少女のつくり方 〜艦隊これくしょん〜   作:山田太郎

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どこに挿入しようか迷った結果。全然関係のないここに投稿することになったプロローグ。

艦これ的には2-xの南西諸島海域より南、西方海域の4-1よりも西側。
シンガポール周辺です。


次回、阿武隈急行はスリランカ沖に停まります。


〜作戦前の一コマ〜/ 夏の誘惑

俺たちは、リンガから少し北に行ったところにあるリアウ諸島のベナンというところに来ている。

日本からの時差はおよそ1時間。もうちょっと北上するとシンガポールだ。

 

まぁ海の美しいこと。

普段からリンガにいるので、綺麗な海というのもそこまで珍しいわけではないが、観光地として栄えたベナンの海岸線はやっぱりちょっと違う気がする。日本人的バカンス感として。

職業柄、海ばかり見ているわけだが、機会があれば南方の海ばかりではなくアマルフィ海岸なんかにも行ってみたいと思った。いや、欧州に行くのならいっそのことスケベニンゲンのほうがいいのか? ヌーディストビーチもあるらしいし……。どうでもいいことだが、現地の人にはスケーべ人間と言ったほうが通じるらしい。しょせんカタカナ発音だしな。さもありなん。

 

おっと、フラグになると嫌なので、やっぱりさっきのはなしでお願いしたい。

欧州まで戦域を拡大なんて、お笑い海軍かフィクションの中でしかあり得ないだろう。

現実に存在するある意味お笑いな海軍であるところの米軍が、今さらながらモンロー主義に突っ走り、大陸に引きこもってしまったのを見る限りでは、きっと誰にもできないことなのだろう。

 

 

 

 

さてさて、本日はバカンスである。

戦争中になにやってるんだ? と至極真っ当なことを言われそうではあるが、こちとら佐世保の壊滅からほぼ休みなしで働いてきたのだ。無理して旧軍のイメージどおりに振る舞う必要もないだろう。

現代人らしく、ここは連合国を見習ってもいいんじゃなかろうか。つまりホリデーでバカンスなわけである。

 

今のところジャカルタより北側は南シナ海まで制海権を確保しているので、根城としているリンガ泊地と同じく、ここら辺も安心できる海域と言える。基地から200kmも離れておらず、シンガポールまでの道中にあるご近所の島だから当然なのだけど。

 

マラッカ海峡より西は今後の課題。スリランカに橋頭堡を築いてベンガル湾、できればアラビア海辺りまでシーレーンを伸ばし石油を確保したい。そのための英気を養うのが目的である。

 

 

艦娘の皆さんは水着に着替え、もしかすると初めてかもしれないバカンスを楽しんでくれているようだ。

来て良かったと、そう思う。

 

パレオを巻いて男心をくすぐる水着を身にまとう時雨さんは、現在女の子座りで俺の頭を膝の上に乗せている。

顔を時雨の腹部に埋めるようにして寝ているので少々背中に当たる日差しが気になるが、自分は男の子なのでシミの一つ二つできても特段構わないだろう。

この変則的な膝枕について思うところがあるのか、多少時雨が落ち着かない素ぶりを見せているようだが、自分は嫌な思いをしていないのでそちらも問題はないはずだ。

 

問題といえばこの日焼け。

平均的な日本人男性としては、日焼けに対しての考えなど先に述べたとおりだと思うが、時雨たちの真摯な訴えにより今は自分も日焼け止めクリームを塗られている。

男らしく、少しくらいは肌を焼いておきたいのだが、その主張は艦娘総出の一斉射撃により見るも無残に撃沈されることとなった。端的にまとめると「塗って焼け」とのこと。

男の自分にはよくわからないことだが、女性誌などから貪欲に知識を吸収し、日々成長していく艦娘たちの姿は逞しくあり、また好ましいものでもある。

 

当然、時雨を含み遊びに来ている艦娘たちは皆一様に日焼け止めのクリームを塗っている。

今まで気にしたことはなかったが、輸送護衛や哨戒活動など、海上にあるときは普段から塗っているのだと言う。

海上での照り返しと潮風はビーチなどよりよほど凶悪で、乙女としては死活問題らしい。

 

とはいえ、艦娘の体は冗談のように頑丈だ。

強烈な日差しを浴び続けるとそれなりに焼けるが、それがシミになって残ったりすることもなく、放っておけばすぐにいつもの肌の色に戻る。一般的な女性からみると垂涎ものの肉体と言えるだろう。

おかげで、夏のバカンス地では小麦色の肌が大正義。という西洋人の楽しみ方はできそうにないが、そこは特に問題視していないと真顔で返された。

 

「簡単そうに言うけど、一日中海上にある僕たちはこれでも髪や肌に気を配っているんだよ?」と、最近はもっぱら事務仕事に追われ、海に出ていないはずの時雨は言う。

 

人間からみるとあり得ないほど活発な、新陳代謝が良い体を持ち、すぐさま通常のコンディションに戻る艦娘とはいえ、乙女である限り逃れることのできない敵ということなのだろう。

彼女らはこの南の海で、深海棲艦と同時に乙女として美容戦線でも戦い抜いているのだ。

 

「二正面作戦で戦線を維持するには、それなりの準備と予算が必要なのよ」

バカンス前にそう言ってのけたのは艦隊運営を一手に担う司令艦の霞だ。彼女は後発組のリーダーを務めることになっているので、本日は基地でお留守番をしている。

 

予算管理に余念のない霞だが、基地に住まう艦娘たちから上がってくるヘアケア、スキンケアといった各種用品に関しては一貫して「必要経費よ」との姿勢を崩さずにいる。

こちらとしても、女性だらけの職場で女性と対立したいわけもなく。もとよりキシキシと痛んだ髪の毛を装備する時雨たちを見たいわけではない。避けられると言うのならば、苦労はかけるが避けていただきたいとお願いしたいくらいだ。

労力を必要とするのは彼女たちなので、予算の許可くらいは出さねば申し訳も立たないだろう。

 

そうして思う。

女性から漂う、このいかんとも形容しがたい「女の子の匂い」とは、決して持って生まれた体臭だけでなく、そうした戦いによって彼女たちが勝ち得た努力の賜物だったのだと。

 

 

「提督、そこで深呼吸するのは止めてくれないかな」

日に焼けた結果ではないと思うが、薄っすら上気して頬を赤く染めている時雨が言う。

努力の賜物を堪能したいだけなのだ。いかに時雨の意見具申とはいえ聞けることと聞けないことがある。もちろん健全な一男子として、今回のは聞けない案件である。

これも今まで培ってきた信頼の証だろう。一応言っておくが、彼女は嫌だから止めろと言っているのではなく恥ずかしいから止めろと言っているのだ。

そこを履き違えてはいけない。

 

「苦労をかけるな」

時雨の下腹部付近に埋めていた自らの顔を引っぺがし、時雨たちの苦労を偲ぶ。戦友でもあり、長く生活を共にする家族のような存在でも、労いを忘れてしまえば破綻するものだ。感謝を忘れないことが円満な人間関係を継続するコツである。

「いいさ、戦いが僕たちの存在意義だからね」

なるほど、女性として戦うのは当然である。と、さすがだな戦乙女。世の女性の大多数にとっては至極当たり前の戦いなのだろうなぁ。努努、感謝を忘れないようにしよう。

その戦いは、ひいては男性陣のための戦いなのだから。

 

「俺たちのために戦ってくれているのに、なにもできなくてすまないと思ってるよ」

「提督は提督にしかできない戦いで、僕たちと一緒に戦ってくれているよ。それに、こんな風に僕たちを連れ出してくれてるじゃないか。僕たちも感謝しているんだよ?」

はて、美容のために俺がしている戦いとはなんだろう。資金提供くらいしか思いつかないが、その資金だって艦娘に使われているのはいわゆる帳簿外のもの。当たり前のことだが、国家は対深海棲艦の予算を出してくれても美容戦線の予算までは出してくれない。

 

美容用品が福利厚生費として賄われている軍隊は、世界広しといえどもウチの艦隊くらいのものだろう。そんな運営ができているのも、地域企業の輸送護衛などを基地で請け負い財源を確保しているからであり、言ってしまえば自らの足で稼いできたお金だ。

他人のまわしで相撲を取るようで座りが悪いが、近場の海水浴場に連れ出すくらいのことで感謝されるのであれば、これからも定期的に考えようと心に誓う。

1番感謝しているのは、美しい女性たちの水着姿で目の保養をしている自分であると断言できるが、彼女らは普段の頑張りの成果を発表できる場くらいに思っているのだろうか。

 

 

 

遠くのほうでは波の音に混じって笑い声が聞こえる。空は抜けるような青さで、いかにも健康的な日差しが目に眩しい。

静かに目蓋を閉じ、もう少し時雨に甘えて微睡みを楽しもう。

 

 

ああ、思えば遠くに来たものだ。




ここまで読んでくれている諸兄ならば、ひとまず山場は越したことだろう。

時系列がぶっ飛んでいるこの物語との付き合いかたってやつ。
佐世保でなにがあったのか、その後どうなって、今どうなのか。
そういったことを妄想しながら黙々と次へ進んでくださいませ。

すでに十分読者を置き去りにしているとは思いますが、これ以上に難解な置き去りは多分ないと思いますので、どうぞ難しく考えすぎないようにしてください。


暖かいお便りお待ちしております。
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