少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜   作:山田太郎

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艦娘の銃撃といえば、時雨と霞はマリーナベイサンズにショッピングに出掛けたときに事件に巻き込まれ、しこたま撃ち込まれた経験があったりする。

モール内を流れる人口の川を航行する離れ技で事件を解決させ、そのときの傷が今でも霞の肩に残っているが、今後投稿できる形になるかは不明……。


〜友軍基地突入! 司令官救出作戦〜3

「ヘリを脱出地点に! ようやくの折り返しよ。気を抜かず事に当たりなさい」

 

 

通信を聞いた霞は、すぐさまヘリを操縦する伊勢に指示を飛ばした。

相変わらず金剛の艤装の上で眉間に皺を寄せている霞。自分にも他人にも厳しい彼女は、どんなにうまくハマった作戦であってもきっと、常に反省材料を抱えているのだろう。だからこそ、士気の高いこの艦隊の艦娘は霞の指示を心待ちにし、彼女に従うのだが。

 

 

能代が司令官を背負い、疲れの見える秘書艦娘は阿武隈が背負って脱出することになった。

先導を務める鈴谷が基地所属艦娘の足止めをしている球磨、多摩に無線で呼びかける。

 

「退路の確保はできてるー?」

「中央階段クリアー。2階で牽制中だクマー」

「通路は東側に繋がるホールまで確保済みニャー」

 

こちらからも緊張感のない声で答えが返ってくるが、それを聞いた鈴谷は少し緊張したようだ。

「ちょ! なんでそんなところまで進んでるの?」

「わからないクマー」

「わからないニャー」

 

 

鈴谷が先行し、六駆に囲まれた能代、阿武隈が駆ける。殿は熊野が務め後方を警戒しているが、相変わらず申し訳程度の反抗しかない。

「やっぱりMAC-10ではストッピングパワーが物足らないね。自分のを持ってこればよかった」

「電たちの任務は救出ですよ?」

「そっちは鈴谷さんたちに任せて集中してくださーいー。どのみち響ちゃんのAK-74は作戦時の使用を認めませんー」

「響姉アレ持って突入なんてできないじゃない。威力が欲しいならさっさとP90に持ちかえたら? 撃ちまくれるしきっと楽しいわ」

「そんな格好の悪い銃は持ちたくない」

 

 

「おしゃべりもいいですけど、帰るまでが作戦ですわよ」

 

そう熊野から注意を受けた。むろん集中を欠いているわけではなかったが、こうも反攻がないと拍子抜けもいいとこだ。

 

それは特攻を行った鈴谷が1番感じていた。なーんか調子狂うなーとボヤきつつも、頭を切り替え、霞に連絡を入れる。

「脱出ポイント変更なし。進入時の部屋からそのまま出るよー」

「問題ないわ。みんな東側に集中してる。いつでもどうぞ」

 

こちらに意識を向けさせようと、金剛が砲撃を続ける。

「うお! 階段を砲撃するのは止めてほしいクマー」

「はあ? なんでそんなところまで上がってるのよ! 味方の砲撃で負傷なんて格好悪いこと報告できないわよ、巻き込まれるのならいっそ沈んできなさいな! 名誉の戦死扱いにしてあげるわ」

「ひどいクマー」

 

妖精と呼ばれる霞の想定外。いくら相手の防衛がおざなりでも、さすがにそこまで確保してるとは思わなかったようだ。

 

 

「ほらほら、わたくしたちも脱出致しますわよ。戻ってくださいね」

鈴谷を先頭に阿武隈たちが外に出た後、熊野が敵を食い止めている二人に戻るよう指示する。一瞬後、無線越しにスタングレネードの閃光音と悲鳴が聞こえてきた。さすがに退くときも鮮やかだ。

 

 

無事に救出を終わらせ、基地から少し離れた海上を滑りながら辺りを見回す。

「海上までは出てきてないようだね」

「金剛さんたちがうまく抑えてくれているのです」

 

港湾の方では、基地側から散発的な砲撃があるものの、陸地から無理矢理撃っているようなもので海上までは出てきていない。その攻撃はこれ以上の上陸阻止を目的としているもので、金剛たちを撃退しようとしているものではないようだ。

霞にもそれがわかっているのだろう。砲戦の最中にあっても、未だ艤装の上で腕を組み憮然とした態度で海面に降りるそぶりもない。

 

 

「こっちも執務室の辺りは狙ってないみたいだねー」

東棟にある執務室の方を振り返り呟く鈴谷に雷が返答する。

「そりゃそうよ、さすがに基地司令官に怪我をさせるわけにはいかないじゃない。後は正規の方法で罪を問うって言ってたわよ」

 

「でも覗かれてるのはどうも気になるなー」

執務室の窓からは、侵入者の動向を窺うためか艦娘が恐るおそる顔を出している。

 

「どうするつもりだい?」

おもむろにステアーを構えた鈴谷に響が声をかける。

「砲火の中で窓から外を窺うなんてバカなことをやってる子にお仕置き」

「無駄なことはやめておきなよ、300mはある。当たりっこないさ」

「まぁ見てなさいって」

そう言って無線を繋ぎ、霞に報告を入れる。

「こちら鈴谷。執務室の窓にこちらを偵察している艦娘がいる。これより狙撃で不確定要素の排除を行うよ」

 

 

艦娘の狙撃。

基地に戻るまではなにが起こるかわからない。その不確定要素を排除したい気持ちはわかる。わかるが、ただ見ているだけで、彼女らになにかができるようには思えない。

彼女らは私たちをどうにかしてやろうと覗いているのではなく、自らの身を不安に思っているだけだ。

 

銃撃戦ならつい今しがた嫌という程体験してきた。しかし『狙撃』は感じ方が違うと思う。

それは研ぎ澄まされた明確な敵意。

 

初めての陸戦は、私にいろんなことを教えてくれた。

だから、私はこの卑怯な考えを捨てようと心に決めた。この狙撃は、私の願いを絶対に叶えようという彼女たちから贈られた最大限の想いなのだから。

 

 

能代が弱い自分との決別を心に誓っていたわけだが、しかし、狙撃に対しての霞の言い分は非常にそっけない一言だった。

 

「窓の中には入れないでよね」

 

 

気になるポイントは室内で跳弾した弾丸が予期せぬ被害を出すことだけだったようで、一人で勝手にしんみりしてたのが恥ずかしい。

しかし窓より中に弾を入れるなとは、簡単に言うがなかなかハードな注文だ。

 

「なら砲撃は一時waitしますカ?」

金剛からの申し出に返事をしたのは殿を務めていた熊野だった。

「それには及びませんわ、球磨さんと多摩さんももうすぐ出てくるので、変わらず撃っていてくださいな」

「わかったネー、それじゃあ敵の目をコチラに引きつけマース」

 

 

「さてさて、やっちゃうよ」

「G3ならまだしも、アサルトライフルの軽狙撃でそのうえ立射。いくら教官でも無理だね」

「まま、ニキータさんも狙撃に使ってたし、任せて任せて」

ステアーAUGは命中精度が良いといわれるが、あくまでアサルトライフルとしてだ。フィクションの世界で度々狙撃に使われるが、元来ソレを行うような銃ではない。

 

スタンディングポジションで狙いをつけ、静かに指を絞る。

銃声と共に飛び出した弾丸は見事に艦娘の額を直撃したようで、窓際にいた艦娘はあっという間に室内へとひっくり返った。

「この距離でヘッドショット? バケモノだね」

「酷いなー」

 

特に感慨深いものはないと、いつもと変わらない霞の声が無線から流れる。

「ほら、終わったならさっさと回収ポイントに移動なさい」

 

 

「あの、あの娘直撃のようでしたけど、大丈夫でしょうか?」

「心配は要りませんわ、300mの距離から5.56mmに当たったくらいで艦娘は死んだりいたしません」

陸上とはいえ、狙撃1発で艦娘を仕留めるには力不足だと、心配する能代に熊野が答える。

 

「でも半月は入院するんじゃないかしら、あの子、眉間を割られてたし」

 

話に割って入ったのは暁。彼女の発言に少しギョッとさせられたのは当人の鈴谷だ。

「一応狙ってたからね。それにしてもよく見えたねー」

「当然よ」

 

銃器での射撃を経験したことはないが、訓練すればアレが狙えるようになるものなんだろうか、この波打つ夜の海面から……。

「バケモノ」

後ろでもう一度響が繰り返した。

 

 

 

回収ポイントに到着した一行がヘリに合図を送り、回収のためのロープを下ろしてもらう。

意識のない司令官を正面から抱くかたちで能代にフックをかけ、背中側からは熊野が支えてヘリに引き上げてもらう。

能代と熊野にサンドイッチのように挟まれた司令官に意識があったなら、言葉通り天に昇るような気持ちだったに違いない。

疲労しているものの意識のある秘書艦娘のほうは、阿武隈と一緒に引き上げられ、最後は六駆の四人がまとめてヘリに吸い込まれていった。

 

 

「状況は?」

ヘリの操縦席から伊勢が振り向き声をかける。

「対象は無事保護。気を失ってるけど問題ない。こちらは軽症一つ負ってない」

「こちらも損害軽微ですわ」

響と熊野が状況を告げると、安堵の表情を浮かべた伊勢が言う。

「それじゃ、一足先に帰投しちゃいますか」

 

 

ヘリが離れるのを見送った海上では、残されたメンバーが集結中で、あとは球磨と多摩が戻ってくるのを待つだけだ。

「収容完了じゃーん。こちとら艤装持ってないから、帰りの哨戒よろしくー」

鈴谷、球磨、多摩は乗員数の問題でヘリには乗れず、自力航行での帰投となる。

遠ざかるヘリを眺めながら、安堵の溜息をついた霞がボソリと呟いた。

「阿賀野さんよりは陸上に向いてるようね」

 

 

残留組が合流したところで霞が宣言する。

「作戦完了。引き上げるわよ!」

こうして、救出作戦は終わりを迎えた。

 

 

 

 

「心配をかけたね。もう大丈夫だ」

「よかった。本当によかった……」

翌朝、提督にとっては目を覚ました司令官との初対面だ。

司令官の無事を喜ぶ能代、その姿を眩しそうに見ながらも、司令官に声をかける。

 

「我々だけで。と思っていたのですが、能代さんからの強い要望がありまして、勝手に他所属の艦娘を作戦に参加させてしまったことをまずは謝罪したい」

「いえ、貴艦隊に被害がなくてホッとしています。とても手際の良い救出作戦だったと聞いておりますが」

人当たりの良い人物のようだ。面倒な奴ならどうしようかと思っていたが、これで一つ懸念は消えた。

 

 

「実際に参加してみて、能代さんはどうでした?」

作戦参加の感想を能代に問う。彼女にとって初めての陸戦、その目にはどう映ったのだろうか。

 

「距離感が違うと感じました。陸上で、特に今回は屋内ということもあって、狭く暗い中を銃弾が飛び交う戦場。艦娘の流血を見て怖いと思ったのは初めてでした」

「怖い思いをさせてしまったようですね」

「いえ、参加させて頂いたことへの後悔はありません。ただ、今までと勝手が違ったことと、なにもできない自分を想像して怖かったんです」

頼りなさげに自分の腕を抱いた能代が続ける。

「私達の基地に進入されても、彼女らと同じようにまったく抵抗できないと思います。逆に私が進入したとしても、皆さんのように動けるとは少しも思えません」

 

 

そして、強くこう言ったのだった。

「しかし、必要性を感じました」

 

 

 

 

「能代には助けられた、なにかお礼をしなくちゃな」

提督が退室し、二人きりとなった室内で彼女の司令官が改めて感謝を告げる。すぐに、意志の強そうな声で能代から返答があった。

「それなら1つお願いがあります」

 

私は私にできることをしよう。もう2度と、こんなことが起こらないように。だから、お願いごとは決まっていたのだ。

 

「買って頂きたい物があるんです」

 

 

結局1発も撃つことがなかった借り物。今度はしっかりと私の物にしよう。

手にしたグラッチの感触を思い出しながら能代は心にそう誓った。

 




青春力の暴力装置 鈴谷

CQC(近接格闘)/CQB(近接戦闘)の達人で艦隊の陸戦教官を務めるほか、狙撃手としても一流のマルチソルジャー。

陸上戦闘だけでなく、艦隊戦でも遺憾無くその能力を発揮できる戦術行動の申し子のような存在。艦隊内では「困ったら鈴谷」と言われ、対人や対艦娘、対深海棲艦問わず作戦時には毎回主力として参加する。

海上でも電探と観測機を駆使した超精密射撃が可能で、波が凪いでいる好条件が揃えば飛来する砲弾に砲弾を当てることができるチート持ち。
陸上戦闘時は攻勢部隊となる第2陸戦隊の隊長を務め、姉妹艦である熊野らを率いる。

使用火器はステアーAUG。狙撃時には超々高精度のG3をカスタマイズしたPSG1を愛用したりと、用途に合わせて種々の火器を扱う。


史実においても鈴谷の砲戦能力はカナリのもので、命中率自慢の腕っ節が強い娘だった。そして雷撃回避能力ゲージ振り切り。
最期はレイテで大暴れ。

直撃弾を1発も貰わないままその艦歴を閉ざした。
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