少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜 作:山田太郎
「Good morning!」
「爽やかな朝ですネー、どうデスカ? リンガで迎える初めての朝日は」
扉が壊れるんじゃないかってくらいに朝から元気いっぱいの金剛が起こしに来た。
さすがに本日はいつもの巫女服を着込んでバッチリ決めてきているようだ。
とりあえず顔を洗って軽くなんか食べようか、朝ごはんは活力の源だ。
「しかし、提督と一緒に食事を摂って提督と一緒に寝る。南国とはいえこの艦隊は随分オープンですネ」
結局昨日は合流してからほとんどずっと全員が揃ってたな、仲の良い艦隊でなによりだ。
「僕はもう慣れちゃったけどね」
そう返答した時雨は、それから遠い目をして過去と呼べるほど昔ではない、しかし思い出になりつつある記憶を呼び覚ます。
「あぁ、アンタたち南海の孤島で1年も極貧生活してたんだったわね」
「“小島”ですネ。ヒエイからも聞いてます。砲撃1発で吹き飛びそうな島だったと」
霞と金剛がそれぞれ辛辣な評価を入れる。
えらい言われようだな。でも、と思う。あの島での生活も……。
「そんなに悪いものじゃなかったよ」
またもや声に出ていたかと思ったがそうじゃない。時雨が言ったんだ。
「足りないものだらけだったけど、楽しかったよ。もう提督と二人で帰ることがないと思うと、少し寂しくもあるね」
「アンタたちがそこに篭ってる間、こっちは北方で大変だったんだけどね」
「ふふ、ごめんよ」
伏し目となり、記憶を思い返す時雨。時雨の声に静かに返す霞も、北方での生活を思い出していたのかもしれない。
「時雨?」
「ううん。そうじゃないんだ、小島でのことは大切な思い出だけど、今はこれからの生活が楽しみだよ。これから提督の仲間が、家族が増えていくんだってね」
「家族。良いコトバです」
優しく目を伏せた金剛がしみじみと言った。
「ってぇと金剛が長女なワケだ」
「じゃあじゃあ阿武隈が次女ですね! ワタシ末っ子なので、妹ができたと思うと嬉しいです」
「んで時雨が三女」
時雨を指してそう言うと、皐月が待ったをかける。
「ちょっと待ってよ! それって何順なんだい? 艦歴ならボクが三女じゃないのかい?」
そうは言うけどさ、でもどう考えてもお前は下から数えたほうが早いだろ。
「見た目順なら私も下のほうになるってことじゃない? ひどーい。これでも古参の特型駆逐艦なんだけど!」
雷もそれに追従するが、セリフほどにはこだわっていなさそうだ。
「艦歴なら僕は下から2番目になるね」
「っていうか、艦歴数えたら私は妹じゃなくて金剛さんの娘になるわよ」
時雨の後に、お茶を飲みながらボソッと呟いた霞の一言で情勢は喫した。
「ハイ、艦歴はやめましょう」
手を叩きながらそう金剛が言う。凍りついた笑顔が怖いので話を微妙に修正してみる。
「もともとお前らって、あんまり年齢って概念ないんだろ?」
「そうだね、外観年齢に中身が合わさってるのかもね」
艦娘の歳の頃については謎だ。
言ったとおり、艦歴順ならウチの艦娘で1番若いのは霞となり、その次が時雨となる。
体の成熟っぷりを見る限り、時雨が下の方ってことはないだろう。
そんなに多くの艦娘を知っているわけではないが、どんな具合なんだろうな。
しかし外観、見た目だけの話ならやっぱり六駆が末っ子か?
「だったら1番下は電かな?」
「電はそれでいいのです」
思いのほか大人な返答がきた。
「見ろ皐月、アレが大人の対応だ」
「はわわ、そんなつもりじゃないのです」
年齢の概念と同じく、疑問に思っていた他艦への考えを聞いてみる。
「そういえば艦娘同士の上下関係ってどうなってるんだ? 起工順か?」
「どうでしょうネー、艦歴が長い艦娘は普通に敬われることも多いでしょうが、1番は艦種順デスか?」
それについては霞がこう言った。
「少なくとも階級順ではないわね」
艦娘にとって、人間が勝手につける便宜上の階級など毛ほども気にならないようだ。
「役割の違いはあれ、艦種に上下はないと俺は考えるんだが」
「その通りだと思いマス。ワタシたち戦艦や空母は確かに戦力としては大きいかもしれませんが、駆逐艦がいなければ自分の身も守れませんし、なにより彼女たちが資源を運んでくれなければ動くこともママナリマセン」
俺の考えに金剛は同意してくれるらしい。
こればっかりは『上の艦種』が言ってくれないと話が進まないからな。
「金剛は駆逐艦を『下の艦種』だと思ってはいない?」
「ノブレス・オブリージュでもないですが、護るべき対象だとは思っていマス、それもお互い様デスけどネ。しかし、自分より小さな艦種ではありますが、それは格下だと蔑んでいるわけでは絶対にアリマセン」
ふーん。今のところウチで大型艦は金剛だけ、やるなら今なわけだが、さて。
そんな風に考えていると、言いたいことをなんとなく察したのか金剛が続ける。
「艦種による縦割りのコミュニティが形成されている艦隊は多いデス。それで艦隊行動に支障をきたすなんてことはアリマセンが、艦種の溝を取り除ければ、よりスムーズな運用を行うことができるかもしれませんネ」
これは俺の言いたいことを了承してるってことでいいのかな?
相変わらず自分の役割なんかをキッチリと察する奴だ。
「ウチでは艦種による上下関係の一切を撤廃して、役職のみでヒエラルキーを形成したいと思うんだがどうか?」
その発言に驚きの声を上げるのは霞だ。
「ちょっと待って、それじゃあ事と次第によってはワタシや時雨が金剛さんの上役になるんじゃないの?」
「いい考えデス、むしろいいデスねー」
それにすぐさま金剛が同意する。
「ワタシはどんな順番で数えられても、ヒエラルキーのトップ付近にいることが多いデスから、デストロイヤーのシグレやカスミがワタシの上役になることで、他の艦隊に対する強力なアピールになると思いマス」
金剛の器がデカくて助かる。いや、戦艦ってのはみんなこうなのかな?
思い出してみれば、霞は伊勢のことを呼び捨てにしていたな。確か伊勢が、過去の大戦でも霞と行動していたと言っていたが、それが関係しているのだろうか。
「そうは言っても、戦艦である金剛さんを部下にっていうのはちょっと考えるわよ?」
「Oh! ソレデス。カスミはワタシの上官になるのデスから、ワタシのことは金剛と呼んでクダサイ」
呼び方が最もわかりやすく上下関係を表し、対外アピール力に優れるだろう。
それを考えてか金剛が畳み掛けるように提案する。
「待って待って、さすがに呼び捨てとかは」
伊勢は良くて金剛はダメなのかな? 霞が困ったように言うが、時雨から最もなツッコミが入った。
「提督に対してもああなんだから、ソコは今さらなんじゃないのかな?」
そうだよな、冷静に考えたら俺が1番上の役職なんじゃん?
そして金剛がダメ押しする。
「気にしなくていいデスヨ? 英国では普通のことデス」
うん。言われてみたらそうかもしれない。
金剛は英国生まれらしいので、元からあんまり気にならない
そんな話をしながら朝食を摂る。
コミュニケーションを取るのは重要なことだ。
まず俺たちには会話が足りていないからな。
「それで、この艦隊はいつから軍務の時間なの?」
「メリハリないデスねー」
「仕事をするなら着替えたいんですけどぉ」
仕事の話なのか日常会話なのかと聞かれると微妙なところだが、今さらながら霞が問いかけた。
うーん。まったくもって着替えのタイミングを逃した感がある。
服を着ているのは金剛だけ。
暁たちはパジャマのままで、時雨らに至っては昨日の入浴以降ずっと下着姿のままだ。
「俺的には眼福なんだが」
「さすがに緩すぎるでしょ」
昨夜のお風呂上がりからずっと下着姿。
時雨はチュチュアンナで話題となったいつものやつ。ドットベロアリボンブラセット。
阿武隈はトリンプの天使のブラ 魔法のハリ感472なんかを着けていてほしい。
二人とも寝るときはブラしない派でキャミソールかTシャツを着てる。
しかし現実世界では、東日本大震災以降寝るときもブラ着ける派が増えたとか増えていないとか。