少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜   作:山田太郎

51 / 184
リンガ泊地の作り方。その前編。
ようやく真面目に仕事をするよ!



感想……増え、ね_:(´ཀ`」 ∠):


艦これ、始まります。7

さて、朝食後に一度解散してそれぞれ朝の身嗜みを整えることになった。

女性の朝の準備は軍機に関わるので、見てはいけないのだそうだ。

 

くそっ! 俺たちしかいないのだから、まだしばらくはあのままの姿でいいのに……。

 

 

はぁ、俺も髭を剃ってこよ。

 

 

 

集合時間として伝えておいたのは9時だったが、その5分前にはもう全員が揃っていた。さすがだ。

 

それでは早速、基本的なことからやっていこうか。

 

 

 

 

「阿武隈は金剛に過去3年分の支出を見せてもらって、それを元に今の艦隊規模で必要になるだろう金額の概算を出してくれ」

「了解しましたー」

「わかったヨ。資料は保管しているので任せてくだサイ」

 

まずは数字の把握。

基地の維持に必要な金額など見当もつかない。それらは過去の数字が分かればおおよそ把握できるだろう。

 

この辺りは任せても大丈夫だと思う。

艦娘は基本的に全員が数字に強い。普段から航海や海戦で数字と(たわむ)れているからだろう。

数字に強くないと砲撃一つできやしないのだ。

 

 

 

「時雨と霞は数字が出るまで直近の艦隊スケジュールや運用案を策定。必要になる人材も挙げてってくれ」

「うん。やってみるね」

 

こちらは実務。

現在所属している人数でいかほどのことができるのか。また、足らないのであれば何がどれだけ足らないのかを予測する。

 

二人にはこれから基地の根幹に近いところを任せる予定なので、手探りでもやってもらいたい。

 

 

俺は俺で、基地という施設で生活するのに必要となる作業内容と、それに必要だと思われる人員を算出する。

入渠施設などに配する工員などは、さすがに軍人をメインにして賄わなければいけないだろう。

それらの手配は横須賀に報告を入れたらどこかから部隊を送ってもらえるはずだ。

 

 

 

「固定経費は変わらないので、あんまり極端には減らないですねー」

しばらくすると、数字と資料とで睨めっこしていた阿武隈が算出した必要経費の書類を持ってきた。

 

「なんだこの数字は」

固定経費は仕方がないものなので一度置いておく。

一段落したらこれも相見積もりを取って片っ端から見直してやるからそのつもりでいろよ?

 

で、目に飛び込んできた気になる数字は大きく上下する折れ線グラフ。

月によって大きくバラけているのは変動経費だ。

 

「攻勢作戦実施月や施設の拡充、補修のあった月とかですね」

内容の確認をしていた阿武隈がそう説明してくれた。

 

「この山あり谷ありの数字をできるだけ平らにならせ」

 

毎年大きな支出のある時期があるなら金額を等分して各月に割振るのだ。

支出の線はなだらかであるのが美しいとの持論を展開して指示を出す。

 

 

 

「作戦行動にかかる費用はどうするんですかー? 予想なんてできないんですけどぉ」

こちらから打って出る攻勢作戦ならまだしも、不意に勃発する戦闘などは予測できないだろう。

 

「それは別帳簿作っちゃおうぜ、マル秘なやつ」

「そういうのはワタシに内緒でやってほしいんですけどー」

 

ぶつくさと阿武隈が呟いているようだが知ったことか。俺が沈むときはぜひ仲良くお前も沈め。俺たちは仲良く一蓮托生だぜ!

などと薄暗い妄想をしていたら、霞が帳簿を分ける理由について聞いてきた。

 

 

「ぶっちゃけると、艦隊運用は予算の余剰分でやる」

「ちょっと、それは流石に不謹慎じゃない?」

 

「基地での生活が覚束なくなるほど身を切って戦争しても良い結果なんてでやしないさ。それに、作戦行動にかかる費用は申請すれば概ね予算も通るだろうしな」

 

軍事に必要な金。それらは当たり前だが国庫から補われる。

しかし、軍事予算に艦娘の給与なんてものは含まれていない。

艦娘が生活する上で必要となる品々、申請すれば最低限のものは通るのだろうが、なぜ人類の代わりに前線で戦う彼女らが最低限の生活を強いられるのか、これがわからない。

艦娘だって女性だ。情報と自由を与えれば服や小物やと欲しい物も出てくるだろうし、空いた時間は趣味に費やしてくれていい。

 

つまり、国家から出る分以外の動かせるお金。それがウチの艦隊では必要になるわけだ。

 

 

「余った分で、か。しばらく海上での訓練はできないかもね」

 

予算分だけで賄える軍事行動。もちろん訓練で使用する油や弾薬もそこには含まれる。

国家総動員法が発令されていた当時と違い、内地では苦しいなりにも経済活動が行われ、国民が生活しているのだ。

際限なく予算が出るなんてこともないだろう。

 

「阿武隈、ちょっと過去のデータ見せてくれる? 訓練の予算ってどのくらい出ているのかしら?」

 

 

 

 

「うーん」

今度は時雨が頭を抱えている。

どうしたのか尋ねるとこんなことを言った。

 

「基地に充てがわれている予算から、いざに備えて少しくらいは積み立てておきたいんだけど、そこから予想される支出を計算すると艦娘に回せる給与は300円くらいになるね」

 

「それは当時のレートで?」

「ちょっと何を言っているのかわからないけど、ちゃんと今のお金だよ」

「お小遣いより酷いな、お菓子買ったら残らない金額じゃん」

「僕たちからすると、自分の好きなときにお菓子を買えるんだから、それで十分って気もするけどね」

 

もともと存在しない艦娘の人件費を盛り込むのだ。なにかを削らなければ捻出できないのはわかっていたが、これほどとは……。

 

 

「うーん。あれ、俺の給与計算されてるけど、これ抜いてくれていいよ?」

 

数字を見ると結構な金額がそこには計上されていた。

 

「提督が無給ってわけにはいかないよね」

笑顔ではあるが、鉄の意志を感じる時雨の微笑みが怖いぜ。

 

 

「いや、俺は海軍からちゃんと出てるから、基地予算から捻出する必要はないんだ」

「そっか、提督は人間だしそうだよね」

納得してくれたのか、素直に計算をやり直し始めた。

 

 

「そだ、給与は固定経費だからな。今後も頭に入れといてくれ」

 

人件費を変動経費扱いする組織は公でも私でもブラックだ。

そこは削ろうと思えば削れるといった類の数字ではないのだと、魂に刻んでおくべきである。

クリーンな組織を目指して、ウチでは担当する仕事量や役職、拘束時間などに応じて金額を出したい。こりゃウチで一番の高給取りになるのは霞だな、南無。

 

 

 

ところで艦娘の基本給っていくらに設定したらいいのだろう。12万くらいだとさすがに安い?

 

「2万円もあれば十分でしょ」

それに対して、霞がさもなんでもないことのように断言する。

 

 

「いやいや、国防を担う当事者としてそれは安すぎるだろ」

想定していた金額から桁が1つ減ってしまった。

コンビニのアルバイトのが給料いいだろ、それ。

 

 

「衣食住は確保されてるわけだし、今は一銭も貰ってない艦娘がほとんどよ? 基本給の2万円、そこから輸送護衛なんかの遠征任務や作戦参加艦に支払う作業手当、危険手当、役職手当なんかをプラスしたら結構な金額になるわ。基本の金額を12万なんかにしちゃったら予算の大半を食い潰しちゃってなんにもできなくなるわよ」

 

確かに、まだ軍が自衛隊と呼ばれていた戦前。防衛省が発表していた防衛予算では人件費の占める割合が45%近かった。

さらに、隊員の教育費や装備品の調達など、例年必要となる義務的な経費を含めると全体の8割がそれだけで埋まってしまうのだ。

当時は平時だったとはいえ、それを踏襲してしまってはとても戦争などできないだろう。

 

 

 

「そろそろ遠征についても決めてほしい」

 

数字相手に格闘を続けていると、日課となった筋トレを終えた六駆のみんなが入ってきて、響がそう言うのだった。

 

俺が行くまでの北方海域でそうだったように、輸送護衛などの遠征任務は彼女らの散歩のようなもので、なかば日課になっているのだそうだ。

 

 

支出リストと予算を相手に難しい顔をしている阿武隈が、必要となる遠征頻度を計算しているがまだ手探りの状態である。

 

手元にあった収入概算の書類を手に取った響が言う。

「うん? 海上護衛のスケジュールはこれで正しいのかい? もう2、3本入れてくれても構わないが」

「エッ? 結構欲を出して本数入れちゃったんだけど」

 

響から回された紙を三人も覗き込み、口々に意見を述べる。

「私たちが頑張れば司令官も喜ぶんでしょ? だったらもっと頼ってくれてもいいのよ」

「電たちが護衛することで、助かる命があるなら嬉しいのです」

「どこに行っても頼られちゃって、ホント困っちゃうわ」

 

三者三様だが、護衛の回数が増えることについては肯定的なようだ。

 

 

「じゃあお願いできる?」

「ちょい待ち、その書類見せてくれ」

 

そう言うと、書類を手にしていた暁が提督に手渡してくれた。

 

渡された書類の遠征回数を確認し、暁に向かって考えを述べる。

「遠征の合間、お前たちにも陸上訓練を受けてもらいたいんだが、訓練しつつこなせる遠征回数を相談したい」

「あ、ちょっと待って、そういうのは響と話してちょうだい」

「なんで他人事なのよ」

 

打ち合わせの話になった途端に暁が響に投げ、1トーン声の下がった雷から突っ込まれた。

 

「決まったなら決まった分だけちゃんとやるわよ」

 

 

改めて、響と向き合った提督が話を続ける。

「どうだ響? 訓練主体で辛そうなら遠征の本数を減らすことも考えるぞ」

 

そうして基礎体力作りに射撃訓練、格闘訓練などの内容や時間について協議する。

主だったものは北方でも経験しているが、これからはますます本格的にフォーメーションなども訓練していきたいところだ。

 

「そうだね、一度やってみないと確かなことは言えないけど、訓練と並行しても2本は足してくれて構わないよ」

 

そう、いつもと変わらぬ澄ました顔で響が言った。

心配になるほどのスケジュールだが、むしろ訓練の息抜きを海上護衛でやるとのことだ。

 

一応暁にも確認してみたが、響ができるって言うならできるんじゃないの? と、キョトンとした顔で返答されただけだった。

 

 

そして聞きたいことだけ確認すると、六駆のみんなは艤装の整備をしてくると言って退出して行ったのだった。

 

 

面白い姉妹だな、おおよそ想像していたとおりに駆逐司令は響なのだろう。

 

 




リンガ泊地の組織

艦隊司令部
提督 ━━━━警護艦(綾波、夕立)
秘書艦 時雨
司令艦 霞
 ┃
 ┣管理部(霞)
 ┃ ┣経理課(村雨)
 ┃ ┗人事課(長波)
 ┃
 ┣調達部(阿武隈)
 ┃ ┣主計科一班(響)
 ┃ ┣主計科二班(雷)
 ┃ ┗施設課(明石)
 ┃
 ┣警備部(伊勢)
 ┃ ┣作戦一課/護衛(阿武隈)
 ┃ ┣作戦二課/潜入(鈴谷)
 ┃ ┣作戦三課/派遣(由良)
 ┃ ┗作戦四課/内偵(非公開)
 ┃
 ┗情報本部(霞)
   ┗監査室(間宮)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。