少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜   作:山田太郎

71 / 184
どれが本編なのか、もはやわからないが……。

この話は今後、特に本編に絡んでこない話なので、番外編とでも思ってもらえたら。



〜友軍基地突入! 司令官救出作戦〜2

司令官が拘束されている基地までは何事もなくたどり着くことができた。ここからはチームを再編成して港湾を進む。

 

降りるから屈んでほしいと島風に告げた暁がお尻を抑えながら近づいてくる。

「酷い目にあったわ」

「でも有用だったんなら、次回から積極的に作戦に取り入れられそうね。島風&暁の先行哨戒班の完成じゃない」

「冗談じゃないわよ、 あんなので揺らされ続けたら戦闘なんてできないわ」

 

暁と雷が軽口を言いあっている。これから突入だというのに、彼女たちはまるで自分の部屋に戻るだけとでもいうような気軽さだ。

 

発射管の側面にクッションを付けたシュールな立ち姿の島風が不満げな顔で「これでも揺れないように気を付けたんだよー」と声を上げたが、それに対しては素直に感謝を告げていた。

「まあ、おかげで索敵に集中できたわ。それはありがとう。なのです」

 

 

 

「始めるわよ! 基地の目をこちらに向けさせなさい。砲撃始め!」

霞の指示に金剛が頷き、復唱する。

「3番、4番主砲ファイヤー!」

霞が乗っている1番主砲側の砲身を下げたままの砲撃が開始され、それはそのまま救出作戦の始まりを意味していた。

 

 

「あの子が指揮を取るの?」

「そうですー。霞ちゃんは現場での艦隊指揮を任されてますから」

救出班のリーダーである甲高い声の駆逐艦に聞くと、なんでもないことのように、そう返答された。

出発前にも声をかけていたが、まさか作戦指揮まで駆逐艦娘がするとは思っておらず驚いた。

軽巡である自分が、戦艦や重巡に指示を出す姿を想像して、そのあまりの畏れ多さに身震いする。

 

 

 

「鈴谷、そっちはどうなの?」

「こちら鈴谷。突入ポイント到着。これより降下するよ!」

無線で別働隊を率いる鈴谷に呼びかけると、ちょうど降下するところだと返答があった。さすが、戦術行動の申し子と言われるだけあってタイミングはバッチリのようだ。

すぐさま基地施設上空でホバリングするUH-60から鈴谷、熊野、球磨、多摩が次々降下していく。

 

「鈴谷達の任務は救出班支援よ! 保護対象の確認とルート確保が目的なんだから深入りし過ぎないで!」

突入部隊として突入するのは四人だけなので、基地を丸ごと制圧するほどの戦力ではないのだ。

 

 

ヘリボーンを終えた突入部隊が夜陰に乗じて基地司令部のある建物に駆け寄って行く。

 

窓際に立った熊野が頷く。窓を割りスタングレネードを放り投げ、数秒後炸裂音と凄まじい光量に曝された屋内から悲鳴が聞こえる。

「いっくよー」

 

「ゴー! ゴー! ゴー! 階段確保して! 東棟には用がない。西側制圧急ぐよー」

鈴谷を先頭に手際よく窓から進入し、救出班のためのルート確保に取りかかる。

 

 

「頭は狙わないようにねー」

鈴谷のステアーAUGがリズム良く弾丸を撃ち出していく。悲鳴の具合を鑑みるに、何人かの艦娘に当たったらしい。

5.56x45mm弾を喰らった程度では、まあ滅多と致命傷になることはない。それでも艤装をつけていない艦娘にとっては無視できる被害でもない。当たりどころが悪ければ、銃やナイフでも艦娘は殺せるのだ。

 

 

1階西側の部屋に強烈な閃光があがったのが、港湾外周にて待機する阿武隈たちからも確認できた。

 

「進入ポイント確保。いつでもいいよ!」

鈴谷から無線が飛ぶ。それを聞いた阿武隈は能代に頷いてみせ、号令を下す。

「救出班突入しますー!」

 

阿武隈を先頭に暁たち救出班が港湾施設ギリギリの海上を滑るように駆け抜けていく。

「私たちの銃は真下に排莢されるので、空薬莢を踏んで転ばないように注意してほしいのです」

真っ暗な海で、水際を駆けるという難易度の高い航行に集中していると、ふいに後ろから電に声をかけられた。何気ないことのように見えるが、相当な練度を有しているのだと、それだけで察せられる。

 

 

「進入しますー!」

海から転がり滑るように陸へと上がり、そのままの勢いで先ほど光った部屋の窓を割る。基地内からは、進入を防ごうと一般兵や艦娘が応射している。

体操選手のような見事な動きで阿武隈が進入した後、たて続きに響が転がり込み、室内から腕を伸ばして窓下で待機していた暁を引き上げる。

 

「次、能代さんどうぞ!」

外壁に背を預け、手に持つP90で牽制射撃を続ける雷と電が声をかける。殿を務めるのはこの二人だ。

 

連れて行ってほしいとワガママを言ったのは自分だ、こんなところで足を引っ張るわけにはいかないと、逸る気持ちを押さえつけ飛び込むようにして室内へ。

室内に入ってから、今さらのように割られたガラスを意識しなかったことに思い至るが、手のひらに傷は負っていないようだ。

誰への配慮だったのか、振り向くと出入り口となった窓際では暁が窓枠に残ったガラスを丁寧に砕き捨てていたのだった。

 

そうして能代が室内に消えると、両手にイングラムM10を構えた響が上半身を窓から出し、電を促しながら弾をバラ撒く。

すぐさま電が窓枠に手をかけ、そのお尻を雷が押し上げるようにして室内へ入れると、最後に雷を引っ張りあげて無事救出班全員が進入を成功させた。

ベテランである第六駆逐隊面目躍如の流れるような進入劇だった。

 

 

 

基地正面の海上で救出班の進入を確認した霞は、続けて陽動のための指示を出す。

「無事に入ったわね。東側建屋に砲撃! 意識を向けさせるわよ! 執務室は2階だと思われる。殺すつもりはないから当てないよう注意なさい」

 

視界の端では、海上を忙しなく動き回る島風の姿。彼女には明確な指示を重ねて出した。

「島風、アナタは上がるんじゃないわよ! 基地側の海上際で陽動!」

「えー、それ島風の上を砲弾が飛びこすんじゃありませんかー?」

「ノープロブレム! 当てたりしませんヨー」

楽観的な金剛の声に霞の容赦ないアドバイスが重なる。

「破砕後の砲弾の破片に注意なさい」

 

 

その頃、基地東側にある執務室は蜂の巣をつついたような騒ぎだった。

「なんだ? なにが起こっているんだ! 進入されているのか?」

 

息を切らした艦娘から所属不明の訓練された部隊に進入を許し、現在戦闘中だということが報告される。

「地元のゲリラ? 他国の軍隊? それともまさか陸軍か? 海軍基地に突入だと?」

思考のまとまらないままに、彼は想定通りの方針を固めた。

「とにかく、ここを重点的に守れ! 近隣の基地に救援を頼め! 時間を稼ぐんだ」

もしこの場に霞がいたならば、彼は指揮官の器ではないと切り捨てたことだろう。

 

 

「被弾確認!」

進入した室内では阿武隈がチームの現状確認を取っていた。

「響、損傷なし」

「私たちも大丈夫よ」

能代にも声をかけるが、こちらもかすり傷一つ負っていない。

 

「他に問題はありますかー?」

「一つだけ」

阿武隈の問いかけに響が指を一本立てる。

 

「夜間の海上では視認できるものがまったくない。だから、せめて夜だけでもスパッツを脱いではくれないかな? 艦隊行動に支障をきたすよ」

「んん、却下です!」

ソレを目印にさせるつもりはないと断言してこの話は終わったが、この状況でいったいなんの話をしているんだろう。

 

 

そんな一幕が終わると、頭を低くしてついてくるよう指示された。

能代を挟んで暁と響がエスコートしてくれるおかげで、陸上作戦などまったく経験はないが、戸惑うことなく行動することができた。

 

室内には被弾した基地所属の艦娘が二人、後ろ手に縛られて転がされており、太ももからの流血が確認できる。突入からの時間を考えると、あっという間に室内に進入され、状況を理解する間もなく鈴谷に足を撃ち抜かれたのだろう。

 

 

当然だが、基地内での軍事行動など想定もしていない一般の艦娘では、有効な対策が打てるはずもなく、大した抵抗もなく状況は進行しているようだ。

すでに阿武隈は先行しており、出入口では雷と電が通路の警戒をしている。

 

姉から聞いてもいたが、実際に一緒に行動をしたことで、彼女らの陸上戦闘における凄まじい練度が実感できる。そのおかげで司令官救出作戦なる、およそ艦娘には場違いな作戦が遂行中なわけだが、この子達は、いったいなにを思ってここまでのスキルを培ってきたのか。昨日今日の訓練で身につくようなものとは到底思えず、これは長い年月をかけ、日頃から飽くことなく訓練を繰り返してきた結果だ。

もし、これらのスキルがなにか目的を持って鍛えられているのだとしたら。その目的は想像するだけでキナ臭いもののような気がした。

 

 

「予想通り執務室のある東側の防衛に回っているようだねー」

「警備もザル。動きもザル。これではまるで素人ですわ。『お前らの指揮官は無能だな』と言って差し上げたくなりますの」

 

能代は無線機から流れてくる声を聞きながら、そうだろう。誰がわざわざ艦娘の集まる海軍基地に、こんな見事に突入してくる部隊があることを想定するものかと思った。

反抗らしい反抗もなく、されるがままに基地内を蹂躙されている姿は、自分自身と重ねると手放しで称賛するのが憚られる。

 

 

「αポイント制圧。対象発見。司令官と秘書艦と思われる艦娘を保護したよ」

鈴谷からの報告に無線機から霞の叱咤が飛ぶ。

「予定より遅れているわよ。失敗なんてあり得ないんだから、油断はしないで」

 

1階西側、その突き当たりの部屋の扉が開いており、鈴谷としゃがみこんでいる熊野の姿が見えた。

そこはまさに提督と霞が予想していたままの場所だった。

 

 

「確認よろしくー」

室内では、顔の下半分を鼻血で真っ赤に染めた艦娘を熊野が拘束していた。ここが海上であれば、流血沙汰はさして珍しいものではないが、それが陸上の対人戦によるものだと思うと、途端に生々しいもののように感じる。

 

部屋の中央では、衰弱した司令官が秘書艦娘と阿武隈に支えられている。

「司令官!」

見たところ、彼に目立った外傷はなく、気を失っているだけのようだ。

「感動の対面は後だよー」

鈴谷の声に、緩みかけた気持ちをもう一度引き締めるが、その後に続く妙に緊張感のない救出班リーダーの声で、またぞろ気が抜けてしまうところだった。

「こちら救出班、対象を確認しましたー。これより脱出しますぅー」

 




スパッツは脱いでくれないかな?


夜の海ってホント真っ暗。前に突き出した自分の指が見えないくらいだからね。
でも阿武隈のパンツなら見えると思うんだ。心の目とかなにかで。


前日譚として、提督と霞は司令官監禁場所を言い当ててる。
小心者は犯罪の証拠や関連する物を捨てることができず、目に入らない、しかし手の届く場所に残すってのが理由。


史実でも友軍の艦上越しに砲撃をかました娘がいたな。
はて、誰だったか。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。