少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜   作:山田太郎

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阿賀野姉ぇのリンガ編入前編ンンン!
4つに分割されてます。この話は1/4話。


〜噂の艦隊へ〜(前)

霞が執務室に入ると、江風がソファにうつ伏せに寝転がり、読んでいるのかいないのかという際どい集中具合で雑誌を眺めていた。

 

 

特に指示のない限り、艦娘ならば誰でも入室可能となっている執務室だ。まるで自室のような利用方法をする江風には言いたいこともあるが、部屋の主がなにも言わないのであれば自分が咎めるのもお門違いだろう。

とはいえ、上官を出迎えるにそれ相応の姿勢をと要求するくらいは許容されると考え、遠回しに忠告をする。

 

 

「すぐに司令官も来るわよ」

「ほーいさ」

気の抜けるような返答をよこした江風は、雑誌を眺めながらもぞもぞと片手でスカートの裾を引っ張った。

残念ながら、十全に伝わったとは言えない結果に終わったが、入室してきた司令官がいきなり丸出しの下着と対面させられる状況だけは回避できたので、もうそれ以上を求めるのはやめた。

 

 

「たく、もう少し身嗜みくらい気にしなさいな」

「いいじゃンかさー。姉貴たちもこんな感じだよ?」

江風の返答を少し想像し、それから静かに口を開いた。

 

「それは白露と夕立だけでしょうが」

 

 

 

 

 

 

「と言うことで、ウチの艦隊が命じられたのは南方海域での偵察任務です。そしてこの作戦が終わるまでの間、こちらの阿賀野さんがうちの艦隊を視察する。最新鋭の軽巡さんなので失礼のないようにー」

 

 

 

「阿賀野です、よろしくお願いしますね」

ここが噂のリンガ泊地。

物凄い高練度の水雷戦隊がズラリと並び、この南西海域を根城にする最強の艦隊だと聞いている。

 

基地司令官に連れられて執務室に入ると、そこには数人の艦娘が待機していた。

一人慌ててソファから立ち上がった子がいたようだが、執務室で寝転がっている艦娘とは中々アバンギャルドだ。

そそくさと執務室から逃げるように退室して行ったが、アレはいったい……。

 

 

 

さて、今回私が半ば無理矢理ここの視察に送られたのも、このリンガの艦隊が近々南方海域に進出するらしいとの噂が海軍内で囁かれだしたからだ。

 

 

深海棲艦の攻勢激しい南方海域に、強いと噂される戦力が投入されるのであればそれは嬉しいことのはずだが、どうやら物事はそう単純ではない様子。

この噂の艦隊が南方に来ることで、今の膠着状況がキレイに片付けられてしまうと、今までの艦隊運用の不備を突かれるのではと疑心暗鬼になっている基地司令官たちも多い。らしい。

なので、南方進出の噂を確かめると共に、彼らの実力と運用方法を確認するといった裏事情があったりする。

 

 

「僕は秘書艦の時雨。困ったことがあったらなんでも言ってよ」

 

この子が南方の女神さん。思ってたよりずっと普通だ。

あれ? この子なんか良い匂いがしますね。

そしてあっちの駆逐艦さんは、すっごい目で司令官さんのことを見てるんですけどー。

 

 

件の駆逐艦娘が口を開く。

「えっと、阿賀野さん? 挨拶もそこそこだけど、ちょっと待っててもらっていいかしら」

「阿賀野でいいですよ。この艦隊には艦種による上下差はないって聞いてますしー」

 

郷に入っては郷に従え、そう思って返答をしたのだが、その駆逐艦娘は表情一つ変えず金剛に振り向き指示をだす。

 

「金剛、阿賀野さんにお茶出して」

あれー、もしかしてスルーされた? なによりこの子、今戦艦さんに命令した?

 

 

「で、司令官。ちょっといいかしら?」

間髪入れずに、冷たい声で提督を相手にアゴをくいっと、ドアの方をしめす。

ツカツカと部屋を出る駆逐艦の子について、苦笑いの提督も続いた。

 

 

「ヘーイ阿賀野。ワタシは戦艦金剛デース」

見るからに強そうな、そして気品に溢れる戦艦娘が名乗る。もちろんその名は知っている。私たち艦娘の原点とも言うべき金剛型の長姉、鬼と呼ばれた大戦艦だ。

 

「アレは気にしないでくださいネ」

緊張しているのが自分でもわかる。その空気を感じ取ったのか、柔らかい空気と親しみやすい口調で、いつものことデースと笑った。

 

それでいいの? いつものことって、でもでもあの子、司令官さんにめちゃくちゃ失礼な態度じゃなかった?

 

「紅茶の用意をしマース。座って待っていてください」

ソファを勧めてくれた金剛が横を通り過ぎると、鼻先に微かな芳香を感じて思わず口についた。

 

「いい匂いがします」

「Oh! 香水の匂いデスね! ワタシのお気に入りデス」

「香水ですか?」

艦娘にはあまり親しみのない物だ、艦娘といえば油と汗、それから潮の香りを纏っているものだが、彼女にはとても似合っていた。

 

「じゃあ時雨さんもそうなんだ」

「うん、ウチの艦隊でちょっと流行ってるんだよ」

先程香った匂いの謎が解けた。時雨に確認すると、なぜか顔を赤くして答えてくれた。

「Noー、ノロケが始まりますよー」

「し、しないよ?」

 

 

華やかな空気だけを残して金剛が部屋を出ていく。残された二人はソファの対面に腰掛けて、他にやることもないので待っている間の場繋ぎに軽い会話をすることにした。

 

「香水の匂いを嗅いだのは初めてですよー」

「そっか、南方にはなかなか出回らないかも知れないね」

輸送の要でもあるここリンガ泊地に比べ、激戦区の南方では、こういった嗜好品にまでなかなか手が回らないのだろう。

 

「それもありますけど、司令官によっては贅沢品の所持を禁止しているところもありますから」

禁止されているのならまだいい。

問題は、端から所持する方法がない艦隊だ。軍の装備として艦娘を扱う艦隊では艦娘が私物を手にするという概念ごと欠落していることさえある。

 

 

まだまだ厳しいその現実に時雨は目を伏せる。

 

幸い、僕たちがここに根を張るようになってからの南西海域は、ほぼウチに準じたシステムに則った運営を行なってくれている。

右手に棍棒を、左手に真綿を携えた提督によって、リンガと足並みを揃えた相互協力体制を築き上げるときに飲ませた周辺基地との統一ルールだ。

 

提督の望みどおりに、リンガの艦隊はここでのスタンダードとなった。

しかし、その手は未だ南方海域に届いていない。

 

 

 

「ここではどうやって香水を手に入れてるんですか?」

「この艦隊では艦娘に給与が出ているんだよ、休日の外出も届けを出せば難しくないから、街のショッピングモールに買いに行ったり通販を利用したり、あと……、て、提督からのプレゼントとか」

そう言うと、彼女は顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 

 

ううむ、なかなか頭で処理できないことのオンパレードだぞ。

艦娘に給金が発生している? 街に買い物に出かける? そして司令官からの贈り物? 同じ軍属でありながら、艦娘の運用には艦隊毎の特色が出るものだが、これほど突飛な運用をする艦隊は他にないんじゃなかろうか。

 

「すごい、羨ましいー」

素直な気持ちが口からこぼれる。

言葉で聞くだけではなかなかに実感の難しい話ではあるが、言葉通り夢のようだと思ったからだ。

 

「阿賀野さんもこの艦隊に居る間は、艦娘の権利を受けられるようになってるから、遠征や作戦参加で手当てが出るよ」

「艦娘の権利?」

「給与や休暇だね」

 

これは南方の司令官たちが戦々恐々とするわけだ、この艦隊はいろいろと強大だもん。

 

 

 

 

 

執務室の扉が開き、提督とお盆を持った駆逐艦娘、そして金剛が戻ってきた。

 

「待たせてすまなかった」

手刀を繰り出すようにしながら頭を下げ、提督が時雨の隣に腰を下ろす。いそいそと横にズレる秘書艦の姿が愛らしい。

その間に駆逐艦娘がお盆のお茶を、金剛が軽食を机に並べる。

 

「ま、お茶でも飲みながら話しましょう」

そう言って提督の横に駆逐艦娘が座り、阿賀野の隣には金剛が腰を下ろした。

「自己紹介もまだだったわね、ワタシは朝潮型駆逐艦の霞よ」

 

ようやく駆逐艦娘の名前を聞くことができた。先ほど出ていったときは眉間にシワを寄せていたが、今は整った顔を綻ばせ機嫌良くお茶を口に運んでいる。

 

この子の名前も聞いている。

あの佐世保を生き残ったサバイバーの一人だ。

 

 




つまりいつの話なんだろうなぁ。
鈴谷加入後(未掲載)から能代話(前話)の間になるんだが……。

しかし佐世保壊滅を引っ張り過ぎて、もはや収拾がつかない。
佐世保のオチを未掲載なせいで現在進行形で支障が出ている箇所が実はあるのだ。

佐世保サバイバー。佐世保で一緒に戦うのは時雨、伊勢、皐月、朝潮、霞。
それぞれの出会いシーンとケツだけ完成してて、間がごっそり未完成なんだよね。
さすがに全部すっ飛ばしてオチだけ掲載したら怒られそうだよね。
1話未完のままここまで着いてきてくれた温厚な読者のみなさんでも……。

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