なんかも管理部に担当してもらおうかな」

 

それなりに広い食堂で、机を囲んで話は進んでいく。少しずつ仲間になっていく行程を見ているようでとてもよろしい。

もちろん通常の人間社会で、上司が下着姿の部下をはべらかして会議などしたら明日を待たずに社会的な死を迎えるのだろうからオススメはしない。

倫理観や羞恥心など、文化も常識も人間とは異なる艦娘だからこそのコミュニケーションの取り方なのだと思ってほしい。

 

 

「結局会議みたいになっちゃったわね」

「いいんじゃないですカ? 制服を着ていないからか、肩肘張らずに意見が飛び交う良い話し合いになったと思いマース」

 

 

ゆるやかな時間が流れる中、前髪を気にする阿武隈にちょっかいをかけている提督。

「触らないでくださーいー」

「いいじゃんか、アブゥ。減るわけじゃないし」

「その呼び方はやめてよぉ、あと減るわけじゃないは女性に言っちゃいけないワードの代表です!」

 

席を立ち逃げる阿武隈と追いかける提督。机の周りをグルグルと走って暴れている。

なにをやっているのだか。

 

「お前に触るのが最近の俺のストレス解消なんだよ」

「私のストレスになりそうですぅ!」

 

 

 

しばらくそうやって遊んでいた二人だったが、今は騒ぎ疲れてそれぞれの席に戻っている。

ようやく落ち着いた阿武隈がポツリと呟いた。

 

「外の人って言うより、人間さんとあんまりお話ししたことないから心配だなー」

 

提督の心のカサブタが少し動いた気がする。

阿武隈の隣に座る六駆も会話に混ざる。

 

「私と響もそうね、雷と電はちょくちょく軍人さんとはお話してるみたいだけど」

 

「提督?」

 

また悪い癖だ。

遠くを見るような提督に気付いた阿武隈が心配そうに声をかけた。

「いや、すまない。阿武隈のお尻を思い出していたら集中してしまった」

「変な想像をするのはやめてー」

 

 

「どうかしたんデスカ?」

うまく逸らせたと思ったが、金剛は動じず

重ねて聞いてきたので心情を素直に吐露する。

「いや、俺も経験があるんだが、人と口を利かない艦娘って多いよな。それ、なぜなのかわかるか?」

「あー」

 

 

「多分、傷付くのが嫌なんですよ」

静かにそう口にしたのは阿武隈だ。

後ろから響が意見を補足する。

「深海棲艦と戦う得体の知れない化け物。そう基地の人に言われたこともあったね」

「街に出ると子供に石を投げつけられたりね、失礼しちゃうわ」

そう言って俯くのは暁。思い出してしまったのか、唇を噛んで泣くのを我慢しているように見える。

 

「これでもひと昔前よりは随分とマシになりましたがネー、昔は街に出ると大勢の男の人に囲まれてリンチされたりしましたし、基地には基地で心無いことを言う軍人も多かったデス」

 

あっけらかんと、他人事のように艦娘創世記のことを話す金剛だったが、静かな声で付け足した。

「榛名なんかは、よく夜に一人で泣いていました」

 

 

 

それから提督は時雨たちを見やり、声を掛ける。

「お前たちもあるのか?」

「僕たちはみんなほど古くからいるわけではないからね、そこまで酷い経験はないけど」

「誹謗中傷くらいは、きっと誰もが一度や二度経験してるわよ」

 

だから、艦娘は休暇を与えられても街に出ることが稀なんだと言う。

知らなかったとはいえ、時雨には所用で何度か街までお使いを頼んだりもしていた。もしかすると、俺の知らないところで嫌な思いをしていたのではないかと心配になった。

 

 

わかりやすく顔に出ていたんだろう。時雨がフォローを口にする。

「僕は見かけが日本人とあまり変わらないからね、制服を着てなければそうそう気付かれることもないよ」

 

時雨と初めて会ったときのことを思い出した。俺は、時雨の美しい瞳を見て艦娘だと気付いたのだ。

街に出る時雨が度々眼鏡をかけていたのも、そういう理由からだったのかもしれない。

 

 

「金剛は、それでも街に出るんだな」

「紅茶の美味しいお店があるんデスよ。それに、人が全員そうじゃないということも知っていマス」

 

金剛には、大戦艦と呼ばれるだけの影響力があるのだ。

もし金剛が人間を嫌って基地に籠るようになれば、それは艦娘と人間の関係性を一気に後退させてしまうだろう。この聡い艦娘は、自らの役柄をきちんと把握して演じることくらいやってのけるのだ。

 

 

「最近はそうですねー、遠征帰りに岸から手を振ってくれたり、感謝の言葉を投げかけてくれることも増えた気がします」

 

お通夜のようになってしまった俺を気遣ったのか、しんみりとした空気を打破するかのように阿武隈が明るい声でそう言ってくれた。

 

 

 

バカだな。

気を遣わないといけないのは俺のほうだってのに。

 

 

ま、見ていてくれよ、これからの俺を。

きっと期待に応えられるように頑張るから。

この暖かい空間を守るために、やれることをやっていこうと決心を固めた。

 

 




ほのぼのかと思いきや、急に重い。
バランスどうなってるんだろうね〜。


人は、明らかに自分たちと違う存在を無視することができないらしい。
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