少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜   作:山田太郎

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リンガ泊地の作り方。その後編。


危なく死んでしまうくらい感想もらえたのが嬉しかったので、投稿予定をブッチして後編公開。

ありがてぇ、ありがてぇ!


艦これ、始まります。8

数字との戦いを経て、早急に対策したいことの目処がついた。

一にも二にも、まず収入を増やす必要がある。経費を削って無理やり余剰を捻出するよりも健全だろう。それを改めて確認できた。

 

 

「金剛はここ長いんだよな? シンガポールの地理にも明るい?」

「そうデスね、だいたいわかると思いますがなんでしたカ?」

 

予想のとおりだ、ここに金剛が配属されたままになっていて本当に助かる。

 

「まずセレター軍港の責任者に会って、ここいらの輸送ルート全部に唾つけてやろうかなって」

「What? どういう意味ですカ?」

「セレターが受け持ってる輸送をウチで統括、管理してやるのさ。できればこの海域の輸送ルートを丸ごとウチで引き受けて、一本化することで合理化もしたい」

 

近隣の基地や泊地が、それぞれ申請する輸送物資。それを手配し送り出すのが海運の要たるセレター軍港なわけだが、それをリンガでまとめて受け持つと言う。

 

「輸送船まで丸ごとウチで面倒見るつもりデスか?」

「いやいや、正確に言えばセレター軍港をウチの下請け化するってのに近いな。物資の調達や輸送船の手配なんかは変わらず向こうにやってもらうが、その護衛やルート選定、スケジュールをこちらで抑えたい。って言うか、ぶっちゃけセレター軍港を抑えたい」

 

予算の話からいきなりセレター軍港の話に飛んだようだが、その話を聞いた霞がもっともな疑問を投げかける。

 

「輸送の護衛をウチで引き受けるってのは向こうにとっちゃありがたいだろうし、ルートの合理化も軍にとってはメリットになるんだろうけど、ウチの旨味はどこにあるのよ?」

 

 

 

「仕事ってのは成功させるのにコツがあるんだよ。まず必要なのは快適なポジション作りだな。これは自分の変わりはいないって仕事を捻出、場合によっては捏造するところから始まる。そうやって存在感を示していくことでスターダムにのし上がるのだよ」

 

そして上司の立場から見ると真逆。それを阻止し、誰でも代わりが務まる環境を作るのが肝要になるのだ。

管理側から見る会社の業務はシステマチックであるのが望ましい。間違っても、個人の資質に頼る回し方をしていては、いずれ何かの拍子に破綻する。

 

 

 

その説明で提督の狙いを理解した金剛が言う。

「確かに、兵站を抑えればこの海域でウチに足を向けて寝られなくなりますネ」

 

「お、さすがに読みが早いね。だがそのことに気付く奴はしばらく現れないだろうな。そもそも俺らは敵じゃないし、軍隊はいい感じに縦割り社会だ。先方にとっちゃ輸送物資を運んで来る船が、毎回同じ護衛を連れて来るようになったってな程度だろ。下手すりゃ割りを喰らわされてる新参者かわいそうくらい思ってくれるかも」

 

 

ポイントとなるのは、誰も損をしないということだろう。

 

ウチの基地で輸送に関わる作業を集中管理することにより、セレター軍港は護衛に頭を悩ませることがなくなり、一本化されたルートで無駄なく各施設に輸送物資を送り出すことができるようになる。

受け取る側も同じだ。定期的に輸送船が周回することで、スケジュールも立てやすくなり、申請したのになかなか届かないなんて問題を解決できる。

 

なにより、ウチから艦娘の護衛を出すのだ。

道中で深海棲艦に出くわした場合でも人員、物質の被害を最大限防ぐことができるだろう。

 

それこそ、輸送護衛が生活の一部と言う第六駆逐隊の護衛付きであれば、輸送船団を抱えたままセレターから南スマトラのパレンバンやジャワ島、ブルネイ、フィリピンのマニラなどの近海だけに留まらず、トラックやパラオ、ラバウルにまで物資を届けられるかもしれない。

 

全方位にメリットがあり、その恩恵を最も色濃く受けるのが俺たち。

この海域で我らがリンガ泊地の存在感を示すのに1番手っ取り早く、そして効果は絶大ときたものだ。

 

 

 

「さーらーにー」

そしてそれだけでは終わらせない腹案がある。反則技に近いけど、俺は反則でも気にしないので問題はない。

 

「まだなにかあるんデスカ?」

「近隣の海運業者を教えてくれ、一般企業とも提携してついでに護衛してやる」

 

どうせ各基地への輸送で海を渡るのだ。だったらついでの船が増えたところで、掛かる手間などしれたもの。

海運が死んでる現状でウチ以外にそれをこなせるところはない。戦う前から勝っている状況ってのは楽しいものだ。

 

 

「ちょっとちょっと、海軍が民間の仕事に手を出すつもり?」

「何を人聞きの悪い、有事の際に民間のお手伝いをしてあげるのは軍人として当然だろう。謝礼は謝礼で、基地への援助金としてしっかりと頂くつもりではあるが」

 

その案に霞が及び腰になるが、大人の社会では建前などどうにでもなる。理屈と軟膏はどこにでも付く。なんて言葉があるが、昔の人はよく言ったものだ。

 

 

「そんなことまでしてあげる必要がある?」

理屈についてはわかったが、霞はまだその必要性に疑問を感じているようだ。

 

「いいか、資源と物流を支配するのが強い組織を作り上げる定石なんだよ。物を動かせば人が動く、人が動けば金が動く」

 

 

物流が動けば市場は活性化し、地域にとってそれだけで大きなプラスとなる。

特にここら辺は陸続きじゃないからな、その効果は計り知れない。

経済社会ってやつにとって物流は血液なのだ。

 

もちろん、それらの手綱を手中に収めるウチの基地は大いに潤う。地域とウチはwin-winの関係と言えるだろう。

そうして余剰資金を手に入れたなら、ウチはますます基地に人を雇い入れることができるようになり、雇用金としてまた地域に還元されていく。

資本は動くことでその意味を成すのだ。

別に稼いで貯め込むのが目的じゃないからね、意識するのは常にサイクルであるべき。

 

 

 

「戦果を挙げるにはしっかりとした環境が必要だ。だが快適な環境を作り、それを維持するためにはお金も必要。海域を抑えたら流通を確保できるのだから、誰にとっても悪いことじゃない。最悪なのはそうやって作った環境でお前たちがまったく戦果を挙げられない場合だが……、その心配はいらないよな?」

 

これはガッツリとした政治の話、もしくは経済の話だ。

結果的にそうなった。ではなく、結果を求めてそれらを狙っていくのは、おおよそ軍人の職務ではないだろう。

 

 

「それで、本当は何を企んでいるんデスカ?」

 

悪い顔をしている金剛が言う。

やっぱりどこまでも話に着いてくるんだな。率直に言って頼もしいと思う。繰り返すが、ここに金剛が居てくれて良かった。

 

「物流を牛耳って存在を示すだけ? まさか。示すのは目的を達成させるのに必要な行程だから。違いマスカ?」

 

 

「お前は本当に頭の回る奴だ」

「おっと、知り過ぎたワタシは始末されマスカー?」

「それこそまさかだよ。ますますお前を手放せなくなった」

 

 

 

 

「俺は階級も低いし、この海域の新参者だ。戦果は挙げる予定だがそれだけでは弱い。内政でも強い存在感と発言権を手にしておきたい」

これが俺の理想。目指すべきものだ。

 

「それはなぜデス?」

「前線はここよりもっと東、今後南方海域に出るための布石でもあるが。1番の目的はウチの艦隊がこの海域のスタンダードになることにある」

「スタンダード、デスカ」

 

この話の促し方を俺は知っている。相手から話を聞き出す会話術としてカウンセラーなんかがよく使う手法だ。

嫌な気分ではない、むしろ部下としてとても心強いと思う。

 

 

「俺の艦隊では艦娘が基地の運営と運用を行う。職務には責任が発生するし、軍事行動なら尚のことだ。しかし、代わりに権利を有することになる。人権って権利を手に入れるためには義務と責任が不可欠だからな。それをこの海域の当たり前にする」

 

 

俺と金剛の話を時雨や霞、阿武隈が耳を傾けて聞いている。

それぞれに、ザックリとは聞かせていたことだが、具体性を持って話せるようになったのは金剛がここに俺を呼んでくれたから。

 

ちゃんと聞いていてほしい。

そして力を貸してほしい。

 

 

「大きな夢デス」

「夢で終わらせるつもりはないんだけどな」

 

 

蔑ろにされがちな艦娘の立場を向上させる。

世界の平和などその後だ。

今よりもっと、艦娘との関係を見直すことができたとしたら、戦果など勝手に着いてくるだろう。

 

 

 

「そのために、この海域を統べる権力が必要だと言いマスカ?」

「内政だけではまず無理だろうな。これらを叶えるのは二本柱が成ってこそだ」

 

「権力の他にもう1つ?」

「言ったろ、莫大な戦果だよ。目に見える形で有象無象にもわかりやすい結果ってやつが必要不可欠だ。分不相応だとは思わんが、誰も追従できないお前らの練度と戦果が必要になる」

 

 

理想を実現させるためには俺だけでは足らないのだ。その下準備は俺が引き受けよう。

だから、この海に平穏をもたらすための戦いをお前たちに頼みたい。

 

 

「ワタシたちの権利、それを欲する理由がワカリマセン」

 

権利が欲しい。そんなことを意識したことのある日本人は少ないだろう。この国では最低限の権利が平等に保障されているのだから。ビバ先進国。

 

そう、だからこそだ。

もし愛すべき隣人が、家族が、恋人が、その最低限の権利さえ持っていないとしたら、それを欲することに理由なんてあるはずがない。当たり前のことなのだ。

 

 

 

「人を殺すのはいけないことだと知っているか?」

「……モチロン知っています、それがナニか?」

 

「殺人は罪になる、しかし理由なんてものにさしたる意味なんてないのさ。人を殺すのは悪いこと、それは『当たり前』のことなんだから」

 

法律で決まっているから、なんて。

馬鹿げたことを言うつもりはない。

 

前に聞いたことがある。

犯罪率を下げるためにはどうしたらいいか?

そんな問いかけだった。

 

そいつはこう答えたそうだ。

 

『犯罪は法律によって定められているだけなので、法律を緩くしたら犯罪率は下がる』

 

それは真理だと思う。

だから、論じたいのはそんなことじゃない。

 

 

「ぶっちゃけると、自分がされて嫌なことは他人にしないっていう単純なことだな。そして最期の最期、自分を守るのはこの『当たり前』という理由のない感覚だ」

 

 

他人を傷つけてはならない、断りなく他人の財を侵してはならない。そんな誰もが共通して持っている感覚。

この感覚こそが巡り巡って自己を守っているのだと、いったいどれだけの人間が気付いているのか。

気付くことも意識することもなく、それが成される幸せを日常として受けとることができる。これこそが日本人に与えられている最低限の権利。

他国の人間がお金を出しても手に入れることのできない高い望み。基礎教育万歳だ。

 

 

「この『当たり前』に艦娘を加えたい。それもできる限り早急に」

 

 

金剛はそれを聞くと、最後にこう問いかけた。

 

「提督は、なにを見ているのデスカ?」

 

 

 

 

 

「今後起こりうる最悪の未来に備えるだけだ」

 

 




パンツ

よく盗まれることで有名な艦娘の下着。
女子校的なノリで、憧れのあの人のパンツを……が主な理由に考えられる。
人気のパンツは役職組や戦隊旗艦のもので、霞などは多い月で2〜3枚持っていかれてるらしい。

下手人予想は今のところ9:1:0で艦娘、妖精さん、軍人。
そうだといいなの希望混み。

パンツは御守りになるほか、海戦時には目印にもなっており、駆逐隊の多くは旗艦のパンツを追いかけることで艦隊運動をしているとか。
作戦参加時のことを聞かれた江風は「フリルのいっぱい着いた村雨姉ぇのピンクと、水色な海風姉ぇのことしか覚えていない」と語ったことがある。

提督座乗艦にある艦内神社の御神体は時雨のパンツであると、半ば確信を持って語られるが真偽のほどは誰も知らない。
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