少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜   作:山田太郎

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霞の趣味に合わない霞の愛用銃。
果たしてそれにはどんな逸話が隠されているのか……。


霞と一緒に居ることが多い金剛は同じくワルサーのP5を持ってる。
霞の銃のお姉さんみたいな銃だ。

「英国銃じゃないんだね」と聞かれたときに「そこまで英国にこだわってるワケではアリマセーン」と答えているが、実は英軍に採用されていた銃だったりする。


これぞ英国流だぜ。


感想や評価が増えたおかげ?
評価のゲージがオレンジ色になった。

嬉しい。




〜噂の艦隊へ〜(後)2

「MP5は代表的な短機関銃だし、弾も一般的な物を使うからおすすめだよ」

 

結局、阿賀野には陸戦教官でもある鈴谷が教えることになり、ガンセーフからMP5と呼ばれる銃を持ってきてもらった。

「なんか大きいですね」

「んー、鈴谷が使ってるやつに比べたら、これで小さいほうなんだけどね」

 

 

「とりあえずマガジン3つくらいは弾込めようか」

先ほど使い切った物と同じパッケージの弾が新しく積まれる。

「さっきと同じ弾使うんですね」

「そそ、揃えておいた方が運用するのに楽なんだよ」

 

なるほど、普段それぞれ口径が違う砲を運用する艤装は弾頭が違ったりするので、同型艦以外とやり取りをすることは稀だ。それを思うと、確かに弾薬が共通なのは現場としても助かるんじゃないかと思った。

 

マガジンを机に押し付けるようにして、弾を込めていくが、この作業は地味に面倒だ。

「じゃあ私たちも弾込めしましょうか」

阿武隈がP90のマガジンと弾を持ってテーブルに並ぶ。

 

「なんか変な銃ですね」

「変わってますよねー、私は結構好きなんですけどー」

さっきも撃っているところをチラッと覗いてみたが、形もさることながら構え方も相当変だ。

「撃ちやすいんですか?」

「慣れちゃえばなんとも思わないですけどねー、でも長く撃ってると手首痛いです」

 

「そっちの弾はなんか細長いんですね」

「これは特殊弾を使うんですよー」

「ふーん」

 

次々とマガジンに弾を押し込んでいく阿武隈の手元を見て、なんか込め方まで変わっている銃なんだなと感想を持った。

 

「でも弾は揃えたほうが手軽だって言いましたよね、なにか理由あるんですか?」

「電たちのチームは弾に合わせてハンドガンを揃えているのです」

そういって電が自分の持っている拳銃を見せてくれた。

 

「おお、かっこいい」

「でも私にはグリップが大きくて大変なのです」

長い弾に合わせてグリップも大きいんだ、考えられてるなー、つまり主砲に弾薬庫がくっついているようなもんでしょ? うん、艦でやったら誘爆必至の超危ない兵装になるね。今でも十分危険なのに。

 

鈴谷が鼻歌交じりに込めている弾はそれらより一回り大きい。

弾は揃えたほうが楽だと言いながら、てんでバラバラな物を使っているのはどうなんだろ。

 

「いろんなのがあるんですね」

鈴谷が使うステアーAUGのマガジンは銃の後ろ側に挿さっているし、阿武隈たちのは銃の上に乗っかってる。使い方がこれだけ違うと運用に支障をきたしそうだなと思う。

 

「阿武隈ちゃんのやつも私のやつも特殊っちゃー特殊な銃だからね、阿賀野さんが持ってるMP5が1番一般的な形じゃないかなー」

そう鈴谷が教えてくれた。

 

 

なんか鈴谷さんのやつのほうが弾を込めやすそう、透けててかわいいし。これもやっぱり慣れなんだろうか。

「そういや鈴谷さんのはアサルトライフル? ってやつなんですか?」

「あぁ、鈴谷の場合は用途が違うからねー。鈴谷の仕事は護衛じゃないし」

ふーん。聞いてもやっぱりわからないや。

 

 

ようやく弾込めが終わり、鈴谷が今後の流れを説明する。

「まずは単発で撃ってみようか、その後フルオートをちょっちやってみて、慣れたら突入訓練やろう」

 

後ろにある金属製のストックとやらを伸ばす。それを肩にしっかりと当てて、骨で支えるんだと教えられた。

銃に関する心得は先程の拳銃と同じで、この銃にはちゃんと安全装置もあるらしい。

 

「MP5のセーフティはこのレバーね、この弾の絵のところに合わせて撃つんだよ」

「上のいっぱい描いてあるほうはなんですか?」

「そっちはフルオートだね、阿武隈ちゃんが撃ってたみたいに連射できるんだよ」

 

 

そして早速撃ってみる。さっきと同じ弾だけど、反動が少なくこっちのほうが撃ちやすい。大きいほうが衝撃が少ないってのは面白い感覚だ。

艦砲だと、砲身を大きくしたならついつい砲弾も大きくしたくなる。そんなもんだ。

 

「それじゃあ次は、適当にフルオートで撃ってみよ! トリガー引いてる間は弾が出続けるから、タタタン、タタタン、タタタンってなリズムでよろしくー」

「え、どんな感じなんですか、阿賀野お手本が見たいなーなんて」

 

「じゃあちょっちやってみるから、あ、こっち側で見てた方がいいよ」

そう言って自分の左側に立つよう促した。

 

 

レンジに立った鈴谷が銃を手に取り、なんでもないことのように構える。

その姿は構えも様になっていてとてもかっこいい。

 

おおお! 凄い音だ!

さっきまで私が撃ってた銃より断然うるさいね。しっかしなにやってても格好がつくのは美人だからか、ダサTなのにズルい。

 

「はへー、格好良い。鈴谷さんの銃って迫力あって凄いですね」

「あはは、コレでもARだからね。コイツはコレでARとしては弾が小さいほうだから、まだ静かなもんだよ」

 

「阿賀野もステアーがいいなぁ」

「撃ちやすいけど、最初からコレ使うのはあんまりお勧めしないかなー」

「そうなんですか?」

 

「使い方が独特なんだよ、いざ撃とうとすると二段階目のトリガー壊れてるんじゃね? ってほど硬いし。その割に慣れないと敵を前にパニクってフル引いちゃう。それに機関部が顔に近いからねー。ちょっち怖いし、連射してると難聴になるわガスは浴びるわでお肌もボロボロに」

「あ、やっぱりやめておきます」

 

ほとんどなにを言っているのかわからなかったが、怖いのも肌が荒れるのもごめん被りたい。

角質レベルで超整ってそうな美肌を装備してる鈴谷さんに言われても納得はできないけど。

 

 

あらためて、私の番。いざ! と思ったとき

鈴谷さんが後ろに立って私の肩を後ろから押してきた。

「あの?」

「まっ気にしないでよ、後ろにひっくり返ったら大惨事になるからその予防ね」

「そんなに反動あるんですか?」

ちょっと怖い。

「いやー、ほんと万一の予防だよ。MP5は拳銃弾だし、反動なんて軽いもんなんだけどね。一応の一応」

 

 

「おおお、おおお、おおおおおー」

たーのーしー。これは、艤装とは違う妙な快感がある。調子良く撃ち放しているとあっという間にマガジンが空になってしまった。

「指はこまめに切らないとすぐ弾切れになるから注意してねー」

楽しそうにしている阿賀野に鈴谷も嬉しそうだ。

 

だから、ストレス解消に持ってこいかもと、このときは軽く考えていた。

 

 

阿賀野が撃ち終わったのを見届けると霞が言った。

「ちょうど阿武隈たちが突入訓練ね、上に行きましょうか」

 

建物の屋上に上がると下の迷路が一望できた。

一縷の風が、霞の香りを運んでくる。やっぱ良い匂いだなーと、クンクン鼻を鳴らす。

この凛々しい駆逐艦娘からは火薬の匂いも潮の香りもしない。ホントに艦娘か? 実は司令官の娘ですと言われたら納得しちゃうかもしれない。

 

「ひひっ、あの子ら面白いからちゃんと見てなよー」

「面白い必要はないんだけどね」

二人はそう言って、突入訓練とやらを行う阿武隈たちを見下ろしている。

 

突入訓練用に設けられた迷路のような建造物の入り口前に集合していた阿武隈たちに霞が無線で声をかける。

「今日は上から採点してあげるわ」

「はーい、お願いしますー。じゃあ早速やりますよ」

「いつでもどうぞ」

 

 

 

 

「ん、人質なし!」

入り口から室内を一目で確認した暁が告げた次の瞬間。鈍い音と共に室内が土煙で包まれたのが屋上から見えた。

 

「ちょっと? なんでグレネード使ってるんですかー!」

「うん? 1番手っ取り早くて確実じゃないか」

 

そう、人質がいないとわかった途端、響がハンドグレネードを投げ込んだのだ。

 

「わかりますー、その通りですー! でも今は射撃での突入訓練ですー!」

阿武隈の叫び声に被さるように、また鈍い音が木霊する。構わず奥の部屋に進んでいた暁、響組がまたハンドグレネードで標的を吹き飛ばしたところだった。

 

「だからー、指示に従ってくださぁーいぃー!」

慌てて暁らの後を追いかける阿武隈だが、雷、電の妹組がついて来ていないことに気付く。

 

 

「人質の救出、成功なのです」

「この雷さまにかかればこんなものよ」

通路を進み、別の部屋の制圧を続ける二人。

 

「なんで二手に分かれちゃってるんですかー!」

「え? だって二手に分かれた方が早いじゃない」

「わかってますー、そんなの知ってますー! でも今日はフォーメーションの訓練なんですー!」

 

 

 

隣の霞を見ると、明らかに先ほどまでより眉間のシワが深くなっているように思う。

おおぅ、体が震える。きっと高いところで風に当たってるせいだ。

反対側では空気を読まずに鈴谷が爆笑していた。

 

「ま、いいじゃんいいじゃん。あんなでも第一のみんなは上手なんだし」

確かに、滅茶苦茶やっているように見えるが、素人目でも通路の警戒や室内の制圧がスムーズなのだ。

 

 

「いいわけないでしょ」

怒ってる声ではないが、むしろ感情を交えない静かな一言が怖い。なにか話題を変えよう。

 

 

「そ、そうだ。さっきは話に混ざってなかったですけど、霞ちゃんはアサルトライフル? だとM4派なんですか? それともAK派なんですか?」

「ワタシ? ワタシの体格でアサルトライフルは大きすぎるわ。持つならMP5よ」

 

唐突な話題の転換にビックリしたようだったが、こちらに顔を向けた霞は笑顔でこそないが、今まで通りの霞だった。

 

 

「でもそうね、ワタシが使うってわけじゃないなら1番好きなのはG3ね。ゴテゴテしたのは好きじゃないの」

 

新しいのが出てきちゃったなー。

しかしなんだかな、なによりもゴテゴテしてる拳銃持ってるのに。

もちろんそんなことは口に出さない。

 

 

その話だけどね、と鈴谷が耳元で物騒な話を追加する。

「FA-MAS派なウチの秘書艦様は泣いてる子でも淡々と問い詰める悪鬼のような艦娘だから、彼女の前では禁句だよー」

「鈴谷、適当なこと言わないの。本気にしないでね」

 

 

「でもホント、あんな薬莢捻じ切る欠陥銃のどこがそんなにいいんだか。なんならG3をウチで正式採用してもいいわ」

 

「で、この子がその秘書艦とガチでやりあってなお最上位の権力を保持する魔王のような艦娘様ってわけ」

「鈴谷!」

 

「あ、あははは……」

話半分に聞いておこう。おっと、勘違いしないように。この場合の半分は半分冗談だろうってニュアンスじゃなくて、半分は留めておいて注意しようって意味だよ。

 

今更ながら阿武隈さんの言った『こだわりが強くて面倒臭い』というのが実感できた。

 

 

「でもFA-MAS Félinのほうなら問題点もクリアされてるんじゃないかなー」

「イヤよ、あんなゲテモノみたいなヤツ。時雨だってあんなのFA-MASだと思ってないわよ、きっと」

 

 

その後も霞は、FA-MAS自体が実戦で使うには信頼に値しないということをとうとうと語っていたが、話を混ぜ返した本人である鈴谷は途中から聞いていないようだった。

そもそも、鈴谷が言っていたとおりアサルトライフルを使用する状況がひどく限定的であるので、この艦隊では基本的に採用していないそうだ。

 

霞の推す肝心のG3も艦娘が陸上で使うには重すぎるらしいし。細かく分けるとG3はそもそもアサルトライフルではなくバトルライフルに分類されるとのことで、あぁ本当に面倒な人たちだ。

 

 

 

視線を下に戻すと、ようやく指示に従う気になったのか暁を先頭にそれぞれが警戒しながら屋内を進んでいる。

 

「人質が二人」

鏡を使って窓から室内を一瞥した暁が言った。途端、今度は凄まじい閃光が周囲を包む。

 

「Поехали!」

2番手を勤めていた響が声をかけ、雷と電が室内に流れ込んだかと思うと、すぐさま犯人の的だけを迷うことなく射止めていく。

 

 

「よくあんな一瞬で人質の有無がわかりますね」

「暁は目がいいのよ。それ以外はホントに何もしないけどね」

確かに、まだ彼女が発砲してる姿を見ていない。ところであの子、手ぶらに見えるんですけど?

 

 

「今度はスタングレネードですかー!」

銃声が止んだかと思えば、代わりに耳に響くのは阿武隈の甲高い声だ。

「人質がいるようだったからね」

 

「むぅ、もういいですけどー、奥に投げ込み過ぎです。ほらー、人質さんが焦げちゃってるじゃないですか! スタングレネードだって至近距離で破裂したら普通に負傷するんですから気を付けてくださーいー」

「ふむ、Век живи, век учись. と言ったところだね」

「どういう意味?」

聞き取れない言葉を発した響に雷が聞く。

 

「生きてるかぎり学べって意味だよ」

「今日はスタングレネードを学ぶ予定はなかったんですけどね」

 

 

 

「目標時間もクリアしたんだし、まぁいいじゃない。霞ー、結果はどう?」

「過程には問題があったようだけど、結果に問題はないわ。犯人の見逃しなし、人質の誤射もなし。あぁ、最後の人質は焦げたんだっけ? それでも制圧時間は大したもんよ」

 

霞的には納得の結果となったようで、阿武隈たちにそう告げていた。

 

 

 

「それじゃあ荒らした部屋を片付けますよー、特に響ちゃんがグレネード投げ込んだ部屋が酷いことになってますから」

「うん、片付けもするのかい? 設備の人たちに任せればいいじゃないか」

「次は阿賀野さんが体験するんですー」

 

まさか自分で後始末をするとは思っていなかったようで、露骨にしまったという顔をしている。

「もう、響が調子に乗ってグレネードなんて投げるから」

 

 

しばらくかかりそうねと、霞が溜息を吐いた。

 

「私がアレやるんですか!?」

「軽く体験だけよ」

「そんじゃ、下が片付くまでにまずは簡単にレクチャーといきますか」

 

そう言って、突入についての説明を鈴谷がしてくれることになった。

 

 

「訓練の目的は、まあ屋内戦への備えなんだけど。CQBっていう近接戦闘を学ぶことなのだよ」

「近接戦闘ですか?」

 

「鈴谷たち艦娘は、砲戦魚雷戦っていう決して近くない距離で戦うことが多いからねー。こうやって訓練でもしないと近接戦闘なんてまったく身に付かないんだよね」

 

 

「それ必要あります?」

説明されても、あまり必要性がわからない。

 

「艦娘として、人型で生きるなら。ね」

「せっかく艦娘になったんだから、その能力は使わないともったいないってのがウチの提督のモットーでね、鈴谷もそう思うよ」

 

 

「こんなご時世だしね、『生きることは戦うこと』。前に司令官にそう言われたわ」

「陸の上でなす術なく……、なんて鈴谷はごめんだからねー」

そう口々に話す二人。

はぁ、近接戦闘ねー。阿賀野的には陸上で戦闘っていうのがそもそもわからないんだけど。

 

 

「使う使わないじゃなく、出来る出来ないのほうが重要なのよ。何事にも備えておくのが軍人だし、ウチは欺瞞(ぎまん)の方法から歩き方までやるわよ」

 

 

 

それはそうと、阿武隈たちの訓練を半分他人事のように見てたわけだが、あの人型の的ってつまり人間さんなわけでしょ? 全員射殺か爆殺してたように思うが、それって艦娘的にはどうなんだろう。

 

 

そんな風に思っていた。

 

 




阿賀野姉ぇの突入訓練の結果?
そりゃあもうあれよ、あれ。


え? 霞のPPKの話?
ここで明かされるなんて書いてないじゃん?
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