少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜 作:山田太郎
アレをもう少しまともに書いたら読んでくれる人も増えるのだろうかぁ。
自分もそうだけど、タイトルとあの説明文なんかで探したりするもんね。
逆にアレじゃね? 今これを読んでくれてる神読者さんたち……。
あの説明でよく読もうと思ったよね(-_-)
あぁ、アナタに読んでもらうために僕はここに投稿したんだなって。
これは多分運命……。
見事に期待値最下層からスタートすることになった山崎だったが、その人柄はすぐに認められていくことになった。
というのも、下積み経験のみを培ってきた完全な下っ端兵である山崎は政治の思惑や艦娘の成り立ちそのものを知らず、艦娘に対して妬みも恐怖心も持っていない人間だった。
世間擦れしていない真っ直ぐさもたまには役に立つというものだ。
山崎にとって艦娘とは、ただ目の前にいる凄い人たち。そして同時に庇護の対象でもあるようだ。
自分たちでは対処できない深海棲艦の脅威に対抗できる艦娘は、自分の命を賭してでも次代に繋がなければいけない救国の英雄だ。
年端もいかない少女の姿をし、世間から誹謗中傷を浴びることが多い艦娘は、自分の体を盾にしてでも護らなければいけない保護対象の女の子だ。
一見相反する2つの感情が彼の中でどのように混在されているのかはわからないが、特に矛盾を感じているわけでもない様子で接していた。
そうやって生活を共にするうちに、人間というものに対して猜疑心を持っていた艦娘たちも、山崎に対しては身構えずに接することができるようになった。
親の育て方がめちゃくちゃ良くて、本人の育ち方が微妙な結果が山崎なのだろう。
また仕事のほうでは、自分以外は全員格上とでも思っているのか、艦娘に使われるのも特段苦にならない性質なのが幸いし、霞に雑務を命じられたり六駆の搬入する資材の管理を行いながら共に輸送ルートを周るなど実直にこなしていった。
なんなら妖精さんたちの指示にも二つ返事で取り組む面白い環境を構築している。
しかし、その評価はそういった業務と関係ないところで顔を見せた。
山崎がリンガに着任してから周辺基地や地域住民の空気まで変わったのだ。
幸い周辺基地では、表立って艦娘を軍の備品扱いする者こそいなかったが、それでも艦娘に対する扱いが良いとは言えず。
住民たちも、内地ほど酷いあからさまな態度を取られることは少なかったが、積極的に話しかけられるほど気安い環境ではなかった。
海上護衛を行う六駆と共に、セレター軍港を始め周辺基地へ頻繁に顔を出していた山崎だったが、艦娘に付き添って軍人が訪ねてくるのは異例のことで、これが礼を尽くす行為と受け取られたのかどこの基地でもリンガ艦隊の評価は高かった。
資材の受け渡しの際にも積極的に表に立ち、六駆を交えて世間話をするうちに現場単位で六駆のみんな、ひいては艦娘との仲立ちを予期せず行っていたのだ。
そうした地道な活動が身を結び、今では六駆だけで立ち寄ったときでも現場の作業員が口々に挨拶をし、世間話をしてくれるまでになったらしい。
そうした日常会話から手に入る情報もバカにできず、上に報告するまでもない話や噂の領域を出ない話、体制に対する不平や不満、要望などまで耳にできるようになった。
それらの情報はまとめられ、提督まで上がってくる。
取るに足らない些細なものでも、系統立てて集めれば情報はそれだけで武器となり、身を守る盾になる。
そして提督は、そうして耳にした情報から対処できる事案を片っ端から対応、改善していったのだ。
これらを山崎と結びつけるきっかけになった事件があった。
それは彼がリンガに配属となって数ヶ月が経ったころ。六駆と一緒に輸送船団の海上護衛を終え、次の輸送を待っていたときだ。
いつもならそのまま海上で待機するか補給を兼ねて基地にお邪魔しているところだが、この日は残燃料も問題なく、また輸送船には山崎が同行していた。
山崎は海兵のくせに船上での生活に慣れておらず、気を利かした雷の先導で近隣の桟橋から陸に上がることにしたそうだが、事件はそこで起こった。
堤防付近をうろうろしていた六駆のためにアイスを買い出しに行っていた山崎が戻り、その光景を見て目の前が真っ赤になった。
両目にいっぱいの涙を溜めた暁が、背中に妹たちをかばい、精一杯の虚勢で近所に住んで居るのであろう地元の子供たちと対峙していたのだ。
子供同士のケンカであれば、山崎も頭の柔らかい男だ。少々の掴み合いや殴り合いにまで割って入るような無粋な真似なんてしない。
しかし、コレはそんな類のものではなかった。
見逃すことなんてできない陰湿なイジメ。それも子供のイジメなんかじゃない、これは世界に巣食う偏見という名の病だ。
その胸糞の悪くなる光景を遠目に見ているだけの大人たちの姿も目に映っていたのだから。
バケモノ。
そう囃し立てながら子供たちが次々に泥団子を投げつけていく。
悲しさなのか怖さからなのか、膝をつきそうになる暁が絞り出すような声を出す。
「あ、暁たちは、バ、バケモノなんかじゃ、ないわ、よ」
その声は、子供にも大人にも届かなかったのだろう。
ただ、確かに山崎には届いたのだ。
「なにやってんだぁ!」
自分でも驚くほどの声量で、ドスの効いた声が響いた。
鍛え上げられた軍人の怒声を向けられ、呆然と立ち尽くすしかできない子供たちに駆け寄るとあっという間に腕を捻り上げ、さらに声を荒げる。
「なにをやってるんだって聞いている!」
彼女らは、自分たちを護ってくれる存在だ。自分たちでは太刀打ちできない恐ろしいモノと対峙し、自分たちの代わりに傷ついている。
その気になれば彼女たちは、あの小さいなりで自分を軽く捻ることもできるのだ。
そんな彼女たちでも人の悪意はとても怖いものだったのだろう。山崎の姿を見た暁は腰砕けのようになりワンワン泣いた。
山崎が現れたことで、子供たちの親は一応の謝罪を行ったが、しかし、それもどこか「子供同士の些細なケンカ」とでも言わんばかりの態度だった。
「もういい! 彼女らを連れてここを出て行く!」
「で、出て行くって」
「リンガ泊地なんか畳んで他のとこに行こう! なんなら提督が前にいた小島でもいい」
この発言については、今までどこか他人事だった大人たちも面を食らったようだ。
そうだろう、新しく赴任してきた今回の基地司令官は、地元のことは地元の人間が1番よく分かっていると現地雇用を推奨しており、今では間接的にしろ直接的にしろ、基地のお世話になっている世帯が結構な数に上るのだ。
基地からもたらされたお金で急激に生活水準が向上している今、基地の撤退まではいかないにしても基地司令官の異動、もしくは基地との確執は死活問題となり得る。
この軍人の一言でそれらが現実のものとなるかは定かではないが、問題になる可能性があるのであれば穏やかにはしていられない。
「彼女たちは俺たちのために命を張って戦ってくれてるんだ! そんな彼女らに感謝するどころかバケモノ呼ばわりだと? お前らは彼女たちに護られる価値があるのか!」
「や、山崎……」
「提督に直談判だ! 暁たちが許しても、この山崎。偏見の目でこの子たちを見る人間を許せるはずがない!」
山崎は良い意味で真っ直ぐな奴だ。
暁たちのことを大切に思っているのは、その言動や行動の節々から見てとれる。
そんな彼の前で、言われなき批判を行えばその結果がどうなるかなど火を見るより明らかだろう。
「大の大人がいったい何を教えてるんだ!」
山崎が立ち尽くす大人たちに言うと、親たちは慌てふためいてすぐさま頭を下げる。
しかし、その相手は山崎だ。
自分がなぜこんなにも怒っているのか、それが伝わっていないと感じさせるには十分な行為だった。
「俺に謝ってどうする! 謝るべきは彼女たちにだ」
唐突に、けたたましい警報音が付近に木霊する。
これは、深海棲艦の出現を表すサイレンだ。
「こんなところにまで、潜水艦?」
すぐさま出撃しようと踵を返す雷と電。響は未だ泣き顔の暁に寄り添うようにして、二人の後に続いた。
「出なくていい、このまま基地に帰ろう」
響の肩を掴み、涙を堪えたような顔で山崎が言った。
艦娘に指示を与えられるのは本来提督だけなので、これは越権行為だ。
声を掛けられた響は、いつもより少し柔らかい表情を顔に出して言った。
「君が怒ってくれて嬉しかったよ。でも」
「やるわ、暁たちは海も人も、全部護るんだから」
「ほら、行くわよ山崎さん」
そう誘われて、雷と電に両手を引っ張られるように山崎はその場を後にした。
残されたのは、島の親子たちの立ち尽くす姿だけだった。
「ちょ、頭を上げてよ」
暁たちの奮闘により対潜警戒が解かれた後の、ここは輸送船の船上。
そこには土下座をしたまま微動だにしない山崎の姿があった。
「自分が、自分のせいで、あんなところで休憩なんてしなければ、こんな思いはさせずにすみました。自分たち、人が、こんな……」
悔しさなのか、憤りなのか、山崎は涙を隠すこともせず、ただ額を地面に擦り付けるように謝罪を繰り返していた。
慌てて暁が山崎の前にしゃがみ込み、声を掛ける。
「山崎のせいじゃないわよ」
それでも山崎は、人として、軍の人間として、艦娘に対する誤解を解く努力が足らなかったのだと頭を下げ続ける。
雷と電が両脇から無理やりのように山崎を立たせ、ようやく彼の頭を上げさせることができた。
「アナタはわかってくれてるじゃない」
「山崎さんが来てくれて、とても嬉しかったのです」
暁たちの変わらぬ優しさに感動し、山崎は四人を抱きしめてまた泣いた。
それから予定どおりに海上護衛を済ませ、ようやくリンガ泊地へと帰投した山崎と六駆。
もともと一緒に過ごすことが多かったので、仲は悪くなかったはずだが、帰ってきた五人はより一層の絆を結んだように見える。
遠征の終わった本日から六駆は非番に入る。長距離移動をこなしてきたため、疲れも溜まっているだろう。
自室へと戻る前に、今回も頑張ってくれた自らの艤装と、艤装を動かす手伝いをしてくれている妖精さんたちをドックに預けに行く。
その道すがらに山崎が言う。もちろん六駆への配慮だ。
「報告書は自分が書いて提出しておくので、このまま部屋に戻ってもらって構いませんよ」
「山崎が書いてくれるの? それは嬉しいけど」
「いいのかい?」
甘えてしまって良いものか、なんとなくアレから照れ臭い暁。響のほうはあまり変化なく、短く確認だけを口にした。
「構いませんよ、どのみち自分はまだ勤務が残ってるんで」
「ならありがたく休ませてもらうわね!」
「山崎さんも、体調には気を付けてほしいのです」
雷と電がそれぞれ感謝と労いを伝える。
「それじゃあ、行きましょうか」
そう言って、みんなで本棟や居住棟の並ぶ区画へと歩き出した。
もう少しで居住棟。ここで別れて、自分はそのまま調達部の事務所にでも……。
そんな風なことを考えていたとき、前から見慣れぬ人物が歩いて来ているのが確認できた。
それは左目に眼帯を付けた女性、多分艦娘。彼女はこちらに気が付くと腕を上げ、綻び顔で白い歯を見せていたのだが、近付くにつれて見る見るうちに鬼の形相に変わっていった。
いったい何事かと思ったが、とにかく六駆の子たちを守らねば。
暁たちを自分の背に隠すようにして、いざその人物に声を掛けようと口を開いた矢先。
「どこのどいつにやられた、ふざけやがって! すぐに俺が仇を討ってやるからな!」
感情の温度が乗っているのがわかる熱い声だ。しかしその後半は、暁たちを慈しむような、心配を隠せないでいるような、そんな温かい声だった。
海戦で付くことのない、泥に塗れた暁たちの制服で気が付いたのだろう。
「大丈夫よ、仇なら彼がとってくれたわ」
雷にそう言われると、その人物は胡散臭い男を品定めするかのような不躾な視線で山崎を睨め上げる。
「ああん? なんだお前」
なんだこの艦娘さん、めちゃくちゃ怖いぞ。
「はわわ、山崎さんは悪い人ではないのです」
「山崎だぁ? 人間様がなんのつもりでコイツらと一緒に帰ってくるんだよ」
なにに苛立っているのかは分からないが、とにかく圧力が凄い。その圧力は自分に向けられているもののようで、そこは少し安堵できる。
「山崎は、うん。私たちのパートナーであり友人兼保護者と言ったところだね」
「や、山崎です。リンガ所属の軍人です」
響が紹介してくれた機会にと、名前と所属を名乗る。
それを聞いた彼女は、今にも掴みかかってきそうな迫力で、額に浮かんでいる血管は今にもはち切れそうだ。
「保護者だぁ?」
ますます険しい顔で接近してきたかと思うと、あっという間に手を取られた。
関節を極められる? そう思って咄嗟に身構えたが、その心配は杞憂に終わる。
「そうかそうか! コイツらにそこまで言わせるなんて、お前ただ者じゃあないな! 俺は天龍。軽巡天龍だ、よろしくな!」
これが、水雷戦隊を束ねる駆逐隊のボス、軽巡。
凄味と威圧感を兼ね揃える存在感は圧巻の一言。簡単に述べるととても怖い。
軽巡の艦娘ならウチの阿武隈ちゃんもそのはずだが、周りを圧倒するこのオーラはどうだ。
阿武隈ちゃんも戦場ではこんな感じなんだろうか、今度雷にでも聞いてみよう。
「よ、よろしくお願いします、天龍さん」
「あぁ?」
ひっ、行動の一つひとつに力が漲るっているような錯覚を覚える。本当に怖い。
「なんだなんだぁ、こいつらの保護者ってことは俺とは兄弟みたいなもんじゃねぇか、そんな畏るなよ!」
そう言って、天龍と名乗る軽巡艦娘は山崎の背中を思いっきり叩いた。
「はわわ、人間さんを叩いちゃダメなのです」
「ちょっと天龍、山崎さんは普通の人間なんだから」
彼女はとても怖かったが、それ以上に気風が良く情に厚い人物で、暁たちに向けた慈しむような表情は本物だった。
竹を割ったような、とはこういう人物を指すのだろう。
天龍ちゃんは凄い子。
名前の由来である川も、暴れ天龍って有名な河川です。
ついでに付近には、秘境駅番組のレギュラーになるレベルの鉄道がある。
記憶に新しい自然災害では、阿武隈ちゃんや鬼怒ちゃんも大暴れしてたよね。