少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜 作:山田太郎
「少女のつくり方」がハリウッドで映画化される前に、気軽に絡んでおいたほうがいいぜ? 多分それがいい!
お便り待ってます(・ω<)
「いい加減にご飯くらいは食べておいでよ」
先日やらかした凶★行★偵★察のせいで片付けなきゃならない書類や事後処理に追われ、1日執務室にこもっていたが、ついに時雨に追い出されてしまった。
渡り廊下を通り、食堂やリラクゼーション施設が集まる棟に入ると、なにやら騒がしさを感じた。
誰が騒いでいるのかとぼんやり考えながら、ちょうど大浴場の前を過ぎようかというタイミング。突然叩き壊されんばかりの勢いで引き戸が開いた。
一瞬のことで目がついていかなかったが、悲鳴と共になにやら柔らかいものが突撃してきて押し倒されたようだ。
なんだ、手のひらに感じるこの水風船(大)のような感触は……。
「提督? 助けて」
その声で我に返り、目の前の光景を見て驚いた。
「な、なんて格好してんだ。とにかく戻れ」
「無理! 絶対無理!」
涙声で訴えながら力一杯左右に振られる首に引っ張られて、目の前で二つの凶器も揺れる揺れる。
脱衣所から村雨に声を掛けられる。
「提督? あちゃー、なんてタイミング」
「村雨か、中でなにがあった? なんで飛龍が裸で飛び出してきてるんだ」
そう、脱衣所から飛び出してきたのは素っ裸の飛龍。その飛龍に押し倒されながら、状況の説明を求める。
「ちょっと大きめのクモが浴室にいてね、驚いた飛龍さんがあっという間に飛び出して行っちゃったんです」
「せめて服を着てこい」
馬乗りになっている飛龍から這い出て声を掛けるも、
「クモがいるのよ? そんなとこに戻れない」
「武闘派飛龍も陸の上では女の子なんだなって、言ってる場合か。そんな格好でこんなとこウロウロするわけにもいかんだろ」
必死の形相で腕にしがみつく飛龍。凄いな……腕が埋没してしまっているぞ。
「提督、行って退治してきてよ!」
飯前にクモ退治か、タイミングが良かったのか悪かったのかと問われれば、代われるものなら代わりたいという提督諸君も多いだろうから、それは良かったのだろう。
「仕方がない」
この場に留まっても目のやり場に困る。すでにインパクト大過ぎて目蓋の裏に焼き付いてしまってるかもしれない。
脱衣所に足を向けようとした瞬間。
「ダメダメダメ! みんなまだ着替えてないから! 入っちゃダメですよ」
焦った調子の村雨から中の状況が伝えられる。同時に、
「おフロでハダカは当たり前ネー。ワタシは平気ですよー」
と別の声も聞こえたが。
「ちょっと黙っててくれます?」
その村雨の一言で封殺されたようだ。
コアメンバーならともかく、中に何人いるのか分からん。こんな女の園に突撃できる神経は持ち合わせていない。
「え〜い。村雨! タオル1枚持って来い」
「なんで私なんですかー!」
「お前が良識持って恥じらう乙女だと知ってるのと、俺の趣味だ。察しろ」
確かに、と村雨は思った。
この英国かぶれに持って行かせたら自信満々でフルオープンかもしれない。彼女は淑女であると信じたいが、文化の違いは侮りがたいものだ。
飛龍さんにも早く隠すものを持って行かないといけないし……。
「えーん。お嫁に行けなくなったら責任取ってくださいよー」
急いでタオルを巻くが、これはちょっと厳しい。上を隠すと下がギリギリだし、下に余裕をもたせると上から溢れそうだ。
二者択一は指揮艦の力量を問われるところである。重要度を考えると上はある程度捨て置き、下腹部こそ重点的に守るべきと思われるが、提督の視点の高さを考えると守るべきなのは胸部であるとも言える。
結局のところ考えていても答えが出るとは思えない案件だった。
他の子に投げてしまいたい特殊任務だが、お姉さん気質でお人好しの自分が、誰かに泥を被せて自分だけ助かるのを良しと考えることはできないだろう。
涙目になりながら引き戸に向かうが、一歩踏み出す毎にタオルの縁から私のフチが顔を覗かせそうだ。
さっと服を着てしまおうかとも思ったが、裸の状態で飛龍さんを待たせるのも気がひける。
やるしかない! 女は度胸だってあの人も言ってた。
ええい!
恥ずかしがると余計に恥ずかしくなるもんなんだ。意を決して出入り口まで行き、戸口からどうぞとタオルを手渡す。
いそいそとタオルを巻く飛龍を見ながら、これは無理だ……と遅まきながら思った。
考えるまでもない、私でギリギリなのだ。
無敵の機動部隊に所属した4空母の中で、1番小さいと言われる蒼龍でさえ九九艦爆乳と有名なのだ。それより豊満な百式重爆乳を持つ飛龍は、さらに村雨より背も高い。
タオルを巻いてなお、島風よりもあられもない姿で、これでは格納庫を隠すには力不足過ぎる。
「せめてこれ羽織ってろ」
今更のように提督が上着をかけた。まさか堪能していたわけではあるまいな。
「で、どうすりゃいい。このまま飛龍を通路に置いとくわけにもいかんだろ」
「そうですね。かといってこのまま戸を開けっ放しで提督と見つめあってるのも埒があきません」
タオルの裾を気にしつつ村雨が応える。
洗い髪に上気した顔の村雨はやけに色っぽい。よーく見ると、タオルの縁から薄くピンク色が見えているような気もする。
扇情的だ、本当に駆逐艦か? こいつ。
「口に出てます」
おっとしまった。
「提督、意見具申します。ここは戦略的撤退をするべきかと」
いや、飛龍さん。さすがにその格好のまま部屋には帰れないでしょうが、どこに撤退する気だよ。
「ホイホイっと」
村雨の肩越しに、新たに顔を覗かせたのはバランス良い体をした江風だった。
「なンだ、提督もいたのか」
なンだ。は、こっちのセリフだ。
そんな気軽に出てくるな、バランス良い体が見えてるぞ。
「飛龍さん。もう入っても大丈夫だぜ。軍曹は窓から外に出しちゃったからさ」
「クモって軍曹だったのか」
「おう、手のひらくらいのヤツだったぜ」
江風はクモが平気なんだなと聞くと、はぁ? 深海棲艦みたいなものじゃンとあっけらかんと言った。
「もういないの? 絶対?」
「平気平気。アイツは悪さしないし、益虫なンだから。そんな嫌ってやったらかわいそうじゃンかさー」
「あの……江風、そんな格好で提督の前に出てないで、あなたも戻ってきなさい」
中から海風の声が聞こえた。
海風もいたのなら、やっぱり中に入っておくべきだったかなとちょっと後悔した。
飛龍がお尻を振って脱衣所へと戻って行くのを見送りつつ、駆逐艦で1、2を争うであろう村雨も、さすがに百式重爆乳には敵わないか。と、食前酒代わりになった光景を脳内HDDに保存。今時SSDじゃないのかって? 読み出しの速度より、この場合優先されるのは信頼に基づく長期保管の実績だと判断したからだよ。
せめて、キレイに処理されていた見晴らしの良い格納庫のことだけは忘れてあげようと思う。そちらは一時メモリ行きということだ。
「さて、飯食って仕事に戻ろ」
そうして大浴場の前を後にした。
翌日、裸で提督に抱き着く飛龍の姿が、一部モザイク付きで青葉の艦隊新聞に載り、冷静さを取り戻した飛龍がしばらく部屋に引きこもった。
そして俺は、誰かの無言の圧力でエアコンがいらないほど室温の下がりきった執務室で仕事をする羽目になったことを付け加えておこう。
この話はまったく物語の構想ができていなかったときに作った話。
ぶっちゃけると1話が影も形もなかったときに作ったやつ。
だいたい本編に則っているけど、リンガに所属していない艦娘さんが……。
飛龍は研修で鳳翔さんのところに来ていた。
そういうことにしておこう。
後はなんとか妄想で補って納得してくだしい。