少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜   作:山田太郎

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戦場でのことは霞にお任せな提督さん。
戦争は戦う前に、が信条なのでいろいろやってます。

海戦前の日常回(?)ですわよ!



第4章 南西海域
戦争は女の顔をしていない


本日の俺たちは、シンガポールで開かれているちょっとしたパーティーにお呼ばれしている。

 

 

俺と金剛とでせっせと参加し、普段からコネ作りに勤しんでいるある意味での職場になるのだが、今回はいつものお歴々のみなさんの他、若い実業家さんやら地域団体の代表さんやらと幅広い人脈が集まると言うので、俺たちも趣向を変えて望むわけ。

 

 

いやーこんなご時世でも、持っている人は持っているんですねー。

我が国含め、海洋国家はその殆どが致命的なダメージを負ったはずなのですが、どうやら人類という種はこの程度の世界の危機なら変わらず経済活動を行い、変わらぬ繁栄を目指すようだ。

あるいは、隕石が落ちてきてもそうなのかもしれないな。たくましいことです。

 

もっとも、弱者が搾取されて強者だけが栄えていく。なんてのは深海棲艦が出現する遥か昔から当たり前に行われてきたことなので、もともとこの状態をして「世界は平和」だったわけだ。

マクロの世界で言えば、ずっと搾取する側であり続ける日本国。その民である俺が問題提起するような類の話ではあるまい。

 

 

軍人であるはずの俺にとってはアウェイ感漂う煌びやかな世界だ。だって軍人ですもの。

同じように、軍艦であるはずの金剛はというと……。うん。大方の予想どおり。

まるでホームに帰って来たと言わんばかりの馴染みっぷり。

 

なんでアイツ、戦艦なんてやってるんだろうね。

 

 

 

 

 

 

「わっ、金剛さん凄く綺麗です!」

「ワーオ、嬉しいデース」

紺色のドレスで着飾った金剛を見て阿武隈が感嘆の声を上げる。

場の空気に完全に溶け込み、堂々とその存在を主張する金剛は、もともとこの世界の住人なのだと勘違いしそうになる。

 

ホントに綺麗だよな。見違えるようだ。

「なんですか? 普段は綺麗じゃないみたいな言い方Death」

「あれ? 俺だけ扱い違くね」

 

いや、金剛は普段も綺麗だよ?

でもパーティーでの金剛はさらに美しいって言いたいのよ。

 

 

さすがにパーティー慣れしている金剛は、会場でも一際目を引く大輪の薔薇って感じ。

一時期は俺と一緒に連日連夜参加したからね、地元有志の方や政治家さんとの繋がりってあると便利なんだよ。ホント、有ると無いでは大違い。

特に俺みたいに後ろ盾もなく異国に放り出された若造的には。

 

覚えておくといい、社会に出てから遭遇する多くの困難は、コネがあるだけでそのほとんどを回避できる。

仕事に慣れることよりも先に、まずやるべきことが人脈の形成なのだ。

うん? 自己の能力を磨くだって? それは当たり前にやっておけ。

 

 

 

さて、本日も変わらず決まっている金剛さん。

今回のドレスは上品さや高貴さをイメージ。そろそろ社交界での高嶺の花ポジションを掻っ攫っちまおう。そんなところだ。

もともと素体は最高品質クラスだし、頭も良くて空気も読める女だからね。下積みはもう十分でしょ。

 

最初は辛かったもんな、お金も全然ないしで苦労を掛けた。

まさか金剛が壁の花扱いされるなんてな……。

社交界の新人を歓迎する強烈な洗礼をいただいてしまった。

 

その日の金剛が荒れに荒れたのは言うまでもない。

でも、もうみすぼらしい格好で恥をかかせたりしないぜ!

 

 

 

 

しっかし、打ち合わせどおりのやる気っすな金剛さん。

こんなの一目合えば恋に落ちちゃうんじゃない? 満を辞しての勝負だからって張り切りすぎだ。よっぽどパーティーでのストレスを溜めてたんだろうな。

 

 

ようやく日の目を浴びることができる。そんなステージで彼女が選んだ武器がこれ!

 

このドレス、背中がガッツリ開いているぅ!

 

……ちゃんと履いてるよな? 腰のカナリ際どいとこまで見えちゃってるけど。

 

まあいい。

ついでに驚きの金額でもあったそのドレスだが、今までの迷惑料とこれからのための先行投資にしておいてやる。

本日はその自慢の背中と腰で大物を釣り上げつつ、パーティーの花へとなってこい!

 

 

 

 

そう、今パーティーでの金剛は話題の中心メンバーのステージにカチコミに行くので、いつもやってる媚び売りができない。

だから代わりに連れ込んだのが阿武隈。

 

同じく着飾っている阿武隈は豪奢な雰囲気が漂う赤色のドレスで、初めてのパーティーに少し興奮しているのか上気した顔がかわいい。

 

なんて言うか、阿武隈って派手だよね。

 

そんな阿武隈のドレスは定番のAライン。真紅のドレスをこれだけ見事に着こなせるのは素直に感嘆だ。女性を華やかに魅せるのにこれ以上のラインが存在するのだろうか、これを世に送り出したクリスチャンディオールのセンスに脱帽。

中身の造形の良さについては親に感謝といったところだが、阿武隈の場合、親は浦賀船渠の方々でいいのかしら?

 

 

「阿武隈も似合ってるね、大人っぽいぞ」

「えへへ、そうですかー?」

「夕立はー? 夕立はー?」

 

 

本日の警護艦である夕立も、淡いクリーム色のドレスを身にまとっている。

こちらは二人と対照的にシンプルにまとめた清楚スタイルで、スレンダーラインのドレスが妙に似合う。

首元の細っいチョーカーがアクセントになり、幼さの中にもそこはかとないエロさを感じてしまう。これはもしかすると提督だけかもしれないがな。提督病というやつだ。

 

 

「お前はそういう格好してるとホントお嬢様って感じだな」

 

やもすると体の弱い深窓の令嬢にも見える。

まさか普段返り血に塗れて、第二外国語が肉体言語の艦娘に見えはしまい。

何人か騙されて釣れそう。女の人は化けるから怖いね。

 

 

 

「金剛さんはいつも来てるんですよね?」

そんな何気ない阿武隈の質問。

 

「ソウネー、こういうのは慣れなので」

……腹芸ができて見栄えが良いからなんデスけどね。と心に汗をかきながら金剛は思った。

そしてまったく同時に提督も、腹芸ができて見栄えが良いからだなんて言えないよなと思っていた。

 

阿武隈を汚い大人みたいに育てるのは止めよう。そう心に誓う二人。

見栄えが良いのはすでに確定しているのだが、彼女まで腹芸を修める必要はないだろう。

 

 

 

 

目に入るものがなんでも目新しいようで、会場をキョロキョロ確認している阿武隈が言った。

「なんで今回はワタシもなんですかー?」

 

「見栄え重視だ」

「エッ?」

身も蓋もない話だが、広報活動ってのはとどのつまりはそう言うことなのだ。

 

いやなに、特に難しいことはしなくてもいいので安心してほしい。

なぜなら美少女は最初から勝てるようになっているのだから。

 

シンデレラを見ろ。

彼女は「パーティーに参加」さえできたら姫にもなれる実力者だぞ。

あの素体があったからこそのガラスの靴だ。

 

かの有名な童話が我々に教えてくれるのは、実力のある者は些細な切っ掛けがあるだけで大成するということ、そして、その切っ掛けとなるのは多くの場合で他者からの介入であるという2点。

 

つまり、すでにパーティー会場にいる阿武隈には障害などなに一つないのだ。

 

 

「阿武隈も夕立も、どこに出しても恥ずかしくない自慢の美少女だ。それだけで勝ったも同然よ」

「確かにそうネー、二人ともドレスが映えます。本当に綺麗デス」

 

パーティー経験者から手放しで絶賛された阿武隈と夕立は嬉しそうだ。

身内の贔屓目はあるかも知れないが、それを差し引いても二人のビジュアルは十分な点数を叩き出していると確信できる。

 

 

「火薬の匂いとか染み付いてないですかー?」

気になるのか、そう言って腕のあたりを匂っている阿武隈が妙におかしい。

 

「砲撃で付くのもやっぱり硝煙の匂いって言うんですかネー」

金剛が変なところに突っ込んでいく。今重要なのってそっちだった?

 

「もぅ! 提督まで匂いを嗅ぐのやめてくださーいー」

いや、気にしてるようだったから確認だよ。

そして重要なことを確認した結果、阿武隈は良い匂いがする。ということを再認識した。

 

お前フェロモンでも出してるのか?

 

 

 

「それで、今日はなにをすればいいんですかー?」

「お前は媚びを売って周ってこい」

 

それだけで今回の目的は概ね達成できるはずだ。

とにかくニコニコと笑顔を絶やさず、話し掛けられたら快く応じて会話する。

 

この海域のシーレーンを握る俺たちに、打算で近付きたい奴らの層はもう発掘できている。

あと必要なのは信奉者。簡単に言うとファンだ。

 

 

「夕立はー? 夕立はー?」

「夕立は俺の側で飯食ってりゃいい。おっと、今日はいつもより30%速度を抑えて食べてくれ」

 

夕立は俺の警護も兼ねてるから側に(はべ)らせておきたい。

決して目の保養がどうとか、こいつは喋るとたまに物騒だからとか、女一人連れてない情けない男だと思われたくないって理由じゃないんだからね!

 

 

 

「阿武隈はイメージ戦略デスカ?」

「その場にいるだけでかわいいからな。愛嬌振りまくには打ってつけだろ」

 

言われて照れている阿武隈はこのまま部屋に持って帰りたいほど愛らしい。そしてこの愛らしい艦娘こそ、海戦ともなると最前線を駆け回る水雷戦隊の、その一水戦の旗艦を務めるエリート軽巡なのだ。

 

実もあり名もあり花もある。

 

阿武隈は、艦娘のプラスな部分を分かりやすく体感させるのに相応しい存在だと思う。

 

さぁ、お前たちを戦争の道具だ兵器だなんて思っている奴らに見せてやるがいい。

こ れ が 艦 娘 だ !

 

 

 

 

「提督もかっこいいですね、なんか大人の男性って感じです」

提督を覗き込むようにした阿武隈が、珍しくそう褒めてくれた。

いつも大人なつもりだが、いまいち伝わってないのかな?

 

「惚れ直したかな? じゃあパーティーが終わったら二人で飲みなおそう。実は部屋を取ってあるんだ」

「その部屋にはワタシたちもいるんデスけどネ」

 

パーティーが終わる時間も時間だしね。

本日はこのままシンガポールにて宿泊。リンガに帰るのは明朝になる。

 

 

 

「さてと、そろそろ仕事しますか」

 

 

お仕事お仕事。

もうお分かりいただけたと思うが、今回の夜会侵攻作戦の目的はウチの艦隊と艦娘と、まとめて好印象を抱いてもらおうというわけだ。

 

 

 

「ふーん。じゃあワタシはナニしますか?」

お前はさっさと行って、いつもどおり微笑み浮かべて腹芸してこいよ。

 

「ワーオ、愛を感じられません」

 




そうして社交界の花になることができた金剛。
しかし、そこにはそんな彼女を恨めしげに睨む女の姿が!?

愛憎と打算が渦巻く夜の世界で、金剛は羽ばたくことができるのか。

次回、「右ストレートでブッ飛ばす」。
来週も、サービスサービスぅ!



本日の阿武隈さんは白色のストラップレスブラ。
タイツはガーターで吊ってます。
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